【2019年版】ビール業界の世界市場シェア&世界売上ランキング

2019年版ビール業界の世界市場シェア、世界売上ランキングおよび大手グローバルメーカーの概要と動向について解説していく記事です。就活・転職のご参考にどうぞ。

※世界市場シェアは2017年12月末データ(2019年4月時点で最新)、売上ランキングは各企業の2018年12月期の決算データをおもに使用。

ビール業界の世界シェアTOP15ランキング

※1. 出所 Barth Haas Group
※2. 生産量ベースでの市場シェア、2017-2018年の実績値

TOP3で世界ビール生産量の50%

ビール業界は2019年現在、グローバルTOP3社で世界のビール生産量の約半分におよぶ。

そのなかでも1位アンハイザー・ブッシュ・インベブ (Anheuser-Busch InBev:ベルギー) は世界シェア30%超と圧倒的な存在。2016年に当時・世界No.2だったSABミラー(SABMiller:イギリス)を買収し、それまで20%台だった世界シェアが一気に30%超となった。さらに同社の歴史をさかのぼると、数多くの買収によって規模拡大してきた企業である。

ついでハイネケン(Heineken:オランダ)が世界シェア11%で2位、中国のSnow Breweriesが6.5%で3位と続く。あとは正直なところドングリの背比べ的であり、かろうじて世界シェア5%を超えるカールスバーグ(Carlsberg:デンマーク)が4位、米モルソン・クアーズ(Moslon-Coors)が5位にそれぞれランクイン。

なお、上位メーカーのほとんどは買収によって事業拡大してきた。個別企業について、くわしくは後ろで解説する。

日系メーカーはアサヒ、キリンがTOP10入り

日系メーカーのなかでは大手4社中、TOP2社のアサヒビールが世界7位キリンビールがギリギリの世界10位となった。国内他大手のサントリービールとサッポロビールは圏外。

アサヒビールは国内シェアにおいては9年連続No.1。さらに海外ビール事業は2016年に買収した欧州事業(SABMiller、InBevから一部の事業を買収)がシェア拡大に寄与。さらにどう事業はアサヒグループの2017・2018年度の大幅な業績改善に貢献した。

キリンビールのシェアが大きく減っているのはブラジル事業を売却したためである。キリンは2011年に当時ブラジル2位のビールメーカー、スキン・カリオール (伯🇧🇷)を推定3000億円で買収した。が、その後2015年度決算でブラジル事業において1,100億円の減損損失を計上し、上場以来初の最終赤字となり、さらに2017年には同事業をたった770億円でハイネケン傘下のブラジル子会社に売却した。

それもあって、キリンのシェアの一部がハイネケン(Heineken:オランダ)に移動した。

世界シェアTOP15の解説

1位 アンハイザー・ブッシュ・インベブ (31%)

アンハイザー・ブッシュ・インベブ ( Anheuser-Busch InBev) は、ベルギー・ルーヴェンに本拠を置き、世界50カ国以上に製造拠点を持つ酒類メーカー。あまりに多くの企業がM&Aを繰り返してできた企業のため社名が長すぎて、略称「AB InBev」を用いることも多い。

2008年にベルギーのインベブがバドワイザーなどで知られる米アンハイザー・ブッシュを買収し社名変更。 買収総額は当時のレートでなんと約5兆8000億円。 ビールメーカーの買収では過去最大の規模となった。

当時インベブ(InBev:ベルギー)は世界No.2、アンハイザー・ブッシュ(Anheuser-Busch:米国)は世界No.3であったため、業界2位と3位がくっついてトップをとったことになる。

この買収で世界トップシェアの座を確立し、さらに2012年にはメキシコのグルポ・モデロの未保有株を約2兆円で取得し完全子会社化。

2016年には当時・世界No.2だったSABミラー(SABMiller:イギリス)を買収し、それまで20%台だった世界シェアが一気に30%超となった。なおSABミラー買収は当時の為替レートで約13兆円というから驚きである。これだけ高いシェアを持ってしまうと独占禁止法に当然のことながら引っかかるため、問題となる国の事業はアサヒビールやその他のビールメーカーに売却した。

2007年までビール業界は当時の世界No.1だったSABミラーでもシェア13%と、圧倒的シェアをもつ企業がすくなく世界の各ローカル企業が乱立する状態であった。ここ10年でもっとも大きく世界シェアが動いた業界である。

この業界再編をリードした企業が同社であった。

2位 ハイネケン (11.2%)

ハイネケン(Heineken)は、オランダのビールメーカーである。 ハイネケングループの主要ブランドとしても知られている。世界シェアはAB InBevにかなり引き離されての2位。

1863年にヘラルド・A・ハイネケンによって創立され、 現在では世界170か国以上で販売、アンハイザー・ブッシュ・ インベブに次ぐ世界第2位のシェアを占める世界的ビール会社とな った。オランダも含めて世界100か国に醸造工場を持つ。

日本でもカールスバーグ(デンマーク)やバドワイザーなどとともに輸入・ 海外ブランドビールの一つとして知られ、 バーやレストランなどの飲食店でも飲める店が多い。

3位 China Resources Snow Breweries (6.5%)

China Resources Snow Breweries(華潤雪花)は中国最大のビールメーカーかつ、世界シェアNo.3。「Snow Beer(雪花啤酒)」のブランドで知られる。

日本人にはあまり馴染みがなく、また海外では中国No.2の青島 ビールのほうが流通しているが、とにかくSnowが中国No.1ブランドである。

中国ビールは基本的に味が薄く、中でもさらに薄いビールが「Snow」。アルコール度数も2.5 %と日本のビールの半分くらいしかない…。 ビール風味の炭酸水といったほうがシックリとくる。 なお中国国内のビール市場は同社をふくめた大手4社による寡占市 場となっている。

※中国大手4社=China Resources Snow Breweries(華潤雪花)、Tsingtao Brewery(青島啤酒)、Anheuser-Busch InBev(百威英博)、Beijing Yanjing Brewery(燕京啤酒)

また、生産量においては世界No.3の同社ではあるが、売上規模にすると5,300億円ほどの世界的には中小サイズのメーカーであり、 売上ランキングにすると世界TOP10にすら入らない。 中国においてはビールの価格がとにかく安いので仕方ないのだが… 。

4位 カールスバーグ (5.8%)

カールスバーグ(Carlsberg)は、デンマークのビールメーカー及びそのブランド名である。 デンマーク語ではカールスベアと呼ばれる。1847年にデンマークで創立された。140か国以上に製品を輸出し、40か国に醸造 所を持つ世界第4位のビールメーカーである。

1992年、英ビールメーカー、テトリー(Tetley)を買収。日本でもハイネケン(蘭)やバドワイザー(ABインベブ商品)などとともに海外人気ブランドの一つとして知られ、飲食店でも飲める店が多い。

5位 モルソン・クアーズ (5.1%)

モルソン・クアーズ(Molson-Coors)は米国テンバーおよび、カナダ・モントリオールの2拠点に本社をおくビールメーカー。ビール類の世界シェアNo.5。

日本ではZIMA(ジーマ)などのリキュール類で親しまれている。おもに北米でBLUE MOON、Miller Genuine Draftなどのビールブランドを展開している。2005年に当時カナダでビール市場シェアNo.1(45%)だったMolsonと、米国のCoorsが合併して誕生した。

6位 青島ビール (4.0%)

青島ビール(チンタオビール)は中国No.2のビールメーカー。中国でもっとも歴史あるビールメーカーでもある。ビール類の世界シェアはNo.6。正式社名は青岛啤酒股份有限公司(Tsingtao Brewery Company Limited)である。

青島は1898年よりドイツの租借地となり、租借地経営の一環としての産業振興策としてビール生産の技術移転を行った。1903年ドイツ租借地だったチンタオにおいて、ドイツの投資家がビール製造を開始し発足。 当時はドイツのビール醸造技術を採用した。

1914年、第一次世界大戦で日本がドイツ権益であった青島を占領( 青島攻略戦)し、戦後の講和条約である1919年のヴェルサイユ 条約でドイツから青島の租借権等を引き継ぐことを認められる。これらの諸権益の引き継ぎを受け、その一つであった青島ビールも日本の大日本麦酒( 現アサヒビールおよびサッポロビール)が買収し経営を行うこととなった。なおその後1922年の山東還 付条約によって山東半島に係る日本側の諸権益は中華民国に返還されるが、青島ビールの経営は引き続き大日本麦酒がおこなった。

その後1945年の日本の敗戦によって青島ビールの経営権は中国に完全 に接収され、中国国営化された。2002年に当時の米アンハイザ ー・ブッシュと戦略的提携を締結し、アンハイザー・ ブッシュは発行済み株式の約27%を取得した。ただし2009年 1月にアンハイザー・ブッシュ・インベブの保有する約20%をアサヒビールが取得したが、その後2017年に出資関係は解消された。

また、生産量においては世界No.6のシェアをしめる同社ではあるが、売上4400億円ほどの中小サイズのメーカーであり、売上ランキングにすると世界TOP10にすら入らない。中国ではビールがとにかく安いことが原因で売上はたいした金額にならない。

7位 アサヒビール (3.0%)

アサヒは「スーパードライ」 などで知られる日本のビールメーカー。 日本市場において9年連続シェアトップだが、世界的にみると7位に位置づけされる。

8位 Yanjing *燕京ビール (2.2%)

燕京ビール(えんきょう)は、中国のビールメーカー。 正式名は燕京啤酒股份有限公司(Yanjing Brewery Company Limited)。本社は順義区にある。1980年に中国・ 北京で創業された。

「燕京」は北京の古い別名で、紀元前の華北地方にあった「 燕の国の首都」という意味。 北京では地元のビールとして占有率も高く、親しまれている。

ビールのほかには清涼飲料水、バイオ関連事業などなどの事業を手がけている。ビール事業を含めて、グループ企業を統括する持株会社が「Beijing Enterprises Holdings」となっている。同グループは売上8000億円を超え、そこそこの規模を有している。

9位 BGI/Groupe Castel (2.0%)

Castel Groupはフランスの同族経営企業。総合飲料メーカーであり、フランス最大のワインメーカーとしても知られている。 ビール事業においては欧州およびアフリカを中心に展開しており、1990年に当時アフリカにおけるビール市場で最大のライバル企 業であったBGIを買収。 その後もいくつかの買収を実施して今の規模となった。

10位 キリンビール (1.5%)

キリンは「一番搾り」 などのブランドで知られる日本のビールメーカー。 日本市場シェアはアサヒに次ぐ第2位であるが、世界シェアでみるとギリギリのTOP10入り。

11位~15位

  • 11位 Petropolisはブラジル地場のビールメーカー。ブラジル域内においては第2位の市場シェアを持っている。
  • 12位 Efes Groupはトルコに本社をおく飲料メーカー。ビール事業においてはEfes Pilsenなどのブランドで東欧やロシア、中央アジアに展開している。
  • 13位 Constellation Brandsは米国ニューヨークに本拠をおきワイン・ビール・スピリッツなどを手がけるメーカー。全米の企業ランキングFor tune 500にも選出されている。米国をはじめとしてカナダ、メキシコなどに展開している。ビールは「Corona」ブランドで知られており、米国内においてMolson- Coorsに次ぐNo.2のビール市場シェアをもっている。
  • 14位 San Miguel Corporationはフィリピン最大のビールメーカー。フィリピンの全上場企業のなかでNo.1売上規模の会社である。 東南アジアを中心に展開している。
  • 15位 Saigon Beverage Corp.はベトナム最大のビールメーカー。 社名をそのままブランドにした「SAIGONビール」を東南アジアを中心に展開している。

世界ビールメーカー売上ランキングTOP15

つづいて数量ベースではなく売上ベースのランキングも紹介しておく。

数量シェアでみたときにはTOP10入りしなかったサントリーなども、ビールの売上だけでなくジュースなども含めた全社売上で見たときにはランクインしてくる。

各社、純粋にビール事業のみやっているわけではなく、総合飲料メーカーとの位置付けであるため数量ベースランキングとはだいぶ違ったものになる。

※1. 2018年12月期あるいは同等の決算期における実績値より
※2. 日本円換算、為替は決算期の期中平均レートを使用

数量ランキングに出てこなかった企業の補足;

No7. Diageo (ディアジオ) = ビール「ギネスビール」、ウォッカ「スミノフ」、ウィスキー「ジョニーウォーカー」などで知られる大手酒造。ビール事業はそこまで大きくないが、他酒類の売上が大きくてランクインした。

No11. Beijing Enterprises Holdings = Yanjingビールなどを傘下に置く持株会社。ビールのシェアでは中国3位、世界8位である。

No.12 Thai Beverages = タイのアルコール飲料メーカー。ビール「Changビール」などで知られる。