ゼネコン大手5社(鹿島建設・大林組・清水建設・大成建設・竹中工務店)の年収が高い理由について。ゼネコン大手5社の平均年収をみると900万円前後となっており、一部上場企業の平均年収598万円のおおよそ1.5倍となっています。
これってなぜでしょうか?
今回は就活・転職者のために、ゼネコン大手5社の年収が高い理由にせまります。
就活・転職のご参考にどうぞ。
ゼネコン大手5社の年収ランキング
まずは有価証券報告書から平均年収ランキングを確認しておきます。数字は2015年4月1日~2016年3月31日の有価証券報告書から持ってきています。
- 竹中工務店|年収921万円(44.4歳)
- 大成建設|年収917万円(42.8歳)
- 大林組|年収915万円(42.3歳)
- 清水建設|年収906万円(43.3歳)
- 鹿島建設|年収892万円(43.7歳)
ちなみに大手ゼネコン5社はいずれも、売上1兆円越えの巨大企業です。そして2013年~2016年あたりはオリンピック需要に助けられ、業績も好調。2015年度にはゼネコン大手5社の利益は、かつてのバブル期(1980年代後半-1991年)をも上回ったようです。
日本でも有数の売上を誇る企業は年収も高いですね~。と普通なら納得するところですが、売上が1兆円超えていようと、売上3000億円であろうと年収にはあまり影響しないハズであって…。
平均年収が高いのには何か裏があるのでは?と考えるヒネクレた筆者なのです。
ゼネコン大手5社の平均年収が高い4つの理由
さて、前置きが長くなりましたが本題にはいりましょう。
理由①高卒の採用数が少ない、大卒の総合職が多い(≒高学歴)
平均年収を考える上でもっとも重要なのは、従業員の構成です。
あたりまえのことですが、
年収の低い高卒や一般職の比率が高ければ平均年収は下がり、
年収の高い大卒・総合職の比率が高ければ、平均年収は上がります。
たとえば、メーカーの平均年収が金融業界やベンチャー企業に比べて低いのは、従業員が高卒の一般職ばかりだから。工場ワーカー、ラボワーカー、経理実務などの職種は基本、派遣か一般職。そしてモノをつくっている限り、現場には多くのワーカーが必要です。
結果としてメーカーにおいて、給料の高い大卒・総合職の比率は10%未満であることが普通です。したがって平均年収は一般職のものに近くなります。
ゼネコン大手5社の従業員比率は?
結論は先に書きましたが、総合職の比率が高いのです(ここでは地域総合職も「総合職」として考えます)。これはゼネコン大手5社の新卒採用人数をみるとわかります。
東洋経済社の会社四季報によると、ゼネコンの新卒採用数は200名前後となっています。年による多い、少ないはありますが、これを各社の平均勤続年数・おおむね20年で掛け算してみましょう。
すると総合職の人数は、
- 採用数200名 x 平均勤続20年 = 4,000名 (2017年現在)
となります。が、これは最近の傾向であって景気のよかったバブル期には、メガバンク並みの新卒採用をしていました(採用数1000名くらい)。
バブル期のベースで総合職の人数を考えると、
- 採用数1,000名 x 平均勤続20年 = 20,000名 (バブル期)
今考えると恐ろしい限りですが、バブル期の採用数も加味すると従業員のほとんどが総合職と考えられます。
※ゼネコン5社の契約社員のぞく従業員数は、おおむね7,000-9,000名です。
ゼネコン大手5社にはなぜ、高卒ワーカーが少ないのか?
ゼネコンの仕事って、商社の仕事を応用したようなもの。
顧客(不動産会社、ディベロッパー、地方自治体)の間にはいって工事を監督し、実際に作るところはすべて下請け会社にやらせます。これがゼネコンに高卒ワーカーが少ない理由。
たとえばオフィスビルができるまでを図式化すると、こんな感じ。
ディベロッパー(ビルのオーナー) ⇔ 大手ゼネコン(工事請負) ⇔ 下請け業者(実際の建設)
ゼネコンは建設を請け負うものの、実際は最適な下請け業者に割り振るだけです。
中間マージン・ビジネスなのですよね。商社に建築デザイン、研究、現場監督機能がついたようなイメージ。現場監督くらいは高卒や地域総合職でもいいけど、他の仕事は総合職でないと難しいのです。したがって大手ゼネコンは総合職の比率が高くなります。
商社において総合職比率が高く、平均年収が高いのと同じ理由ですね。
理由②残業がおそろしく多い
これはすでに何度も解説していますが、ゼネコンは激務・残業多い業界で有名です。とくに現場に近い工事監督責任者、デザイナー、設計の職種は激務。いっぽうで営業職など、事務系の職種は許容範囲。
全従業員の残業時間を平均すると、月60~80hくらいにはなるものと推測します。残業が月30時間の人もいれば、月120時間の人もいるのです。
残業が多い理由について、詳細はこちらの記事(”建設業界(ゼネコンなど)が激務・ブラック業界といわれる4つの理由 ”)にしています。
残業代の試算(月80h想定)
さて、残業時間が月80hだとすると、残業代はどれくらいになるでしょうか?
- 基本給25万円(25歳の目安)|残業代170万円/年
- 基本給32万円(30歳の目安)|残業代218万円/年
- 基本給37万円(35歳の目安)|残業代252万円/年
これは夕刻に残業をした場合のみの試算であって、プラスαで深夜早朝残業の加算、土日祝出勤加算などがあります。一般的な大企業の残業時間が15~30hくらいだと考えると、月80hの残業は異常におおい。
したがって、残業代の支払いが多いゼネコンは、平均年収も高くなります。
ちなみに、なんちゃって管理職(ゼネコンの場合は35歳前後)になると、残業代は基本給に含まれるようになります。それも全従業員が同じ金額の「みなし労働手当て」しかでないので、実際には手当て以上の残業をすることになります。激務な人にとっては不公平きわまりない制度ですね…。
理由③現場手当など、ゼネコン特有の手当が多い
一般的な日系の大企業では、通勤手当・住宅手当・出張手当・外勤手当・役職手当・地域手当などの福利厚生があります。
ゼネコン、とくに現場に近い従業員はこれに加えて「現場手当(≒危険手当?)」などの手当てが加算されます。
残業と手当を加味すると若手(~35歳)の年収がいちじるしく高くなり、基本給+ボーナスの1.5-2.0倍くらいになっちゃいます。それだけ身を削って仕事をしているわけですから、当然といえば当然です。
理由④平均年齢が高い
日系企業の年収は、なんだかんだ言って年功序列です。したがって平均年齢が高ければ、平均年収も上がります。
ゼネコン大手5社の平均年齢は冒頭でも示しましたが、以下のようになっていましたね。
- 竹中工務店|年収921万円(44.4歳)
- 大成建設|年収917万円(42.8歳)
- 大林組|年収915万円(42.3歳)
- 清水建設|年収906万円(43.3歳)
- 鹿島建設|年収892万円(43.7歳)
上場企業の平均年齢は「40.2歳」です(出所:東京商工リサーチ、2013年のデータ)
いっぽうでゼネコン大手5社の平均年齢は「43.3歳」。ゼネコン大手5社は平均年齢が高く、またバブル期の大量採用もあって50歳代の社員が多いものと推測。さらに、その後の不景気により20代~40代前半の社員数は少なくなっているでしょう。
50歳代の仕事もしない、なんちゃって管理職の総合職社員が年収1000万円前後だとしたら、どうなるでしょう?簡単に平均年収が上がります。
ゼネコン大手5社の年収は低くないが、突出して高いわけでもない
ゼネコン大手5社の年収は平均だけみると、とても魅力的。
でも実際には突出して年収が高いわけではなく、中堅ゼネコンも含めて他にも同じような年収体系の企業はたくさんあります。
ようは大卒・総合職でなおかつ、それなりにちゃんとした大企業に入れば、同じかもっと高い年収になりますのでご安心ください。
※ただし若いうちは残業の多い会社、たとえば金融業界、商社業界、建設業界、メガベンチャーのほうが年収高い。
それでもまだ信じられない就活生・転職者のために、平均年齢43.3歳に近いメーカーの平均年収もあげておきましょう。
- 積水化学工業|年収922万円(43.0歳)
- 旭化成|年収921万円(43.5歳)
- 信越化学工業|年収842万円(42.0歳)
※注)これらのメーカーの平均年収は総合職のものではなく一般職の年収に近い。
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ゼネコン大手5社の年収(特に総合職)まとめ
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19卒の就活生なのですが、積水の平均年収は総合職平均で922万となっていたのですが、上記の話は違うのではないでしょうか。