【製薬業界の今後2017年版】-ジェネリックは? -MRの将来性は?

製薬メーカー各社は、国内市場がとんでもないことになってきたからといって、死ぬのを待つようなことはしない。今後どうやって拡大するかを真剣に考えている。

そうすると答えは少なく、以下4つに集約される。

  1. 今後の動向「より稼げる市場へリソースをシフトする」
  2. 今後の動向「稼げない市場ではコスト削減を徹底する」
  3. 今後の動向「M&Aによる拡大」
  4. 今後の動向「業界再編により、企業間で重複するコストの削減」

それでは具体的にみていく。

動向①日系メーカーは「米国市場へシフト」

日系メーカーの戦略はクリアで、どこも米国市場での拡大を最優先している。薬価制度の見直しでどんどん稼ぎにくくなる日本市場はとりあえず現状維持で、稼ぎやすい市場へ出ていく、ということ(各企業のデータは後ろで解説)。

先発医薬品メーカーが国内は減少しながらも全体でなんとか売上を伸ばしているのは、米国市場での好調、および買収した企業によるところが大きい。

ただしこれは先発医薬品メーカーに当てはまる事項であり、ジェネリック医薬品メーカーはまだ国内市場が伸びるので必要ないアクションである。

動向②外資系メーカーは「日本縮小」

一方で、外資系の製薬メーカーは明らかに日本縮小に動いている。国内市場が医薬品の値下げをうけて減少する、という見通しであるため仕方ない。外資系メーカーは今後も人員削減・リストラを実行していくものと考える。

●日本の製薬業界・市場規模;

  • 2014年:約10兆円

    今後3割減!!
  • 2025年予測:約7兆円

※米国研究製薬工業協会の試算を基に推測

動向③コスト削減(リストラ、早期退職、研究開発費縮小 etc)

一方で縮小していく国内市場でなにができるか?

というと考えられることは「コスト削減」「業界再編」しかない。先発医薬品メーカーの決算説明会資料をみると「コスト削減の進捗」という項目が必ずある。

具体的には以下のような手法でコスト削減を強化していくだろう。

  1. MRおよび研究開発職の早期退職
  2. 研究開発拠点の縮小、研究開発費の削減
  3. 年収の削減

製薬メーカーといえば、つい最近まで「雇用安定」「年収高い」というすばらしい業界であった(MR職は激務だけど)。今までは国の傘の下で「のほほ~ん」としていたが、先ほど述べたとおり状況はどんどん悪くなっている。

今後は「普通のメーカー」としての年収と雇用形態になっていくだろう。

※ただし今のところはまだ、年収も高いしそれなりには満足できる待遇である。

動向④グローバルでのM&A、業界再編

日本国内はジェネリック医薬品メーカーだけがエンジョイしている状況で、先発医薬品メーカーにとって残された道は「グローバル強化」「M&A」「業界再編」「選択と集中」くらいしかない。

これは外資系メーカーにとっても同じことで、以下の理由で日系メーカーよりも早くからM&Aを実施していた。

  1. 世界3位の日本市場は期待ゼロ
  2. 世界最大のアメリカ市場は競合激化
  3. さらにジェネリック医薬品とのシェア争い
  4. 製薬バブル時代をきずいた主力医薬品の特許ぎれ
  5. 新薬のネタ切れ
  6. 新薬開発コストの増加

結果としてグローバルでは以下のようなM&A合戦が繰り広げられている。今後も製薬業界は、グローバルで生き残りをかけた争いが繰り広げられるだろう。

●米ファイザーのM&A動向
2000年 – 米ワーナー・ランバード買収
2002年 – 米ファルマシア買収
2009年 – 米ワイス買収
2015年 – 米ホスピーラ買収(170億ドル)、ジェネリック医薬品
2015年 – アイルランド・アラガン買収(1600億ドル)←製薬業界最大のM&A

●スイス・ノバルティスのM&A動向
– 英グラクソ・スミスクラインとの大規模事業交換を実施
– 動物薬事業を米イーライリリーに売却

●バイエル
2014年 – 米メルクのOTC事業買収(142億ドル)

●仏・サノフィー
2015年 – 独ベーリンガー・インゲルハイムとの事業交換にむけた交渉開始

●武田薬品工業のM&A動向
2008年 – 米ミレニアム・ファーマ(約9000億円)
2011年 – スイス・ナイコメッド(約1兆1000億円)
2016年 – イスラエル・テバ製薬との合弁会社「武田テバ薬品」を日本に設立

●アステラス製薬のM&A動向
2005年 – アステラス製薬の発足(山之内製薬+藤沢薬品)
2009年 – 米OSIファーマ(約3700億円)

●第一三共のM&A動向
2005年 – 第一三共の発足(第一製薬+三共)
2010年 – インド・ランバクシー買収(約5000億円)→その後、結局売却した

●大日本住友製薬のM&A動向
2005年 – 大日本住友製薬の発足(大日本製薬+住友製薬)
2009年 – 米セプラコール買収(約2400億円)

●大塚製薬のM&A動向
2015年 – 米アバニア買収(約4200億円)

※為替はすべて買収当時のレート

製薬業界の今後 – MR(営業職)の削減

先ほど示したとおり、日系メーカー・外資系メーカーともに苦しい状況におかれている製薬業界(とくに先発医薬品メーカー)。とくに国内市場は今後のみとおしが厳しく、コスト削減しないと稼げない。

そのような状況において、MR(営業職)もあおりを受けるのは当然のこと。製薬メーカーは今後、「コスト削減」「販管費の削減」と称してMR職を削減していく。そうでなければ年収の引き下げが行われるハズだ。←すでにMR削減に入っているが、もっと大規模なリストラが必要とされる。

2016年・MR数は1000人減(対15年比)

2015年と16年で比較可能な64社のMR数を見たところ、1134人減少していたことが判明。

※調査元はミクス編集部

  • 2015年のMR数5万2609人(アンケート回答64社)

    ↓ MR数は1134人の減少!
  • 2016年のMR数5万1475人(アンケート回答64社)

これは確実に「早期退職」という名の下でリストラが行われたからに他ならない。

MR職に将来性はない

これだけは断言できる。

(金額ベースで)縮小していく国内市場において、MR職は削減するべき固定費との扱いを会社からうけるだろう。

したがってMRとして現職で働く方も、これから転職を考えているあなたも、一度よく考えるべきだと思う。ジェネリック医薬品メーカーのMRは給料安いから嫌だ…。なんて言ってられない時代になってきている。

ただジェネリック医薬品メーカーもバイオ医薬品ベンチャーも、雇用の安定性に欠けるし年収も魅力的なじゃない。

私ならそもそも、製薬業界への就職・転職はやめておく。ただし女性なら問題はない(45歳でリストラ候補になる前に退職しているから)。

製薬業界の今後 – 研究開発の人員削減

研究開発職だからといっても安心はできない。MR職だけでなく研究開発職においても今後、人員削減を余儀なくされるだろう。

これまで不要な人材にも高い給料を払っていたため、まずは定年が近い高給とりから早期退職を募り、それでも間に合わなければ中年層へ…というような段取りだろう。

企業ごとに、

  1. 年収をカットするのか?
  2. それとも人員をカットして年収は維持するのか?

を選ぶことになるが…たいていの場合、①②は同時に行われることが多い。※ただし今のところ年収は維持されている。

製薬業界のリストラ・ニュースまとめ