「いただくことは可能でしょうか」の敬語と意味、目上の方への使い方、注意点について例文つきで誰よりも詳しく解説していく記事。
まずは基本として「いただくことは可能でしょうか?」は目上の人や、ビジネスメールで使うには不適切です。「ことは可能でしょうか?」の部分を言い換えする必要があります。
例えば、
「〜いただけますか?」
「〜頂いても宜しいでしょうか?」
「〜頂ければ幸いです」
「〜頂きたく存じます」
「〜頂きますよう(頂けますよう)、お願い申し上げます」
などのように言い換えして使うと、目上の方やビジネスパートナーへの敬語として、とても素晴らしい表現になっています。理由については本文中で解説しています。
※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。
この記事の目次
“いただくことは可能でしょうか”は目上の人へ使わない
結論として「いただくことは可能でしょうか?」は目上の方や、ビジネスメールでは使いません。これってなぜでしょうか?理由を考えるために、意味と敬語の使い方が正しいか、みていきます。
“いただくことは可能でしょうか”の意味・敬語
まずは「いただくことは可能でしょうか・可能ですか」の意味について考えます。
「いただく」は「もらう」の謙譲語(自分の行為を下にして相手をもち上げる敬語)。
「可能でしょうか・可能ですか」という言葉は文字どおり、「〜できますか」という可否を確認するための意味で使われます。
「いただく」という謙譲語を使うまではいいのですが、全体としてはあまり丁寧な表現とは言えません。理由は「可能」という言葉があまりにも強すぎるから。
“可能ですか・可能でしょうか?”は強気すぎる
感覚的な話になるのですが、たとえば、
「傘を貸していただくことは可能でしょうか?」
「メニューをいただくことは可能ですか?」
「参考書を貸していただくことは可能ですか?」
などの言葉を使われた場合、あなたはどう思われますか?心の狭い私はムッとして「嫌です」と返答するでしょう(汗)。
何かのお願いごとをしてるクセに、えらい上から来るなぁ…と思いますね。
“いただくことは可能でしょうか”の丁寧な言い換え敬語
先ほどの例文でみたように「〜いただくことは可能でしょうか・可能ですか」というのは、お願い事をする立場として、ふさわしくない表現なのです。
では、どのように敬語で言い換えればいいでしょうか?
例文でみていく方がわかりやすいため、下にまとめます。
- 傘を貸していただけますか?(話し言葉)
- メニューをいただけますか?(話し言葉)
- 傘を貸していただいても宜しいでしょうか?(話し言葉)
- メニューをいただいても宜しいでしょうか?(話し言葉)
- ご了承いただきますよう、お願いいたします(お願いメール)
- ご検討いただきたく存じます。何卒よろしくお願い申し上げます(お願いメール)
- ご了承いただければ幸いです。〃
これらの言葉の使い方について、詳しくは別の記事にしております。以下のリンクよりご確認ください。
参考となる記事;
話し言葉では“頂けますか・頂いても宜しいでしょうか?”を使う
先の例文に示した通り「可能でしょうか・可能ですか」の部分を丁寧な言葉で言い換えると、「いただけますか?」「いただいても宜しいでしょうか?」となります。
丁寧レベルとしては「いただいても宜しいでしょうか > いただけますか」となります。
ただ、これは主に話し言葉として使い、ビジネスメールではもっと丁寧な表現を使います。理由は、話し言葉が丁寧すぎると気持ち悪いから。商談などでは、丁寧さは言葉よりも態度で示します。
ちなみに、この表現は「可能」という表現を使わないようにしただけで、意味としては同じ。お願いごとをするビジネスシーンで使うと、丁寧です。
また「いただけますか?」を敬語として細かくみていくと、
- 「もらう」の謙譲語「いただく」
- 可能形「ける・できる」
- 丁寧語「ます」
つづいて「いただいても宜しいでしょうか?」を敬語として細かくみていくと、
- 「もらう」の謙譲語「いただく」
- 「良い」の丁寧語「宜しい」
- 丁寧語「です」の疑問形「でしょうか」
これらをまとめて考えて「いただけますか?」「いただいても宜しいでしょうか?」を直訳するとそれぞれ、「もらうことができますか?」「もらってもいいでしょうか?」という意味になります。
「貸していただけますか?」であれば「貸してもらうことはできますか?」。「ご連絡いただけますか?」であれば「連絡してもらうことはできますか?」となります。
「可能ですか」を使うより、丁寧さが増した印象になりますよね?
メールでは“頂きますよう、お願いいたします”を使う
つづいて、ビジネスメールで「いただくことは可能でしょうか?」を使いたい場面。もちろん、このままでは使えません。
言い換えをして「頂けますよう、お願いいたします」などを使うと良いでしょう。「可能でしょうか?」は結局のところ、お願い事をしているわけですから「お願いいたします」を付け加えると丁寧です。
また例文で示した表現を丁寧レベルが高い順に並べると、
- 丁寧レベルNo.1|ご了承いただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます(お願いメール)
- No.2|ご検討いただきたく存じます。〃
- No.3|ご了承いただきますよう、お願いいたします(お願いメール)
- No.4|メニューをいただけますか?(話し言葉)
こんな感じのイメージです。
あまり馴染みのない表現である、
「〜いただければ幸いです」は「〜いただけますよう、お願い申し上げます」をもっとマイルドにした表現で、丁寧レベルとしては最上です。部下→上司レベルでは使う必要のない表現で、特に重要なビジネスパートナーに対してだけ使いましょう。
意味と使い方は同じなのですが「いただければ幸いです」を細かくみていくと、
- “もらいたい”の謙譲語「いただきたい」+可能形「ける・できる」+仮定「〜れば」
- “幸い”は「嬉しく思う、幸せに思う、ありがたく思う」の意味。敬語でもなんでもないが、頼みごとをするときに使うと表現がマイルドになる。
- 丁寧語「です」
つまり「いただければ幸いです」を直訳すると「もし、〜してもらえるのでしたら嬉く思います、幸せに思います」という意味になります。なんだか遠回しすぎて気持ち悪いのですが、本当に丁寧に頼みごとをしたいときには、必ず使います(私だけか?)。
他の表現について、敬語としての成り立ちを詳しく調べたい方は、以下の記事をご参考にどうぞ。
参考となる記事;
“いただきます”は間違った謙譲語?
少し話は逸れますが「いただきます」が謙譲語として誤りだという指摘があります。
間違いだという指摘の根拠は、
- “いただく”は「もらう」の謙譲語
- 謙譲語は自分の動作を低めて相手を敬うため、自分の動作にしか使えない
- “了承する”のは相手だから「ご了承いただけますよう〜」は相手の動作に謙譲語を使うことになり、おかしい?
ということです。
まずは結論だけ述べますが「〜いただけます・いただきます」は間違った謙譲語ではありません。
「ご了承いただく」は 「私が了承を(相手に)もらう」からです。いちおう、自分の行動になっていますよね?
言語学者風にややこしく解説するのであれば、
「自分側の立場から相手側や第三者の行為を表現した敬語であり,敬語の慣用的な用法として特に問題があるわけではない」ということになります。
確かに国語学者みたいな人が判定すると、回りくどくて気持ち悪い表現かもしれませんが、ビジネス敬語としてはかなりの頻度で使われます。ご安心ください。
ちなみに、これは文化庁の「敬語の指針」においても解説されています。私のような頭の悪い人には難しいのですが、ご興味ありましたら以下のリンクよりどうぞ。
まとめ
これでもかというくらい「いただくことは可能でしょうか」について語ってみました。
この表現は使いませんが、「いただきますよう、お願い申し上げます」「いただけますか?」などと言い換えれば使えます。
結局のところ「お願い・頼みごと」をしたい時に使う表現ですから、「可能でしょうか」よりもふさわしい表現はいくらでもあります。
また「いただければ幸いです」も合わせて使い分けできるようになると、営業マンとしてはパーフェクトです。
ぜひ、ありとあらゆる場面を経験し、使い倒してください。頭でどうこうなるものではないので、ビジネスシーンで場数を踏んでくださいね。ではでは~~。