激務ブラックと聞いてまっさきに思い浮かぶ職種と言えば、ITエンジニアではないでしょうか。
ITエンジニアは「きつい、厳しい、帰れない」の3K職種と言われています。
これっていったい何故でしょうか?
そもそもなぜITエンジニアの仕事は激務ブラックの代表選手のように語られるのでしょうか?
ITエンジニアの数は年々不足し続けているのにも関わらず、AIやIoTといった技術の発展は歩みを止めません。これがザックリとした理由ではありますが。
ここではもう少しくわしく。
ITエンジニアがなぜ激務ブラックと言われるのか、業界経験者がその理由を7つに分けて解説していきます。
これからITエンジニアに就職・転職をお考えの方は、ぜひご参考にしてみてください。
ITエンジニアって一体なにしてる?
まずITエンジニアについてご存知ない方のために簡単に。
仕事内容などをざっくり解説します。
ITエンジニアとは?
ITエンジニアとは、システムエンジニアやネットワークエンジニアなど、IT関連の仕事に絡む技術者の事を言います。
身近にある様々なシステムの裏には、必ずITエンジニアが存在しています。私たちの生活が便利で豊かになっているのは、ITエンジニアのおかげといっても過言ではありません。
ITエンジニアは、お客様の課題を解決するためにシステムを作り込むのが仕事です。1つのシステムを完成させるまでには、かなりの時間がかかります。
【例】コンビニのレジシステム
例えば、コンビニにあるレジを思い浮かべてください。
私たちは欲しい商品を手に取り、レジに持っていけば、バーコードを読み込んでもらって合計の金額が分かります。
コンビニのレジには、バーコードに対する商品の名前と価格が設定されており、新商品が発売される度に、レジに登録をされていきます。
実際には1店舗ごと商品を登録しているのではなく、本社にあるコンピュータ(サーバ)を修正すれば、全国に何万とある各店舗に商品の情報が登録されるようになっています。
この仕組みを作るためには、
- システムの要件をまとめ、
- 細かい設計からプログラミング、
- そしてテストを繰り返していくことになり、
決して1、2か月で完成するものではありません。
ITエンジニアは、お客様の要望をうまくまとめ、スケジュール通りにシステムを完成させなければなりません。システムを導入することで仕事が楽になったり、売上が伸びたり、システムを開発するためにかかった費用以上の効果を出すことが目的となります。
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さて前置きは以上。
ここからは、ITエンジニアが激務ブラックと言われている理由についてまとめます。背景を理解することで、ITエンジニアが置かれている現状が見えてくるようになります。
1.人手不足
ITエンジニアが激務ブラックと言われる理由その1
「人手不足」
冒頭でもお話ししたように、現在はITエンジニアの数が根本的に不足しています。
なぜITエンジニアが不足しているのか?
ITエンジニアが不足している理由は様々ですが、理由は大きく以下2つに集約されます。
- IT技術の多角化で仕事は増えるいっぽう
- 人気がない職種であり、仕事は増えるのに人はなかなか増えない
一昔前までは、ITエンジニアの多くが役所や企業に導入する大型基幹システムの開発に従事していました。パッケージ商品では対応できないようなシステム要件が多く、一から作り上げるものがほとんどだったのです。
それが今、スマートフォンの中には様々なアプリがあり、どのお店に入ってもシステムが活用されています。居酒屋での注文もタブレット1つでできるようになっています。
IT企業は、人工知能のAI開発や電化製品が相互につながるIoT開発に力を入れるようになり、クラウド型のソリューションを提供している企業も年々増えています。
ITエンジニアの数以上に、社会に必要とされているシステムが溢れかえっていることが要因の1つです。
人手が不足しているのに不人気職種という悪循環
またITエンジニアのイメージが「悪く」広まったことで、ITエンジニアになりたいと思う人が減っていることが挙げられます。
- サービス残業が多く、
- 土日も休みが無い、
- 納品前には会社に泊まりこまなければならない、
といった悪い噂は、これから新社会人になろうとしている学生にとってインパクトがあります。
人手不足になると、1つのシステム開発プロジェクトにかけられる人数が制限されます。
本来なら10人でやる仕事を5人でやらなければならなくなった時、1人に与えられる仕事量は増え、最初から残業や土日出勤が確定している状態でプロジェクトをスタートされることになるのです。
2.人手が足りないのに納期厳守=激務ブラック
ITエンジニアが激務ブラックと言われる理由その2
「人手が不足しているのに納期を厳守しなければいけないこと」
ITエンジニアが常に意識しなければならないのが「納期」です。
それなのに顧客は短納期をもとめる
例えば、あなたが発注側の担当者だとして、システム会社に対して仕事の依頼を出すところをイメージしてください。
あなたの会社では、見積書に押印してもらうためにエクセルで作成した見積書を印刷し、複数名いる上司の席を回って承認をもらい、最終的に管理部門で押印をもらうという流れになっていたとしましょう。
とても面倒で時間もかかるため、システム化したいとIT企業へ要望を出しました。
似たようなことができるパッケージ商品もありますが、利用者が多く他にも欲しい機能があったため、一から作る必要があります。
一体、どれくらいの時間がかかると思いますか?
- ITエンジニアは要件を聞き、
- 見積書のフォーマットを調整したり、押印のルートをヒアリングしたりします。
- さらに企画書にまとめ、
- 要件書を作成し、
- サーバの選定や技術者の確保をしていきます。
- 客が求めるシステムを作り上げるために、打合せは何度も繰り返さなければなりません。
これだけ多くのプロセスが必要となるため、どれだけ短く見積もっても半年〜1年はかかる案件です。
ところが。
発注者側にとって1年という期間はとても長く、発注担当者の上司に相談をした際に、「○○までにやれ。できないならこの話は無しだ」などと言われ、IT企業に対して厳しい納期の要求をせざるを得なくなるのです。
ITエンジニアが潤沢ならいいけど…人手不足で一人あたりの負荷が大きくなる
で。
ITエンジニアが潤沢にいればたとえ短納期であろうと何とかなります。
ところが実際には人手不足であるため、短納期で仕上げようとすると一人あたりの負荷が大きくなります。
1日当たりに働く時間は長くなり、激務の日々がスタートすることになるのです。
3.仕様変更がたびたび起こる
ITエンジニアが激務ブラックと言われる理由その3
「仕様変更がたびたび起こること」
システム開発において、仕様変更は起こりうるものです。
納期に向けて、パツパツに立てているスケジュールがある上で、仕様変更が起こるわけですからたまったものではありません。
まるで発注者の奴隷のよう
特に。
一番厄介なのが「最初にこれでいいって言ったじゃないですか」のパターン。
先ほどの見積書作成の例であれば、「上司が会社を辞めることは考えなくていい」と言われたのでそのまま設計をしたのに、「会社を辞める時は、他の人に引継げるようにして欲しい」といった要望を後で出してくるような場合です。
こうなると交渉をいくらしても「言った/言わない」になって平行線となり、結局、発注者の要望に合わせてやらなければならなくなるのです。
これではまるで奴隷のようです。
議事録をつくって必ず発注者にシェアしておくこと!
仕様変更を起こさないために必要なツールが「議事録」です。
お互いに打合せで決まったことは、議事録として残しておき、面倒ですが先方の押印を常にもらうようにしておきましょう。
議事録さえあれば、先方も無茶なことは言えなくなりますし、「今回は決めたことなので、次回の改訂にしませんか?」と二次開発の受注につなげることも可能になります。
仕様変更を起こさないための施策は、各ITエンジニアの永遠のテーマです。
発注者は画面を見ていないわけですから、設計段階にいくら説明をしても頭の中にイメージができません。
対策として、システムを組み込んでいない画面だけ先に作って確認してもらう方法や、設計のプロセスを簡素化して仕様変更に余裕を持たせる方法など、ITエンジニアは日々工夫を積み重ねているのです。
4.子請け、孫請けが多い
ITエンジニアが激務ブラックと言われる理由その4
「子請け、孫請けが多いこと」
大きいシステムになればなるほど、子請け(二次請け)や孫請け(三次請け)が多くなるのがIT業界の特徴です。
とくに中小IT企業は、大手企業の奴隷となって働く
中小企業のシステム会社であれば、直接お客様とやり取りをするよりも、大手ITベンダーから仕事をもらうことが多くなります。
これまでに説明をしてきた納期調整や仕様変更のやり取りの場に参加することができず、上の会社から言われた通りにやらなければならなくなるのです。
自分たちの意見を伝えることができず、ただ言われた通りにやらなければならない環境では、ものすごくストレスが蓄積されていきます。
激務とかブラックという次元ではなく、まるで元請け企業の奴隷のようです。
さらに少ない予算でやらなければいけないから、人を避けない
また、予算に関しても厳しくなります。
たとえば。
一次請けの企業が100万円で受注した場合、二次請けの企業は80万円、三次請けの企業は60万円と間の利益を抜かれた状態で発注されます。
どれだけ完成したシステムが大きくても、売上が少ないのであれば給料を高くするわけにはいきません。
ITエンジニアを大量に投入するわけにもいきません。
中小は営業力がないから、直請けの仕事を取れない
それなら直請けの仕事を取ってくれば?
となるのですが、中小のIT企業は営業力が弱く、新規にシステム開発の仕事を取ってくることは簡単なことではありません。
親企業から発注をもらうビジネスモデルを構築しておけば、仕事は次々にやってくるため、自社のITエンジニアの手が空くことがありません。
経営者にとってITエンジニアが暇になってしまう状態が一番怖いため、直請けのビジョンは持っていても簡単にこのビジネスモデルから抜け出すことができないのです。
5.歴史が浅い
ITエンジニアが激務ブラックと言われる理由その5
「歴史が浅いこと」
IT企業と言えば、激務ブラックのイメージとは相反して、一昔前に流行った「ヒルズ族」のような夢のあるイメージも存在しています。
システムは形のあるものではないため、パソコン1台があれば作り出すことができるメリットがあり、夢と情熱を持った若い経営者が多く誕生しました。
そのため、歴史がまだ浅いベンチャー企業がたくさんあり、経営者の情熱だけがエンジンとなっているようなIT企業が存在しています。
とくにベンチャーIT企業のエンジニアはツライ
で問題は。
このようなITベンチャー企業のエンジニアになった場合、とくにツライ事態におちいる可能性が高くなります(もちろん経営者によりますけど)。
起業するくらいですから経営者はとても仕事ができ、仕事に対する意識や社員に求めるレべルも高くなります。
経営者が求めている成果物を、求めるスピードで実現しようと思っても、ITエンジニアはついていくのがやっとです。
「これ、明日までに作っておいて」なんて依頼は日常茶飯事であり、「明日までにはちょっと・・・」と返事をしても経営者にはできない理由が分からないのです。
作って欲しい内容も全てを言いませんし、分からないなら自分で調べて考えて、のスタンスです。
ベンチャー企業ならではの面白さも存在しているのですが、売上が安定していなければ、激務の中で収入が増えない状況が続くことになってしまいます。
6.トラブルが多い
ITエンジニアが激務ブラックと言われる理由その6
「トラブルが多いこと」
ITエンジニアは、常にトラブルと背中合わせです。
先に説明をしたように、仕様変更が頻繁に起こり、納期調整ができない状況で品質が良いものを作るなんてできっこありません。
納期は待ってくれないし追加の費用ももらえない、という厳しい状況であったとしても、システム不具合が発生すればお客様に怒られ、すぐに対応しなければなりません。
ITエンジニアからすれば、「そりゃあれだけ雑に設計をしたらトラブルは起こるよな」と考えるようになり、同じ状況が続くことで「トラブルは起こるもの」と割り切るようになっていきます。
トラブル対応は日夜問わず行われる
システムを導入したら、保守契約を結ぶのが一般的です。
ただし、システム不具合のようなIT企業側に責任がある場合には、保守契約で結んだ受付時間など意味を成しません。
朝早くだろうが夜遅くだろうが、システムに不具合が出れば対応しなければならないのです。すぐに原因が分からない時は地獄で、お客様からのプレッシャーを受けながら不具合の修正に取り組まなければなりません。
違う仕事をしながら、過去の納入システムのトラブル対応もする
さらに悪いことに。
導入後、しばらく経過してから不具合が見つかった場合、ITエンジニアは次の違う仕事を始めています。
新しいプロジェクトで過密スケジュールを組んでいる中、前プロジェクトのトラブルの収束も並行して行うことになります。
そうなると、新しいプロジェクトの品質が落ち、同じような状況に陥ってしまいます。
「仕様変更が起こる→納期が厳しくなる→品質が落ちる→次のプロジェクトの品質も落ちる」
といった悪循環に入ったら、抜け出すことは容易ではありません。
7.仕事の集中化
ITエンジニアが激務ブラックと言われる理由その7
「仕事の集中化」
ITの技術が多角化しているということはシステムに使われている技術構造を理解できる人もバラけてしまうことになります。
システム固有のITエンジニアが偏ることで、出来る人に仕事が集中化してしまうようになり、全てのITエンジニアに対して効率的に仕事を割り振れなくなってしまいます。
結果、1人にかかる負担が増えて、激務の状況を作り出してしまうのです。
システムコストを落とすためには、システム開発におけるフェーズを削減するしかない場合、丁寧な設計書が揃っていないことも属人化の要因となっています。
また導入までにしっかりと設計書を作り込んでいたとしても、システム改訂の度に修正をかけなければ意味がありません。
設計書修正の作業は後回しになりやすく、そのまま放置していると設計書と実際に稼働しているシステムの内容に乖離が生まれます。
担当外のITエンジニアには分からないことが多すぎて、代えが効かない
仕事の集中化によってなぜ激務ブラックな状況になるかというと…
設計書があっても当時担当していないエンジニアには理解できない、または齟齬が生じてしまうことになり結局、担当のITエンジニアがすべて責任を持って進めないといけないから。
納期が迫っていると休みも取れません、残業も増えます。
仕事が出来る人に仕事が集中し、激務ブラックの仕事環境に嫌気がさすと、モチベーションは低下していき、他の企業への転職を考えるようになります。
まとめ
ITエンジニアの仕事はこれからも増加していく傾向にあります。
今のシステム開発手法だけでは、人手不足の限界を迎えることになるでしょう。必死に仕事をしていても、一度悪循環が始まってしまうと、元の状態に戻すのには時間がかかってしまいます。
ITエンジニアとして仕事を楽しく続けていくためには、現状の課題点と真摯に向き合い、全く違った発想でのプロセスを考えていく必要があります。
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