現役営業マンによる農薬業界研究2017年版。農薬業界の市場規模、世界・国内メーカーランキング、現状と今後の動向、将来性まとめです。
就活・転職の農薬業界研究のご参考にどうぞ。
農薬業界の世界市場規模2013年(国別)
まずは農薬業界の現状を知るために世界市場規模を見ていく。
※出所:住友化学の中期経営計画。遺伝子組み換え作物を除く。
農薬市場の世界市場規模(国別)は上に示したグラフの通り。念のため、TOP5までを数値化しておく。
- ブラジル|100億ドル
- アメリカ|74億ドル
- 中国|48億ドル
- 日本|34億ドル
- フランス|29億ドル
肉の最大生産地であるブラジルが世界No.1の市場。肉を作るためには穀物が必要で「飼料(穀物) → 豚・牛・鶏の飼育」まで一貫して大規模に手がけるためである。
続くアメリカは飼料だけでなく輸出用の穀物、果実などの一大生産拠点であり、必然的に農薬の使用量も増える。
世界でNo.3の市場である中国は意外な結果。これから伸びるか?
日本は稲に使う農薬の使用量が多く占め(後述)、なんと世界第4位の農薬市場になっている。ただし他の先進国も日本と大差ない。似たようなポジションに多くの国が連なる。
総括すると、農薬市場は先進国での成長は見込めないものの、ブラジル・中国・インド市場で伸びが期待されている。
農薬業界の世界ランキングTOP14社(売上・2015年)
農薬業界の現状を知るためにどのようなプレイヤーがいるのか、見ていく。
※各企業の2016年度決算より抜粋。農業関連部門だけを抜粋している。
続いて農薬市場でのキープレイヤーについて見ていく。売上ランキングはグラフに示した通りであるが、馴染みのない方のために、各企業についてざっくりと説明する。
世界シェア①シンジェンタ ← ケムチャイナが買収
世界No.1のシンジェンタはスイスの農薬・種子メーカー。化学メーカーというよりは、アグロケミカルカンパニーといったほうがよく、農業関連に特化している。ノバルティス(製薬メーカー大手)のアグリビジネス部門とアストラゼネカ(製薬メーカー大手)のアグリケミカル部門が統合して、世界初のアグリビジネスに特化した企業として誕生した。2016年、中国化工集団(ケムチャイナ)により買収された。
世界シェア②バイエル
世界No.2のバイエルはドイツの総合化学メーカー。アスピリン(鎮痛剤)を世界で初めて工業化したメーカー。農薬関連は事業の一部であるが今後、強化していく方針である。その一環として遺伝子組み換え作物の種子メーカー最大手「米モンサント社」を買収計画あり(2016年)。
世界シェア③バスフ
世界No.3のバスフもドイツの総合化学メーカー。農薬関連は世界的な業界再編に置いていかれている状況。
世界シェア④ダウ・ケミカル
世界No.4のダウ・ケミカルはアメリカの総合化学メーカー。2016年、同じくアメリカの総合化学メーカー「デュポン」との総合を発表し、世界No.3農薬メーカーとなる予定。
世界シェア⑤モンサント ← バイエルが買収計画
世界No.5のモンサント社はアメリカの種子メーカー。特に、遺伝子組み換え作物の世界シェアでは90%と驚異的で、もはや一人勝ち状態。種子とセット販売するために農薬も手がけており、除草剤の「ラウンドアップ」は世界的ブランド。バイエルによる買収の承認待ち。
世界シェア6〜10位
世界No.6のデュポンは米国の総合化学メーカー、ダウ・ケミカルとの統合を発表している。
世界No.7のAdamaはイスラエルのジェネリック農薬ベンチャー。
世界No.8のFMCは米国のジェネリック農薬メーカー。
世界No.9のNufarmはオーストラリアのジェネリック農薬メーカー。
日系メーカーNo.1は住友化学で世界No.10。ただし売り上げには飼料(メチオニン)や、その他農業資材も含まれるため、農薬だけの売上はもっと少なく売上1000億円/年と推測。新薬開発だけは継続しているため、いずれは大きく化けるかもしれない(適当)。
外資系化学メーカーについて、ご存知ない就活生・転職者は参考記事にてご確認ください。
農薬業界の市場規模(日本国内)
つづいて日本国内の現状を把握するために農薬市場規模を見ていく。下のグラフは1995年と2015年の市場規模である。※出所:農薬工業会
2015年の農薬市場規模:約3300億円(▲13%減)
グラフで分かる通り、国内市場規模は縮小している。これは種子の改良、国内農業生産の減少、および農薬を嫌う消費者マインドの、すべてが招いた結果である。
使われ方ごとに金額ベースでみると、稲作、野菜、果樹のいずれでも大きく減少し、その他だけが大きく伸びている。これは家庭用で需要が伸びているから、ということのようだ。
農薬メーカーの国内売上ランキング
つづいて日本国内の農薬メーカー・ランキングをご紹介(2016年決算期)。各社の売上には農薬だけでなく、肥料や化学品なども含むため、純粋なランキングにはならない。
- 住友化学|2.1兆円
- 日産化学工業|売上1768億円
- 日本化薬|1629億円
- 日本曹達|1427億円
- クミアイ化学工業|611億円
- 日本農薬|506億円
まぁ、この中で本当にちゃんとした農薬メーカーといえば、住友化学と日産化学工業、日本曹達、日本農薬くらいであり、他は片手間の事業にすぎない。
各企業について、詳しくはこちらの記事でまとめている。
農薬業界の今後の動向と将来性
国内メーカーは「農薬取締法」改正による
国内の「農薬取締法」に守られているうちは何も問題ないだろう。
ジェネリックが上陸する前の医薬業界と同じである。今後、国と農協のバトルに決着がつけば、大きく動く可能性あり。
そうなるとジェネリック農薬(特許切れ農薬)での参入企業が多くなり、競争激化が予想される。とはいっても、農薬のマーケットなんてニッチ市場(国内3300億円)の域を出ないので、大手化学メーカーにとって新たに参入するほと魅力的な市場ではない。医薬と違って参入企業は数えるほどしかいないだろう。
今後20年くらいかけてゆっくりと変化していくものと想定する。
くわえて日産化学工業、住友化学、日本化薬など、他事業が収益の柱である企業は何も問題ない。
海外はジェネリック農薬メーカー台頭
先ほどの世界売上ランキングで示した通り、中堅クラスは、ほとんどがジェネリック農薬メーカー(特許切れ農薬コピー)である。それも最近できた、ベンチャー企業みたいなのも多い。
農産物の輸出国では特に、コストを下げるために積極的にジェネリック農薬を採用している。そうしないと、コスト競争力が保てないから。世界的にこの流れは継続するであろう。
(日本の農業は国とJAがコントロールしているため、どうなるか不明…)
世界的な業界再編も継続
ジェネリック農薬メーカーの台頭により、既得権を得ていた上位メーカーにとってはツライ状況であり結果、業界再編が進んでいる。すでに述べているが、バイエルによるモンサント買収、ダウとデュポンの合併など。ケムチャイナは何がやりたいのか正直、よくわからない。
そして今後も業界再編はさらに加速するだろう。
まとめ
農薬業界は、医薬業界と似たようなところがあり新薬開発が非常に難しい。R&Dの成功確率は10万分の1にも満たない。したがって、もっともローリスクでリターンを得られるのがジェネリック農薬メーカーになる。
私の個人的な意見であるが、ジェネリック農薬なんて国は認可しなくていいと思う。農業は農薬の値段が下がったからといって、決して儲かるようものじゃない。もっと本質的な問題がある(規模の問題、労働力不足の問題など)。
「農家が儲からないのは農薬が高いせいだ!」
「いやいや、肥料が高いせいだ!」
「トラックや重機が高いせいだ!」
「すべて農協のせいだ!」
とかとか。基本、農家は文句しか言わない。人のせいにばかりして反省をしない、工夫もしない。
そして、それを許す国も悪い。
われわれサラリーマンの税金を使って、補助が手厚く支給されるシステムになっている。
農家は完全に甘えている。誰かにタカれば何とかなると思っている。それこそが諸悪の根源である。みんな等しく守るのでなく、しょうもない農家は徹底的に潰し、ちゃんとした農家だけ残すほうが日本という国のためだ。
お怒りごもっともです。
自分は、農業を営んでおりますが補助金で救済というのはいただけないですね。異端視されますが。
稲作は、保護しなくていいと思っています。そもそも、金にならないのをやっても仕方がない、作り手がいなければ、需要と供給の関係で値段が上がるかもしれないですし。
やるだけ損の貧乏くじの産業ですよ。自分は、稲作はマイナスなので止めたいですが、農地放棄できないですから、せめて農転出来れば売れてきれいさっぱりなんですがね。宅地の価値はなくなるでしょうね、だからむやみやたらとさせないのでしょう。