ジェネリック医薬品とは?わかりやすくデメリット、問題点を解説

ジェネリック医薬品(=後発医薬品)がオリジナル医薬品(=先発医薬品)を完全コピーできないのはなぜか?の理由について解説します。

理由①特許のあいまいさ

特許ではオリジナル医薬品の作り方を100%記載しなくてもよく、「新しい発見の部分」だけを詳しく記載するだけでよいのです。したがって特許をよむだけでは「どうやって作るのか?」の部分がぬけています。

こちらもわかりやすくするために、例えを出します。

「コカコーラと味の素を組み合わせたら、すごい効果のある風邪薬ができました。実験のデータでは1日で風邪が治りました!作り方はコカコーラ・味の素・水を小さじ一杯ずつまぜて作ります。」

さて、このような特許があったときに、あなたは「新しい風邪薬」をコピーしてジェネリック医薬品を作れますか?

ここで生じる疑問としては、

  1. どうやって固まりにするの?
  2. そもそもこれは飲み薬?食べ薬?
  3. 大きさは?

などなど、特許では細かい部分がすこしずつ省略されていて、完全にコピーするとこはほとんど不可能なのです。

理由②まだ特許切れしてない有効成分との配合はダメ

もうひとつの理由は、「特許ぎれしている有効成分は使ってもいいけど、まだ特許切れしてない有効成分との組み合わせ配合はダメだよ」ということ。

医薬品ってとても複雑で、ひとつの成分で完結することはほぼ不可能。いろんな有効成分の組み合わせで成り立っているのです。

したがって例えば、

「コカコーラと味の素を組み合わせたら、すごい効果のある風邪薬ができました。コカコーラの成分は今回、新たに発見しました。実験のデータでは1日で風邪が治りました。作り方はコカコーラ・味の素・水を小さじ一杯ずつまぜて作ります。」

ここでもうひとつ発生する問題としては、

「コカコーラは特許切れした有効成分であるものの、味の素が特許ぎれしてない有効成分だった」という場合。こんなときに「味の素」を配合してジェネリックを作ることは許されません。

したがって、しぶしぶと似たような違う有効成分を使う必要があります。そうすることで性能がじゃっかん違ってくる問題があります。

これは商品ごとに違いますので、

「このジェネリック医薬品にはどのくらい信頼性があるのか?」

医師や薬剤師に聞かないと、わかりません。

ジェネリック医薬品はどこをコピーしているのか?

じゃあ一体、ジェネリック医薬品(=後発医薬品)は何をコピーしているのか?

というと、特許に書かれている「あたらしい有効成分で特許ぎれしたもの」の部分。医薬品なんて結局のところ、有効成分がしっかりと決められた量だけ入っていれば、効き目は十分にあるのです。

他の部分はそれなりに自由であり、医薬品としての効き目を失わない範囲であれば、イジることができます。たとえば新しい味をつけてみたり、色をかえてみたり、解けやすさをかえてみたり、なにか違う有効成分を追加したり…といったことができます。

ジェネリック医薬品メーカーの創意工夫

ジェネリック医薬品メーカーも、ライバルと戦うために創意工夫が必要。

なぜならジェネリック医薬品って作るのは簡単であり、ライバル企業がたくさんいるからです。ジェネリック大手だけでも沢井製薬、日医工、Meij Seikaファルマ、ニプロ、ニプロファーマ、東和薬品、日本ケミファなどなど…多数あります。

ジェネリック医薬品も「セールスポイント」がなければ売れない時代です。

そこであえてオリジナルの部分を少し変えています。オリジナルよりもっと、飲む人に満足してもらえる医薬品に進化させることが、ジェネリック医薬メーカーの仕事なのです。

たとえば、もっと飲みやすい味にしてみたり、解けやすくして有効成分が効きやすい工夫をしてみたり、違う有効成分を追加して機能を追加してみたり…もちろん「効き目を損なわない範囲で」ということになりますが。

これによる「デメリット・問題点」

ジェネリック医薬品が良かれと思ってやった創意工夫により、デメリットや問題点も出てきます。

たとえば、頭痛薬ロキソニンのジェネリック医薬品をつくるにあたり、甘くして飲みやすくするために「ロキソニンには使われていない甘味料」を使ってみたら…それが実は…みたいなことです。

繰り返しになりますが、デメリットや問題点は商品ごとに異なります。「ジェネリック医薬品は……」というように、ひとくくりに説明できるものではありません。

で、結局は医師・薬剤師に聞いてみないことにはわかりません。

なにしろ、私たち消費者には情報が届かないのですから…。医師と薬剤師にしっかり説明責任を果たしてもらいましょう。

※注)私はジェネリック医薬品メーカーのまわしものではありません。

ジェネリック医薬品の効き目は「商品ごとに違う」が正解

ジェネリック医薬品(=後発医薬品)はオリジナル医薬品(=先発医薬品)の完全コピーではありません。

だから、

「このジェネリック医薬品、味も形もオリジナルとまったく違うじゃん?本当に効き目あるの?」

「ジェネリック医薬品って劣化版コピーでしょ?そんなんで大丈夫?」

という質問があってあたり前。

で、これに対する回答は「ジェネリック医薬品にもいろいろある。ほとんど完全コピーに近いのもあれば、一部の有効成分だけをコピーしているものもある。結局は医師・薬剤師に相談しないとわからない」となります。

ただざっくりとは、そもそも効き目が同じでなければ厚生労働省の許可を得られず、市場に出回ることはありません。

ジェネリック医薬品のメリット・デメリット・問題点

つづいてジェネリック医薬品のメリット・デメリット・問題点について、まとめておきます。とくにオリジナル医薬品と比較してみます。

メリット「安い」

ジェネリック医薬品のもっとも大きなメリットは「価格が安い」ということ。むしろ、これ以外のメリットはあまり思いつきません。確かに特徴あるジェネリック医薬品もあるにはありますが…。

ただし注意点として、簡単な頭痛薬レベルの医薬品であれば価格の差は実感できません(もとの値段が安いから)。1000円の頭痛薬が500円になったとして、誰も気にする人はいないでしょう。

ところが世の中、一錠○万円もする高額な治療薬があります(たとえば癌の治療薬とか)。ジェネリック医薬品は今後、こういった高額治療の分野に適用していくことが期待されます。

デメリット・注意点・問題点のまとめ

十分に解説してきましたが、念のためまとめておきます

  1. デメリット「ジェネリック医薬品は100%完全コピーじゃない!」
  2. デメリット「ジェネリックは商品ごとにコピー度合いが違う。結局は医師・薬剤師にしかわからない…」
  3. デメリット「ジェネリック医薬品は自分だけの判断で使わないこと。普通の処方箋とおなじように、医師・薬剤師のアドバイスが必要」

間違っている「ジェネリック医薬品の問題点」

  1. 誤り×ジェネリック医薬品は劣化版コピー
    → 品質に問題がある、というよりも「100%完コピじゃない」が正しい。それは医師・薬剤師が事前にちゃんと説明すべきことであり、ジェネリック医薬品メーカーの責任にするのは間違っている。自分たちの説明責任をメーカーに転嫁するんじゃない!
  2. 誤り×ジェネリック医薬品は製造管理が甘いため「信頼性がない」
    → これも間違い。製薬メーカー大手だって製造管理に甘い部分はあるし、本当にいいの?と思う材料の使い方もしている。具体的な企業名は公開しないが…
  3. 誤り×ジェネリック医薬品は「品質にバラつきあり」
    → これも間違い。製薬メーカー大手だって品質のバラつきはある。ジェネリックだから…というのではなく、それぞれの企業がどれだけマジメに作っているか?というだけの話。企業ごとの問題である。

そもそも「ジェネリック医薬品」とするから混乱する

そもそもなぜ、「ジェネリック医薬品(=後発医薬品)」と「オリジナル医薬品(=先発医薬品)」とを分ける必要があるのでしょうか?

「ライバルの特許ぎれ → 新規参入」なんていうのはメーカーであれば、あたり前のようにやることです。自動車メーカーだって、化学メーカーだって、食品メーカーだって同じこと。

医薬品は医薬品であって「ジェネリックもへったくれもない」と思うのは私だけでしょうか?

これは国が勝手にきめた、あるいは海外で「ジェネリック医薬品」と呼ばれているからそのまま言葉を輸入しただけなのかもしれません…。

いずれにせよ消費者を混乱させるだけなので、「ジェネリック医薬品」なんていう言葉を使う必要はなかったでしょうに…。

先発医薬品/ジェネリックメーカーの一覧

製薬業界(=医薬品業界)とひとくくりにしても、その中には実に多くの企業があります。製薬メーカーは大きく以下4つに分類できます。

①先発医薬品メーカー

武田薬品工業、アステラス製薬、大塚HD、第一三共、エーザイ、中外製薬、田辺三菱製薬、大日本住友製薬、協和発酵キリン、塩野義製薬、小野薬品工業、大正製薬HD、参天製薬、久光製薬 ほか

icon-hand-o-up 世の中にない「新薬」を生み出す会社

②後発医薬品(ジェネリック)メーカー

日医工、沢井製薬、ニプロ、ニプロファーマ、東和薬品、日本ケミファ、ダイト、富士製薬工業、鶴原製薬、テバ製薬、サンド、マイラン製薬、エルメッドエーザイ、第一三共エスファ、日本調剤グループ、長生堂製薬、共和薬品工業、キョーリンリメディオ、大原薬品工業、陽進堂、辰巳化学、大興製薬、日新製薬、田辺製薬販売、東亜薬品、富士フイルムファーマ、シオノケミカル、Meiji Seika ファルマ、健栄製薬、日本点眼薬研究所、小林化工、あすか製薬、あすかActavis製薬、ケミックス、科研製薬、日本薬品工業、全星薬品工業、ほか多数

icon-hand-o-up  特許切れ医薬品のコピーを製造・販売するメーカー(ジェネリック医薬品メーカー)

③バイオ製薬メーカー

先発医薬品メーカー、サンバイオ、シンバイオ製薬、ペプチドリーム、ジーエヌアイグループ、ジーンテクノサイエンス、グリーンペプタイド、カルナバイオサイエンス、ほか多数

icon-hand-o-up バイオ医薬品をメインとする会社

④その他(漢方薬・OTC医薬品など)

ツムラ、興和、ロート製薬、エスエス製薬(OTC医薬品に特化) ほか

icon-hand-o-up 漢方薬などの「東洋医学」で勝負するメーカーや、OTC医薬品(一般用医薬品)メーカーなど

製薬メーカーはざっくりと先発医薬品・後発医薬品・バイオ医薬品・一般用医薬品・その他医薬品とにわけられますが、大企業であれば一通り何でもやっており、ジェネリックの製造・販売は子会社化しています。上記は理解しやすくするための一般的な区分け、とお考えください。

参考記事→ 3分でわかる製薬業界。現状と課題、今後の動向【2017年版】