銀行員と聞けば「高給取り」「定時上がり」というイメージを持っている人も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし実情はそんないい待遇ではありません。
インターネットで「銀行」と検索すると「激務」という予測検索が出てくるほど、銀行員というのは皆さんが思うよりずっと大変な仕事なのが分かります。
昨今の日銀によるマイナス金利政策は、かつてないほど銀行業界に暗雲をもたらしています。
そのため銀行マンも今まで以上にきつい業務を少ない人員で行っているのが実情です。
ちなみに。
私の知り合いの某メガバンク管理職は「土日だけでもなんとか休めるようにするために、平日は7:00出社 → 深夜0:00帰宅が当たり前です…でも仕方ないですよね…」と言ってました。
メガバンクで管理職になるくらいだから優秀なのは間違いないのでしょうけど、それでもこんな感じ。
すみませんっ…脱線しました。
今回は。
「銀行員の仕事が激務ブラックと言われる5つの理由」について解説します。銀行の内情を知りたい方、今後銀行に就職・転職しようと考えている方はぜひ参考にしてみて下さい。
1. 厳しいノルマ
銀行員の仕事が激務ブラックと言われる理由その1
- 「厳しいノルマが課せられること」
社会人になれば少なからず売上目標が定められます。
もちろん銀行も例外ではありません。
銀行のノルマとはどのようなものなのか、あまり具体的に分からないという方がほとんどだと思いますので、いくつか紹介してみましょう。
営業担当に課せられるノルマ
営業担当とは、簡単に言えばテラーなどの窓口対応の職員(預金窓口を一般にテラーとおいう)及び渉外担当者(外回りで営業する職員)の事を指します。
この営業担当者は「顧客と直にふれ合う最前線の職員」であるためそのノルマも高いものが設定されています。
顧客の表面的ニーズ(顧客が求めているもの)と潜在的ニーズ(顧客の話から最も提案をし、現れるもの)を探り商品の提案をしていくのが仕事なので、銀行業務で取扱いをするほぼ全ての商品を販売する必要があります。
それに伴って多くのノルマを達成する必要があるのです。
以下にノルマの参考例をあげてみましょう。
預金関係 |
預かり資産 |
融資(消費性) |
融資(事業性) |
定期預金先数 | 国債 | カードローン | プロパー融資 |
積立預金先数 | 第一分野保険 | 車輌ローン | 保証付融資 |
年金指定替 | 第二分野保険 | 教育ローン | 代理業務融資 |
給与指定替 | 第三分野保険 | 個人ローン | 手形割引 |
各種口座振替 | 信託業務 | 住宅ローン | 当座貸越 |
※一部業務取扱いのない銀行等もあり。
以上の例から分かるように営業担当者には銀行業務のほぼ全ての商品について目標が課せられており、その中からさらに細分化されていきます。
たとえばカードローンの営業マンだと?
たとえば。
融資(消費性)のカードローンを参考に説明すると…
カードローン営業マンに課せられるノルマは、
- 極度額(貸付限度額のこと)
- 先数(カードローン保有顧客数)
の二つの目標に分けられます。
どういうことかと言うと…
①極度額10万円設定ノルマでは、目標100万円に達成するまで10件取る必要があるということです。
カードローンを既に持っている顧客に別のカードローンをすすめても②先数ノルマの計上にはなりません。
これによって分かるのは「ただその商品を取れば目標を達成できるわけではない」ということです。これが銀行員のノルマの厳しい理由となっています。
単純に顧客の求めているもののみを売っていくのでしたら、全ての商品のノルマを達成できません。こちらから様々なライフプランの提案をして、より良い商品に興味を持ってもらう必要があるのです。
これって言うのは簡単ですが実際にはかなり厳しいものがあります。
あなたなら。
銀行営業マンから突然電話がかかってきたとして、カードローンや投資商品などを契約したいと思うでしょうか?
はい、たいていの客は「興味ありません」で終わります。お金をただ預けるだけの人が世の中の大半を占めているのですから…
本部職員にもノルマはある!
次は本部職員のノルマについて説明します。
ノルマって営業マンだけに課せられるものだと思っているあなた。
それは間違いです。
どんな仕事であれ何かしらの「ノルマ」は存在します。
日本には大小の金融機関がありますので、本部業務について一概にいうことは難しいと思われますが、大まかな本部職員の仕事やノルマについて説明していきましょう。
- 「運用部門」におけるノルマ
運用部門は顧客の預金を使って資産運用をし、銀行に利益をもたらす部署です。
昨今のマイナス金利政策により融資の利ザヤでは収益を確保するのが難しくなった現代、この運用部門によって銀行が成り立っていると言っても過言ではありません。
運用部門の職員は失敗が許されない仕事なので、激務で離職率も高いです。
- 「営業推進部門」におけるノルマ
営業推進部門とは営業店で売る商品開発や、営業サポートの他、法人のコンサルタント業務を行ったりもします。
営業店がスムーズに数字を挙げられる環境をつくらないといけない重責と、新規取扱商品の決定など期日が決められた業務が多く激務の部署となっています。
- 「審査部門」におけるノルマ
審査部門は全営業店から回ってきた稟議を少ない人数で審査していく必要があります。
資金実行期日が近いものだと、スピードと正確さが求められるので失敗は許されません。
審査部門は銀行の花形と言われますが、実情はそこまできれいな職場ではないということです。
2. 時間外労働(残業)が死ぬほど多い
銀行員の仕事が激務ブラックと言われる理由その2
- 「間外労働(残業)が死ぬほど多いこと」
定時にあがれる銀行が存在するのかが怪しいほど、銀行業務は残業が多いです。
一般的に銀行の窓口が3時で閉まるので、定時あがりが基本と思われがちですが、窓口が閉まった後にも様々な業務があります。
以下にいくつか参考例をあげてみましょう。
預金 |
融資 |
渉外 |
伝票締め作業 | 伝票締め作業 | 預かり締め作業 |
現金・印紙・切手・重要印刷物締め作業 | 預かり締め作業 | 日報報告 |
帳票等の保管作業 | 帳票等の保管作業 | 明日の予定確認 |
※参考例
銀行業務にくわしくないあなたのために、窓口が閉まってからの業務をそれぞれ詳しく解説しておきます。
残業の要因1.伝票締め
伝票締めとは、顧客から預かった入出金伝票や、振込依頼書等をその日付でまとめて保管しておく作業です。
基本的な業務としては、当日処理した伝票の枚数と、現在手元にある伝票の枚数を計上していきます。
これは、普通預金出金伝票、普通預金入金伝票、定期預金伝票、定期積金伝票、振込伝票、税金、などと全ての取扱い勘定と伝票を付け合わせします。仮に枚数が合わなければごみ箱の中や、シュレダーの中まで確認し、誤廃棄などが無いかも確認していきます。
仮に伝票が見つからなかった場合は個人情報の漏洩となり銀行にとって大きなダメージとなってしまします。
そういった責任とプレッシャーと常に隣合わせで銀行員は仕事をしているのです。
簡単そうに見えますが実際にやってみると、ミスが許されないプレッシャーというのは本当に精神がすり減ります…
残業の要因2.現金・印紙・切手・重要印刷物締め
行内に残っている現金と当日処理した入出金によって変化した現金を計上します。
この作業が一日の銀行業務の中で一番気を張る作業で、例えば1円でも相違していればその原因を探るため、当日処理した伝票を全て見直します。(基本的には伝票金額と処理金額の相違により起こる)。
現金相違が起これば職員は帰ることが出来なくなります。
現金と同様に印紙と切手も付け合わせを行います。こちらも枚数が合わなければ、どこかに落ちていないか職員が探していく必要があり、机の裏からごみ箱の中など見つかるまで探し続ける必要があります。
重要印刷物とは通帳や証書の事で、当日中に発行した通帳の枚数を前日までの通帳の枚数から差し引き、現在手元に残っている分と付け合わせを行います。
残業の要因3.帳票類の保管
住所変更届や各種申込書など、伝票以外の顧客から預かった書類を別に綴って保管する必要があります。
この作業も基本当日中に終わらせる必要があるため、綴り作業が遅れると帰宅時間も比例して遅くなっていきます。
残業の要因4.預かり締め作業
融資担当者の場合、現在手元にある融資申込書と管理簿の記載に相違がないか確認します。これによって前日あったものが無かったり、また新たに増えたりしていないか確認することが可能です。
渉外担当者の場合、顧客から預かった帳票類や通帳などを、預かる際に顧客に交付する「預かり証」の記載と相違がないか確認します。
実際預かったものがきちんと存在し保管されているかを確認することで情報漏洩等を防ぐことに繋がります。
渉外担当者は外勤なので、行内の相互牽制が作用しないため不正がしやすい立場にあり、自分の身の潔白を証明するためにも確認作業は確実に行う必要があるのです。
残業の要因5.日報作成・明日の予定先確認
特に渉外担当者は日報の作成という業務があります。
当日に行った先、得た情報などを事細かに報告する必要があります。
現在はほとんどの金融機関でPCでの日報作成が可能なので利便性は向上しましたが…
それでもこの日報作業は今後別の担当者に引き継いだ時の重要な資料になるため適当に作ることはできません。
同じように明日以降訪問しセールス予定の先もリストアップし、効率よい業務が求められるのです。
これらの仕事を毎日銀行窓口が閉まってから行う必要があり、正確さとスピードが求められます。
慣れれば効率は上がりますが、それでもハードであることには変わりなく、激務と言われる理由の一つとなっています。
3. 取得すべき資格、通信教育が多すぎる
銀行員の仕事が激務ブラックと言われる理由その3
「取得すべき資格、通信教育が多すぎること」
ただでさえ忙しいのに、さらに資格取得でプライベートが犠牲に=罰ゲーム
これは銀行業務中の話というよりも業務後の話になりますが、取得すべき奨励資格が多く存在し、その勉強のためプライベートを犠牲にしなければなりません。
銀行員は資格を取得しなければ出世することが出来ないため、皆試験が近くなると帰宅してから遅い時間まで勉強をする必要があります。
平日では仕事と勉強を行っていれば休む時間も出かける時間もないため、激務とされているのです。
銀行員が取得するべき資格リスト
取得すべき銀行の資格は以下の通りです。
- 保険基礎単位(生命保険・火災保険・傷害保険)
- 保険専門課程(変額保険など)
- 証券外務員試験(国債販売など)
- 銀行業務検定
- ファイナンシャルプランナー技能士
- 日商簿記
- 税理士
- 中小企業診断士
- 行政書士
- 宅地建物取引士 など
以上は難関の国家資格も含まれるので一概に全部必要なわけではありませんが「銀行業務検定」「ファイナンシャルプランナー技能士」「日商簿記」の取得は絶対条件であることが多く、その他に中小企業診断士などの国家資格の取得を推奨されています。
また「保険基礎単位(生命保険・火災保険・傷害保険)」「保険専門課程」「証券外務員試験」は商品販売に必要な資格なので、1年目で取得する必要があります。
この他にも銀行が指定する通信教育を年間4~5つこなすことが必要で、うまくこなせる人でなければほぼ毎日のように勉強に取り組まなければならない、なんてことになるかもしれません。
なお、これらは銀行に限らず、信用金庫や信用組合、労働金庫などにも共通したものであるため総じて金融機関は自己啓発が付きまとうものだと考えて頂いて結構です。
逆に言うと試験に落ちてしまったり、取得すべき年次で取れなかったら出世から遅れるどころか周りから白い目でみられますので、職員は必死になって勉強する必要があります。
ただでさえ日常の業務が忙しいのに、さらに資格取得のためにプライベートまで犠牲にするのですから、どれだけ激務ブラックな業界かが分かります。
4. 体育会系すぎる
銀行員の仕事が激務ブラックと言われる理由その4
- 「体育会系すぎること」
銀行は上下関係がきっちりしている職場です。
上司の命令には基本的に従う必要があります。
また、上司の仕事を部下が手伝ってこなすことも多くあり、年次が低い職員は逆に自分の仕事と上司の仕事の手伝いを同時に行っていく必要があります。
この関係を苦と捉えるか訓練と捉えるかによって今後の銀行生活が変わってきますが、基本的にはそのハードさ故に辞めてしまう人が多いのが事実です。
実はここに若年層の離職率の高さの理由が潜んでいます。
上司の命令は愛の鞭?
上司など役職者は「数字をあげてなんぼ」の世界で仕事をしています。
もちろん数字を取ればその処理を一人でこなすのは不可能になってきます。
保証協会に提出する書類の整備や稟議書の整備などを任されれば部下がその仕事を代行し、意見陳述や最終的な見直しをできる段階まで整備しておく必要があります。
これは事業性融資などの若い一般職があまり手を付けられない仕事を少しでもやらせて覚えさせるためにわざと仕事を振っている場合が多いです。
しかし。
それを分かっていても自分の仕事で精一杯の一般職は、その仕事のハードさと、間違えることのできないというプレッシャーにやられてしまう職員は少なくありません。
なお、銀行業務では「今日中にやらなければいけない案件」としてその日の朝に渡されるケースも多く、そういった臨機応変な対応が出来ないと自分はこの仕事に向いていないと思ってしまう職員も多くなり離職率が上がる傾向となっているのです。
職場の人間関係がツライ
どの職場にもありますが、銀行は特に人間関係が重要です。
銀行業務は誰か一人が突出していれば良いということもありませんし、仕事ができない人が一人いればそれだけで仕事が回らなくなることも多いです。
特に入行1年目から難しい仕事を割り振られ、その仕事に対して一人でこなしていく必要があります。
このような立場に立った時、周りの先輩上司に聞きやすい環境が揃っていればまだ良いですが、行内は一人ひとりが必死に日中仕事をこなしているので、あまり仕事の事を聞きにくい環境である場合が多いです。
この風通しの悪さは銀行業界では結構多かったことです。
最近は改善されつつありますが、離職率の増加傾向は変わらず、まだまだ人間関係の構築不足により若手がいなくなってしまうケースも多いのです。
5. 転勤が多い
銀行員の仕事が激務ブラックと言われる理由その5
- 「転勤が多いこと」
銀行員がハードだと言われる理由として「転勤の多さ」もあげられます。基本的に2~3年で転勤が行われ、その土地にやっと慣れてきたという時に出て行ってしまうことが多いです。
転勤が多い理由としては「顧客と不必要に仲良くなることを防ぐため」と言われています。つまり、プライベートにまで関わる仲になると今後資金のやり取りで不都合が出る場合があるからです。
また、職員の横領などを発見したり、未然に防いだりするためにも必ずその職場からの移動は行われ、日本各地に支店のある大きな銀行などは転勤が嫌だと思う人が多いのが事実です。
なお。
銀行の転勤は1週間前に決まるということが多くあります。
決まってからは家探しから引っ越し準備、業務引き継ぎなどこなす必要があり、職員には多大な苦労がかかります。
世帯持ちは単身赴任するという選択を迫られることも多く、肉体的にも精神的にもきつくなっていく人が多いです。
まとめ
銀行業務とは「ノルマ」「資格」「残業」「人間関係」「転勤」この5つのハードさをのり超えていく必要がありますし、これらは定年退職まで続きます。
慣れることはないですが、若いうちはその仕事の辛さで辞めていく人が多いです。
しかし、それを乗り越える必要があっても銀行業務は面白いと感じることが多いのも事実。目に見えない商品を取扱いしているため、絶対の解がありません。
目の前の顧客一人ひとりに沿った提案をするため、自分を高め、顧客に喜んでもらえることに幸せを感じることが出来る人なら。
きっと激務と言われる銀行でもやっていけるでしょう(遠い目)。