敬語の使い分けはとても難しく、最後はあなたの考え方次第なのですが…。私はざっくりと下図のような使い分けをしています。メールでも商談でも同じですね。
なんとな〜くですが、敬語レベルをマックス3で設定しています。
- 丁寧レベル普通「訪問したいです」
▼社内外の先輩に使う丁寧レベル - 丁寧レベル中「伺いたい」
▼「部下→上司」「自分→親しい取引先」「就活」で使う丁寧レベル - 丁寧レベルMax「伺いたく存じます」
▼「自分→新規顧客」「あまり知らない相手」「社内でもかなり偉い人」「転職」で使う丁寧レベル
間違い敬語でも広く使われていればOK
ところで敬語というか、言葉全体にいえることですが、たとえ間違った敬語でもそれが普通に使われていたらOK。という気持ちの悪いルールがあります。
言葉や敬語というのは、時代とともに代わっていくのです。
間違い敬語だけど「慣例でOK」
たとえば「慣例でOK=間違いだけど普通に使われているから問題ないよ!」とされている敬語には、以下のようなものがあります。
- お伺いいたします
- お伺いしたいです
- お伺いしたく存じます
こんな敬語の使い方は本来、二重敬語でありNGとなるのですが・・・。ビジネスシーンで普通に使われる表現だからOK!という解釈になっているのです(by 文化庁「敬語の指針」)。
日本語学者がなんと言おうと、よく使われている言葉は正しいと認識してよいと思います。でも「お伺いします」は間違いであると認識されてほしい。
だから私は人知れずこっそりと、この記事を書いているのです。
使ってはいけない!お伺いさせて頂きます、させて頂きたく存じます
私が取引先から受けるビジネスメールで
「お伺いさせていただきます」
「お伺いさせて頂きたく存じます」
のような表現を使う人がいます。驚くことに、私よりも年配の方でも平気で使っています(汗)。ただ、これはやり過ぎであるため使わないでください。
間違い敬語である理由は「お伺いします」と同様ですが、念のため以下にて敬語解説をしておきます。
「お伺いさせて頂きます」はなぜ間違い?敬語解説
- 「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」
- 「させてもらう」の謙譲語「お~させていただく」
- 丁寧語「です・ます」
ということになり二重敬語でNGです。これも「慣例だからOK」なんてことにしたらもう、収拾のつかないことになります(泣)。
「お伺いさせて頂きたく存じます」はなぜ間違い?敬語解説
- 「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」
- 「させてもらう」の謙譲語「お~させていただく」
- 願望「~たい」
- 「思う」の謙譲語「存じる」
- 丁寧語「です・ます」
ということになり、同様に二重敬語でNG。これも「慣例だからOK」なんてことにしたらもう、収拾のつかないことになります(泣)。
【例文】「伺いたい・伺いたく存じます」ビジネスメール全文
つづいて、「伺いたい・伺いたく存じます」を使った、ビジネスメールの全文を紹介します。アポイントメール、問い合わせメールに活躍する表現ですので、ぜひ使ってみましょう。
【例文】面接日程調整の返信メール
メール件名:Re:二次面接日程の案内
転職株式会社
人事部
転職 様
お世話になっております。
就活大学の就活です。
この度は、次回面接の日程候補をご連絡いただき、誠にありがとうございます。
さて、いただいた日程ですと、以下の日時で伺えます。
お手数ではございますが、日時をご指定いただけますと幸いです。
〇月〇日(〇)13:30~
◯月△日(△)13:30~
◯月X日(X)13:30~
お忙しいところ大変恐れ入りますが、
ご連絡のほど何卒よろしくお願いいたします。
メール署名
◎書き方の参考となる記事:
【例文】OB訪問お願い(就活メール)
メール件名:OB訪問のお願い(××大学□□)
メール本文:
株式会社転職
△△様
突然の連絡にて、大変失礼いたします。
就活大学・就活学部の□□と申します。
大学のキャリアセンターからの紹介で連絡いたしました。
さて、私は現在、◯◯業界を中心に企業研究をしており貴社に大変興味を持っております。そこで是非、現場でご活躍されている△△様のお話を伺いたく存じます。
よろしければ下記日程のいずれかで伺いたく存じますが、
ご都合のほどいかがでしょうか。
・x月xx日〜x月xx日 13:00-19:00
・x月xx日〜x月xx日 11:00-16:00
△△様のご都合のよろしい日時・場所をご指定頂ければ幸いです。
お忙しいところ大変恐れ入りますが、
ご検討のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
◎書き方の参考となる記事:
やっぱり気にくわない「お伺い」という表現
個人的な意見ばかりで恐縮ですが、やはり私のようなおっさん世代には「お伺い」「お伺いしたい」は正しい!!とする意見には納得できません。
敬語の使い方に「慣例としてOK = 週間として使われている表現」もクソもない、と思うのです。
正しいものは正しいし、間違っているものは間違っている!
といいたいのですが…。
実はそうでもありません。敬語に限らず言葉の難しいところは「何が合っていて、何が間違っているかは時代が決める!!」という点。
敬語や言葉は時代とともに変わる
たとえば「全然OK」という言葉。今でこそ普通に使われていますが、若者が使い始めたときには「おかしい日本語」として世間を騒がせていました。全然OK、という言葉がでてくるまで「全然」はたとえば、「全然ダメ」「全然できなかった」のように、ネガティブなことに使われる言葉だったのです。
それが時代とともに変わり、今では普通に使われています。
「これと同じで敬語表現も時代と共に変わっていくべきだ」
ということなのでしょう。
そのうち「お伺いします」「お伺いさせて頂きます」「お伺いいたします」という敬語を使う人がもっともっと増えてくれば、さすがにもう誰も文句は言わないでしょうね。
私はそれを阻止するべく、文化庁がなんと言おうと「おかしいものはおかしい!!」と言い続けますけど…。少なくともこの記事を読んでいただいたあなたは、何が正しくて何が間違っているか、ということだけ理解しておいてください。
ビジネスメールでは丁寧語よりも尊敬語・謙譲語を使う!
ビジネスメールでは丁寧語はあまり使わず、尊敬語・謙譲語を使います。
これは丁寧レベルの問題で、
丁寧語 < 尊敬語・謙譲語 となるからです。
丁寧語は「です・ます」のことですが、ビジネスメールで使うとかっこ悪くなるのでご注意ください。たとえばビジネスメールに丁寧語「5月10日に訪問したいです」ではおかしいわけで、謙譲語「5月10日に伺いたく存じます」「5月10日に伺えますか」とします。
他にも、たとえばメールの締めに丁寧語「よろしくお願いします」ではおかしいわけで、謙譲語「よろしくお願い致します」「よろしくお願い申し上げます」とします。ちなみに「いたします」は「する」の謙譲語+丁寧語「ます」、「申し上げます」は「言う」の謙譲語+丁寧語「ます」です。
他にもたとえば丁寧語「お礼します」はおかしい訳で、謙譲語「お礼申し上げます」などあり。
ビジネス会話では丁寧語でもまぁOK
ところがビジネスメールではなく、ビジネス会話や電話であれば、丁寧語でもまぁ大丈夫です。それは謙譲語や尊敬語の表現が、あまりに発音しにくいから。普段の会話で「お願いいたします」をあまり使わないように、ビジネス会話でも「お願いいたします」よりも「お願いします」を多く使います。
このあたりは相手のポジション(どれくらい敬意を表するべきか?)に応じて変わるため、一概には何とも申し上げにくい部分です。
敬語って、自分のポジション、相手のポジション、場の雰囲気、相手との関わり度合い…などなど、いろいろなことを考えながら丁寧レベルを考えて使うべきものなのです。
「このときは絶対にこうだ!!」という答えはありません。あくまでも「状況に応じて、相手に失礼にならないように敬語を使う」、これが答えです。
目上の人に使える?間違いやすい敬語10選
「お伺いしたい」「お伺いしたく存じます」「伺いたい」の他にも、目上の人やビジネスメールで使うかどうか、よく迷う表現としてはたとえば以下のようなものがあります。
例で示す敬語の中には、目上の人に失礼となる使い方もあります。ぜひ、この機会にそれぞれの敬語の正しい使い方をマスターしておきましょう。
- ご活躍を期待しております
→「ご活躍」「ご活躍を期待しております」目上の方への正しい使い方 - お疲れ様です・ご苦労様です
→目上の人に「お疲れ様・ご苦労様」は失礼?言い換えと正しい使い方 - 感心する
→「感心する」が目上の人にNGなんて嘘!意味と正しい敬語の使い方 - 取り急ぎお礼まで
→「取り急ぎお礼まで、ご連絡まで」意味と目上の方への正しい使い方 - お大事に
→目上の人に「お大事に」は失礼?丁寧な言い換えと正しい使い方 - ご査収願います・ご査収ください
→「ご査収願います」「ご査収下さい」は上司に使える?目上への使い方 - 頑張ってください
→「頑張ってください」の代わりに使える7つの敬語 - お取り計らい
→「お取り計らい」意味と目上の方への正しい使い方【例文あり】 - 感銘・感服・敬服・感心
→「感銘」「感服」「敬服」「感心」の意味と違い、敬語での使い方 - いただくことは可能でしょうか?
→「いただくことは可能でしょうか?」の敬語、目上の人への使い方
まとめ
最後にまとめ。
覚え易いように、これまでの「お伺いしたい」「お伺いしたく存じます」が間違えである理由と、正しい敬語表現を図式化しておきましょう。
訪問したい・行きたい・質問したい・聞きたい(原型)
↓
◎伺いたい(謙譲語)
↓
◎伺いたく存じます(謙譲語)
↓
NG×お伺いしたい(二重敬語)
NG×お伺いしたく存じます(二重敬語)
筆者の「ぼやき」
私がブログで主に使用しているのは、謙譲語ではなく丁寧語ですね。これは、上なのかも下なのかも分からない、不特定多数のあなたへ向けて情報発信をしているからです。
敬語が難しいと思われるのは、相手の立場や自分の立場に応じて、使う表現を変えなければいけないところですね…。
「訪問したい」ときは絶対に「伺いたい」だ!!
と決まっているものではなく、相手の立場と自分の立場、状況に応じて、この3つの敬語を使い分けするのです。あるときは「訪問したいです」を使い、あるときは「伺いたい」を使うといった感じ。
これはもう、ありとあらゆる場面を経験し、分からなかったら都度確認して慣れていくしかないです。一番悪いのは、調べないで適当に敬語を使ってしまうことです。私の上司みたいに「~~させて頂きます」の人になってしまうので要注意。
頭でどうこうなるものではないので是非、ビジネスシーンで場数を踏んでくださいね。ではでは~~。