ビールメーカーの世界ランキング2016年版。ビール業界の世界トップ10企業について特徴をざっくりとまとめています。就活と転職の業界研究にお役立てください。
詳細を解説する前に全体像から。上の画像に示したようにビール業界はベルギーのAB-InBevが世界No.2の英国SABMillerを傘下に収めて世界トップシェアの地位をより確実にしている。以下、オランダのハイネケン、デンマークのカールスバーグ・グループと続き、中国のCR Snowまでが世界トップ5となっている。世界トップ5までで世界ビール生産量の約50%を占め、トップ10までで世界生産量の70%を占める。
※全世界の生産量は19.3億ヘクトリットル、2015年。
※ランキングトップ10の企業だけを知りたい方は「見出し」からご確認ください。
世界10位 Castel Group(仏)
生産量2015年:29.8百万ヘクトリットル
Castel Group(フランス語;Groupe Castel)はフランスの飲料メーカー。1949年創業で家族経営のオーナー企業である。ワインの製造・販売会社としてはヨーロッパNo.1、ビールの製造・販売ではヨーロッパNo.2、清涼飲料分野ではアフリカNo.2。
世界9位 キリンビール(日本)
生産量2015年:43.1百万hl(約半分はスキンカリオール)
キリンビール(正式名称:麒麟麦酒株式会社)は日本のビール会社。近年、海外企業の買収に積極的でブラジルの最大手ビールメーカー・スキンカリオールを買収。それにより生産量ではライバルのアサヒビールを抜いた。ただしこの買収が足かせとなり経営状況は厳しい。
キリンラガーが最もポピュラーなブランドで、日本ではアサヒビールとの首位争いを繰り広げている。
また現在の法人は、持株会社であるキリン・ホールディングスの子会社・キリン株式会社の傘下にあり、ビールや発泡酒を製造する事業子会社との位置付けである。企業グループは三菱グループに属する。
世界8位 Yanjing(中国)
生産量2015年:48.3百万hl
Beijing Yanjing Breweryは1980年に創業された中国No.3のビールメーカー。中国ではしょぼい商品しか作っていなくても需要が大きいため勝手に売れてしまう。
世界7位 Molson-Coors → MillerCoors(米)
生産量2015年:58.1百万hl
年間売上:50億$
Coors Brewing Companyは1873年に米国で創業、老舗のビールメーカーであった。その後2008年に米国Coors Brewing Companyと英国SABMillerの合弁会社となり、MillerCoorsと改名した。
世界6位 青島ビール(中国)
生産量2015年:70.5百万hl
青島(チンタオ)ビール(英語名:Tsingtao Brewery Co. Ltd.)は1903年に創業された中国No.2のビールメーカー。 中国市場では15%のシェアを持つとされる。今や中国を代表するチンタオビールだが、その味は水に少し毛が生えた程度で決しておいしいとは言えない。
世界5位 CR Snow(中国)
生産量2015年:117.4百万hl
売上2016年12月期:不明
CR Snow(正式名称:China Resources Snow Breweries Ltd.)は1993年に創業された中国のビールメーカー。英国SABMillerと中国China Resouces Enterpriseの合弁会社である。中国市場では21%のシェアを持ち、中国最大のビールメーカーとなっている。
グローバル展開はイマイチだが、いかんせん中国需要が大きいために世界No.5のビール生産量を誇る。
世界4位 カールスバーグ・グループ(デンマーク)
生産量2015年:120.3百万hl
売上2015年12月期:95億$
カールスバーグ(Carlsberg)は1847年に創業されたデンマーク発祥の老舗ビールメーカー。買収によって規模拡大したためローカル・ビール会社の寄せ集めである。最も売れている商品はカールスバーグ・ビールだが、他にも以下のブランドがあり500以上のビールブランドを手がけている。従業員数は世界45,000人
- Tuborg(デンマーク、1970年に買収)
- Kronenbourg(フランスのビールメーカー買収)
- Somersby cider(炭酸飲料、オリジナルブランド)
- Baltika(ビール会社としてはロシアNo.2)
- Grimbergen(ベルギーで有名なビール)
世界3位 ハイネケン(蘭)
生産量2015年:188.3百万hl
売上2015年12月期:192億€
ハイネケン(Hineken International)はオランダの会社。1864年に創業開始。今では250以上のブランドを世界70カ国に展開している。
世界2位 SABMiller(英国)
生産量2015年:191.3百万hl
売上2016年12月期:220億$
SABMillerは成り立ちがごちゃごちゃで説明が難しいため、沿革を簡単に箇条書きする。
- 1895年:South African Breweriesとして創業開始。南アフリカ共和国のビール市場で独占的な地位を築く
- 1999年:ロンドン証券取引所に株式公開。
- 2002年:米Altria GroupからMiller Brewing Companyを買収し社名をSABMillerに変更
- 2011年:豪Foster’s Groupのビール事業を買収。
- 2016年:AB InbevがSABMillerを買収。
南アフリカのアパルトヘイト時代から続くビール会社。南アフリカはイギリスの植民地であり、経営者は最初からイギリス人だった。飲料メーカーとして150以上のブランドをもつ。代表的な製品にはCarling Black Label、Castle、Grolschなどがあり、世界75カ国以上に展開している。
※2016年にAB-Inbevに買収されたため2017年のリストからは消える。
世界1位 アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)
生産量2015年:409.9百万hl
売上2016年12月期:436億$
アンハイザー・ブッシュは160年以上の歴史ある米国の最大手ビール製造会社だったが、2008年にベルギーのビール大手のインベブ(Inbev)が買収。インベブはアンハイザー・ブッシュ・インベブ(Anheuser-Busch InBev、AB InBev)と改名し、アンハイザー・ブッシュは完全子会社となった。
米国のビール市場ではシェア約46%と圧倒的でバドワイザーが最もポピュラーな商品。インベブが買収したことでビール市場では世界トップシェアへと躍進した(買収前は世界No.3のビールメーカーだった)。
さらにその後、2016年に英国のビール大手メーカーであるSABミラーも買収。すでにNo.1だったビール市場での世界シェアは約30%になった。
200以上のビールブランドを持ちその中でも世界で最もポピュラーなバドワイザー(Budweiser)、バド・ライト、ステラ・アウトラ(Stella Artois)とベック(Beck’s)を保有して、世界19カ国でNo.1、No.2の市場シェアを持つ。
海外戦略および日本市場での運営
バドワイザーの海外生産・販売はそれぞれの国の現地メーカーとの提携の元で行われている。日本では麒麟麦酒(キリンビール)にライセンスし、キリンビールが製造・販売元となっている。一方で北米のキリンビールはアンハイザー・ブッシュ社が製造・販売している。
同じバドワイザーであっても国によって味が違うのは生産者が違うからである。
まとめ
世界トップ10社の累計生産量は約13億ヘクトリットル。全世界のビール生産量が約19億ヘクトリットルであることを考えると世界のビールの実に70%近くは世界トップ10企業が生産している。
またビール業界はグローバル再編が進んでいる最中でめまぐるしく会社名が変わる(笑)。今後の動向が注目される業界。
最後に番外編としてトップ10以外にも気になるビールメーカーの生産量をまとめておく。
アサヒビール:24百万hl
Pabst Blue Ribbon(米):不明
Boston Beer Company(米):4.8百万hl
D.G. Yuengling & Sons(米):4百万hl
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