営業職は一般的なイメージとして、「激務・辛い・きつい」仕事だということが定着している。実際、こういったイメージどおりの部分もあるにはある。とくに個人を相手にする生命保険、証券、銀行員などのリテール営業マンはこれに近い部分があるかと。
いっぽうでメーカー営業とか、商社マンとか、企業を相手にする営業職だと世間一般のイメージとはだいぶ違う。
営業職の一般的なイメージ
営業職の一般的なイメージには、以下のようなネガティブなものばかりある。
- 営業ノルマに追われるばかりで辛い仕事
- 残業の多い仕事
- 接待、飲み会の多い激務な仕事
- 上司に詰められて辛い、きつい仕事
- 人見知りには営業の適性がない
- しゃべりの上手な人に向いている
- 体力勝負
- 不要なものでも押し売りする、辛い仕事
- ヒトとしての扱いを受けないから辛い
- 体力のない女性にはとくに辛い
営業職のホンネ、イメージと違うところ
しかしながら実際には、
「どんな業界で、どんな企業で、どんな上司で、なにを・誰に売るか?」
で営業職の仕事内容は大きくことなるし、激務度もぜんぜん違う。具体的に営業職で激務じゃなくて、残業も少なく、就職人気の高い業界には以下がある。いっぽうでイメージどおりになりがちな営業職としては、個人相手の営業があげられる。
- メーカー営業職(とくに素材系)
・食品メーカー営業職、化学素材メーカー営業職、電子部品メーカー営業職、自動車メーカー営業職(ディーラーではなく本体に限る)、非鉄金属・鉄鋼メーカー営業職、その他メーカー(小売ではなく本体に限る) - 鉄道業界の営業職
・JR各社の営業職など - 電力会社の営業職
・東京電力、関西電力の営業職など。オール電化の訪問販売などは外注化しているか、子会社にやらせている。電力会社本体の営業職はやること少ない - ガス会社の営業職
・東京ガス、大阪ガスの営業職など。訪問販売などは外注化しているか、子会社にやらせている。ガス会社本体の営業職はやること少ない
ただしこれは一般論であり、実際には企業の文化、上司によって営業職の仕事は大きく変わってくる。これから就職・転職を考える方については、以下の記事をご参照いただきたい。
営業職の年収はピンからキリまで
営業職の年収はピンからキリまでいろいろある。キーエンスのように新卒3年目で年収1000万円を超える企業(2017年時点)もあれば、年収300万円以下の企業もある。
また成果報酬型(インセンティブ型)の年収体系をとっている企業も多く、その場合には個人の成績や、所属する部課の成績によって年収は大きく変わる。
営業職は総じて、いろいろな手当がつくために同じ企業の違う職種とくらべると、年収は高くなる傾向にある。営業職がもらいやすい手当の種類と、大企業における一般的な金額を以下にまとめておく。
営業職がもらいやすい手当
- 外出手当(外勤手当)
例:1日につき1,000-3,000円 - 国内出張手当
例:1泊につき3,000-6,000円 - 海外出張手当
例:1泊につき5,000-8,000円 - 営業手当あるいは、みなし労働手当、裁量労働手当
例:月3-8万円
月20営業日のうち泊まり出張が7日、外出が7日あるだけで、もらえる手当は数万円/月になる。さらには営業手当・数万円/月も加算すると、普通の営業職は年間100万円ほどの金額を手当だけでもらっていることになる。
これらの手当は原則として非課税であるため、金銭面でのメリットは大きい。ただしその分、ストレスの多い職種であることは否めない。
残業代が一切つかない企業もある
営業職の年収にまつわる注意点として、残業代が一切つかない企業もあるため気をつける必要がある。営業手当やみなし労働手当をだしている企業の多くは、残業代が非常につけにくい雰囲気になり、サービス残業が横行する。
本来であれば、みなし労働で決められた時間よりも多くの残業をしていれば、残業代を別途申請できる。営業手当をもらっていても、残業代は別途申請できる。
ところが「営業は手当もらってるから、残業代は支給しない」という誤った理解をしている上司がおおく存在する。すべての営業マンは、しっかりと残業代をもらう権利を主張するべきである。
→ 年収ランキングにだまされるな!隠れ高収入の化学素材メーカー総合職
→ 銀行員(メガバンク)の年収ランキング。30歳・40歳・50歳の年収は?
営業職の平均残業時間は計算不能
営業職のイメージには「残業が多い」というのがある。
ところが営業職の残業時間というのは、正確には計算できない。「営業職の平均残業時間」というような統計があったとしても100%まちがっている。だれも正確な残業時間を計算したことがないため「営業職は残業が多いか、少ないか」という議論は意味をなさない。
なぜ営業職の残業時間に平均が出せないかというと、以下の部分があいまいだからである。
- 営業職がオフィスで残業した時間を平均の残業時間としたのか?
- 飲み会の時間は平均の残業時間にカウントできてる?
- 外回りや出張の移動時間は平均の残業時間にカウントされてる?
- 休みの日に電話対応したのは平均残業時間にカウントされてる?
- 休みの日のメール対応は?
- 時間外に電話を受けたら平均残業時間にカウントされる?
これらをすべてひっくるめて「営業職の平均残業時間」は出さなければいけない。ところが、そんな細かく残業時間を管理できている人は誰もいない。
せいぜい「オフィスで残業した時間を平均残業時間とする」というのができる最大の努力である。オフィスで残業した時間を「残業時間」と定義したとき、営業職の平均残業時間はきわめて少なくなるであろう。どの企業もほぼ平均残業30時間以内におさまると思われます。
でも出張や外出時の拘束時間も残業としたら、平均の残業時間はどうなるか?人によっては残業時間が月100時間とかになる。
したがって営業職の残業多い・少ない、というのは個人の感覚でモノを言う人が多い(私も含めて)。
営業職には適性など、必要ない
営業職にありがちな勘違いとして、
「人見知りだから営業職はムリだ」
「自分にはぜったいに営業職なんて向いてない」
「人に頭を下げる営業職なんて自分にはムリだ。絶対にやりたくない!」
と考えてしまう就活生・転職者がいる。残念ながら営業職には向き・不向きなど関係ない、適性なんてみる必要もない。売る商品やサービスさえあれば女性であろうと男性であろうと、大卒であろうと高卒であろうと、東大卒であろうと東洋大学卒であろうと、誰にでもできる簡単な仕事である。
営業職として長く活躍するのに必要なのは向き・不向きといった適性ではなく、
「その企業の営業職という仕事に慣れるか、慣れないか」だけである。慣れればたいていのことはどうにでもなるので、適性があるかどうかを心配するだけ時間のムダである。その企業の営業職に慣れなければ、転職すればいいだけである。
事実、私は人見知りであるうえ、話も死ぬほどつまらない人間であるうえ、人と話すことが死ぬほど嫌いな人間であり、一般的にいわれるような「営業職の適性」は限りなくゼロに近い。それでも営業職としてそれなりに成果を出しつづけている。
営業職と他業種との違い
営業職と販売職の違い
営業職は、決まった場所をもたず自ら訪問して商品やサービスを売りこむ。いっぽうで販売職は、決まった場所で、決まった商品やサービスを売る仕事である。前者と後者で大きく違うのは、攻めの営業なのか(営業職)、待ちの販売なのか(販売職)、という点にある。
●営業職の例:
- 証券会社の営業マン
- 銀行の営業マン
- メーカーの営業マン
- 商社の営業マン
- サービス業の営業職
- 保険の営業職
●販売職の例:
- アパレルショップの販売員
- 旅行代理店の窓口にいる販売員
- デパートの売り場にいる販売員
- 化粧品の売り場にいる販売員
- 携帯電話ショップにいる販売員
- ショップの販売職
- 結婚式場の販売員
- ブライダル関連の販売職
- 家電量販店の店頭にいる販売員
- 量販店の販売職
→ 営業職と販売職の違いとは?イチから面接の回答例までわかりやすく
営業職とMR職の違い
営業職であるか、そうでないか、の線引きはシンプルで「価格の交渉をするかどうか」にある。営業職は価格の交渉をするが、そうでない職種は価格の交渉をしない。製薬会社MR職は表むきには価格交渉をしないため、営業職ではない。
営業職とマーケティング職の違い
営業職とマーケティング職の違いはシンプルで、①モノを実際に売る仕事なのか、②売り方を考える仕事なのかにある。①は営業職の仕事であり、②はマーケティング職の仕事となる。
具体的な例としては、アップルストアの店員は営業職(販売職)であり、アップル本社で販売戦略を考える社員はマーケティング職となる。
ただし企業によっては明確な線引きがなく、営業職とマーケティング職がひとつになっている場合もある。