激務・ブラック業界とのウワサがある「建築・建設業界(ゼネコンなど)」。今回は、なぜ建設業界が2chなどの掲示板で「激務・ブラック業界」と書かれるのか、理由を解説していきます。
就活・転職のご参考になりましたら幸いです。
理由①短納期・短工期=激務になる
「建設業界=ブラック・激務業界」と言われる理由の一つに、短納期・短工期があります。
建築・建設物というのは、依頼主(顧客)から納期を設定されます。
ゼネコンであればダムとか橋、トンネル、オフィスビル、マンション、その他不動産の工事を請け負うことが多い。たいてい、工事期間2017年1/10~3/31みたいな看板がありますよね。それが、ゼネコンの工期です。
決められた納期で完成できないと、契約違反となり遅延した分の罰金が発生。
そして建築物・建設物の工期はどんどん短く設定されてきている。これはバブル崩壊以降、客の立場がゼネコンよりも強くなってきたから。バブル期のゼネコンは、嫌な仕事は受けなかった。
でも、ただでさえ業績の悪い業界であるため、そんなことも言ってられない。短納期の仕事も取っていかないと会社が潰れてしまう。
結果、従業員は激務になります。
②建設業界は競争過多(企業が多すぎ)=激務・ブラック化する
日本はもう、成長期は通り過ぎて成熟期に入っている市場です。
一通りのインフラも整っているし、住宅やマンション、オフィスビルも十分に足りている状況。新しい建築物なんて必要最小限でいいのです。結果、建設業界の仕事はどんどん減っています。
これは大手50社(ゼネコン大手~中堅~下請け)の建設受注状況の推移を見ればすぐにわかります。バブル期と比較すると、2015年度は受注高が半減!!
受注高は半減しているのに、スーパーゼネコン5社(鹿島・清水建設・竹中工務店・大林組・大成建設)は潰れてないし、中堅・小規模ゼネコンもあいかわらず生き残っている状況。
客からするとローコスト・短納期で建設を請け負ってくれるので嬉しい限りですが、ゼネコンからすると、おもしろくないでしょうね。まったく儲からないのですから。
儲かっていない業界・企業というのは社員にサービス残業をさせる(人件費を下げる)か、社員数を減らして一人当たりの仕事量を増やす、でしか利益を出せないのです。
ということで、競争が激しすぎて儲かってないことが「建設業界=ブラック・激務業界」になっている理由です。
参考資料:大手50社の建設受注高推移(ざっくり)
- 1990年度:建設工事受注高25兆円
- バブル期
- 1991〜2000年度:15~19兆円
- バブル崩壊〜失われた10年
- 2001~2008年度:11~14兆円
- いざなみ景気
- 2009~2012年度:10兆円
- リーマンショック
- 2015年度:13.7兆円
- 現在
※まぁ、オリンピック需要が終わればゼネコンを始めとする建設業界は国内縮小、業界再編にむかうでしょう。ゼネコンなんて日本に2~3社だけで十分です。
③転勤が多すぎ=激務というより疲れる
「建設業界=ブラック・激務業界」と言われる理由の一つに、出張や転勤が多すぎることがあります。
特に技術系の職種、現場監督など。
ゼネコンは都内のオフィスビルを建てたり、地方の商業施設を作ったり、いろいろやってます。一つの案件が2~3年で完了したら、次の仕事に移ります。
たとえば、
「都内のオフィスビル案件が終わったら、次は北海道の商業施設建設に行ってくれ!」
「次はベトナムのマンション建設現場に行ってくれ!」
「3ヶ月間、ホテル泊り込みで現場監督してくれ!」
「半年間、ホテル泊り込みでアメリカの建設現場監督してくれ!」
などなど。ひとつの場所に永住することは不可能です。そして、そのサイクルが激早です。大卒・総合職にはどの業界も転勤がつきものですが、建設業界は異常。
※これはプラントエンジやメーカーのエンジニア(土木・建設・機械)も一緒。
④バブル期に採用しすぎ、でも若手は人材不足=若手ほど激務
バブル期には、日本国内で建設業界(ゼネコンなど)が請け負う仕事は2017年現在の2倍以上ありました。
ゼネコンを始めとする建設業界は、その期間に人材を確保するため採用人数を激増させて、その後のバブル崩壊により採用人数を絞りました。
結果、40代後半~60歳ちかくの人材余剰が深刻で、実際に働く若手・中間層が不足。
さっさとリストラすればいいのに、終身雇用で簡単にはクビにできない。
《仕事がないにも関わらず》
したがって人材不足になっている若手・中間層は激務になります。
⑤サービス残業が横行=激務・ブラック業界
さすがにスーパーゼネコンだと、ちゃんと残業代も出る。
《ただし上司と部署によりサービス残業させられる》
準大手以下のゼネコンは、残業代を実際の半分くらいしかもらえない。残業が多ければ多いほどサービス残業の比率が増えていくという不思議。
厚生労働省がしっかりと監視すべき問題なのにね…。
そして管理職になってからは、もっとタチ悪い。実際の残業は月100時間なのに、裁量労働制(残業代ゼロ)だから時給換算すると悲惨なことに…。
ちょっと時給で年収を計算してみましょうか。
残業月100時間とすると管理職の時給は?
※月の労働時間:8 h x 20 days + 100 h = 260時間
※年間の労働時間:260 h x 12 = 3120時間
①年収1000万円(スーパーゼネコンの管理職年収)
時給:1000万円/3120時間 = 3,205円/時間
②年収800万円(準大手~中堅ゼネコンの管理職年収)
時給:800万円/3120時間 = 2,564円/時間
残業月200時間とすると管理職の時給は?
※月の労働時間:8 h x 20 days + 200 h = 360時間
※年間の労働時間:360 h x 12 = 4320時間
①年収1000万円(スーパーゼネコンの管理職年収)
時給:1000万円/4320時間 = 2,314円/時間
②年収800万円(準大手~中堅ゼネコンの管理職年収)
時給:800万円/4320時間 = 1,851円/時間
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ということで時給換算すると、結構かわいそうな感じになってしまうのです…。
実際、どれくらい激務なの?
具体的に、建設業界はどれくらい激務なのでしょうか?
まずは残業時間。
建設業界では、サービス残業も含めた実質の残業時間は月100時間以上があたりまえ、とお考えください。※月100時間の残業がどれだけ激務なのかイメージできない就活生はこちらの記事(残業100時間越えで過労死は情けない…長谷川教授に言われて実際やってみた結果ww)でご確認を!
続いて精神的な激務度。
ただでさえ短納期なのに、工期遅延できないプレッシャーがある。少しでも遅れようものなら上司や顧客、営業からのプレッシャーが凄い。普通なら精神病になります。
最後に仕事のやりがい。
建設業界は技術者にとって「つまらない仕事」です。なぜなら建設業界というのは概してローテクであり、革新的な技術など必要なく、既存技術の組み合わせだけで成り立つから。そして営業職もツライでしょうね。他社との違いを出せないため、値段でビジネスが決まるのですから…。つまり、激務なだけで「やりがいのない」最悪のブラック業界です。
間接部門は激務じゃない
ブラック業界と言われる「建設業界」ですが、激務じゃない職種もあるにはあります。
それは経理、財務、人事、購買などの「間接部門」といわれる職種。
これらの職種であれば、一般的な大企業のイメージで大丈夫です。ただ就活の問題点は、入社する前に職種を選べないことですがww。
バブル期の建設・建築会社は本当に楽しそうだった
ここで昔話。
30年前の就活生に最も人気だった業界ってご存知でしょうか?
実は「建設業界」とくに大手ゼネコンです(苦笑)。※証券会社と並ぶくらい人気でした
当時の社員は激務ではありましたが本当に楽しそうで毎日、銀座の高級クラブで今の価値で百万円単位のお金をばら撒いていました(もちろん会社の接待費です)。これは営業だけでなく技術系の社員も同じです。
そんな感じだったのでゼネコンに入社すると、おっさん社員から色々な武勇伝を聞くことになると思います。
「くだらないおっさんだな~」
と思っても、ちゃんと聞いてあげてくださいね。
まとめ
ここまで述べてきた内容で、建設業界における最も大きな問題は何か?
と聞かれると、
「競争が激しくて誰も稼いでないこと」
と答えます。
どんなに激務であっても、企業が稼いでいれば残業代は全て出ます。
とんなにブラック業界であっても自分の仕事が利益に貢献していれば、やりがいを感じます。
「ただ忙しいだけで何も生み出さない」
というのは最も悪いパターン(残業100時間越える時点であり得ないのだけど)。
そして建設業界はその「ただ忙しいだけ」という状況になっています。これは例外なく、どの企業にも当てはまり、建設業界全体がブラック業界なのです。
業界再編が行われることを切に願います。そして業界再編後は、まともな業界になることを祈っています。
どうぞこれからも宜しくお願い致します!!