「受け取る」に”はまる謙譲語”が無い
ここからは私の勝手な考察。
ビジネスメールで使う敬語は、丁寧語「です・ます」ではなく謙譲語や尊敬語がメインとなります。ところが「受け取る」には「すっぽりとはまる謙譲語がない」のです。だからビジネスメールでは使わないのだと思われます。
【間違い】「受け取る」の謙譲語は「頂く」ではない!!
「受け取る」をの謙譲語は「頂く(いただく)」だ!と解説されているWEBサイトをよくみかけますが、これは100%間違いです。「頂く(いただく)」は本来、「もらう」の謙譲語です。こういうのを曲解といいます。
「受け取る」の謙譲語が「いただく」となるのであれば、以下例文のような「へんてこなビジネスメール」になってしまいます。
- NG例文①「メールを確かにいただきました。ありがとうございます」
- NG例文②「会議資料を確かにいただきました。ありがとうございます」
- NG例文③「商品を確かにいただきました。ありがとうございます」
たしかに例文①②では「メール(会議資料)をもらう」ですから、意味としては通じます。ところが例文③は「商品を(タダで)もらった」という意味になります。
「商品を頂きました」で「商品を受け取った」の意味にはどう曲解しても、なり得ません。以上のことから、「受け取る」の謙譲語を「いただく」とするのは間違いだとわかります。
受け取りいたす??
「する」の謙譲語「いたす」+丁寧語「です・ます」を使えば、なんとな~く謙譲語になります。
たとえば「連絡いたします」「報告いたします」「対応いたします」などがビジネスメールでよく使われますね。で、これを「受け取る」にあてはめてみると「受け取りいたします」「受け取りいたしました」となります。
んんん~~~、これも一度もみたことのない表現ですね。ということでやはり「受け取る」を謙譲語にするのは難しいという結論になります。
※間違いやすい敬語には「お伺いいたします」があります。これは間違いであり「伺う」「伺います」が正しい謙譲語。
他にもある「受け取る」の類語
「受け取る」の言い換えとして「受領」「拝受」を紹介しましたが実は、もっと類語はあります。
「受理」はとくに、書類・届け・願い事などを受け付けるときに使う「受け取る」の類語表現。
「領収」はとくに、代金など金銭を「受け取る」ときに使う類語表現。
「査収」はとくに、(書類などの)中身をよく調べて「受け取る」ときに使う類語。
などが「受け取る」の類語として挙げられます。何を受け取るか?に応じて使い分けることもできますが、使い分けがめんどくさければ「受領」「拝受」だけで99%は乗り切れます。
また使うときには「○○いたします/いたしました」と謙譲語にしましょう。
「(相手が)受け取りましたか?」の尊敬語
これまでは「(自分がメールなどを)受け取る」の使い方をみてきました。「受け取る」は謙譲語にはできませんが、尊敬語にして「(相手が)受け取りましたか?」とすることはできます。
お受け取りになる
「受け取る」を尊敬語にすると「お受け取りになる」となりますね。これに丁寧語「です・ます」をつけ加えて疑問文に直すと、
「(相手が)お受け取りになりましたか?」
となり、目上の人に使ってもビジネスメールに使うのにも、すばらしく丁寧な敬語表現となります。このほかには「お手元に届きましたか?」「お手元にございますか?」などが同じように使われます。
念のため、「お受け取りになりましたか?」を使ったビジネスメールの例文を以下にまとめます。
- 例文「たびたび失礼致します。先般、送付いたしました見積書はお受け取りになりましたか。お忙しいところ大変恐れ入りますが、ご確認いただければ幸いです」催促メール
- 例文「5月10日に履歴書を添付ファイルにて送付いたしましたが、お受け取りになりましたか。お忙しいところ大変恐れ入りますが、ご確認くださいますようお願い申し上げます」催促メール
【例文】「受け取る」を使ったビジネスメール全文
これまで解説したとおり、「受け取る」はビジネスメールには使いません。そこで「受領」「拝受」に言い換えたメール例文をまとめておきます。ーつづくー