生保・総合職の仕事内容(現役総合職談)

生命保険会社の業界研究。総合職の仕事内容のまとめです。

生命保険会社の仕事といえば…生保レディの営業しかイメージできないと思われる方も多いのではないだろうか。

でもじつはそんな事はなく。

業界首位の日本生命のホームページによると従業員数は以下のような内訳となっている。

  • 2017年3月末現在:70,651名
  • うち内勤職員:19,747名

つまり生命保険会社にも内勤がたくさんいるのだ。

さらに国内の生命保険会社の場合、内勤は大きく①総合職、②一般職、③地域限定総合職(エリア総合職)の3つに分類される。

そこで。

この記事では内勤の、とくに総合職について仕事内容を解説していく。

就活・転職の生命保険業界研究のご参考にどうぞ。

生命保険会社の業務・事業内容

生命保険会社の主要業務は以下2つ。

  1. 保険事業:
    生命保険に加入してもった契約者から保険料を集めて、将来支払う保険金に充てるために積み立て、その契約者に万一のことが起きた場合に保険金を払う事業
  2. 資産運用事業:
    契約者から集めた保険料を、株式や債券、不動産に投資したり、企業・団体に貸し付けたりするなど様々な形で運用し、その運用益を得る事業。

この保険事業と資産運用事業は、生命保険会社の両輪の関係にある主要業務である。

つまり生命保険会社の業務はざっくり言えばこの「①保険事業」か、「②資産運用事業」に関わる業務に分けられるのである。

さらに細分化

また。

さらに非常にざっくり細分化すれば、それぞれの事業には以下のような部門が属する。

  1. 保険事業…個人保険部門、団体保険部門、代理店部門、(海外部門)
  2. 資産運用事業…資産運用部門、(海外部門)
  3. その他

個人保険部門、団体保険部門、代理店部門、資産運用部門には、それぞれフロントオフィス(以下、フロント)、ミドルオフィス(以下、ミドル)、バックオフィス(以下、バック)が存在する。

生保会社におけるフロント・ミドル・バックとは?

ここで念のためフロント、ミドル、バックの意味を確認していこう。

  1. フロントオフィスとは・・・直接顧客と接触を持ち、会社に利益を上げる部署のこと。銀行の受付窓口や、顧客に自社商品・サービスを売り込む営業などがそれにあたる。
  2. ミドルオフィスとは・・・フロントで仕事をする人達のサポートだ。営業マンや販売員が営業で成果を上げやすくするために販売促進の施策を立案するなどの営業支援をおこなう。
  3. バックとは・・・フロントのビジネス基盤を構築・整備する業務。営業に必要なシステムを構築したり、契約の事務手続きを行ったりするインフラ整備の役割をになう部署。

それでは各部門の業務内容を見ていこう。

①個人保険部門・総合職の仕事内容

その名のとおり、個人保険を担当する部門。

生保レディが個人宅や職場に訪問して、個人向けの生命保険商品(または損害保険商品)の営業をおこなう。

生保レディの数は全国に約23万人存在する。

国内の生命保険会社にとっては主要販売チャネルであり、今の日本の生保業界が発展したのは、間違いなくこの生保レディの貢献によるところが大きい。

総合職<フロント>の仕事内容

個人保険の場合、営業をおこなうのは原則として生保レディである。

したがって総合職が営業をおこなうことはほとんどない。

総合職が携わる個人保険のフロント業務は、営業拠点の生保レディの管理をおこなう拠点長くらいだ。

ただし。

この拠点長というポジションは、自身が営業をして保険を販売するというものではなく、生保レディが保険を売れるようにマネジメントをする仕事である。

生保レディは一般企業の内勤とはことなり、大半が40代~60代のいわゆる“お母さん世代”である。

会社や拠点長が指示したとおりに動いてくれる人ばかりではない。

そのため、そのマネジメントは一筋縄にはいかず困難を極める。また営業拠点を管轄する支社の幹部から、日々営業成績に関する激しいプレッシャーをうける。

したがい拠点長の職務には、一般的に入社10年目以降(中小生保の場合は最速で5年目程度)の中堅社員が就くことが多い。

総合職<ミドル>の仕事内容

生保レディの販売チャネルの規模が大きいことから、自ずとどこの会社もこの個人保険のミドルの体制が充実していることが多い。

営業拠点を管轄する支社の場合、総合職は営業拠点の支援をおこなう業務が大半である。

営業支援といっても生保レディに同行するような直接的な支援ではなく、以下のような仕事をすることになる。

▼支社・総合職の仕事内容

  1. 営業拠点の業績管理や顧客を招いたセミナーの企画・実行
  2. 支社の拠点長や生保レディを集めたイベントの企画・実行
  3. 優秀な成績の生保レディをご褒美旅行に連れて行くなどいろいろ

いっぽう本社の場合、支社とくらべて責任と影響度の大きい業務に携わる。

▼本社・総合職の仕事内容

  1. 全国の支社、営業拠点の販売計画の立案
  2. 全社的な販売キャンペーン等の企画・立案
  3. 生保レディや拠点長に対する研修
  4. 営業スキルを身に付けるための教材作成・提供、営業用チラシの作成
  5. 優秀な生保レディを対象とした招宴イベントの企画などいろいろ

総合職<バック>の仕事内容

ミドル同様、主要チャネルである生保レディの根幹をささえる業務。

▼総合職は以下のような仕事をすることになる。

  1. 個人保険商品の開発
  2. 営業用端末のシステム構築・整備、生保レディの給与制度整備
  3. 生保レディが獲得した契約の申込手続
  4. 顧客からの保険金・給付金請求があったときの支払い事務などなど

②団体保険部門における総合職の仕事内容

保険に関しては、法人・団体向けに主に保険商品を提供する部門。

法人・団体が契約者、従業員が被保険者(=保険を掛けられる人)となる保障、つまり保険料は法人・団体が支払い、従業員に万一の死亡や入院・手術、けがが発生した場合には保険金や給付金が支払われる制度の商品を提供する。

そのため顧客企業の従業員の福利厚生制度コンサルティングに携わる業務をになうことになる。

総合職<フロント>仕事内容

法人・団体向けに死亡保険や年金の営業をおこなう。

法人・団体の従業員全員にかけられる保険であるため、当然、保険料は個人保険契約とはことなり、数百万円、数億円単位に上る。

営業を担当するのは若手を含めた総合職が多い。

中小企業であれば社長や役員に直接働きかけ、大企業であれば、福利厚生制度を担当する人事や総務の担当者へ営業をかける。

メインとなる業務は当然生命保険営業だが、その他にも顧客の要望におうじ様々な対応をおこなう。

たとえば以下のような御用聞き的な営業をおこなうことになる。

  • 不動産取得を検討している顧客には…自社の資産運用部門で保有する不動産や、紹介できる不動産を取り扱っている部署とつないだり
  • 工場にかける損害保険商品を探している顧客には…自社の系列損害保険会社(たとえば住友生命であれば三井住友海上)や提携会社を同行させ提案を行なわせるなどをするため、

ただし。

法人の生命保険契約を獲得するには、単に商品やサービスが良ければ加入してもらえるわけではない。

財閥のしがらみや、その会社の株をどれだけ保有しているか、その会社にどの程度営業協力をしているかなどの要素が、契約の要否や契約金額等を大きく左右することになる。

総合職<ミドル>の仕事内容

法人・団体が顧客であることから、フロントの高いレベルのコンサルティング営業をバックアップするポジション。

個人保険同様、販売計画の立案、営業担当者に対する研修、営業スキルを身に付けるための教材作成・提供、営業用提案書の作成等はもちろん。

企業年金(後述)に携わる専門部署の担当者が営業担当者と共に法人・団体に同行し各種説明や提案をおこなうこともある。

総合職<バック>の仕事内容

バック業務が最も重要であるのがこの団体保険部門だ。

団体保険商品の開発、営業担当者が獲得した契約の申込手続、顧客からの保険金・給付金請求があったときの支払い事務等は他の部門同様。

最も重要な業務が、企業年金にかかわる事務手続きだ。

企業年金は、事業主が掛金を拠出し、保険会社等がその年金資産を管理・運用し、顧客法人・団体の従業員が退職した際に年金給付をおこなうというもの。

この企業年金は、従業員が入社してから退職するまでに事業主が拠出した掛金を積み立てたり運用する事務が発生し、退職後にはそれを年金形式で支払うという事務が発生する。

こうした対応を企業ごとの全従業員におこなう必要があるため、膨大な事務手続きが発生する。

この企業年金の膨大な事務手続きを自社だけでおこなうには労力やコストの負担が大きすぎるため、この部分は「非競合分野」として、生命保険会社各社がタッグを組み共同で企業年金事務を専門におこなう法人を設立し運営している。

③代理店部門における総合職の仕事内容

代理店部門は、他の部門にくらべて特殊な部門だ。

代理店部門のビジネスモデルは、自社と代理店委託契約を締結した事業主や法人に生命保険商品の販売をしてもらい、契約が成立した際に手数料を支払うというもの。

代理店には、銀行や郵便局の金融機関、「ほけんの窓口」のような保険代理店、税理士・公認会計士が相当する。

代理店部門<フロント>

生命保険会社の代理店営業担当者は自身が営業をするのではない。

代理店に自社の商品を取扱ってもらうよう働きかけをし、自社の商品を取り扱ってもらってからも、効果的な販売方法をアドバイスする等の間接営業をおこなうことになる。

とりわけ。

近年では銀行窓口を通じて生命保険を販売する「銀行窓販」が伸びており、各社とも同分野の取組みを強化している。

営業担当者は、銀行の本社や本店に自社の商品を取扱ってもらうよう交渉を行い、銀行窓販での取扱いが決まった場合には、さらに各地の営業担当者が同銀行の各支店に赴き、行員がスムーズに販売できるように顧客への効果的な話法やアプローチ等に関する研修・教育をおこなう。

余談にはなるが、銀行にとってのこの銀行窓販のメリットは2つある。

  1. 顧客に提供する預金や投資信託等の商品ラインナップに生保を加えられること。
  2. 顧客から集めた預金を元手に法人・団体へ貸し付けを行い、その利ザヤで稼ぐだけのビジネスモデルだけでは立ち行かなくなりつつある中、この銀行窓販によって生命保険会社からの安定的な収益を確保できること。

これらの点については、今後、銀行業界の現状や課題、動向をまとめた記事で解説していくこととする。

代理店部門<ミドル>

他の部門同様、以下の仕事内容がある。

  1. 販売計画の立案
  2. 営業担当者に対する研修
  3. 営業の知識を身に付けるための教材作成・提供
  4. 営業用チラシの作成
  5. 優秀な代理店を対象とした招宴イベントの企画など様々な業務

営業をおこなう主体が自社の営業社員ではないため、代理店が事実誤認や誤解を与える表現を顧客にしないよう、細心の注意を払いコンプライアンスを順守させる取組みが求められる。

他の部門にくらべてミドルの責任が重い部門であるといえるだろう。

代理店部門<バック>

他の部門同様、以下の仕事をする。

  1. 代理店向け保険商品の開発
  2. 代理店に支払う手数料制度の整備
  3. 契約の申込手続
  4. 顧客からの保険金・給付金請求があったときの支払い事務等

通常、代理店は生命保険会社の窓口の機能しか果たさないため、代理店経由で申し込みをしたとしても、その後の対応は生命保険会社がおこなうことになる。

同様に保険金・給付金の支払いも代理店で受け付けはするが、実際に対応するのは生命保険会社である。

④資産運用部門における総合職の仕事内容

生命保険契約は、死亡保険に代表されるように、30年、40年以上の長期に亘る契約が多い。

したがって生保会社は保険金や給付金、配当金を安定的に支払うことを目的として資産運用を行っている。

資産運用のための資金は、契約者から預かった保険料が原資になっており、顧客から保険金・給付金請求があったときには確実かつ迅速におこなう必要がある。

投資にあたっては「安全性・収益性・流動性」を基本原則とした運用が行われる

つまり。

どんなに収益性の高い資産への投資機会があるとしても、安全性が低く顧客から預かった保険料を原資とした資金が減ってしまう恐れがある場合は、投資をしないといった方針の生命保険会社が多い。

生命保険会社各社は、この基本原則に立ち、投資の軸を円金利資産である公社債(国債や社債)等に据えつつ、厳格なリスク管理による外国証券(外国株式や外国債券)等のリスク性資産にも投資している。

また。

特定の資産への投資に傾注するのではなく、投資対象・投資国・投資期間等を分散する分散投資によってバランスの取れた資産運用を行い安定的な収益力の向上を図っている。

このように顧客から預かった多額の保険料を様々な資産に投資するため、その規模は相当なものになることから、生命保険会社は有力な機関投資家(大量の資金を使って株式や債券で運用をおこなう個人ではない大口投資家)であると市場でみなされている。

なお。

保険事業部門と資産運用部門では、業務内容や対象顧客があまりにもことなるため、関連性がないように見えるが、顧客から預かった保険料が無いと資産運用はできないし、顧客から預かった保険料を確実に増やすことができないと、顧客に約束した保険金や給付金、配当金を支払うことができなくなる。

まさに両者は切っても切れない関係にある。

資産運用部門<フロント>

顧客から預かった保険料を様々な資産に投資し、運用するポジション。

資産によって特性がことなるため、それぞれの資産ごとにその道のスペシャリストが運用をおこなう。

おもに以下のような資産運用をしている。

  • 国債・地方債:
    利息収入という安定性と高い流動性を確保することができ、社債は安定性と収益性が期待できる。そのため、これら公社債は、各社の資産運用における重要な柱である。
  • 国内株式:
    安定した配当収入と企業の成長におうじた値上がり益を期待できる資産であるため、一般的には中長期的な視点で投資が行われる。

なお。

近年では単に株式に投資をしてリターンを得るだけではなく、投資先企業との対話を通じて企業の発展に貢献し、長期に亘って投資をおこなう活動も活発になってきている。

  • 外国債券や外国株式:
    中長期な成長を見据えて投資し、海外の高い利回りを享受することができるが、為替リスク等があるためリスク管理が極めて重要になる。
  • 貸付:
    法人・団体への貸付は、幅広い分野の法人・団体を対象に、経営に必要な設備資金や運転資金を提供するもの。

生命保険会社によっては・・・

  • 住宅ローンや消費者ローンを通じて健全で豊かな生活設計に必要な資金を提供しているところもある。
  • 不動産:
    自社で保有する不動産や、賃貸用不動産にオフィスやテナントを入居させ、賃料収入という形で長期にわたり安定的な収益を確保する手法もある。こうした不動産による運用は、地域経済の発展に貢献できるともいえる。

フロントは、これら資産への分散投資や厳格な案件選別を通じて、リスク抑制と収益獲得を両立させている。

原則として資産運用部門のフロント業務は総合職がになうが、その運用額は億単位になることも多いため、若手のうちから第一線で活躍できることは稀だ。

資産運用部門<ミドル>

資産運用部門の戦略企画・立案、中長期的な市場見通しや、経済環境の予測に基づいた資産配分の決定、エコノミストやストラテジストと呼ばれる専門家たちとの情報交換等をおこなう。

資産運用部門<バック>

顧客から預かった保険料を原資とする投資資金が減ることの無いように、リスク管理が極めて重要なウェイトを占めるのが資産運用部門の特徴である。

投融資先やマーケット状況に対するきめ細やかなモニタリング、リスク管理部門や投融資の審査部門による、リスク量の計測や個別審査等を通じて、フロントに対する牽制を働かせている。

他にも、融資決定後の契約事務、投資した国内・外国証券の配当・利息受領手続きや株主総会対応等の管理業務もおこなう。

⑤海外事業部門における総合職の仕事

生命保険会社各社は、ここ数年は保険事業、資産運用事業共に海外に活路を見出すケースが多い。

「3分でわかる生保業界。現状と課題、今後の動向まとめ」の記事にも書いたとおり、海外では、まだまだ生命保険に加入するといった概念自体が浸透していない国が新興国を中心に存在する。

したがって新たなマーケット開拓を目的とした新興国への海外進出が顕著になっている。

海外で生命保険事業を営む場合は・・・

  1. 自前で生命保険会社を設立する方法
  2. 既存の生命保険会社に出資し経営に参画する方法

の2つある。

いずれも日本の生命保険会社の社員だけで構成されるわけではなく、役員や主要部門の責任者に就き、日本での生保事業の経験やノウハウを活かし、現地従業員と協力しながら会社の成長を図るといった形が多い。

海外での資産運用

また、資産運用に関しても、日本にくらべて海外の方が高収益な投資機会がある。

したがって金融市場の発達した先進国への海外展開が加速している。

資産運用事業の場合、先進国の方が日本よりも進んだ取組を行っているケースもあるため、場合によっては海外の経験やノウハウを国内に還元することもある。

これ以外にも、海外大手金融機関との提携・出資を機に相互に社員を派遣し合う等の人材交流をおこなうこともある。

その他

その他にも、すべての部門に重要な関わりをする業務もある。

その他の仕事の一例を以下にあげておく。

  1. 会社全体の経営戦略を企画する経営企画
  2. 法律・規制・コンプライアンスの面から契約締結等をおこなう法務
  3. 保険の引き受けや保全手続き
  4. 保険金支払に至るデータの管理や活用をになうシステム
  5. 保険数理や統計学に基づいた保険料や配当金の算出をおこなうアクチュアリー
  6. 人事・総務など

まとめ

ざっと紹介してきただけでも総合職の業務はここまで多岐に亘る。

この記事を読まれた皆さんも、生保業界には営業以外にもいろいろな仕事があることを理解してもらったのではないだろうか。

生保業界の仕事の魅力は、活躍できるフィールドが広いことだ。様々な部署を経験してゼネラリストになるもよし、特定の領域を極めたスペシャリストになるもよし。

自分の適性を踏まえてフィットする部署や働き方を見つけられるのではないだろうか。

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