鉄鋼メーカー大手3社(新日鉄住金・JFEスチール・神戸製鋼)の年収を比較。世の中の年収ランキングの考え方が根本的に間違っているため、正していきます。特に総合職を志望される就活生、転職者のための記事。
まず鉄鋼メーカーについてご存知のない就活生・転職者のために簡潔に。
「鉄鋼メーカー」は文字通り鉄を作るメーカーのこと。
鉄鋼メーカーをもっと細かく分けると①高炉メーカー(高炉を持ち、鉄鉱石から鉄を作るメーカー)と、②電気炉メーカー(電気炉を持ち、鉄クズから鉄を作るメーカー)とに分けられます。
①高炉メーカーは日本に4社(新日鉄住金・JFE・神戸製鋼所・日新製鋼)のみ。高炉はとてつもない金額の初期投資が必要であり、新たに高炉を作ろうとすると投資1兆円を超えるケースが多い。これが参入障壁となっているため高炉メーカーは世界的に見ても、プレイヤーが限られます。
②いっぽうの電気炉メーカーは中小規模の会社がたくさんあります。電気炉は、設備も小規模であり誰でも作れます。投資金額も数十億円あれば十分でしょう。それがプレイヤーを増やしている理由。
そして、鉄鋼大手3社といえば、鉄鋼メーカーの中でも売上の大きい新日鉄住金・JFE・神戸製鋼所のことを指します。
それでは基本を復習したところで、鉄鋼大手3社の年収を比較していきましょう。
就活・転職のご参考にどうぞ。
この記事の目次
鉄鋼メーカー大手3社の平均年収/平均年齢の比較
まずは一般論として、鉄鋼メーカー大手3社(新日鉄住金・JFEスチール・神戸製鋼所)の平均年収・平均年齢を比較しましょう。年収データは、各社の有価証券報告書を参照しています。
※平均年収は一つ前の年度の有価証券報告書を参照。たとえば「2016年=2015年度実績」となります。( )内は平均年齢を記しています。
※JFEスチールは「持株会社:JFEホールディングス」の傘下であるため、ホールディングスの年収で見ています。
2016年 平均 年収 |
2015年 平均 年収 |
2014年 平均 年収 |
|
新日鉄住金 | 625万円 (38.7歳) |
620万円 | 569万円 |
JFE HD | 1022万円 (45.4歳) |
966万円 | 943万円 |
神戸製鋼所 | 565万円 (40.0歳) |
554万円 | 505万円 |
平均年収を比較すると、2016年・2015年・2014年の実績はいずれもJFE HD > 新日鉄住金 > 神戸製鋼所となっていることが分かります。
JFE HDの年収は総合職の平均値に近く、他2社は工場ワーカーの年収に近くなります。比較対象が違うため、どこが最も年収高いか分かりません。
※一般的に〜〜ホールディングスは総合職が多くを占めます。
そこで各社の総合職の年収を予測し、比較していきましょう。
鉄鋼メーカー大手3社の年収を比較(総合職のみ)
鉄鋼メーカー大手3社(新日鉄住金・JFEスチール・神戸製鋼所)の総合職における、年収を比較していきます。
①年齢ごとの年収比較
※( )内に基本給-万円/月、賞与ボーナス-ヶ月分/年を記しています。
※役職名は会社ごとに異なるため参考程度にお考えください。
年 齢 | 役職 | 新日鉄住金 (基本給+賞与) |
JFEスチール (基本給+賞与) |
神戸製鋼所 (基本給+賞与) |
---|---|---|---|---|
~29歳 | 540万円 (30+6ヶ月) |
495万円 (30+4.5ヶ月) |
405万円 (27+3ヶ月) |
|
30歳 | 558万円 (31+6ヶ月) |
511万円 (31+4.5ヶ月) |
450万円 (30+3ヶ月) |
|
35歳 | 主任 | – | 660万円 (40+4.5ヶ月) |
540万円 (36+3ヶ月) |
〃 | 課長1 | 800~1000万 (年棒制)※2 |
– | – |
40歳 | 主任 | – | 742万円 (45+4.5ヶ月) |
600万円 (40+3ヶ月) |
〃 | 課長1 | 800~1000万 (年棒制) |
907万円 (55+4.5ヶ月) |
750万円 (50+3ヶ月) |
45歳 | 主任 | – | 792万円 (48+4.5ヶ月) |
660万円 (44+3ヶ月) |
〃 | 課長1 | 800~1000万 (年棒制) |
990万円 (60+4.5ヶ月) |
825万円 (55+3ヶ月) |
50歳 | 主任 | – | 825万円 (50+4.5ヶ月) |
690万円 (46+3ヶ月) |
〃 | 課長2 | 1000~1200 (年棒制) |
1039万円 (63+4.5ヶ月) |
900万円 (60+3ヶ月) |
55歳 | 主任 | – | 825万円 (50+4.5ヶ月) |
690万円 (46+3ヶ月) |
〃 | 課長2 | 1000~1200 (年棒制) |
1122万円 (68+4.5ヶ月) |
975万円 (65+3ヶ月) |
60歳 | 主任 | 720万円 (40+6ヶ月) |
660万円 (40+4.5ヶ月) |
540万円 (36+3ヶ月) |
※1) 新日鉄住金はAM職から裁量労働+年棒制となるものと仮定。年棒に一定の残業代(みなし労働手当て)を含むため見かけの年収は高いが、実際にはどちらがいいか分からない。残業が「みなし労働手当て」よりも多ければ損をするし、そうでなければ得をする。
※2) 新日鉄住金は課長以降、年棒制になる。
※総合職であれば主任クラスまではほぼ自動的に昇格(もちろん毎昇格試験はある)。
※課長1への昇進で同期でも差が出る。ただ、数年の遅れは出るがいずれは昇格する(総合職であれば)。
※年収はボーナス額で大きく変動する。鉄鋼バブル崩壊により低迷中だが上向く可能性あり。
②役職ごとの年収比較
②-1. 新日鉄住金の役職ごと年収
役 職 | 年 齢 | 年 収 | 基本給 万円/月 |
ボーナス 月数/年 |
---|---|---|---|---|
~統括2 | ~30歳 | ~558万円 | ~31 | 6.0 |
AM(主査) | 31~40歳 | 800~1000万円 | 年棒制 | 年棒制 |
M1(課長) | 35歳~ | 1000~1200万円 | 〃 | 〃 |
M2(次長) | 40歳~ | 1200~1400万円 | 〃 | 〃 |
M3(部長) | 45歳~ | 1400~1600万円 | 〃 | 〃 |
※AM以降は管理職あつかい。裁量労働制のため、年棒に残業代(みなし労働手当て)を含む
②-2. JFEスチールの役職ごと年収
役 職 | 年 齢 | 年 収 | 基本給 万円/月 |
ボーナス 月数/年 |
---|---|---|---|---|
なし | ~29歳 | ~495万円 | ~31 | 4.5 |
係長 | 30歳~ | 511万円~ | 31~38 | 4.5 |
副課長 | 33歳~ | 627~825万円 | 38~50 | 4.5 |
課長 | 38歳~ | 874~1039万円 | 53~63 | 4.5 |
次長 | 40歳~ | 1039~1204万円 | 63~73 | 4.5 |
部長 | 45歳~ | 1204~1369万円 | 73~83 | 4.5 |
※副課長までは残業代がでる。
※研究開発職は裁量労働制。
②-3. 神戸製鋼所の役職ごと年収
役 職 | 年 齢 | 年 収 | 基本給 万円/月 |
ボーナス 月数/年 |
---|---|---|---|---|
なし | ~29歳 | ~405万円 | ~27 | 3.0 |
係長 | 30歳~ | 450万円~ | 30 | 3.0 |
課長代理 | 35歳 | 540~690万円 | 36~46 | 3.0 |
課長 | 40歳~ | 750~900万円 | 50~60 | 3.0 |
次長 | 40歳~ | 900~1050万円 | 60~70 | 3.0 |
部長 | 45歳~ | 1050~1200万円 | 70~80 | 3.0 |
※課長代理までは残業代がでるものと想定。
なぜ年収に違いが出るの?
なぜ同じ鉄鋼メーカーで、似たような基本給なのに年収に違いが出るのか?
というとボーナスの過多、管理職以降の年収の伸び、管理職への昇格難易度、残業代によります。若いうち(~32歳くらいまで)の基本給というのは、大手メーカーであればどこも大して変わりません。
したがって年収ランキングの計算でよく見る「ボーナス4ヶ月/年で固定・基本給で差が出る」という計算方法は大うそ。実際にはメーカーの年収は、ボーナスの差・管理職以降の年収の差でしか違いを見出せません。
また、税理士が計算した年収というのも全くのデマ(どことは言いませんが)。税理士に大企業の年収体系はわかりません。さらに、年齢ごとに一定の割合をかけただけの年収サイトはもっと最悪です。まるで信憑性がありません。もちろん、私の作る年収ランキングが100%正しい訳ではないですが、かなり核心に迫っている自信はあります(実際に聞いているため)。
会社ごとの差が大きいボーナスはどうやって決まるか?
もっと深掘りしていきます。
「ボーナスの差で年収の過多が決まる」というのは本当。
でも一体、そのボーナスはどうやって決まっているのか?
というと、会社ごとにボーナスの決め方は違います(苦笑)。一般的には会社の業績が良ければボーナスも上がり、悪ければボーナスも下がります。
ただ、会社の業績が良くてもボーナスがあまり伸びない会社もあります(化学メーカーだと東レとか)。一方で会社の業績が悪くてもボーナスの良い会社もあります(化学メーカーだと帝人とか)。
そして極めて安定的な食品業界などは、ボーナスが全く動きません。年収ランキングを作りやすくて助かりますね。化学メーカーや自動車部品メーカーもまぁ、それなりに安定しているため、良くも悪くもボーナスの振れ幅は小さい業界ですね。一応、以下の記事でご確認を。
- 年収ランキングにだまされるな!隠れ高収入の食品・飲料メーカー総合職
- 年収ランキングにだまされるな!隠れ高収入の化学素材メーカー総合職
- 自動車部品メーカー年収ランキング《デンソー・住友電工・アイシン他》
一方でボーナスの振れ幅の激しい業界としては、鉄鋼業界(鉄鋼市況に左右されまくり)・自動車業界(為替に左右されまくり)・総合商社(業績により左右されまくり)・ゼネコン(建設・土木需要に左右されまくり)などがあります。
ただ結局のところ、ボーナスの決め方およびトレンドは企業ごとに把握しておく必要があります。とても重要なポイントなので、私の年収記事ではこの辺りのことはかなり詳しく書いています。ブログ内・検索で「企業名+年収」を入れて検索してみてくださいね。
結局、鉄鋼メーカー大手3社で最も年収高いのはどこ?
色々と話が逸れましたが最後に結論です。
鉄鋼メーカー大手3社(新日鉄住金・JFEスチール・神戸製鋼所)の中で最も年収の高いメーカーは?
「答えはその年のボーナスによります(汗)」としか答えようがありません。申し訳ありません。
そんな不確実な結論なのですが、確実なことを述べておくとすれば、
同じ役職・年齢であれば基本給は「新日鐵住金 ≒ JFEスチール >> 神戸製鋼所」となり、若いうちの昇給は新日鐵住金が最も早い(最速31歳で管理職となる)のですが、そのあと部下ありの課長2へ昇格できなければ停滞します。
ボーナス額は「完全にその年の業績による」です。鉄鋼市況が上向くことだけを祈りましょう。そして、景気の悪い状況では年棒制のほうが年収高くなり、景気のよい状況では年棒制じゃないほうが年収高くなります(あくまで経験則)。
結果として今の状況では新日鐵住金がNo.1かなぁ、という結論です。
各企業の年収についてもっと詳しく知りたい!というあなたは以下の記事にてご確認ください。
こんにちは。私は文系大学の3年生で、いつも拝見させていただいております。
業界内ランキングや企業偏差値など、就職活動の企業研究に利用させていただいています。
私は現在、化学業界と非鉄金属業界に興味を持っているため、非鉄金属業界の総合職の年収事例について教えていただきたいです。特に、住友金属鉱山、三菱マテリアル、UACJ、日本軽金属をお願いします。
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