「拝見」の意味は「見る」+「拝む」であり、「見る」の謙譲表現ですが…。たしかに「メールを拝見しました/いたしました」って「メールを見ました」ということであり、意味としては通じます。
ただ「拝見」と「受領・拝受」とでは、もともとの意味がちがうのでご注意ください。
たとえば「資料を拝見しました」だと「資料を見ました、読みました」の意味であり、「資料を受領いたしました = 資料を受け取りました」とは意味が異なります。
拝見と拝受・受領の違いは「見るほうは=拝見、受け取るほうは=拝受・受領」となります。ご留意ください。
「領収いたしました」も「拝受」とは違う
普段なじみのある言葉に「上記、確かに領収いたしました(領収書の下のほうに書いてある)」という表現がありますが、これってどういうことでしょうか?
言葉の意味としては領収も受領・拝受も「受け取ること」ですが、何を受け取るか?という点において、使い分けされます。
「領収する」は、ニュアンスとしては代金とかお金を「受け取る」です。
「拝受する」は、どんなものであろうと広く使えて「受け取る」の意味です。
ところがレシートに「拝受書」とは書かず「領収書」と書きますよね。逆に「メールを領収しました」という使い方もしません。メールを受け取ることはあくまで「受領・拝受」であり、お金を受け取ることは「領収」なのです。
このあたりの微妙な使い分けは、シーン別に慣れていくしかないですね…。
「頂く(いただく)」も「拝受」とは違う
また、間違った敬語の解説に「拝受」の謙譲語は「いただく」としている人がいます。
これは100%間違いなのですが、「拝受いたしました」の類語として「いただきました」が含まれるのも事実です。たとえば「メールを拝受いたしました」「メールをいただきました」だと、どちらも「メールを受け取ったんだな」ということが分かります。
ところが「商品を頂きました」「商品を拝受しました」を見比べてみるとどうでしょう?
「商品をいただきました」では「タダで商品もらったのかなぁ?」ということを想定しますが、「商品を拝受しました」では「商品を受け取りました」の意味となります。
「商品をいただきました」では「受け取った」の意味にはどう曲解しても、なり得ません。以上のことから、「受け取る」の謙譲語を「いただく」とするのは間違いだとわかります。
ビジネスメールでは丁寧語よりも尊敬語・謙譲語を使う!
ビジネスメールでは丁寧語はあまり使わず、尊敬語・謙譲語を使います。
これは丁寧レベルの問題で、
丁寧語 < 尊敬語・謙譲語 となるからです。
丁寧語は「です・ます」のことですが、ビジネスメールで使うとかっこ悪くなるのでご注意ください。たとえばメールの締めに丁寧語「よろしくお願いします」ではおかしいわけで、謙譲語「よろしくお願い致します」「よろしくお願い申し上げます」とします。
ちなみに「いたします」は「する」の謙譲語+丁寧語「ます」、
「申し上げます」は「言う」の謙譲語+丁寧語「ます」です。
他にもたとえば丁寧語「お礼します」はおかしい訳で、謙譲語「お礼申し上げます」とか、
丁寧語「訪問したいです」ではなく、謙譲語「伺いたいです」「伺いたく存じます」を使いますね。
ビジネス会話では丁寧語でもまぁOK
ところがビジネスメールではなく、ビジネス会話や電話であれば、丁寧語でもまぁ大丈夫です。それは謙譲語や尊敬語の表現が、あまりに発音しにくいから。普段の会話で「お願いいたします」をあまり使わないように、ビジネス会話でも「お願いいたします」よりも「お願いします」を多く使います。
このあたりは相手のポジション(どれくらい敬意を表するべきか?)に応じて変わるため、一概には何とも申し上げにくい部分です。
敬語って、自分のポジション、相手のポジション、場の雰囲気、相手との関わり度合い…などなど、いろいろなことを考えながら丁寧レベルを考えて使うべきものなのです。
「このときは絶対にこうだ!!」という答えはありません。あくまでも「状況に応じて、相手に失礼にならないように敬語を使う」、これが答えです。
就活・転職メールではどのくらい丁寧であるべき?
相手によって敬語の丁寧レベルを変えるのは、礼儀として心得ておきたいところですが、悩ましいのは就活・転職メールの丁寧レベル。
丁寧すぎれば「慇懃無礼(いんぎんぶれい)=丁寧すぎて、逆に無礼だと感じてしまうこと」になってしまいます。
たとえば、私はメーカー営業ですがルート営業がほとんど。したがって、ほとんどの客先で顔なじみの相手としかやりとりしません。こういう場合、かしこまり過ぎると相手との距離感が開いてしまいます。ところが、近すぎると「親しき仲にも礼儀あり」に反してしまいます。
そこで、社内で上司に使うくらい~ややオフィシャルな丁寧レベルを心がけます。
就活生の場合は、まだ若いですから人事担当も「ビジネス敬語を使えない」のが前提でメールなり会話をしています。したがって、あまりにかしこまり過ぎたり、あまりに謙りすぎるのはどうかなぁ…と思います。
転職の場合は、もうビジネスパーソンとして認められているわけですから、もっとも丁寧な対応・ビジネス敬語を心がけたいところですね。
そう考えると、就活生の場合は「受領いたしました」でも十分に丁寧な対応と言えますし、転職者はもう少し気をつかって「拝受いたしました」とするのがベターかと思われます。
目上の人に使える?間違いやすい敬語10選
目上の人やビジネスメールで使うかどうか、よく迷う表現としてはたとえば以下のようなものがあります。
- ご活躍を期待しております
→「ご活躍」「ご活躍を期待しております」目上の方への正しい使い方 - お疲れ様です・ご苦労様です
→目上の人に「お疲れ様・ご苦労様」は失礼?言い換えと正しい使い方 - 感心する
→「感心する」が目上の人にNGなんて嘘!意味と正しい敬語の使い方 - 取り急ぎお礼まで
→「取り急ぎお礼まで、ご連絡まで」意味と目上の方への正しい使い方 - お大事に
→目上の人に「お大事に」は失礼?丁寧な言い換えと正しい使い方 - ご査収願います・ご査収ください
→「ご査収願います」「ご査収下さい」は上司に使える?目上への使い方 - 頑張ってください
→「頑張ってください」の代わりに使える7つの敬語 - お取り計らい
→「お取り計らい」意味と目上の方への正しい使い方【例文あり】 - 感銘・感服・敬服・感心
→「感銘」「感服」「敬服」「感心」の意味と違い、敬語での使い方 - いただくことは可能でしょうか?
→「いただくことは可能でしょうか?」の敬語、目上の人への使い方
上の例で示した敬語の中には、目上の人に失礼となる使い方もあります。ぜひ、この機会にそれぞれの敬語の正しい使い方をマスターしておきましょう。