製薬メーカー大手5社(武田薬品工業・大塚製薬・アステラス製薬・第一三共・エーザイ)の年収を比較し、年収ランキングを作成。世の中の年収ランキングの考え方が根本的に間違っているため、正していきます。特に総合職を志望される就活生、転職者のための記事。
※ここでは特に、研究開発職、製造部門、その他スタッフ職、事務系間接部門の職種について語っています。MR(営業)職の年収は特殊なので別途、まとめを作成します。
まず製薬メーカーについてご存知のない就活生・転職者のために簡潔に。
「製薬メーカー」は文字通り医薬品を作るメーカーのこと。
製薬メーカーをもっと細かく分けると①先発医薬品メーカー(新薬の開発・上市をメインにする)と、②後発医薬品メーカー(=ジェネリック医薬品メーカー、特許切れの先発医薬品をコピーして作る)とに分けられます。
①先発医薬品メーカーの有名どころでは、製薬メーカー大手5社(武田薬品工業・大塚製薬・アステラス製薬・第一三共・エーザイ)などあり。外資系では、ファイザー、ノバルティス、グラクソ・スミスクライン、ロシュ、アストラゼネカ、サノフィ、メルク、バイエルなどあり。
②後発医薬品メーカーの有名どころでは、沢井製薬、日医工などあり。
そして、製薬大手5社といえば、製薬メーカーの中でも売上の大きい武田薬品工業・大塚製薬・アステラス製薬・第一三共・エーザイのことを指します。
それでは基本を復習したところで、製薬大手5社の年収をランキングしていきましょう。
就活・転職のご参考にどうぞ。
製薬メーカー大手5社の平均年収/平均年齢の比較
まずは一般論として、製薬メーカー大手5社(武田薬品工業・大塚製薬・アステラス製薬・第一三共・エーザイ)の平均年収・平均年齢を比較しましょう。年収データは、各社の有価証券報告書を参照しています。
※平均年収は一つ前の年度の有価証券報告書を参照。たとえば「2016年=2015年度実績」となります。( )内は平均年齢を記しています。
※大塚製薬は「持株会社:大塚ホールディングス」の傘下であるため、ホールディングスの年収で見ています。
2016年 平均 年収 |
2015年 平均 年収 |
2014年 平均 年収 |
|
No.1 大塚HD | 1116万円 (45.1歳) |
1080万 | 1104万 |
No.2 エーザイ | 1094万円 (43.8歳) |
1040万 | 1040万 |
No.3 第一三共 | 1092万円 (43.0歳) |
1112万 | 1036万 |
No.4 アステラス製薬 | 1069万円 (42.3歳) |
1056万 | 1035万 |
No.5 武田薬品工業 | 959万円 (40.0歳) |
945万 | 943万 |
平均年収を比較すると、2016年の実績は 大塚HD > エーザイ > 第一三共 > アステラス製薬 > 武田薬品工業 となっていることが分かります。
大塚HDの年収は総合職の平均値に近く、他4社は全体の平均なので一般職も含みます。比較対象が違うため、どこが最も年収高いか分かりません。
ただ製薬メーカーは工場ワーカーの数が少ない、もしくは製造部門を別会社にしている場合が多く、総合職の比率が高いです。これが他業界のメーカーに比べて平均年収が高くなっている理由の一つ(製薬メーカーだけがずば抜けて年収高い訳ではありません)。
※一般的に〜〜ホールディングスは総合職が多くを占めます。
それでは各社の総合職の年収を予測し、ランキングしていきましょう。
製薬メーカー大手5社の年収ランキング(総合職のみ)
製薬メーカー大手5社(武田薬品工業・大塚製薬・アステラス製薬・第一三共・エーザイ)の総合職における、年収を比較していきます。
※ここでは特に、研究開発職、製造部門、その他スタッフ職、事務系間接部門の職種について語っています。MR(営業職)は特殊なので別途、まとめを作成します。
※福利厚生、残業代、他手当ては加味していません。
No.1 武田薬品工業
平均年収では最も低い武田薬品工業が現時点では年収ランキングNo.1。
40歳・年収1000万円は総合職であれば誰もが到達する会社です。
ボーナスは他4社と比較して低いものの、基本給の高さで補っています。ただ、これにはマジックがある。主任クラス以降に裁量労働制となり、一定額の残業代を基本給に含んでいるためである。また降格人事もあったり、人員整理もあったりと、外資系的な会社になっており実際のところ、これらを加味すると他と変わらないかもしれません。
年 齢 | 役 職 | 年 収 | 基本給 万円/月 |
ボーナス 月数/年 |
---|---|---|---|---|
~29歳 | なし | 630万円 | 35 | 6.0 (※4) |
30歳 | 主任 | 810万円 | 45 (※1) |
6.0 |
35歳 | 主任 | 900万円 | 50 | 6.0 |
〃 | 課長代理 | 990万円 | 55 (※2) |
6.0 |
40歳 | 課長代理 | 1080万円 | 60 | 6.0 |
〃 | 課長 | 1260万円 | 70 (※3) |
6.0 |
45歳 | 課長代理 | 1080万円 | 60 | 6.0 |
〃 | 課長 | 1260万円 | 70 | 6.0 |
50歳 | 課長代理 | 1080万円 | 60 | 6.0 |
〃 | 課長 | 1260万円 | 70 | 6.0 |
55歳 | 課長代理 | 1080万円 | 60 | 6.0 |
〃 | 課長 | 1260万円 | 70 | 6.0 |
60歳 | 主任 | 810万円 | 45 | 6.0 |
(※1)(※2)主任クラス・課長代理は裁量労働制となる。基本給に一定の残業代(みなし労働手当て)を含む。総合職であれば主任まではほぼ自動的に昇格。課長代理は総合職であれば数年の遅れはあれど、いつかは昇格する。
(※3)課長への昇進で同期でも差が出る。総合職であっても昇格は難しい、同期入社1/5人くらいのイメージ?
(※4)年収はボーナス額で大きく変動する。そしてボーナスは会社業績(コア・アーニングス連動)と個人評価できまる。業績連動分は低位安定しているため大きく変わらないが、個人評価の良い人と悪い人で~1ヶ月/年の差がある。ここでは間をとった。
(※特別)同じ役職にずっと停滞していると、降格人事が行われる。行ったり来たりする。より外資系チックな年収体系に変わった。
No.2同率|エーザイ、第一三共、アステラス製薬
続いて年収ランキングNo.2は同率でエーザイ、第一三共、アステラス製薬。
40歳・年収1000万円に到達するには、部下なし課長になることが必須です。そうでなければ年収1000万円には少し届かず。
若手のうちは武田薬品工業よりも低い年収ではあるものの、これは残業代を除いているためであり、実際にはほとんど変わりないですね。
年 齢 | 役 職 | 年 収 | 基本給 万円/月 |
ボーナス 月数/年 |
---|---|---|---|---|
~29歳 | なし | 580万円 | 29 | 8.0 (※3) |
30歳 | 主任 | 640万円 | 32 | 8.0 |
35歳 | 課長代理 | 820万円 | 41 (※1) |
8.0 |
40歳 | 課長代理 | 900万円 | 45 | 8.0 |
〃 | 課長1 | 1000万円 | 50 (※2) |
8.0 |
45歳 | 課長代理 | 900万円 | 45 | 8.0 |
〃 | 課長1 | 1000万円 | 50 | 8.0 |
50歳 | 課長代理 | 900万円 | 45 | 8.0 |
〃 | 課長2 | 1200万円 | 60 | 8.0 |
55歳 | 課長代理 | 900万円 | 45 | 8.0 |
〃 | 課長2 | 1200万円 | 60 | 8.0 |
60歳 | 課長代理 | 800万円 | 40 | 8.0 |
(※1)課長代理は裁量労働制となる。基本給に一定の残業代(みなし労働手当て)を含む。総合職であれば課長代理までは自動的に昇格。
(※2)課長1(部下なし課長)への昇進で同期でも差が出る。なれない人もいる。
(※3)年収はボーナス額で大きく変動する。そしてボーナスは会社業績と個人評価できまる。研究開発職、スタッフ職は差があまりつかない。MRは別途まとめるが、個人の成果でほぼ決まる。
No.5 大塚製薬
平均年収トップの大塚製薬は、製薬大手5社の中では年収ランキング最下位。
40歳・年収1000万円に到達するには、部下あり課長になっていることが必須。これは総合職であっても1/3~5人くらいの難易度です。
基本給が壊滅的に低く、ボーナスをめちゃくちゃ高く設定しているという、会社にとって最も都合の良い年収体系となっています。製薬メーカーの年収ではなく、大手メーカーの年収体系。
年 齢 | 役 職 | 年 収 | 基本給 万円/月 |
ボーナス 月数/年 |
---|---|---|---|---|
~29歳 | なし | 594万円 | 27 | 10.0 (※2) |
32歳 | 係長 | 660万円 | 30 | 10.0 |
35歳 | 係長 | 704万円 | 32 | 10.0 |
40歳 | 係長 | 770万円 | 35 | 10.0 |
〃 | 課長1 | 880万円 | 40 (※1) |
10.0 |
45歳 | 係長 | 770万円 | 35 | 10.0 |
〃 | 課長1 | 946万円 | 43 | 10.0 |
50歳 | 係長 | 770万円 | 35 | 10.0 |
〃 | 課長2 | 1100万円 | 50 | 10.0 |
55歳 | 係長 | 770万円 | 35 | 10.0 |
〃 | 課長2 | 1166万円 | 53 | 10.0 |
60歳 | 係長 | 660万円 | 30 | 10.0 |
※総合職であれば係長まではほぼ自動的に昇格。
(※1)課長への昇進で同期でも差が出る。
(※2)大塚製薬は基本給が低くボーナス比率がめちゃくちゃ高い。年収はボーナス額で大きく変動する。そしてボーナスは会社業績と個人評価できまる。業績が比較的安定しているため大きくは変わらないが、今後は不透明。
役職ごとの年収比較
上の年収ランキングでは現実的な年収とするべく、極めて平凡なペースで出世していくものと仮定しました。実際にはもっと出世が早くなったり、遅くなったりしますので、役職ごとの年収もまとめておきますね。
武田薬品工業の役職ごと年収
役 職 | 年 齢 | 年 収 | 基本給 万円/月 |
ボーナス 月数/年 |
---|---|---|---|---|
なし | ~29歳 | ~595万円 | ~35 | 6.0 |
主任 | 30歳~ | 810~900万円 | 45~50 | 6.0 |
課長代理 | 32~40歳 | 990~1080万円 | 55~60 | 6.0 |
課長 | 40歳~ | 1260万円~ | 70~ | 6.0 |
部長代理 | 45歳~ | 1440万円~ | 80~ | 6.0 |
部長 | 45歳~ | 1800万円 | 100 | 6.0 |
※主任は裁量労働制のため、基本給に残業代(みなし労働手当て)を含む
※課長以上は残業代ゼロ
エーザイ、第一三共、アステラス製薬の役職ごと年収
役 職 | 年 齢 | 年 収 | 基本給 万円/月 |
ボーナス 月数/年 |
---|---|---|---|---|
なし | ~29歳 | ~580万円 | ~29 | 8.0 (※4) |
主任 | 30歳 | 640万円 | 32 | 8.0 |
課長代理 | 33~40歳 | 760~900万 | 38~45 (※2) |
8.0 |
課長1 部下なし |
40歳~ | 1000万円~ | 50~ (※3) |
8.0 |
課長2 部下あり |
45歳~ | 1200万円~ | 60~ | 8.0 |
部長代理 | 45歳~ | 1600万円~ | 80~ | 8.0 |
部長 | 45歳~ | 2000万円 | 100 | 8.0 |
※課長代理は裁量労働制のため、基本給に残業代(みなし労働手当て)を含む
※課長以上は残業代ゼロ
大塚製薬の役職ごと年収
役 職 | 年 齢 | 年 収 | 基本給 万円/月 |
ボーナス 月数/年 |
---|---|---|---|---|
なし | ~29歳 | ~594万円 | ~27 | 10.0 |
係長 | 31~40歳 | 660~770万円 | 32~35 | 10.0 |
課長 部下なし |
40歳~ | 880~990万円 | 40~45 | 10.0 |
課長 部下あり |
40歳~ | 1100~1210万 | 50~55 | 10.0 |
部長代理 | 45歳~ | 1320万円~ | 60~ | 10.0 |
部長 | 45歳~ | 1540万円~ | 70~ | 10.0 |
なぜ年収に違いが出るの?
なぜ同じ製薬メーカーで、似たような基本給なのに年収に違いが出るのか?
というとボーナスの過多、管理職以降の年収の伸び、管理職への昇格難易度、残業代によります。若いうち(~32歳くらいまで)の基本給というのは、大手メーカーであればどこも大して変わりません。
したがって年収ランキングの計算でよく見る「ボーナス4ヶ月/年で固定・基本給で差が出る」という計算方法は大うそ。実際にはメーカーの年収は、ボーナスの差・管理職以降の年収の差でしか違いを見出せません。
また、税理士が計算した年収というのも全くのデマ(どことは言いませんが)。税理士に大企業の年収体系はわかりません。さらに、年齢ごとに一定の割合をかけただけの年収サイトはもっと最悪です。まるで信憑性がありません。もちろん、私の作る年収ランキングが100%正しい訳ではないですが、かなり核心に迫っている自信はあります(実際に聞いているため)。
会社ごとの差が大きいボーナスはどうやって決まるか?
もっと深掘りしていきます。
「ボーナスの差で年収の過多が決まる」というのは本当。
でも一体、そのボーナスはどうやって決まっているのか?
というと、会社ごとにボーナスの決め方は違います(苦笑)。一般的には会社の業績が良ければボーナスも上がり、悪ければボーナスも下がります。
ただ、会社の業績が良くてもボーナスがあまり伸びない会社もあります(化学メーカーだと東レとか)。一方で会社の業績が悪くてもボーナスの良い会社もあります(化学メーカーだと帝人とか)。
そして極めて安定的な食品業界などは、ボーナスが全く動きません。年収ランキングを作りやすくて助かりますね。化学メーカーや自動車部品メーカーもまぁ、それなりに安定しているため、良くも悪くもボーナスの振れ幅は小さい業界ですね。一応、以下の記事でご確認を。
- 年収ランキングにだまされるな!隠れ高収入の食品・飲料メーカー総合職
- 年収ランキングにだまされるな!隠れ高収入の化学素材メーカー総合職
- 自動車部品メーカー年収ランキング《デンソー・住友電工・アイシン他》
一方でボーナスの振れ幅の激しい業界としては、鉄鋼業界(鉄鋼市況に左右されまくり)・自動車業界(為替に左右されまくり)・総合商社(業績により左右されまくり)・ゼネコン(建設・土木需要に左右されまくり)などがあります。
ただ結局のところ、ボーナスの決め方およびトレンドは企業ごとに把握しておく必要があります。とても重要なポイントなので、私の年収記事ではこの辺りのことはかなり詳しく書いています。ブログ内・検索で「企業名+年収」を入れて検索してみてくださいね。
結局、製薬メーカー大手5社で最も年収高いのはどこ?
色々と話が逸れましたが最後に結論です。
製薬メーカー大手5社(武田薬品工業・大塚製薬・アステラス製薬・第一三共・エーザイ)の中で最も年収の高いメーカーは?
「答えはその年のボーナスによります(汗)」としか答えようがありません。申し訳ありません。
そんな不確実な結論なのですが、確実なことを述べておくとすれば、
同じ役職・年齢であれば基本給は「武田薬品工業 > エーザイ・第一三共・アステラス製薬 >> 大塚製薬」となり、若いうちの昇給は武田薬品工業が最も早いのですが、そのあと昇格できなければ停滞します。
ボーナス額は「完全にその年の業績による」です。業績が上向くことだけを祈りましょう。結果として今の状況では武田薬品工業がNo.1かなぁ、という結論です。
各企業の年収についてもっと詳しく知りたい!というあなたは以下の記事にてご確認ください。