「ご査収(ごさしゅう)願います」「ご査収ください」って目上の人(上司・先輩・取引先)に使える?という疑問を解消するための記事。
まずは基本として、
「ご査収(ごさしゅう)願います」「ご査収ください」の辞書的な意味はそれぞれ、
「(書類などを)よく調べて受け取るよう、お願いします」「よく調べて受け取ってください」です。
わかりにくいため意訳すると、どちらも「中身をよく確認し(検査し)、受け取って(収めて・収集して)ほしい」となります。
使い方としては「報告メール」「連絡メール」などのビジネスシーンで使われますが、「ご査収願います」「ご査収ください」は敬語として正しいものの、取引先に使うには、少しラフな印象を与えてしまいます。
より丁寧な敬語にするには「ご査収願います」を言い換えましょう。
言い換え表現にはたとえば、
- 例文①「ご査収のほど、何卒よろしくお願いいたします」
- 例文②「ご査収くださいますよう、お願い申し上げます」
- 例文③「ご査収の上お取り計らいのほど、何卒宜しくお願い申し上げます」
- 例文④「ご査収いただければ幸いです。何卒宜しくお願い申し上げます」
こんな感じの使い方があります。これらの表現は社外の人(目上、目下は関係なし)に対して使う、とても丁寧な表現です。
いっぽうで「ご査収願います」「ご査収ください」は社内メールで目上の人(上司・先輩)に使うのであれば、ラフではありますがまぁ問題はありません。ただ、もし上司がとても厳しい人で「ご査収願います」「ご査収ください」を使うのに抵抗がありましたら、例文①~④の表現を使うのが無難です。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、敬語としての意味や、目上の人への正しい使い方について詳しくみていきましょう。
※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。
「ご査収願います・ください」敬語としては正解だけど…
まずは「ご査収願います」「ご査収ください」という表現が、敬語としてどうなのか?
という点を見ていきましょう。
「ご査収願います」の敬語解説;
- 「査収」+尊敬語「ご」で「ご査収」
- 「願います」は「願う」+丁寧語「ます」
ということですので「ご査収願います」は敬語として正しい使い方をしています。したがって社内で上司に使うくらいのレベルでしたら、この表現でも十分でしょう。
一般的に社内メールや社内のコミュニケーションでは、丁寧すぎることは悪。いっぽうで社外の人へは目上、目下を関係なく、より丁寧な敬語を心がけます。
※ただし上司の性格によりますので、安全サイドではありません。
では、なぜ「ご査収願います」が社外メールに不適切か?
というと「願います」という表現に問題があります。これは「願う」に丁寧語「ます」を使っているのですが、丁寧語は社内で使うくらいの丁寧レベルであって、社外のコミュニケーションでは通常、できるかぎり尊敬語や謙譲語を使います。
丁寧レベルは「尊敬語・謙譲語 > 丁寧語」になることを認識しておきましょう。
「ご査収ください」の敬語解説;
- 「査収」+尊敬語「ご」で「ご査収」
- 命令形「しろ」の丁寧語「ください」
ということですので「ご査収ください」は敬語として正しい使い方をしています。したがって社内で上司に使うくらいのレベルでしたら、この表現でも十分でしょう。
ではなぜ「ご査収ください」が社外メールに不適切か?
というと、命令形「しろ」の丁寧語「してください」を使っているから。命令形は丁寧語に直したとしても命令形であって、ビジネスシーンで使うには一般的ではありません。
「ご査収願います」を上司に使える?←上司による
何度もしつこいですが、「ご査収願います」「ご査収ください」という表現は、上司に使っても問題ありません。
ところが敬語の難しいところは、理論とか何とかをこえて、結局は人の気持ちに左右される点。受け手が「ムッ」と感じたら丁寧な表現ではなくなるし、受け手が「丁寧だ」と感じたら、それでOK。
困ったことに「上司にはコレを使え!」という明確な基準がないのです…。
結局はあなた自身で上司の性格を考え、丁寧レベルを使い分けるしか方法はありません。
ちなみに私は社内メールであれば目上・目下を関係なく「ご査収ください」を使い、社外メールであれば「ご査収のほど、何卒よろしくお願いいたします」を使います。
「ご査収願います・ご査収ください」の丁寧な言い換え
冒頭で例文にもしましたが、「ご査収願います」「ご査収ください」を丁寧に言い換えすると、こんな感じの表現があります。目上の人(先輩・部下)や社外の取引先に対しては、以下の表現を使うのが無難です。
言い換え①ご査収のほど、何卒よろしくお願い致します
最もよく使われる表現が「ご査収のほど、何卒宜しくお願いいたします」。ビジネスメール文末で締めくくりとして活躍する表現です。
命令形の丁寧語「ください」の代わりに「~のほど」を使い、さらに「お願い」として使っています。ビジネスメールでは命令形の使用を極力さけることから、目上の人にも使える素晴らしい敬語表現と言えます。
こうすると意味は「よく調べて受け取るように、お願いしますね」となります。
また敬語としてのなりたちを細かく解説すると、こんな感じになります。
敬語解説;
- 「査収」+尊敬語「ご」で「ご査収」
- 「~のほど」の意味はとくにないが、表現をやわらげるために使う言葉
- 「何卒(なにとぞ)」は副詞で意味は「どうか・どうぞ・ぜひとも」
- 「よろしく」は丁寧度をあげるための副詞
- 「お願いする」の謙譲語「お願いいたす」+丁寧語「ます」
※ちなみに「お願い致します」は「お願い申し上げます」でも使えます。
言い換え②ご査収くださいますよう、何卒よろしくお願い致します
つづいて「ご査収くださいますよう、何卒宜しくお願いいたします」。こちらもビジネスメール文末で締めくくりとして活躍する表現です。
命令形の丁寧語「ください」を「~ますように」でつなげ、「お願い」で結んでいます。命令形ではあるものの「お願い」とすることで、丁寧な表現にしています。こちらも、目上の人にも使える素晴らしい敬語表現と言えます。
こうすると意味は「よく調べて受け取るように、お願いしますね」となります。
また敬語としてのなりたちを細かく解説すると、こんな感じになります。
「ご査収くださいますよう」の敬語解説;
- 「査収」+尊敬語「ご」で「ご査収」
- 命令形「しろ」の丁寧語「ください」
- 「ように」+丁寧語「ます」で「ますよう」
※ちなみに「お願い致します」は「お願い申し上げます」でも使えます。
言い換え③ご査収いただければ幸いです。~
つづいて「ご査収いただければ幸いです。何卒宜しくお願いいたします」。こちらもビジネスメール文末で締めくくりとして活躍する表現です。
命令形の丁寧語「ください」を「いただければ幸いです」に言い換え、「お願い」にすりかえています。ビジネスメールでは命令形の使用を極力さけることから、目上の人にも使える素晴らしい敬語表現と言えます。
こうすると意味は「よく調べて受け取ってもらえると、うれしいな~。お願いします」となります。
また敬語としてのなりたちを細かく解説すると、こんな感じになります。
「ご査収いただければ」の敬語解説;
- 「査収」+尊敬語「ご」で「ご査収」
- 「いただければ」は「もらう」の謙譲語「いただく」+可能形「できる」+仮定「れば」
- 「幸いです」は「嬉しいです・幸せです」の意味
言い換え④ご査収いただきますよう、~
つづいて「ご査収いただきますよう、何卒宜しくお願いいたします」。こちらもビジネスメール文末で締めくくりとして活躍する表現です。
命令形の丁寧語「ください」を自分が「~してもらう」の意味である「いただきますよう」に言い換え、「お願い」にすりかえています。ビジネスメールでは命令形の使用を極力さけることから、目上の人にも使える素晴らしい敬語表現と言えます。
こうすると意味は「よく調べて受け取ってもらえるように、お願いしますわ~」となります。
また敬語としてのなりたちを細かく解説すると、こんな感じになります。
「ご査収いただきますよう」の敬語解説;
- 「査収」+尊敬語「ご」で「ご査収」
- 「いただきますよう」は「もらう」の謙譲語「いただく」+丁寧語「ます」+「ように」
例文⑤ご査収の上お取り計らいのほど、~
つづいて「ご査収の上、お取り計らいのほど、何卒宜しくお願いいたします」。こちらもビジネスメール文末で締めくくりとして活躍する表現です。
命令形の丁寧語「ください」を自分が「~の上、お取り計らいのほど」に言い換え、「お願い」にすりかえています。ビジネスメールでは命令形の使用を極力さけることから、目上の人にも使える素晴らしい敬語表現と言えます。
こうすると意味は「よく確認して、うまく進めてもらえるように、お願いしますわ~」となります。
「ご査収」の敬語表現、丁寧ランクづけ
これまで解説した「ご査収」を使った表現を、丁寧ランクごとに並べ替えます。ランクが高いほど丁寧な表現となります。
丁寧ランク低~中|ご査収ください・願います
「ご査収ください」「ご査収願います」は社内メールで使う丁寧レベル。
目下から目上(先輩・上司)へメールを送るときには、この敬語表現で十分です。ただし役員クラスにメールするときには、もっと丁寧な表現が必要な会社もあります。これは、業界や企業の文化によりますので、何ともいえません。
丁寧ランク高|ご査収くださいますよう・頂きますよう・の程
つづいて「ご査収くださいますよう、ご査収いただきますよう、ご査収のほど」は、社外の取引先に使える丁寧レベル。
目上の人へのメールはもちろん、目下の人へのメールでも、取引先に対しては、これらの表現を使うのが無難です。
丁寧ランクMax|ご査収いただければ幸いです
もっとも丁寧な敬語表現は「ご査収いただければ幸いです。何卒宜しくお願い申し上げます」となります。
「~をもらえたら嬉しいなぁ」というとても回りくどい表現なので、社内の目上(上司・先輩)に使うには丁寧すぎます。重要な取引先に対する重要なメールや、本当に本当に丁寧にメールをしたいときに使いましょう。
「ご査収願います・ください」を使ったビジネスメール例文【全文】
つづいて「ご査収願います」「ご査収ください」を使ったビジネスメールの例文を挙げていきます。ラフな印象のメールになってしまいますので目上の人に使うには、やはり言い換えが必要かと思われます。
例文①資料送付メール(社内)
メール件名:2月度報送付の件
メール本文:
○○ 課長
お疲れ様です。
さて首記の件、2月度の販売月報を送付いたします。
ご査収ください。
メール署名
例文②報告メール(社内)
メール件名:値上進捗のご報告
メール本文:
○○ 課長
お疲れ様です。
さて首記の件、値上の進捗状況を以下にて報告いたします。
ご査収ください。
- 三菱化学:4月出荷分より+80円/kgにて決着。
- 三井化学:5月出荷分より+85円/kgにて決着。
- 住友化学:4月出荷分より+75円/kgにて決着。
- その他:6月出荷分より+100円/kgにて交渉開始。
なお交渉の経緯等、仔細に関しましては、次月の販売会議に改めて報告をいたします。
どうぞ宜しくお願い致します。
メール署名
まとめ
これでもかというくらい「ご査収ください」「ご査収願います」について語ってみました。
この表現は上司レベルには使っても良いですが、社外の取引先に使うには不適切。もう少し丁寧な表現を心がけるべきです。
ぜひ、ありとあらゆる場面を経験し、使い方をマスターしてください。頭でどうこうなるものではないので、ビジネスシーンで場数を踏んでくださいね。ではでは~~。