iPhoneに利益を頼りすぎだ!!という株主からの指摘もありますが、実際の所はスマホに利益を頼りすぎている。iPhoneだけでなく中国製の格安スマホ向けでもちゃんと一定のシェアを持っている。
どう考えてもスマホは無くならないでしょうし、今後もIOT、人工知能、自動運転、自動車の家電化などなど…電子部品の需要が爆発的に伸びそうな予感。開発力のない京セラを抜いて電子部品業界No.1になるのは時間の問題です。
《2015年採用実績:学卒文系49人、学卒理系96人、院卒理系N/A》
8. 日本化薬(化学)
化学業界では有名な高収益のニッチ企業。名前の通り、もともとは化薬(ダイナマイト)の専業メーカーでその後、多角化。現在では以下の事業構成となっている。
- 売上: 1,629億円
- 機能化学品688億円、医薬502億円、セイフティシステムズ353億円、その他86億円
- 営業利益(率): 217億円(13.3%)
- 機能化学品63億円、医薬78億円、セイフティシステムズ68億円、その他12億円
- 自己資本比率: 69.3%
- 平均年収: 751万円(平均40.3歳)
- 出所:2016年3月期の有価証券報告書より
現時点では事業内容のバランスがとてもよい。何かがダメでも他の事業で補える。
安定した収益を生むセイフティシステムズ(エアバッグの起爆材料、ダイセルと同じ)は何も変える必要がなく、同じものを同じように供給するだけでよい。今後30年は計算できる事業。
機能化学品はニッチ分野中心。紙・印刷用の材料、ディスプレイ材料などで大手がやらない中小規模の市場を攻めていて安定。ただし飛びぬけた世界トップシェア素材は無く、競合が少ないことで何とかなっている。まさに「世界的スキマ発想!?」。
医薬事業は今後、苦しくなるかも…抗がん剤のジェネリック医薬品で稼いでいますが、大手製薬メーカーがジェネリックに本格参入してきている中、どう戦うか?全く見えない。医薬品はギャンブル的な要素が大きく先行き不安。ただ、すぐにシェアを失うという性格の商品ではないため10年くらいは大丈夫。
総括すると、その他事業に入っている何か(農薬など)をそれなりに伸ばして医薬品の穴を埋め、10~20年くらいは安泰かと思われます。
9. 東亞合成(化学)
東亞合成も化学業界では有名なニッチ企業。
営業利益率は毎年10%前後、自己資本比率も76%と安定感がハンパない。ちなみにBtoBがメインの企業であるが、消費者むけ商品もやっている。「アロンアルファ(瞬間接着剤→アクリル系)」で馴染みのメーカー。
事業の構成とそれぞれの売上・利益は以下のとおり。
- 売上: 1,353億円
- 基礎化学品412億、アクリル製品492億、機能製品153億、樹脂加工264億円
- 営業利益(率): 161億円(11.9%)
- 基礎化学品48億円、アクリル製品52億円、機能製品37億円、樹脂加工20億円
- 自己資本比率: 76%
- 平均年収: 657万円(平均46歳)
- 出所:2016年12月期の有価証券報告書より
事業構成を見ると多彩なポートフォリオを持っているように見えるが、実はほとんどがアクリルモノマーとその派生商品である。したがって、それぞれの事業について細かく見る必要はあまりない。
東亞合成の強みはアクリル系の接着剤(セメダイン、ヘンケルなど競合多数)。国内ではBtoB(UV硬化接着剤など)、BtoC(アロンアルファなど)ともに強い。ただしアクリル系の接着剤はやる気さえあれば誰でも作れる。そして実際、競合は数え切れない(企業が内製しているのも含めると)。
そんな中、なぜ東亞合成は安定して稼ぎ続けられるのか?
理由は以下の3つ。
- 原料(アクリル酸)から最終製品(アロンアルファなど)まで抑えているため利益率が高い。
- 他の接着剤メーカーと違い、アクリル系に特化した専業メーカーである。これまでの技術の積み重ね、ノウハウ、特許の蓄積により競合をリードし安定したビジネスになっている。
- アクリル系接着剤といってもいろいろあり、製品は膨大な数になる。東亞合成はほとんどすべてを手がけている。そのため例えば、自動車むけがダメでも半導体むけで補う、というスタイルで安定している。
文系の就活生にもわかるように説明すると
「簡単にコピーできそうだけど何かちょっと足りてなくて、コピーできない」
それがアクリル系接着剤の技術における特徴。
さらにアクリル系の接着剤市場は、世界的に伸び続ける(最終用途は自動車、スマホ、家電、PC、半導体などなど。使いやすく性能もよいためどんな所でも使われる)。新しい商品も生み出しやすい(アクリルはイジリやすい)。
その中でも技術とビジネスのやり方に優れている東亞合成は、手堅く収益をあげられる企業である。
余談ではあるが、実は電解(信越化学、東ソー、旭硝子などと同じ)もチマチマとやっている。これはなぜ続けているのか疑問。東亞合成クラスの会社ではコスト面でペイしない。他の化学メーカーに売るか、設備廃棄した方がよい。
disっているのか褒めているのかわからなくなってきたが、間違いなく30年後も生き残っている。
その他
実は化学素材メーカーって隠れ優良企業の宝庫だったりします。今回あげた企業はほんの一例ですので思いついたら都度、追加していきます。
まだ情報が足りないというあなたは、以下の記事もご参考にどうぞ。
こんばんは。
いつも化学メーカーに関するマニアックな話題を楽しみに見ております。
業績・規模を考えると日本化薬は日油、日産化学と同等の隠れ優良企業だと思うのですがいかがでしょうか。