3分でわかる化学業界。今後の動向と将来性まとめ【2017年版】

将来性あり!原料の安い国にメイン生産拠点を構え汎用樹脂で勝負

汎用品でなんとかしようと思ったら、原油やガスの安い国で生産しないとペイしない。

このパワーゲームを展開する企業には、

米国の信越化学工業(どこまでシェールガスによる原料安が続くか不透明)。

サウジの住友化学(原油は水よりも安いものの、サウジという国がイマイチかも)。

東南アジアの旭硝子などがある(他メーカーも投資を狙っている地域)。

将来性あり!付加価値の高い商品で勝負

付加価値の高い商品とは、何かしらの方法でライバルと差別化できていて、高く売れる商品のこと。身近なところでは、iPhoneなどが挙げられる。

これを化学メーカーに当てはめると、

日東電工、住友化学の偏光板、

ダイセルのたばこフィルター、

東レの炭素繊維。

日産化学工業、JSR、日本ゼオン、富士フィルム、クラレ、積水化学工業、三菱レイヨンなどの特殊フィルムを製造する企業。

特殊フィルムは中国・韓国メーカーがコピーするにはあと20年以上かかる。※特許と現場製造技術・ノウハウに守られている。

他には、

ダイセル、日本化薬のエアバッグ用インフレータ。

日本特殊陶業、日本ガイシのスパークプラグ(自動車用途)。

三菱樹脂のアルミナ繊維(排ガス除去フィルター用)。

などがある。

将来性あり!医薬・ヘルスケア分野

または富士フィルム、日本化薬、東ソー、信越化学工業、三菱ケミカルHD、旭化成、デンカなどが目指す医薬・ヘルスケア品分野。どの日系メーカーもこの分野に取り組んでいるが、欧米系の会社が先行していた。まだまだこれからという感じ。

そして日本の法規制も医薬・ヘルスケア分野に参入する企業にやさしくなってきた。化学メーカーにとってはこの上なく素晴らしい材料である。ジェネリック医薬品や化粧品なんて、化学メーカーが本気になれば簡単に作れるシロモノだからである。

化学素材メーカーは今後、製薬メーカーや製薬機器メーカーにケンカを売って、商売をうばっていくだろう。といっても市場自体が伸びるので「奪う」というよりは「伸びる市場を少しでも取り込む」という表現が正しいのかも。→ 3分でわかる製薬業界。現状と課題、今後の動向【2017年版】

将来性あり!ニッチ市場での高シェア

他に、ニッチ市場で高シェアを持つメーカーとして、日油、日本曹達、日本触媒、日本化薬、ナミックス(非上場)なども有望である。

将来性あり!事業統合、M&A、規模縮小、ダウンストリーム戦略

日本企業はリストラをしないために、欧米の会社のように素早く進められないがゆっくりとは進捗している。日本の総合化学メーカーは1社に統合されるべき。

各社統合したい気持ちはあっても独占禁止法と労働基準法が邪魔をして上手くいかない…商売は日本ではなく世界。

日系メーカーは国内のちまちましたマーケットを目指しているのではない。日本政府は早く法律を改正すべき。

将来性あり!輸入品が入ってこない液モノ商売を国内で展開

コニシ、東亞合成などの接着剤業界は伸びはしないものの、輸入品との争いがないので安定している。液モノはどんなに安い中国品でも輸送コストと港にタンクが必要で輸入品はコスト高になる。

日系接着剤メーカーも需要の大きい中国やベトナム、タイに生産拠点を持っているが、現地メーカーとはコスト的に戦えず苦しい状況。国内で稼ぎ海外で赤字を出すという最もやってはいけないパターンに陥っている。海外事業を辞めればいいのに…

総括

総括すると、化学素材メーカーは一部の潰れそうなメーカーと汎用品ばかりやっているメーカーを除き、どの企業もあと30年くらいは安泰。ビジネスなので浮き沈みは当然あるが、あなたの生きている内になくなることは想定できない。

詳しくは「将来性のある化学素材メーカーまとめ」で触れている。

おまけ:世界No.1じゃない商品は「弱小」と呼ぶ

おまけとして化学業界における商品の位置付けを解説しよう。

  • 世界No.1 = 素晴らしい
  • 世界No.2 = 弱小だがチャンスはある
  • 世界No.3以降の商品 = 弱小。他との合併しか道は残されていない
  • 日本国内No.1 = 公表するのすら恥ずかしい貧弱なビジネス

例えば自動車における世界No.2フォルクス・ワーゲン、これには価値がある。誰もフォルクス・ワーゲンのことを「弱小メーカー」とは呼ばない。

しかし化学素材の炭素繊維で世界No.2の帝人、ほとんど価値なし。炭素繊維という分野において世界No.1東レ以外は弱小メーカーと呼び、単なる脇役程度。

論理だてて説明することは難しいが、化学素材分野において世界No.1と世界No.2にはコイキングとギャラドスくらいの戦力差がある(ポケモンに例えると)。

だから何とかしてその分野において世界No.1を目指すのである。このあたりの事情は別の記事に詳しくまとめてある。→世界シェアトップの日本企業と製品。実はこんなところにも?地味すぎる化学素材メーカーまとめ

関連記事のまとめ

→ 3分でわかる自動車業界。今後の動向と将来性まとめ【2016年版】

→ 将来性のある化学素材メーカーまとめ

→ 3分でわかる製薬業界。現状と課題、今後の動向【2017年版】

→ 化学素材メーカーの売り上げ世界ランキング2016年版