「お伺いいたします」「お伺いします」「お伺いさせていただきます」どれが正しい敬語の使い方でしょうか?
どれも敬語としては合っていそうだけど、実はすべて間違い敬語です。そこで、この3つの正しい用法と理屈を復習しておきましょう。
まずは要点のまとめから。
×「お伺いします・お伺い致します・お伺いさせて頂きます」という敬語はすべて間違い
「お伺いする」が間違い敬語である理由は、「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」に謙譲語「お~する」「お~いたす」「お~させていただく」を併用しているから。これを二重敬語といい、マナー違反。正しい敬語は「伺います」です。
×他にもある「伺う」の間違い例文
・NG例文「お伺いします」
・NG例文「お伺いしたいです」
・NG例文「お伺いしたく存じます」
・NG例文「お伺いできますでしょうか?」
・NG例文「お伺いしてもよろしいでしょうか?」
・NG例文「お伺いさせて頂きます」
・NG例文「お伺いさせて頂きたいです」
※これらの敬語は誤りではあるものの、文化庁の「敬語の指針」には「慣例としてOK」となっています。が、とくに私のようなおっさんは納得できません。
●「伺う」の正しい例文
・正しい例文「伺います」
・正しい例文「伺いたいです」
・正しい例文「伺いたく存じます」
・正しい例文「伺えますか?」
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、
本文中にて、なぜ間違いなのか?どうしたら正しい使い方をマスターできるか?という点についてくわしく見ていきましょう。
なぜ「お伺いします、-致します、-させて頂きます」が間違い敬語?
まずは「お伺いいたします」「お伺いします」「お伺いさせていただきます」が間違い敬語である理由を解説。
「お伺いします」がNG敬語になる理由
「お伺いします」は分解してみると、以下のような構成です。
- 「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」
- 謙譲語「お〜する」
- 丁寧語「です・ます」
よくよく見ると「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」と「お〜する」という謙譲語を同時に使っているため、二重敬語に該当。この使い方はNGです。
※二重敬語とは、一つの言葉に同種類の敬語を2回使うことであり、ビジネスマナー違反です
※謙譲語とは「自分の立場を下げることで、相手が自動的に持ち上がる」という敬語で、自分の動作や行動に使います。敬語の種類には他に、尊敬語「目上の人に対して、相手を立てたいときに使用する」と、丁寧語「聞き手の人に対して、丁寧にしゃべる言葉」があります。
「お伺いいたします」がNG敬語になる理由
「お伺いいたします」は分解してみると、以下のような構成です。
- 「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」
- 謙譲語「お〜する」
- 「する」の謙譲語「いたす」
- 丁寧語「ます」
よくよく見ると「行く・聞く」の謙譲語「伺う」と「お〜する」「いたす」という謙譲語を同時に使っているため、二重敬語に該当(謙譲語3つなので三重敬語?)。この使い方はNGです。
「お伺いさせていただきます」がNG敬語になる理由
「お伺いしさせていただきます」は細かく分けると、以下のような構成です。
- 「行く・尋ねる」の謙譲語「伺う」
- 「させてもらう」の謙譲語「お~させていただく」
- 丁寧語「です・ます」
こちらも同様、二重敬語でありマナー違反です。
「伺う」の正しい用法を図式化
覚え易いように、これまでの「伺う」と、それに派生する正しい敬語・間違い敬語の関係を図式化しておきましょう。
私もそうですが、普段なんとな~く使っている表現が間違い敬語だったりするので…。私自身、まだまだ勉強が必要ですね。
↓
◎伺う(謙譲語)
↓
◎伺います(謙譲語+丁寧語)
◎伺いたいです
◎伺いたく存じます
◎伺えます
↓
NG×お伺いします(二重敬語)
NG×お伺いいたします(二重敬語)
NG×お伺いさせていただきます(二重敬語)
NG×お伺いしたいです(二重敬語)
※「存じます」は「思う」の謙譲語「存じる」+丁寧語「ます」
※「伺えます」は「伺う」+可能の助動詞+丁寧語「ます」
正しい敬語は「伺う」「伺います」
繰り返しになりますが、「お伺いいたします」「お伺いします」「お伺いさせていただきます」という敬語は間違い。
「伺う」「伺います(伺う+丁寧語ます)」を使えば正しい敬語となります。ちなみに、どちらも目上の人やビジネスメールで使える正しい敬語ですね。
【使い方】伺う・伺います
つづいて「伺う」「伺います」がどんなシーンで使えるのか?使い方を解説していきます。どちらも「訪問したいとき」「質問したいとき」のビジネスメールや会話で活躍する表現です。
「伺う・伺います」の使い方と意味
- 例文「1月4日に年始の挨拶へ伺いたく存じますが、ご都合いかがでしょうか」
→ 意味「1月4日に年始の挨拶のために訪問したいけど、どう?」 - 例文「ありがとうございます。それでは1月4日に新年の挨拶へ伺います」
→ 意味「じゃあ1月4日に新年の挨拶に訪問するね」 - 例文「それでは頂いた日時に、ご指定の場所へ伺います」
→ 意味「じゃあもらった日時に、指定されたところに行くよ」 - 例文「貴社に伺い、お話しを伺いたいです」
→ 意味「訪問して話を聞きたい」 - 例文「すみません、ひとつ伺いたいのですが」
→ 意味「すみません、ひとつ質問したいのだけど」
- 例文「この商品について、いくつか伺いたいのですが」
→ 意味「この商品について、質問したいのだけど」
ということで、アポイントをとる、問い合わせをする、といったときのビジネスメール・電話でよく使う表現になります。
※「伺いたい」の意味は「訪問したい(尋ねたい)」。
※「伺いたく存じます」の意味は「訪問したいと思います」。「思う」の謙譲語「存じる」+丁寧語「ます」を使っている。
間違い敬語でも広く使われていればOK
ところで敬語というか、言葉全体にいえることですが、たとえ間違った敬語でもそれが普通に使われていたらOK。という気持ちの悪いルールがあります。
言葉や敬語というのは、時代とともに代わっていくのです。–つづく–