【経験者談】IT企業の営業が激務ブラックと言われる5つの理由

働き方改革を推進する社会の流れがある中で、いまだにブラックと呼ばれる企業が後を絶ちません。

中でもブラックの代名詞ともいえるIT業界では、公になっていない激務な環境があるのが現状です。

クラウドを利用した画期的なサービスが立ち上がり、派手な経営者が目立つIT業界ではありますが、実態はどのようになっているのでしょうか。

ここではIT企業の営業職にスポットを当て、激務ブラックと言われる5つの理由について解説していきます。

IT企業の営業って一体なにしてる?

まずIT企業の営業についてご存知ない方のために簡単に。

仕事内容などをざっくり解説します。

IT企業とひとくくりにしても、販売している商品は様々です。

お客様は法人である場合もあれば、私たちのような消費者である場合もあります。

もっとも激務ブラックなのはSIerの営業

様々なジャンルがある中で、不本意にも激務ブラックが一番当てはまるシステム開発を本業にしているIT企業を中心に考えていきます。

システム開発会社のことを、SIer(えすあいあー)と言います。

大手だとたとえばIBM、オラクル、SAP、富士通、NECなどあり。

中小も合わせると数え切れないくらいの会社がありますね。

お客様が手で実施している業務をシステム化することで簡単にできるようになったり、業務を効率化したり、またリードタイムの短縮などを目指してシステムの導入をします。

【実際の例】IT企業における営業トークの進め方

ただ、お客様を訪問して「システムを作りませんか?」と提案しても、「そうですね、ぜひ!」となるお客様はいません。

IT企業の営業は、お客様に現状の業務をヒアリングしていく中で、隠れた課題を見つけていくことから始まります。

そのため、販売営業よりも多角的な知識が必要であり、話す内容もお客様の反応を見ながら瞬時に構成していかなければなりません。

IT企業の営業と人事担当者とのやり取りを例に出してみます。

  • IT企業営業「そろそろ夏休みになりますが、御社はお盆休みは長いのですか?
  • 人事担当者「いえ、自由に取るようになっています」
  • IT企業営業「あ、そうなんですね。では勤怠システムとかの入力も特殊なんですか?
  • 人事担当者「実はうちはまだタイムカードなんです。特殊な夏休みに対応しているシステムがなかなかなくて」
  • IT企業営業「もう少し詳しくきかせていただけませんか?

といった具合です。

最初から「システムにできるものはありませんか?」と切り出しても人事担当者は様々な業務を実施しているため、パッと思い浮かびません。

話しながら相手の悩みを掘り起こしていくことがIT企業営業の面白さでもあります。

1. すぐに数字が上がらない

IT企業営業が激務ブラックと言われる理由その1

数字がすぐに上がらない

システム導入となれば、大規模なプロジェクトになることが多く、営業の発生から受注までは長期間に渡ります。

水が欲しいお客様には、美味しさと価格をアピールすることでしょう。

ただしシステムの場合は、価格だけが全てではなく、またお客様が最初望んでいたものと全く違うものになることがあります。

先ほどの例であれば、勤怠の課題を解決する提案をする際に、純粋に勤怠のシステムを提案するのか、またはタブレットなどの活用を提案するのか、もしくは勤怠のやり方はこれまで通りにして、他の圧迫している業務を効率化するのか、などパターンが多く存在しています。

いわゆる、IT企業営業とは、ソリューション(悩みを解決する)営業なのです。

販売するものがお客様の悩みを解決するものであれば、何を提案しても良いのがIT企業営業の楽しいところではありますが、ゆえに受注までの道のりは長くなってしまいます

またシステム開発には多大な費用がかかります。

提案しているお客様側の決裁は、社長までいくような金額のものが多く、時間をかけて担当者を説得したとしても、鶴の一声でひっくり返ることがしばしば起こります。

それなのに営業ノルマに対するプレッシャーはキツイ

営業ですから、当然のことながら会社からは数字を持たされています。

自社の経営者や役員は受注が簡単ではない状況を理解しているはずなのに、「数字をあげろ」とプレッシャーをかけてきます

決算の締めまであと1週間しかないといった状況で、足りない数字を補うことは非常に難しく、精神的なプレッシャーがかなり大きくなります。

ノルマに対するプレッシャーのかかり具合は会社や上司によります。

傾向として外資系企業はノルマにとても厳しく、達成しないとヘタしたらクビになります。

日系企業はまぁそれなりに耐えられる範囲かと。

※ただし本当に企業の文化や上司によります

2. トラブルが果てしなく多い

IT企業営業が激務ブラックと言われる理由その2

トラブルが果てしなく多い

システム開発では、お客様に使っていただくまでに様々なテストを実施します。

しっかりとしたシステムであれば、設計からプログラミング、テスト、ユーザー検証と流れが進んでいくことになります。

しかし。

テストをしっかり実施したつもりでいても不具合(バグ)は起こるもので、場合によっては休みの日だろうが深夜だろうが営業の電話が鳴りつづけます。

システムを実際に開発したのは自分でなくても、会社の顔として謝罪をし、対応の指揮を取らなければなりません。

システム開発にトラブルが多いのは、納期が短いからといった理由が多いです。

システム開発は、受注までも時間がかかりますが、開発を開始してから導入するまでにも長い時間がかかります。

実際にあった例

例えば・・・

「このシステムであれば、6か月は必要です」とお客様に伝えていたとします。

営業を開始したのが4月、見積と一緒にスケジュールの提出をしたのが7月としましょう。

お客様は次の4月に稼働する想定だったので、充分に間に合う期間です。

ただし、見積額が想定より安いことは少なく、金額を下げるために機能を削減した提案に直したり、値引き交渉があったりして、見積に1発でOKが出ることはありません。

気がつけば、リミットである9月が過ぎ、システム開発に必要な期間が圧迫されていきます。

完成させるためにはエンジニアが土日出勤と徹夜をする必要が出てきて、もちろんそんな状況で出来上がったシステムの品質が保たれるわけがありません。

結果、急いで作り上げたシステムには不具合がたくさん残り、無茶なスケジュールであったとしても、トラブルの責任はシステム会社、もっというと担当営業にのしかかってくるのです。

ITシステムのバグは謝罪じゃ済まされない

IT企業の営業が扱っているシステムの多くは、トラブルが起こった時に謝罪だけで済まないものが多々あります。

請求管理システムであれば、お客様の先にいる仕入先にまで迷惑がかかり、送った請求書を全て作り直す作業をしなければなりませんし、入金済みであれば、返金処理に対応しなければなりません。

導入したシステムのセキュリティに問題があった場合、個人情報の流出といった重大インシデントにつながることも考えられます。

トラブル頻発、でも即刻なおす必要あり=罰ゲーム

上司にトラブルの報告をしたら「急いで何とかしろ」との答えが返ってきて、エンジニアに相談をしたら「それを直すのには時間がかかります」といっ突き返されます。

こんなことがしょっちゅう起こるのだから、たまったものではありません。

トラブル頻発、でも即刻なおす必要あり。

それが何を表すかというと…

確実に精神的に追い詰められます。

そして深刻なトラブルの時には休みも寝る時間もなく、でも残業はつけるなと怒られるのがIT企業の営業なのです。

3. 教育体制が整っていないから、場当たり的な仕事で余計に忙しくなる

IT企業営業が激務ブラックと言われる理由その3

教育体制が整っていない

IT企業で働いている人たちは常に忙しくしています。

面接では「未経験でも大丈夫」と書かれていても教育体制が整っていない事が多く、右も左も分からない中で仕事をしていきます。

仕事の進め方が分からなければ、仕事がうまくいくわけありません。

それでも「何とかしろ」という文化が作られていることがIT企業には多くなっています。

こちらから「教えてください」と相談をしても「忙しいから自分で考えろ」と言われ、でも仕事でミスはしてはいけない環境で働くことになります。

未経験でもOK!の求人に惑わされてはいけない!!

ところで。

未経験でもOK!の求人に惑わされてはいけない!!という話を少し。

「未経験でも大丈夫」と採用の募集要項を出しているIT企業が増えてきているのはなぜかというと…

人材不足が顕著に表れているからです。

社会はIT化が進んでいく中で、人の手が足りていない現状があります。

企業は何とか人を囲い込みたいと考えるようになり、結果、未経験でも採用をしていかなければならないと考えるのです。

これまで他の業界で営業経験があった人でもIT企業の営業はまた違ったスキルが必要になるため、これまでのように営業をしても思い通りにいきません。

出来上がった商品を販売するのではなく、受注をしてからオリジナルでシステムを作りますので営業でもある程度のIT知識がないと、お客様に提案ができないのです。

4. 周りで辞める人が多い、離職率高い

IT企業営業が激務ブラックと言われる理由その4

周りで辞める人が多い

IT企業で手が足りていないのは、離職率の高さも要因です。

IT企業の営業担当者は、こういったブラックな環境が嫌になり違う業界に流れていきますし、エンジニアは残業が出ない会社よりも残業が出る会社、過重労働の会社よりも定時で帰ることができる会社を求めて退職をします

大手企業の採用ハードルが下がり、これまで自分のスキルを認めてもらえなかったエンジニアでも大手企業へと転職できるようになりました。

ITエンジニアが辞めると営業にシワ寄せがいく

受注したシステムを作ってくれるのはエンジニアです。

IT企業の営業担当にとって、エンジニア不足を無視することはできません。

たとえば…

1千万円のシステムを受注して5名のプロジェクトが立ち上がったとしましょう。最初は順調に進んでいたプロジェクトでしたが途中で1名が辞めてしまいました。

そのため、エンジニアのリーダーが「納期には間に合わない」と言ってきました。

お客様と納期の約束をしているのは営業ですから、たまったものではありません。お客様に相談をしたら納期は延期できないと言われ、その回答をエンジニアに伝えたら「でも、無理です」と断られる。

こういった板挟みの中で、IT企業の営業は精神を削っていくことになるのです。

ブラックというか激務というか、とにかくすり減る仕事なのですよね。

ITエンジニアとのバトルですり減る

IT企業では、営業とエンジニアのコミュニケーションが必要不可欠ですが、犬猿の仲になっている企業も少なくありません。

お互い目指しているものは「お客様が便利になるもの」だったとしても主張は違ってきます

エンジニアからすれば、「いつも無理な注文をしてくる」と営業を見ているのです。

それくらい断ってくださいよ、何でこんなに安いんですか?と上から目線で言ってくるエンジニアは、これまでの営業の苦労なんて気にもしません。

逆に営業からすれば「これくらいの修正でお金取るのかよ」とか「不具合を出したのはお前なんだから、お前が謝れよ」とエンジニアへの不満が貯まります

お互いにいがみ合いながら、でも時間は待ってくれることはありません。

上司も会社も「普段からあることだ」と大して関心もせずに、「納期は守れ。仕事は取れ。」と命令だけが下りてくることになります。

人が足りない事が人の心を締め付けていき、悪循環の中心でIT企業の営業は振り回されることになります。

5. 下請け、孫請けが多い

IT企業営業が激務ブラックと言われる理由その5

下請け、孫請けが多い

IT業界では、お客様からの仕事を請け負った会社だけで完成させるのではなく、下請け、孫請けと仕事を下ろしていくのが一般的です。

下請け、孫請けの企業からすれば、いつかは直請けの仕事がしたいと思っているのでしょうが、目先の利益のためには同業界から仕事を請けることを止めることができません。

もし下請けや孫請けがメイン業務となっている企業の営業となった場合は、振る舞い方も少し変わります。

仕様変更であちこちに頭を下げなければいけない

システム開発では、仕様変更が日常茶飯事です。

お客様は出来上がるであろうシステムをイメージでしか捉えることができていません。

そのため、出来上がってきたシステムを実際に使ってみると「思っていたよりも使い勝手が悪い」と感じてしまうことが多いのです。

そこで納期や費用と相談ができたらいいのですが、なかなか難しく、結果親のシステム会社から無茶な要求が降ってくることになります。

直接お客様とのやり取りではないため、断るのも難しく、一度断ってしまったら仕事が回ってこない可能性もあります。

これまでにも説明したように、仕様変更のためにエンジニアに対して頭を下げ続けなければならないのです。

自分は何も悪くないのに、いろんな人に頭を下げていると精神的にツラくなってきます。

仕事が無いと全て営業担当の責任になる=罰ゲーム

また。

親にあたるシステム会社との付き合いが長くなってくると、一般企業に対して営業を仕掛ける時間が無くなっていきます。

そういった状況で仕事に隙間ができてしまうと、一気に数字が悪化してしまいます。

これまで種まきもしていませんから、新しい仕事を取ろうにもなかなかうまくいかず、これまで調整ばかりさせていた上司からは理不尽に怒られることになります。

社内には手が空いているエンジニアが増えていき、会社の収支が悪くなったのは全て営業担当の責任にさせられてしまうのです。

まとめ

IT企業の営業と聞いて、これまで華やかなイメージを持っていた人も、激務ブラックの現状が見えてきたかと思います。

IT企業の営業で成功をしたいのであれば、まずは失敗しない会社選びから考えるようにしましょう。

募集要項に書いてあることを全て信じるのではなく、面接の際にストレートに聞くようにするのです。

激務ブラックの企業の裏では、やりがいのある仕事を、長く続けられるIT企業がたくさんあります。

自分が成長をするためにも、精神的なストレスをためないためにも、自ら会社を見極める力が必要なのです。

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