「お伺い」「伺う」を正しく使えていますか?就活・転職を含むビジネスメールで訪問したり、問い合わせする時に使いたい表現に「お伺い・伺う」があります。
「お伺い」「伺う」ってどんなビジネスシーンで使えるのでしょうか?そもそも意味と使い方がわからない?
そこで今回は「お伺い」「伺う」について誰よりも詳しく、かつ分かりやすく解説していきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へお願いします。
伺う・お伺いはどちらも「行く・聞く・訪ねる」の敬語
まず、伺う・お伺いの意味を考えましょう。敬語を考えるときはまず、原型に戻して細かく考えていくのが基本。原型に戻すと「伺う」は「行く・聞く・訪ねる」となり、これの謙譲語が「伺う」となる訳です。
そして「行く・聞く・訪ねる」の中には「訪問する・訪れる/尋ねる・問い合わせする」も含まれますから、企業へ訪問したり、問い合わせをメールでしたりする際に「伺う」を使うのですね。
※謙譲語は「自分の立場を下げることで、相手が自動的に持ち上がる」という敬語。敬語の種類には他に、丁寧語と尊敬語がありますが、長くなりますのでここでは省略しましょう。
「お伺いします」は間違った敬語!だけど慣例でOK
「お伺いします」を細かく分解すると「伺う+お~~する」となります。「伺う」はすでに「訪問する・質問する」の謙譲語なのに「お伺いします」だと…「お~~~ます」も謙譲語だから、謙譲語を2回使っていることになり二重敬語に該当します。
ただし文部科学省の特別ルールで「お伺いします」は慣例として定着しているから使ってもよい、とあります。
※二重敬語とは、一つの言葉に同じ種類の敬語を2回使うことであり、ビジネスマナー違反になる。
※「お伺いします」は二重敬語なのでビジネスマナーを本当に突き詰めていくと、おすすめできる表現ではありません。
お伺い・伺うの類語で誤りがちな敬語
さてここで、あなたへ問題です。「伺う」の類語で間違いやすい表現に「お伺い/お伺いいたします/お伺いします/お伺いさせていただきます/お伺いしたい/伺いたい/伺いたく存じます」があります。一体、どれが正しい敬語の使い方で、どれが間違った敬語でしょうか?
以下の回答で答え合わせをしてみてください。
- 正しい敬語:お伺い/伺いたい/伺いたく存じます
- 間違い敬語:お伺いいたします/お伺いさせて頂きます/お伺いしたい
- 間違いだけど慣例でOK:お伺いします
以上が結論ですが、間違い or 正しい理由を簡単に整理しておきます。
【正】お伺い
「お伺い」を細かく分解すると「伺う+お」となります。伺うは謙譲語です。そして「お」は謙譲語と尊敬語のどちらでも使います。この「お」を尊敬語としてみるのであれば正しい敬語ということになり、謙譲語としてみるのであれば二重敬語になります。ですから、まぁ合っているとも言えますし、間違っているとも言えます。※二重敬語とは、一つの言葉に同じ種類の敬語を2回使うことであり、ビジネスマナー違反になる。
【正】伺いたい
「伺いたい」は細かく分けると「伺う+したい」となり、正しい謙譲語の使い方です。
【正】伺いたく存じます
「伺いたく存じます」は細かく分けると「伺いたい+存じる」となります。原型になおすと「訪問したい+思う」ということになり、2つの言葉、それぞれに謙譲語を適用。正しい謙譲語の使い方です。
【慣例でOK】お伺いします(二重敬語)
「お伺いします」を細かく分解すると「伺う+お~~する」となります。「伺う」「お~~する」の両方とも謙譲語であるため二重敬語に該当。ただし文部科学省によると「お伺いします」は慣例として定着しているから使ってもよい、とあります。
【誤】お伺いいたします(二重敬語)
「お伺いいたします」を細かく分解すると「伺う+お~~いたします」となります。伺うは謙譲語です。そして「お~~いたします」も謙譲語。用法は「お願いいたします」が代表的で、メールの締めなどのビジネスシーンでよく使用する謙譲語ですね。ということで「お伺いいたします」は謙譲語+謙譲語の組み合わせとなってしまい、二重敬語になっています。
【誤】お伺いさせて頂きます(二重敬語)
「お伺いさせていただきます」を細かく分解すると「伺う+お~~させていただきます」となります。「伺う」「お~~させていただきます」の両方とも謙譲語であるため二重敬語に該当する。したがって「お伺いさせていただきます」は間違い敬語。
【誤】お伺いしたい(二重敬語)
「お伺いしたい」は分解してみると「伺いたい+お〜する」となります。「行きたい・聞きたい」の謙譲語「伺いたい」と「お〜する」という謙譲語を同時に使っているため、二重敬語に該当。この使い方はNGです。
参考 → お伺い致します/お伺いします/お伺いさせて頂きます…正しい敬語は?
参考 → 「お伺いしたい」「伺いたい」「伺いたく存じます」正しい敬語は?
「伺う」を使ったメール例文(全文)
さて前置きが長くなりましたが、「伺う」を使った実際のビジネスメールの例文を紹介しましょう。
①問い合わせの例文「伺う=質問する」
件名: ビジネスマナー研修に関する問い合わせ
【 POINT①】件名はメールの内容が分かるようにする。
◯◯株式会社
ご担当者 様
突然のご連絡、大変失礼いたします。
就活大学の就活太郎と申します。貴社ホームページを拝見し連絡をいたしました。
【 POINT②】初めての相手に問い合わせをするときには“突然のご連絡、失礼いたします”を使う。知っている人には“平素は大変お世話になっております”を使う。名乗る際、就活生は大学名を使い、企業の社員は会社名+氏名を使う。
さて首記の件、ビジネスマナー研修に関して以下の点につき伺いたく存じます。
- 募集の締め切り日
- 申し込み方法
【 POINT③】本題に入るときは「さて首記の件、~」とするとスムーズ。
お忙しい中、大変恐れ入りますが、ご連絡のほど何卒よろしくお願いいたします。
【 POINT④】メールの最後は念押し。余計な文章はいれず、例文のように“お願いをするときの決まり文句”を使う。
就活大学
就活学部 就活学科
就活太郎
住所:
電話:xxx-xxxx-xxxx
Eメール:xxxx@xxxx
【 POINT⑤】最後はお決まりの署名。就活生であれば「大学+学部+学科+氏名+住所+電話+メール」で構成する。
②アポイントメントの例文「伺う=訪問する」
件名: 貴社訪問のお願い(転職会社・転職太郎)
【 POINT①】件名はメールの内容が分かるようにする。
○○株式会社
ご担当者 様
突然のご連絡、失礼いたします。
転職会社の転職太郎と申します。貴社○○様からのご紹介で連絡をいたしました。
【 POINT②】初めての相手に問い合わせをするときには「突然のご連絡、失礼いたします」を使う。知っている人には「平素は大変お世話になっております」を使う。名乗る際、就活生は大学名を使い、企業の社員は会社名+氏名を使う。
この度は、弊社サービス「スーパー転職」のご紹介に伺いたく存じます。
よろしければ以下日程のいずれかで貴社へ伺いますが、
ご都合のほど如何でしょうか。
- 12月21日9:00~12:00
- 12月22日13:00~18:00
【 POINT③】アポイントの背景を簡単に説明し、候補日程を挙げる。
お忙しいところ大変恐れ入りますが、
ご検討のほど何卒よろしくお願いいたします。
【 POINT④】メールの最後は念押し。余計な文章はいれず、例文のように“お願いをするときの決まり文句”を使う。
転職会社
転職部
転職太郎
住所:
電話:xxx-xxxx-xxxx
Eメール:xxxx@xxxx
【 POINT⑤】最後はお決まりの署名。就活生であれば「大学+学部+学科+氏名+住所+電話+メール」で構成する。
「伺う」の使い方いろいろ
ところで「伺う」は「行く・聞く・訪ねる・尋ねる」以外にも意味があります。マイナーな使い方ではありますが、念のため例文つきでご紹介します。
- 上司の機嫌を伺う(上司の機嫌を探る)
- 様子を伺う(様子を探る)
- 社長に伺いをたてる(社長の意向を探る、社長の承認をえる)
社会人からの提言①ビジネスメールは補助であり、さほど重要ではない
最後に社会人である筆者からのビジネスメールに関する一言。
ビジネスにおけるコミュニケーションの基本は会話(商談・会議・プレゼン・電話)であり、ビジネスメールではありません。なぜなら、ビジネスで重要なことは決してメールでは済まさないからです。メールでコミュニケーションが全て済むなら、企業は人を採用するのにわざわざ面接を設けたりしません。
ビジネスメールが重要なのであれば「メール・コンテスト」で人を採用すればよい
メールのやりとりだけでビジネスレベルを図って人を採用すればいいだけです。でも実際には、メールは補助的な役割であって重要でないため、企業は面接をして、会話をして、就活生や転職者を採用するのです。
ですから、ビジネスメールは最低限のマナーだけを抑えておけばよく、変に気をつかいすぎる必要はありません。それよりも会話やプレゼンのスキルを磨くほうが重要ですね。
誰とは言いませんがビジネスを勘違いしている既存メディアがいるので、訂正しておきました(disってる訳ではなく、単なる指摘です)。
社会人からの提言②ビジネスメールは簡潔であることが最重要
ビジネスメールは重要ではないですが、ビジネスメールで重要なポイントはあります。それは、メールをビジネスマナーに則って極力シンプルにすることです!長々と丁寧に書いても要件が伝わらないメールであれば、即ゴミ箱行き。相手からの返信を期待できないでしょう。
なぜ簡潔なメールが好まれるのか?私の仕事を例に出して説明します。
たとえば私は毎日、400件以上のメールが送られてきます。営業時間8時間で割ると1時間あたり50件の速度、分速になおすと1分に1件のメールが来ます。
お願いですから、メールは簡潔にしてください!
1日400件のメールを1件ずつ読んでいたら、どうなると思いますか?読むだけで1日が終わるでしょう。
私のような大企業のビジネスマンはゴミのようなメールの処理に毎日、追われています。メールを長々と書かれても読むのに時間を消費してしまい、とてもイライラします。件名しか読まずにゴミ箱送りにしてしまうケースですらあります。
ですから、メール本文ではできるだけ簡潔に要点だけを伝えるように心がけましょう(もちろん、最低限のメールマナーは守ってください)。
社会人からの提言③ビジネスメールは件名で読まれるかどうか、決まる
さて、私のメール処理の話に戻ります。
私へ毎日とどく400件のメールはいちいち開かずに、件名と宛先だけで読むかどうかを判断します。まず宛先に私の名前がなければ、即ゴミ箱行き。次に件名でメール処理の優先度合いを判断します。意味不明な件名だと処理を後回しにするか、ゴミ箱いきにしてしまいます。
採用担当者の場合、就活シーズンにはこれ以上の数のメールを処理しているかと思われます。したがって、件名をビジネスマナーに則って書くことがもっとも重要なのです。
相手に読まれるメール件名の書き方は、こちらの記事(”【完全版】就活メールの“件名”につかう全例文と注意点 – 添削OK”)で解説しています。
まとめ
今回は「伺う」とその派生言葉の使い方と注意点について、これでもかというくらい語ってみました。
この「伺う」はとても便利で、ビジネスメールでは万能に活躍します。
ということで、ビジネスシーンでちょっと普通の言い回しに飽きてきたなぁ~~と思ったら、問い合わせや訪問する際に使ってみてください。ではでは〜〜。