電話対応で「いかがいたしましょうか?」は敬語として正しい?間違い?
という疑問を解消していく記事。
まずは結論として「いかがいたしましょうか?」は電話対応で使っても構いません。
ただし一昔前まで「いかがいたしましょうか」は間違い敬語とされていたため、とくに目上の方(お年寄り)が相手であったときには「怒り」を買う可能性のある言葉です。でも最近は正しい解釈もできるとし、バイトくんのための「マニュアル敬語」によくでてきます。
ちなみに正解は、敬語としては解釈の仕方によって「正しい」とも「間違い」ともとれます。
なぜ正しいとも間違いとも取れるのか?なぜ反感を買うおそれがあるのか?
について、くわしくは本文中にて語っていきます。
また「いかがいたしましょうか」の正しい意味や、目上の人への正しい使い方、敬語の成り立ちについても解説しています。
※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。
この記事の目次
電話対応で「いかがいたしましょうか」は正しい?
電話対応で「いかがいたしましょうか=どうしますか?どのようにしますか?」が正しいかどうか、電話対応例をみて考えましょう。
次の使い方から、不適切な「いかがいたしましょうか」をお選びください。
電話対応例①お問い合わせ対応
(前略)
このたびは、お問い合わせ頂き誠にありがとうございます。携帯電話のご契約プランには、月々5000円のプランA、月々8000円のプランB、月々10000円のプランCの、3つがございます。プランAは~~という方へ、プランBは~~。
(中略)
プランA、B、Cからお選びいただけますが、
いかがいたしましょうか?
電話対応例②電話を受けたが、担当者不在
(前略)
営業部の○○ですね?おつなぎ致しますので、少々お待ちくださいませ。
~(営業部の○○が外回りで不在だった・・・)~
大変申し訳ございません。○○は終日、外出しておりまして・・・。
よろしければご用件を○○に申し伝えますが、
いかがいたしましょうか?
電話対応例③製品クレーム対応
(前略)
このたびはご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。
ご返金か、新しいものにお取替えをいたしますが、
いかがいたしましょうか?
▼▼▼▼▼▼
さて、この中で「ふさわしくない」と感じる表現はありましたか?
どれも使い方は合っていそうですが・・・
私がジャッジするのであれば、
- 電話対応例①は相手が選ぶわけだから間違いで「いかがなさいますか?」が正解。
- 電話対応例②③は「(自分が相手のために)どうするか?」と尋ねているのでOK。
でも人によっては「電話対応例①②③はすべて間違っている!!」と感じることでしょう。
とにかくこの「いかがいたしましょうか」は受け手によって感じ方の異なる表現であるため、注意が必要です。
なぜ人によって「正しい」「間違い」の判断が違うのでしょうか?理由をみていきましょう。
なぜ「いかがいたしましょうか」には2つの意見がある?
先に述べたとおり、「いかがいたしましょうか」には「正しい」という意見と「間違っている」という意見の両方があります。
私のようなおっさんからすると「完全に間違い敬語だろ」と思うわけですが、必ずしもそうとは言い切れません。
なぜ「正しい/間違い」の意見があるのか?答えはどっちなのか?
順を追って解説します。
「いかがいたしましょうか」敬語のなりたち
「いかがいたしましょうか」を敬語としてみると、
- 「いかが=どう、どのように=How」+「する」の謙譲語「いたす」
- 「ましょうか」は丁寧語「ます」+疑問形「か」
これらをあわせると「いかがいたしましょうか」の意味は「(自分が)どうする?どのようにする?」となります。
※謙譲語は自分の行為に対して、自分をへりくだって言うことで相手を立てる敬語。目上の人(上司・先輩)に対してなにか発言するとき、自分の行為に対してつかいます。相手の行為には使いません。相手の行為をうやまって使うときは「尊敬語」を使います。
つづいて正しい意見と、間違っているとする意見がわかれる理由について。
解釈①(自分が)どうする?と尋ねるから正しい
まずは「いかがいたしましょうか」が正しい敬語の使い方とする意見から。
「いかがいたしましょうか?」は自分の行為に対してのみ使い、「(相手のために自分が)どうしますか?」と確認する使い方。
「(自分が)相手のためにどうすればいいでしょうか?」なので、謙譲語「いたす」がふさわしい。
このように解釈すると、正しい敬語の使い方です。
解釈②どうする?を決めるのは相手だから間違い
つづいて「いかがいたしましょうか」が間違い敬語だとする意見。
「どうする?」を決めるのは自分ではなく相手だから、そもそも自分の行為に使う謙譲語「いたす」を使うのはおかしい。
この場合、相手の行為をうやまって使う尊敬語「なさる」を使って「いかがなさいますか」が正しい。
このように解釈すると、「いかがいたしましょうか」は間違った敬語の使い方です。
解釈①と②はどちらが正しい?
解釈①②をどちらが正しいか?
「いかがいたしましょうか」の例文で考えてみましょう。
- 例文①髪型は、いかがいたしましょうか?(美容室)
- 例文②ステーキの焼き加減は、いかがいたしましょうか?(レストラン)
- 例文③お荷物、いかがいたしましょうか?(ホテル)
- 例文④プランA、B、Cからお選びいただけますが、いかがいたしましょうか?(電話対応)
- 例文⑤よろしければご用件を○○に申し伝えますが、いかがいたしましょうか?(電話対応)
- 例文⑥ご返金か、新しいものにお取替えをいたしますが、いかがいたしましょうか?(電話対応)
これらの使い方はバイトくんの「マニュアル敬語」として、よく耳にする表現です。
解釈①(自分が)相手のためにどうしたらいいか?を尋ねる、という見方をするのであれば、例文はすべて正しい敬語。
解釈②「どうする」を決めるのが相手だ、という見方をするのであれば、例文はすべて間違い敬語。「する」の尊敬語「なさる」を使って「いかがなさいますか?」とするのが正解。
結局、どちらが正しいかは受けて側がどう感じるか?
ということになるのかと・・・。
私のようなおっさんであれば、解釈①はとんでもなく気持ち悪い使い方なので、解釈②として「いかがなさいますか」を使うのが正解。
ということになりますが…。答えは残念ながらありません。
それでも完全に間違いだといえる表現には、
- NG例×部長、お飲み物はいかがいたしましょうか?
→部長が飲み物をどうする?と尋ねるわけだから、謙譲語「いたす」は間違い
→「部長、お飲み物はいかがなさいますか?」が正解 - NG例×プランA、B、Cからお選びいただけますが、いかがいたしましょうか?
→選ぶのは相手だから、謙譲語「いたす」は間違い
→「いかがなさいますか?」が正解
がありますので、ご注意ください。
は自分の行為に対してのみ使い、「(相手のために自分が)どうしますか?」と確認する使い方。
「いかがなさいますか?」は相手の行為に対してのみ使い、「(相手が)どうしたいのか?」をたずねる使い方です。
つまり、この二つの違いを知るには、謙譲語と尊敬語の違いを理解すればいいということになります。
※どちらも敬語としては成立しますので、目上の人(上司・先輩)にも使える表現となっています。
目上の方へ適切かどうかを判断するコツ
少し話は逸れますが、言葉や表現が目上の方へふさわしいかどうか、判断するコツを紹介します。
見るべきポイントは
- ポイント①敬語としてあっているか、
- ポイント②言葉としてふさわしい表現か、
の両面でみていく必要があります。
敬語があっていても目上の方へ(あるいはビジネスシーンで)不適切な言葉はたくさんあります。たとえば「期待しております」は敬語として正しいものの、目上の方へ使うには不適切。敬語があっていればいい、というわけじゃないのです。
参考となる記事:
考えれば考えるほど、ドツボにはまる「いかがいたしましょうか?」
いかがいたしましょうか」が正しいか、間違いか、という議論は堂々めぐりを続けます。
考えれば考えるほど、私のようにドツボにはまっていくのでご注意ください。
で結局のところ、解釈の仕方で何でも正解になりそうです。
何度も同じことを申し上げて恐縮ですが、またまた例文で示します。
- 例文①お荷物、いかがいたしましょうか?
- 例文②お荷物、いかがなさいますか?
この2つの使い方って、どちらも考え方次第で正解に取れます(何度もしつこいですが・・・)。
考え方①:相手のために、自分が荷物をどうする(いたす)か尋ねたいから、
「いかがいたしましょうか?」が正しい!
考え方②:相手が荷物をどうする(なさる)か判断するわけだから、
「いかがなさいますか?」が正しい!
私のような古い人間は「考え方②」が圧倒的に正しいと思うのです。
けど最近は「考え方①」でも許されるみたい。ということで解釈の方法によって、どんな表現もOKになるし、逆にNGにもなってしまうのです…。
したがい、あなた自身のポリシーを決めましょう(答えになっていない)。
注意!言い換えたほうが良い「いかがいたしましょうか?」
さて、ここで少し脱線。
これまで示した「いかがいたしましょうか」の例文って、実はもっといい表現に言い換えできる場合があります。
「いかがいたしましょうか」という表現は、どうも使い方が「あいまい」だし、質問内容も「あいまい」なので、ビジネスシーンではベストな表現とはいえません。ビジネスパーソンは「コミュニケーションをシンプルに、誰にでも分かりやすく」することが求められます。
私たちは政治家じゃないのですから、言葉あそびをしているヒマなどありません。
そこで「いかがいたしましょうか?」をもっと良い、シンプルな表現に言い換えしてみましょう。例文はこれまでのものを使います、みなさんもご一緒に考えてみましょう(完全にうざキャラ)。
元の例文;
- 例文①髪型は、いかがいたしましょうか?
- 例文②ステーキの焼き加減は、いかがいたしましょうか?
- 例文③お荷物、いかがいたしましょうか?
- 例文④プランA、B、Cからお選びいただけますが、いかがいたしましょうか?
- 例文⑤よろしければご用件を○○に申し伝えますが、いかがいたしましょうか?
- 例文⑥ご返金か、新しいものにお取替えをいたしますが、いかがいたしましょうか?
言い換え例文;
- 言い換え①髪型は、いかがなさいますか?…
- 言い換え②ステーキの焼き加減は、いかがなさいますか?
- 言い換え③お荷物、お部屋までお持ちいたしましょうか?
- 言い換え④プランA、B、Cからお選びいただけます。いかがなさいますか?
- 言い換え⑤よろしければご用件を○○に申し伝えましょうか?
- 例文⑥ご返金か、新しいものにお取替えをいたします。いかがなさいますか?
参考となる記事;
まとめ
今回はこれでもかというくらい「いかがいたしましょうか?」が敬語として正しいかどうか、電話対応に使うのにふさわしいかどうか、について語ってみました。
でも結局のところ、正しい使い方を考えれば考えるほどに分からなくなってきます…。
使うときの注意点を必ずおさえ、相手をイラつかせないように気をつけましょう。
ご参考になりましたら幸いです。ではでは~~。