「お受け取り致しました」よりも丁寧な敬語「拝受」の使い方

「お受け取り致しました」は正しい敬語ではあるものの、ビジネスで使うのは一般的ではありません。

そこでシーンにおうじて「拝受・受領・受理・領収」と言い換えます。

この中でもっともオーソドックスに使えるのが「拝受」でありたとえば、

  • 【例文】先ほどカタログを拝受いたしました。ご対応ありがとうございました。
  • 【例文】メール拝受いたしました。早々にご対応いただきありがとうございます。

などとして使います。

意味や使い分けなど、くわしい解説は本文にて。

それでは、

「お受け取り致しました」が正しいにもかかわらず使われない理由、よりビジネスにふさわしい「拝受・受理・受領・領収」のビジネスシーンでの使い方(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外取引先・目上・就活・転職)、例文を紹介します。

敬語としては正しい「お受け取り致しました」

「お受け取り致しました」の意味は「受け取りました」であり、敬語として正しいです。間違い敬語ではありませんし、二重敬語でもありません。

まずはその根拠を見ていきます。

「お受け取り致しました」の敬語

「お受け取り致しました」の敬語をこまかく見ていくと以下のように成り立ちます。

▼敬語の解釈 ①

  1. もとになる単語「受け取り」
  2. 「〜する」の謙譲語「(お・ご)〜いたす」で「お受け取りいたす」
  3. さらに丁寧語「ます」の過去形「ました」で「お受け取りいたしました」

あるいはもっと細かくすると以下のような敬語の解釈もできます。

▼敬語の解釈 ②

  1. もとになる単語「受け取り」に謙譲語「お・ご」で「お受け取り」
  2. さらに「〜する」の謙譲語「〜いたす」で「お受け取りいたす」
  3. さらに丁寧語「ます」の過去形「ました」で「お受け取りいたしました」

本来あるべきなのは解釈②なのですが…

ややこしくなるため「(お・ご)〜いたす」「(お・ご)〜いたします」のセットで謙譲語とし解釈①で考えたほうがシンプルでわかりやすくなります。

ここで(お・ご)と(  )にしたのは「お・ご」があっても無くても敬語としては丁寧だからです。

とにかく敬語としては全くおかしいところは見当たりません。間違い敬語でもなく二重敬語でもなく、正しい敬語です。

謙譲語の「お(ご)●●する」「お(ご)●●いたす」の使い方

ご参考までに謙譲語には「お・ご〜する」「お・ご〜いたす」という使い方があります。

代表的な例としては以下のような敬語フレーズがありますね。

  • 「ご連絡する」「(ご)連絡いたす」
    ➡︎「ご連絡します」「(ご)連絡いたします」
  • 「ご確認する」「(ご)確認いたす」
    ➡︎「ご確認します」「(ご)確認いたします」
  • 「ご挨拶する」「(ご)挨拶いたす」
    ➡︎「ご挨拶します」「(ご)挨拶いたします」
  • 「お願いする」「お願いいたす」
    ➡︎「お願いします」「お願いいたします」

こんな感じでつかう敬語です。ちなみに丁寧語「ます」をくっつけて「お・ご〜します」「お・ご〜いたします」とするのが一般的。

補足①敬語の種類(ざっくり復習)

① 尊敬語とは?
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。

敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある

② 謙譲語とは?
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本(例外あり)。

③ 丁寧語とは?
いわゆる「です・ます」口調のこと。

補足②謙譲語にも「お・ご+名詞」という使い方がある

ややこしいので基本的な敬語の使い方についてくわしく解説を。

じつは尊敬語と謙譲語にはどちらも「お・ご」の使い方があります。

謙譲語としての「お・ご」の使い方はたとえば、

「会議日程のご連絡
「忘年会開催のお知らせ
「販売状況のご報告
「転勤のご挨拶
「貴社ご訪問のお願い

こんな感じのフレーズがあります。よくビジネスメールの件名で目にする表現ですね。

ところが例文は自分が「ご連絡・お知らせ・ご報告・ご挨拶」するため「お・ご」をつかうのはおかしいと感じるかたもいらっしゃることでしょう。

これは、

謙譲語「お・ご」の使い方を知らないためにくる勘違いです。尊敬語の「お・ご」だと勘違いしているために間違い敬語と感じるのですが、実際にはどれも正しい敬語をつかっています。

いっぽうで尊敬語の「お・ご」は、「●●部長がお戻りになりました」などのようにして、相手の行為をうやまって使う敬語です。

ただし謙譲語にも「お・ご」を使い始めると文章が「お・ご」だらけになって読みにくくなります。文章のバランスを考えて使い分けしましょう。

ビジネスシーンで「お受け取り致しました」を使わない理由

ここまでの解説で「お受け取り致しました」が正しい敬語であることがわかりました。

ここからは、

なぜ正しいにもかかわらずビジネスシーンではイマイチなのか、その理由を解説します。

「お受け取り」という敬語フレーズがしっくりこない

「お受け取り致しました」が上司・目上やビジネスメールにイマイチ使われない理由

「お受け取り」というフレーズがビジネスにおいてはイマイチしっくり来ない表現です。

失礼とまでは言わないものの「お受け取り」という言葉は小学生から大人まで万人がつかうフレーズであり、なんとな~く幼稚な感じがするのですよね。

同じく「自分が受け取る」の意味である「拝受(はいじゅ)」を使ったほうが丁寧な印象のビジネスメールになります。
あるいは他にも受け取るものの内容に応じて「受領・受理・領収」も使えます。

※ただし本当に「受け取る」がふさわしいビジネスシーンであれば使ってもよい

自分が「受け取った」ときの敬語フレーズ

ここまでの解説で「お受け取り致します」が正しい敬語である理由と、正しいにもかかわらずビジネスシーンではイマイチ使われない理由がわかりました。

ここからは、

より丁寧な言い換え敬語とビジネスシーン(メール・手紙・上司・目上など)にふさわしい使い方を例文つきで解説していきます。

自分が受け取ったときは「拝受・受理・受領・領収」を使う

自分が受け取ったときは「拝受・受理・受領・領収」を使います。

基本は受け取った物の内容におうじてこれらの単語を使い分けします。

たとえば以下のように使い分けるとよいでしょう。

  1. ビジネス書類・メールや添付ファイルを「受け取った」と報告したいとき…
    → 拝受(はいじゅ)
  2. ご祝儀やギフト・贈答品を「受け取った」とき…
    → 拝受(はいじゅ)
  3. 役所の申請書などを「受け取った」とき…
    → 受理(じゅり)
  4. 会費などのお金を「受け取った」とき…
    → 受領(じゅりょう)
  5. 製品・サービスの代金を「受け取った」とき…
    → 領収(りょうしゅう)

いずれの単語も謙譲語「いたす」+丁寧語「ます」をくっつけた敬語「いたします・いたしました」を使うと丁寧です。

【例文】拝受/受領/受理/領収いたしました

のように使うことが多いですね。

「(自分が)ご査収しました・ご査収いたしました」は一般的ではありません。

「拝受・受理・受領・領収」意味の違い

念のため「拝受・受理・受領・領収」の意味の違いもまとめておきます。

  • 「拝受」の意味は…
    受けること、受け取ることをへりくだっていう語
    【例文】先ほどメールを拝受いたしました
    【例文】先日カタログを拝受しました
  • 「受理」の意味は…
    提出された願書・届け・訴状などを受け取って処理すること
    ※受け取るだけではなく処理する、つまり始末をつけることも意味します。
    【例文】出生届を受理いたしました
    【例文】先日お申し込みいただいた移転届けを先ほど受理しました
  • 「受領」の意味は…
    物や金を受け取ること
    【例文】先ほど商品を受領いたしました
    【例文】お品のほう、確かに受領いたしました
  • 「領収」の意味は…
    金品を受け取っておさめること
    【例文】上記の金額を確かに領収いたしました

「相手に受け取ってほしい」ときの敬語は??

さてここで問題です。

ここまでは自分が「受け取ります」や「受け取りました」のときに使える敬語フレーズを紹介しました。

では…

「相手に受け取ってほしい!」「受け取ってください!」と言いたいときにはどんな敬語をつかうでしょう?

「ご拝受お願いします??」
「ご拝受ください??」
「お受け取りください??」

残念ながらハズレ…

上記はいずれもビジネスシーンでは使わない敬語です。

【例文】ご査収の程お願い申し上げます

【例文】どうかご笑納ください

のように「ご査収」「ご笑納」などを使います。

「査収 vs 笑納 vs 受理 vs 受領 vs 領収 vs 拝受」の使い分け

ビジネスシーンで上司・目上・取引先に「受け取ってほしい!」と言いたいとき。

「査収 vs 笑納 vs 受理 vs 受領 vs 領収 vs 拝受」のどれ使う?

結論としては何を受け取ってほしいかによって使い分けできます。

たとえば、

  1. ビジネス書類・メールや添付ファイルを「お受け取り」してほしい時…
    → ご査収(ごさしゅう)
  2. ご祝儀やギフト・贈答品を「お受け取り」してほしい時…
    → ご笑納(ごしょうのう)
  3. 役所の申請書などを「お受け取り」してほしい時…
    → 受理(じゅり)
  4. 会費などのお金を「お受け取り」してほしい時…
    → 受領(じゅりょう)
  5. 製品・サービスの代金を「お受け取り」してほしい時…
    → 領収(りょうしゅう)
  6. 自分が何かしら受け取るときは…
    → 拝受(はいじゅ)・受理・受領・領収などを使う

こんな感じで使うとよいでしょう。

ご査収の意味は(金銭・物品・書類などを)受け取ること

「ご査収」のそもそもの意味は「金銭・物品・書類などを、よく調べて受け取ること」

たとえば、

【例文】履歴書を添付ファイルにて送付いたします。ご査収ください

【例文】下記の書類を郵送いたしました。ご査収のほどお願い申し上げます

のようにして使います。

もとになる語「査収」に尊敬語or謙譲語「お(ご)」で「ご査収」という敬語にしています。

「自分が査収する」のであれば謙譲語としての使い方。

上司・目上・取引先などの「相手が査収くださる」のであれば尊敬語としての使い方。

ちなみに「ご査収ください」だと…

「相手が受け取ってくださる+命令形」ですので尊敬語「ご」を使っています。

「お(ご)」は尊敬語と謙譲語の使い方があり、ややこしい敬語です。ご注意を

ご笑納の意味は「つまらないものですが…受け取る」

「ご笑納」のそもそもの意味は…

「人に贈り物をするとき、つまらない物ですが笑ってお納めくださいという気持ちを込めて用いる語」

※「納める」は「受け取る」の意味です

たとえば、

【例文】別便にて心ばかりの品を郵送いたしました。どうかご笑納ください

【例文】別便にて返礼の品を郵送いたしました。何卒ご笑納いただけましたら幸甚に存じます

のようにして使います。

意味はいずれも「つまらないものですがお受け取り」と謙って使う語です。

もとになる語「笑納」に尊敬語or謙譲語「お(ご)」で「ご笑納」という敬語にしています。

「自分がご笑納する」のであれば謙譲語としての使い方。

上司・目上・取引先などの「相手がご笑納くださる」のであれば尊敬語としての使い方。

ちなみに「ご笑納ください」だと…

「相手が受け取ってくださる+命令形」ですので尊敬語「ご」を使っています。

「お(ご)」は尊敬語と謙譲語の使い方があり、ややこしい敬語です。ご注意を

参考記事

➡︎「教えてください」の代わりに使えるビジネス敬語、メール電話の例文
➡︎「ご教示」「ご教授」の意味と違い、使い方・メール例文
➡︎上司へお願いするときに使える敬語10の言葉と、例文50選

➡︎「いただくことは可能でしょうか?」の敬語、目上の人への使い方
➡︎「ご連絡差し上げます」は間違い敬語?意味と正しい使いかた
➡︎【完全版】ビジネスメール締め・結びの例文50選

➡︎︎ビジネスシーンでの「お願い・依頼」敬語フレーズのすべて
➡︎︎ビジネスシーンでの『お礼・感謝』敬語フレーズのすべて
➡︎︎ビジネスメールにおける断り方のすべて