化学素材メーカー総合職事務系の採用人数というのは、どこの会社も驚くほど少ないことで有名です。採用人数の割りには志望者の数が多いので倍率が高く、最難関の狭き門といっても良いかと思います。
もちろんこれにはちゃんとした理由があります。
「BtoBだから」という一言で片付けるのはあまりに乱暴なので、細かく解説していきます。
就活生や転職者のご参考になりましたら嬉しい限りです。
業界最大手の三菱化学でも総合職文系の採用人数は15名
これは公表されている2015年の新卒採用実績です。
業界最大手のメーカーですら毎年、たったの15名しか新規採用をしていないのです。しかも採用実績を大学別で見ると、ほぼ超有名大学出身者で占められています。
化学メーカーも手間が必要な商品と、そうでない商品があります。三菱化学のように、モノづくりの上流に位置する商品(たとえばエチレンなど)が多ければ多いほど、営業マンが必要ないので採用人数も少ない傾向。
一方で化学メーカーの中でも、下流に位置する材料を作っている場合(たとえば繊維など)には、採用人数が多くなる傾向にあります。といっても、文系の新卒採用100名とかになるわけではなく、最大で30名くらいではないでしょうか…。
したがって事務系の就職倍率だけ見ると、化学メーカーは激高です。
理由1:営業マンが少数で済む
これが最大の理由ではないかと思います。化学メーカーというのは、商品のラインナップが少ない上にBtoBの商売が基本ですのでお客の数がとても少ないです。
その上、一旦採用が決まってしまうと問題ない品質のものを安定供給し続けるだけという、とても楽なビジネスなのです。
営業に必要なのは、競合の状況把握と定期的な値下げ・値上げ交渉くらいで、新規商品を飛び込みで売らなければならないことなど、ほとんどない業界です。
従って、営業マンの人数が他の業界と比べると圧倒的に少ないです。例えば、保険・金融業界と比較をしてみると一目瞭然でしょう。ちなみに私の勤める会社では、ひとつの事業(例えばエチレン事業など)にかける国内営業マンの数は多くて5人です。
事務系の仕事の大半が営業系であることを考えると、化学メーカーは営業に手間がかからないので、ほとんど営業マンを雇わなくて良いのです。
※これは商品にもよります。繊維のように末端製品に近ければ近いほど、営業マンの人数が必要。
理由2:間接部門も手間が少ない
これもBtoBだからですね。例えば、CtoCがメインのP&Gなど、末端製品を手がけている会社では営業は当然大量の人数が必要で、さらには間接部門も膨大な人材が必要になってきます。
たとえば、IR広報。化学メーカーは消費者にPRする必要がないので、広告を出す必要がありません。税金対策で妥協のCMをやるだけです。
たとえば、法務部。消費者から直接訴えられることがないので法務といいながら、やることが少ないです。
たとえば、マーケティング。化学メーカーは緻密なマーケティング戦略を構築することなど必要ないです。開発の段階で潜在顧客がすでに決まっていて、PRを頑張る必要が特にないからです。したがって、営業マンがSales & Marketingという肩書きを持って両方やっています。
たとえば、物流部。化学メーカーはでかいトレーラーやタンカーで、ひとつの商品をがんがん運びます。細かい商品がないので、物流に頭を悩ませることが少ないですね。
たとえば、資材調達部。化学メーカーは決まりきった原料を買うだけです。使う原料の品目はもの凄く少なく、ほとんど人が必要ありません。最大5名で十分ですね。
異業種交流会などで全く違う業界の人と話をすると、なじみのない役職ばかりで戸惑います・・・マーケティング戦略チーム?PR担当?化学素材メーカーでは全部営業の仕事です。
理由3:商品の数が少ない
たとえば大手化学メーカーの信越化学工業の場合、塩ビ事業、半導体ウェハ、シリコーン事業、その他事業という4つの事業しかありません。しかも、それぞれの商品が汎用的なので商品の種類も少なく、ビジネスのオペレーションが他業界と比べると効率的で人が必要ないのです。
化学メーカーのビジネスは、ざっくりとやって、ざっくりと売る感じ(デカイ工場を作って大量に作り大量に売る)。完全な装置産業ですね。