品質保証部の仕事内容と激務度について。
品質保証の仕事内容とは?
ぶっちゃけ品質保証の仕事って楽なの?
やりがいってあるの?
という3つの視点から見ていきます。
ところで私は化学メーカー営業の仕事をしているのですが、自社のことはもちろん、他には自動車メーカー、化学素材メーカー、電子部品メーカー、電機メーカーなどを担当した経験があります。営業と品質保証って、何も関係ないようにお考えの転職者・就活生も多いことでしょうが、実は結構やりとりがあったりするのです。
最も多いのが製品クレーム(お客さんの品質保証担当が出てくる)、次に工場監査(お客さんが工場に来て、あぁだこうだと文句をつける)。残念ながら、どちらもあまり嬉しい仕事ではないのですが…。
前置きが長くなりましたが、そんな私から見た品質保証の仕事を解説していきます。
特に化学メーカーを志望される就活・転職者にむけた記事になります。
品質保証の仕事内容
まず品質保証の仕事には大きく4つあります。
①自社で製造したモノが品質規格に合うか、分析
一つは、自社で製造した製品が品質規格に合っているかを分析すること。合格であれば製品として認め、不合格であれば製造部門に突きかえす、という仕事内容です。品質保証は、製造部門から独立していることが一般的です。これはISO(ヨーロッパ発祥、品質を維持するための管理マニュアル)にて決まっているので、どの企業も同じですね。
②原料が品質規格に合うかどうか、受入検査
二つめは、原料が品質規格に合っているかどうかの受入検査をすること。メーカーがモノづくりをするためには原料が必須であり、この原料がサプライヤーと決めた規格に合っているかどうかのチェックです。これは会社や原料ごとにかなり違っていて、サプライヤーが出してくる分析表を見てチェックするだけの場合もあれば、ロットごとに自社でも分析して、おかしい部分がないかをチェックする場合もあります。
③工場監査の対応
三つめに、工場監査の対応です。
工場監査とは、原料サプライヤーの工場を監視にいったり、逆にお客さんが工場に監視にきたりするイベントのこと。要は、ちゃんとしたモノを作る仕組みが整ってるんだろうな?という調査のこと。メーカーと原料の重要度によりますが、3年毎くらいに実施します。この監査を受け入れる側は、いろいろな証拠資料を見せながら、品質管理をしっかりしていることをアピールするのです。
④品質クレーム対応
最後に、品質クレーム対応です。
品質クレームはないことが最も望ましいのですが、モノづくりをしている限りは避けられない運命です。品質管理の厳しさでは有名な、トヨタ自動車ですらリコールを頻発するのですから…。このクレームには「規格に合っていない!」といった重大なものから、「ちょっとした異物が入っていた」という些細なものまで沢山あります。
品質クレームは基本、営業 ⇄ 顧客 の間でコミュニケーションが行われますが、営業は何もわからないので結局のところ、品質保証部に原因究明と解決をまる投げします。そして、重大な顧客でクレームを起こした場合、品質保証部の責任者も出ていって謝罪と言い訳に出向きます。
化学メーカーのモノづくりは非常にあいまい。なぜ問題が起きたのか?どうやったら解決できるのか?わからない場合がほとんどであり結局のところ、何となく原因を推測して、何となく対応して終わる、というパターン多し。
⑤その他
あとは会社によって、国内・海外法規制への対応を品質保証部がやっていたり、めんどくさい証明書(有害物質が入っていないことの証明)を発行したり、MSDS(製品の取り扱い注意情報)の発行をしたり、ISO関連の取りまとめをやっているケースもあります。これは完全に会社によるので、付属的な仕事と考えられます。
※工場だけでなく、本社にも品質保証部門を持つ会社や事業があります。その場合、⑤その他の仕事をメインでやることになるかと。
品質保証部の仕事のやりがい
つづいて、品質保証部の仕事のやりがいについて。
残念ながら、仕事のやりがいはまるでありません。なぜなら頑張っても頑張らなくても、会社の業績に何も影響がないから。経理の仕事にやりがいを見出せないのと同じことです。
品質保証の仕事は「決められたことを確実に遂行すること」が最も重要であり、ルーティンワークです。決められた通りの手順で決められた通りの分析をし、決められた通りの製品スペックに入るかどうかをジャッジする。現場ワーカーはこれだけの仕事内容であるため、生活費を稼ぐ、ということ以外にやりがいを見いだすのは難しいかと。
また、品質保証の責任者(=品質保証部・課のトップ)は、品質クレームが起きないことを祈るだけの仕事です。こちらも、仕事にやりがいを感じられないでしょう。だから化学メーカーの品質保証部の責任者には、どうでもいい人(理系の窓際族、ただし大卒・総合職)しか配置されません。それでも部下あり課長ポジションなので年収は高い、というとても素晴らしい職種です(やりがいさえ求めなければ、という話)。
品質保証部の激務度、ぶっちゃけ楽?
まず化学メーカーにおける品質保証の仕事は、重大なクレーム、在庫が全然ない、のような状況にならなければ楽です。定時に出社して決められた仕事をこなし、定時になったら帰るだけの生活です。激務になりようがありません。
ただし重大な品質クレームがあれば、いろいろな分析や、原因の究明作業、改善策の模索などが必要となり、多少は残業する可能性あります。また在庫がひっぱくしている状況であれば、分析をできるだけ早くやらなければ出荷できないため、分析スケジュールを詰め残業する可能性あります。
ここまでが現場ワーカーの激務度。
いっぽうの責任者(大卒・総合職)はどうか?
というと手を動かさない分、現場ワーカーよりも仕事が楽です。定時に来て1日の分析スケジュールをチェックし、問題の有無をチェックし、あとはデスクに座っておくだけ。定時前に報告書を本社に提出し、それでお終いです。
「その他の仕事」によって激務になる場合あり
モノの分析と合否判定だけではあまりに仕事が楽すぎる、という理由から、品質保証部門にその他のいろいろな機能を持たせている会社や事業があります。
先に述べた通り、たとえば国内・海外法規制への対応を品質保証部がやっていたり、めんどくさい証明書(有害物質が入っていないことの証明)を発行したり、MSDS(製品の取り扱い注意情報)の発行をしたり、ISO関連の取りまとめをやっているケースもあります。
これらの仕事は時期によって、それなりに残業をする可能性があります。たとえば、使用禁止物質の規定が大幅に変わる、国内外の法規制が変わるときなど。
※工場だけでなく、本社にも品質保証部門を持つ会社や事業があります。その場合、⑤その他の仕事をメインでやることになるかと。
品質保証部門がそれなりに忙しい業界
品質保証部門は基本、産業の上流に位置する製品になればなるほど仕事が楽で、産業の下流に位置する製品になればなるほど、組織も大きくなり忙しくなります。なぜかというと、上流→下流にいくにつれて製品が複雑になり、分析項目が増え、製品の欠品も増え、顧客からのクレームも増えるから。
例として、品質保証部門であってもそれなりに忙しい業界を挙げておきます。「忙しい」といっても土日出勤するレベルではなく、月30時間程度の残業で済むとは思いますが…。
- 自動車メーカー(品質チェック項目が膨大)
- 自動車部品メーカー(品質チェック項目が膨大)
- 電気メーカー(品質チェック項目が膨大)
- 電子部品メーカー(不良率が高い)
仕事が楽だと思われる業界
つづいて、明らかに楽そうな業界。
- 化学素材メーカー
- 石油元売メーカー
- 鉄鋼メーカー
- 非鉄金属メーカー
- 食品メーカー
- 飲料メーカー
まとめ
私が転職するとしたら、品質保証の仕事もいいなぁ〜と思う今日この頃。理系じゃない時点でダメなのですけどね(汗)。実は品質保証の仕事にも、簡単な資格があると便利。必要条件ではないですが、あった方が役に立つ資格として品質管理検定(QC検定)というのがあります。1~4級まであり、責任者レベルであれば1級を保持しているとベター(実際には無資格の大卒が責任者をやっている)。
私もこのQC検定の講習会を過去に受講したことがありますが、化学業界に適用するにはレベルが高すぎて「適用不可能」です。理想論だけは学習したものの、何の役にも立ちませんでした。ということで化学メーカーで品質保証をやるレベルでしたら、資格は全く要りません。
あれ、なんか書いてることがチグハグになってきましたね…。眠いのでそろそろ終わりにします。ではでは〜。
非常に参考になる記事でした。
ところで、医療機器部門だと法規制対応が多くなりそうですが、本社部門だとやはり忙しいのでょうか?