「拝見していただく」「拝見していただきありがとうございます」って正しい?間違い?
ビジネスメールにつかっても問題ない?
とご心配のあなたへ。
まずは結論。
「拝見していただく」「拝見していただきありがとうございます」はどちらも間違い敬語であるため上司や目上・取引先につかうのはNG。
正しい敬語の使い方としては。
▼上司に「メール見てもらえましたか?」と催促・確認したいときには…
◎正しい例「メールはお読みになりましたか?/ご覧になりましたか?」というように尊敬語「お(ご)~になる」をつかえば正しい敬語になります。
あるいは。
▼上司に「見てもらいありがとう」と言いたいときの正しい敬語は…
◎正しい例「ご覧くださいましてありがとうございます。」「ご覧いただきありがとうございます」などがあります。
それではその根拠をくわしく解説していきます。
“拝見”の意味と敬語
拝見(読み:はいけん)の意味は・・・
- 見ることをへりくだっていう語。
つまり「見ること」の謙譲語ですね。
「見る」に謙譲表現「拝」をくっつけているため上記の意味になります。
※なお類語は「見る」「借用(しゃくよう)」などあり
「拝見する」だと「見る」の意味となります。
身近な「拝見」のたとえ・例文
日常シーンではほとんど使うことのない「拝見」ですが…
「拝見」って一体どんなシーンでつかえるのかというと身近ではたとえば…
- ホームページを見た
というとき「貴社ホームページを拝見しました。」or「拝見いたしました」 - Facebookの投稿を見た
というとき「部長のFacebookを拝見させていただきました。」or「拝見しました」or「拝見いたしました」 - テレビCMを見た
というときに「貴社のテレビCM拝見いたしました。商品の魅力がわかりやすく伝わる、すばらしいCMでしたね!」 - 他人あての手紙を見たい
というときに「失礼ながら、お手紙拝見したく存じます。」
こんなシーンでつかいます。
“拝見していただく”は意味は通じるけど…
上記より「拝見する」の意味は直訳すると「見る」。敬語をつかっているため実際にはもっと丁寧で「つつしんで見る」の意味になります。
したがって「拝見していただく」だと意味は「見ていただく」となり、日本語としてはなんとな~く正しいような気がします。
しかし。
敬語の使い方に誤りがあるため結局のところは間違い敬語ということになります。
“拝見していただく”が間違い敬語である理由
じゃあなぜ「拝見していただく」間違いなのか?正しい敬語は?という点について順をおって解説していきます。
敬語”拝見”によって立てているのは誰か?
「拝見していただく」が間違い敬語であることを理解するために。
そもそも謙譲語「拝見」はいったい誰を立てているのか(敬っているのか)という点についてみておきます。
たとえば。
◎正しい例「御社のホームページを拝見し連絡いたしました」とした場合。
この「拝見」はあなたが見たホームページを公開している会社を立てていることになります。あなたが三菱商事のホームページを見たのであれば「三菱商事」という会社や社員の人たちを敬ってつかっています。決して目の前にいる相手を立てている訳ではないのですよね。
あるいは。
◎正しい例「貴社の求人広告を拝見しました」とした場合ではどうでしょうか?
この「拝見」はあなたが見た求人広告を出している会社を立てていることになります。東レが求人広告を出していれば「東レ」という会社やそこに属する人たちを敬ってつかっているのですよね。
さらに。
◎正しい例「資料を拝見しました」だとどうでしょうか?
すでにお分かりとは思いますが、この場合は資料をつくった人なり会社を立てています。もし上司が資料をつくったのであれば上司を。取引先がつくったのであれば取引先を。それぞれ敬ってつかっているのですね。
結果として「拝見していただく」だと相手を立てるのではなく自分を立てることになってしまいます。
“メールを拝見していただく”だと自分を立てている
それでは。
×NG例「(私の送った)メールは拝見していただけましたか?」とした場合はいったい誰を立てているでしょうか?
答えは「メールの送り主である自分を立てている」です。この場合、決してメールをおくった先である上司や顧客を立てている訳ではありません。
敬語というのはどんな種類のものであれ、相手を立てるためにつかうものですよね!?
したがって「拝見していただく」は100%間違った敬語になります。
もし上司なり目上・取引先に資料やメールを見ていただけましたか?と確認・催促するのであれば・・・
- ◎正しい例「資料はご覧になりましたか?/お読みになりましたか?」
- ◎正しい例「メールはご覧になりましたか?/お読みになりましたか?」
などというように尊敬語「お(ご)~になる」をつかいます。
別の角度から”拝見していただく”の敬語を検証
これでもまだご納得いただけない方のために。
べつの角度から「拝見していただく」が間違い敬語である理由を解説していきます。
マニアックすぎるので敬語について細かく知る必要のない方は読み飛ばしましょう。
謙譲語「~していただく」の使い方
「~していただく」は「~してもらう」の敬語(謙譲語)として使われます。
たとえば、
- 例文「対応していただけますか?」
- 例文「先生に指導していただいた。」
- 例文「確認していただけますか?」
- 例文「いつも利用していただきありがとうございます。」
のようにして使われます。
「お(ご)~していただく」は間違い敬語
ところが…
- NG例文×「ご対応していただけますか?」
- NG例文×「先生にご指導していただいた」
- NG例文×「ご確認していただけますか?」
- NG例文×「いつもご利用していただきありがとうございます。」
は間違い敬語とするのが妥当です。
なぜなら「対応・指導・確認」という語に「お(ご)~する」という謙譲語の基本形をくっつけているように見えるから。
謙譲語「お(ご)~する」をつかうと「自分がご対応します!・ご指導します!・ご確認します!」という意味になります。
したがって。
上司なり目上の相手に「~してもらう」という意味ではなく「自分が~することをもらう」という意味不明な日本語になります。
ようは「お(ご)~していただく」をつかうと、相手を立てるのではなく自分を立てることになってしまうのですよね。
「~していただく」は正しいものの謙譲語「お(ご)」をくわえて「お(ご)~していただく」とするだけで別の意味・敬語の使い方になってしまうのです…
ちなみに。
正しい敬語にするには以下のように「して」の部分を取り除けばよいだけです。ややこしければ謙譲語「お(ご)~いただく」をセットで覚えておくとよいでしょう。
- 正しい例文◎「ご対応いただけますか?/対応していただけますか?」
- 正しい例文◎「先生にご指導いただいた。/指導していただいた。」
- 正しい例文◎「ご確認いただけますか?/確認していただけますか?」
- 正しい例文◎「いつもご利用いただきありがとうございます。/利用していただき~」
※ただし「お(ご)~していただく」はNGです。
※「~していただく」よりも「お(ご)~いただく」のほうが丁寧な敬語です。
「拝見していただく」も「お(ご)~していただく」とおなじく変な敬語になる
で。
ここまでの復習で頭のよい皆様はお分かりと思います。
「~していただく」は正しいものの謙譲語「拝見」をくわえて「謙譲語+していただく」とするだけで別の敬語と意味になってしまいます…
「~していただく」に謙譲語「お(ご)」をくわえて「謙譲語+していただく」とする使い方とおなじく、ヘンテコな敬語になるのですよね…
正しくは「拝見しました」「拝見いたしました」
以上のことから。
「拝見」の正しい使い方としては「拝見しました」「拝見いたしました」です。あるいはシーンによって「拝見させていただく」をつかってもよいでしょう。それ以外はありません。
こうすると意味は「見ました」の敬語(謙譲語)ということになります。
タイトルに対する結論は以上。
ここからは「拝見」の正しい使い方についてとビジネスメール例文を紹介します。ご興味あるかたのみどうぞ。