【2019年版】飲料業界の市場規模とシェア、現状、今後の動向

2019年版・飲料業界の国内市場シェア、市場規模、過去〜現状、大手の概要、今後の動向について。

飲料メーカーの社員と話せるくらいのレベルまで持っていくための記事です。就活・転職・投資のご参考にどうぞ。

※清涼飲料のなかには炭酸飲料、ジュース、お茶、ミネラルウォーターなどが含まれ、ビールなどアルコール類は本レポートの対象外です。

清涼飲料業界の現状

まずは業界の現状についてざっくりとまとめておく。

1. 国内市場規模は2.5兆円前後、天候に左右される

経済産業省の統計によると、清涼飲料の国内市場規模はここ20年ほど2.4~2.6兆円で安定している。

清涼飲料の市場は天候と密接な関係にある。たとえば猛暑の年は増加したりといったように左右される。

なお数量ベースで市場規模を見たときには、20億ケースに届かないくらい。途方もない数字である。

【参考】国内飲料市場規模(箱ベース)*アサヒグループ IR資料より

飲料カテゴリー別のシェアでは上のグラフに示したとおり、

お茶 > コーヒー > 炭酸飲料 > 水 >野菜・果実 > スポーツドリンク > 乳酸菌飲料」となっている。

カテゴリー別の成長率はグラフからはすこし分かりにくいが、乳酸菌飲料がもっとも伸びており、ついでミネラルウォーターがくる

いっぽうでコーヒー飲料は年々シェアを減らしている

あとはおおむね横ばい傾向。一時期シェアを急激に伸ばしたお茶カテゴリーも現在は成熟している。

これは消費者の健康志向がおもな要因である。またミネラルウォーターは近年、フレーバー入りや炭酸入りなどの、低カロリーでナチュラルな味わいの商品がジュースに代わり消費者の支持を得ている。

2. 飲料メーカーの市場シェア2018年

国内の清涼飲料におけるメーカー別の市場シェアは以下のとおり (2018年実績)。

【出所】アサヒグループ IR資料

見てのとおりコカ・コーラが26%シェアを占め国内No.1、サントリーフーズが22%でNo.2、アサヒ飲料、キリンビバレッジ、伊藤園とつづく

なお。

かつて圧倒的No.1に君臨していたコカ・コーラは毎年じわじわとだが確実にシェアを減らしており、サントリーや他メーカーが猛追している形となっている。

あとはニッチ分野として。ポカリスエットブランドを有しスポーツ飲料分野に強い「大塚食品」、自販機ルートに強みをもつ「ダイドードリンコ」をくわえた企業が主要プレイヤーとなっている。

さすがに大手5社まではコンビニやスーパーに行けば必ずおいてあり、あなたにも馴染みの企業のハズだ。

ただしここで注意して欲しいのは、コカ・コーラは炭酸飲料のコーラだけを手がけているわけではなく「アクエリアス」もあれば「綾鷹」「おいしい水」「爽健美茶」「ジョージア」といったブランドも持っている

おなじくキリンGやアサヒG・サントリーGはビールメーカーとして知られるが、グループに飲料メーカーを有しており、本レポートでは飲料分野についてのみ取り上げている。

今となっては「総合飲料メーカー」とするのが正しいのかもしれない。

細かくは最後の「大手企業の動向」のところで主力ブランドとともに紹介しておく。

【参考】飲料メーカー市場シェアの推移 *3年前に書いた記事より

飲料メーカー市場シェアランキング2000-2014年

▼ 自分で書いておきながらすっかり存在を忘れていた記事から。2018年の市場シェアと見比べてみてほしい。如何にコカコーラが日本での市場シェアを失ってきたか分かるハズだ。

3. 差別化がむずかしくブランドの構築が最重要

清涼飲料業界は基本、誰でも、どんな味でもつくれる。参入障壁の低い業界である。

しかしながら一旦、強力なブランドが構築されると他社は容易には置き換えできず、20年はブランド力だけで生きていける。

したがって飲料メーカーはブランドを構築することが最優先としてあげられ、あとは比較的どうでも良い部分である。

たとえばコカ・コーラが最たる例である。彼らは別にたいした商品をつくっているわけではない。でもそのブランド戦略とマーケティング戦略、サプライチェーン、ビジネスの仕組み構築に優れているため、人々に愛されて飲料業界の頂点に君臨している。

ブランドは1年2年で構築できるものではなく、20年30年あるいはもっと時間がかかる。莫大な宣伝広告費、プロモーションのための営業マンなど、お金と資本も必要である。

したがって。

商品の差別化はむずかしいけど、ブランド力で差別化することで参入障壁をつくっている、と考えられる。またブランディングには莫大な資本を必要とすることから、資本力のある大手飲料メーカーによる寡占がすすんでいる。

今後もこのトレンドはあまり変わらないだろう。

4. 販売チャネル別では、自販機ばなれが目立つ

つづいて飲料メーカーの流通チャネルについて簡単に。グラフにチャネル別の構成比を示す。

グラフに示したとおり販売チャネル構成比は、

SM (スーパーマーケット)が4割弱でもっとも多く、ついで自動販売機3割弱、CVS (コンビニ)が2割強、その他が約1割強となっている。

かつては自販機のシェアが高く、飲料メーカーの仕掛けていた「自販機オーナーで副収入」というキャンペーンのせいもあって爆発的に増えたが近年はどんどん縮小。

2006年には35%あったチャネル別シェアも直近では30%を下回っており、消費者の自販機離れが目立っている

なお一般的にメーカーの利益率では自販機チャネルがもっとも高い。なぜならディスカウントせず正規価格で売れるから (消費者にとっては割高なのだけど)。

スーパーなどは購買力がもの凄く、メーカーは小売店に対してディスカウントして売らざるを得ないケースが頻発。そうなるとメーカーの利益を圧迫する。

国内飲料市場の今後の動向

つづいて国内飲料市場の今後の動向も見ておこう。

1. 長期的にみると国内市場は必ず縮小する

当たり前の話ではあるが…

飲料の国内市場は成熟しており、今後も売上の大幅な拡大は見込まれない。

そして長期的には人口減少により口の数が減るので、国内市場はむしろ減少トレンドに転じるだろう。

したがって。

低成長の国内市場でシェア争奪の消耗戦をするよりも、明らかに伸びる市場(海外)で売上を伸ばすほうが賢明な選択肢と言える

なお近年は大手飲料メーカーにおいて海外展開の加速が見られるので、最後の企業動向の部分でまとめておく。

2. 自販機チャネルの更なるシェア縮小が見込まれる

繰り返しにはなるが…

今後も自販機チャネルの更なるシェア縮小が見込まれ、2006年には35%だったチャネル別シェアは2018年に27%まで減少した

すでに述べたとおり自販機チャネルは他の販売チャネルと比較して収益性は高い。

しかし消費者が離れてしまっては元も子もない。

そこで各社、自販機チャネルの効率化、縮小を進めている。

たとえば「お〜いお茶」で知られる伊藤園は2011年に大塚ホールディングスと自動販売機商品の相互供給、2012年には大塚食品系の自販機オペレーターのネオスを子会社化した。

2015年にはアサヒ飲料と大塚製薬が自動販売機で相互の商品を販売する業務提携を結んだ。

また2016年にキリンとダイドードリンコは相互供給の提携を発表した。

ということで今後とも減少トレンドであることは間違いなく、自販機チャネルを強みとしているダイドードリンコなどは今後も厳しい環境におかれるだろう。

3. 小売企業PBとの競合により、飲料メーカーの地位は低下する

あとはもうひとつ、今後無視できない市場の動向として。

スーパーやコンビニなどの小売大手が飲料分野でもプライベートブランド(PB)の拡充をすすめ、伝統的な飲料メーカーの存在を脅かしている

小売企業のPBにはたとえば、

  • 大手コンビニ:セブンプレミアム、ローソンセレクト、ファミマセレクションなどPB商品の拡充をすすめる
  • 大手スーパー:トップバリュー (イオングループ)など

などあり、飲料メーカーからシェアを奪っている。

といっても小売企業は工場をもたないのが一般的であり、PBでもサントリーフーズなどの飲料メーカーに外注 (製造委託)している。したがってすべてのビジネスを失っているわけでは無い。

ただ。

一般的に製造委託でイオンなりセブンイレブンからビジネスをもらうよりも、自社ブランドを消費者に売るほうが確実に儲かる。

したがって小売企業によるPBの拡充が意味するところは、メーカーのマージン減少、利益減少である。*逆に小売企業にとってはマージン増・利益増

とにかく小売企業がPB比率を今後どんどん増やしていくことは確実。

今はまだメーカーに不利な状況にはなっていないが今後、差別化なり、対応がもとめられる。

4. 環境に配慮したパッケージ設計

あとはひとつ、個人的に面白いと思ったネタとして。

アサヒ飲料は業界に先駆けて環境に配慮したパッケージ設計を一部の商品で採用している。

その名も「ラベルレス商品」。商品ラベルを無くしてしまうとは、ずいぶん大胆な行動に出たものだ。でもこのコンセプトは個人的に好きだ。

【参考】アサヒ飲料のラベルレス商品 *アサヒグループ IR資料

ラベルは剥がすのがめんどくさいし、メーカーにとってはコストUPになるし、すでにブランドが定着している商品にとっては邪魔でしかない。これを無くすのは大賛成だ。今後の運動拡大に期待したい。

(原料や産地の表示などの義務があるのでケース買いする人にしか適用できないが…)

5. 業界大手は海外M&Aを含め、海外展開をさらに加速

成熟市場では急拡大できない。

これまでも大手飲料メーカーによる海外M&Aは活発化していたが、今後もこの動向はつづくだろう。

あるいは同時に、自社ブランドによる海外展開の加速を実施していくものと考えられる。

大手による買収案件はあまりに長くなりすぎるため省略するが、それなりに成功を収めている事例もある。今後のキーになることには間違いない。

飲料メーカー大手4社の動向

最後に飲料メーカー大手4社(コカ・コーラ、サントリーフーズ、アサヒ飲料、キリンビバレッジ)の動向についてもまとめておく。

No.1 日本コカ・コーラ (コカ・コーラボトラーズジャパン)

日本コカ・コーラは世界No.1飲料メーカーである🇺🇸Coca-Colaの日本法人。日本でのブランディングや日本むけ商品の開発などを手がけている。

日本での飲料市場シェアもトップ

コカ・コーラボトラーズジャパンは、名前のとおりボトラーのひとつ。日本コカ・コーラが一部を出資しているが子会社でもなんでもない。東証一部に上場もしている。

ここでボトラーとは何か?について少し。

ボトラーとは飲料メーカーの代わりに商品をつくる外注先のことである。

たとえばコカ・コーラボトラーズジャパンの場合、商品のほぼ全てを製造し、ボトルにつめ、流通までを担当している。

米Coca-Colaの日本法人である日本コカ・コーラは飲料メーカーでありながら実は何もつくっていない。彼らの日本むけ製品はほとんどボトラーが原液を購入してボトリングし、小売店への販売、物流などを行う。

では本体の飲料メーカーはいったい何をしているのか?

というとブランドの構築、マーケティング、サプライチェーン構築、商品開発、仕組み構築などなど。より重要な利益の源泉となる仕事に専念しているのである。

ボトラーが存在するメリットとして、

  1. ブランドメーカーは少ない資本投下で販売エリア拡大できる (とくに海外)
  2. ボトラーは強力なブランドと組めば安定した売上・利益を得ることができる

デメリットとしては、

  1. ブランドメーカーにとってボトラーに落とすお金がバカにならない=コストUP、利益圧迫
  2. ボトラーは独立系や上場企業であることも多く、お互いの利害が必ずしも一致しない。

などがある。

なお、これは「コカ・コーラシステム」として知られ、ローリスクで販売地域を広げられるため海外展開するときに用いるメーカーも多い

話はそれたが、すでに市場シェアのところで述べたとおり彼らはジワジワと日本市場におけるシェアを失っている。経営の効率化やリストラに着手しており、今後はますますの日本法人縮小が予想される。

コカ・コーラボトラーズジャパンとは?

2017年に当時のコカ・コーライーストジャパンとコカ・コーラウエストが経営統合してできた売上高世界第3位のコカ・コーラボトラー。

コカ・コーラ社が日本市場でのマーケットシェアを落としていることから、経営の効率化をはかるために合併した。今後、人材もふくめた事業リストラが予想される。

2018年度の実績は、

  • 売上9,270億円 (前年比+6.3%)
  • 営業利益150億円(前年比▲63.8%)

であった。

No.2 サントリー食品インターナショナル

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サントリー食品インターナショナルはサントリーGの中核企業である。サントリーGのなかで唯一、上場している。

飲料市場でのシェアは国内No.2

売上規模ではキリンビバレッジを有するキリンHD、アサヒ飲料をもつアサヒグループHDに劣るが、彼らはビールやアルコール類の売上もふくめた数字であり、清涼飲料単独ではサントリーに軍ぱいが上がる。

日本における主力ブランドは「サントリー天然水」「BOSS」「伊右衛門」「サントリー烏龍茶」「なっちゃん」など。

今後は健康志向の新商品や、お茶類の新商品を強化する方針である。

また近年は海外企業のM&Aによるグローバル展開を積極的に推進。2018年度の海外売上高比率は45%となり、売上の半分くらいは海外からくるようになった

主要な買収案件だけでも以下のとおり。

  • 2008年:FrucorGroup買収
  • 2009年:🇫🇷OranginaSchweppesGroup (オランジーナ)買収
  • 2013年:🇬🇧GlaxoSmithKlineの飲料ブランドLucozade、Ribenaを買収
  • 2016年:グラクソ・ スミスクラインナイジェリア社から清涼飲料の事業基盤譲り受け
  • 2018年:Pepsi-ColaThai(ペプシコタイ) からタイの飲料事業会社の株式を取得

2018年度の実績は、

  • 売上1兆2,940億円 (前年比+4.9%)
  • 営業利益1,140億円 (前年比▲3.7%)

であった。

No.3 アサヒ飲料

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アサヒ飲料はアサヒグループホールディングス傘下の清涼飲料メーカー。非上場企業である。

飲料市場でのシェアは国内No.3

2011年、旧アサヒビール株式会社が「アサヒグループホールディングス」に商号を変更したのに伴い、アサヒ飲料はアサヒグループHDの事業子会社となった。

「三ツ矢サイダー」「バヤリースオレンジ」「ウィルキンソン」「WONDA」「十六茶」「カルピス」を主力6ブランドとしている。

業績は下グラフのとおり、好調を維持している。アサヒグループ全体のなかではアサヒビールにつぐ売上規模・利益規模にまで成長した。

【参考】アサヒ飲料の売上・利益推移2014-2018年度 *アサヒグループHD IR資料より

注意)2016年度から会計方針をIFRSに変更したため売上が減り、利益率が改善しているように見えるが「売上・利益」の定義が変わっただけで実際には大きく変化があったわけではない (長くなるため、それぞれの定義は省略)。

なおアサヒグループ全体では約2.1兆円の売上がある。

【参考】アサヒ飲料における売上数量の推移 *アサヒグループHD IR資料より

↑ アサヒ飲料が業界平均を上回るペースで成長していることがわかる。すなわち市場シェアを伸ばしているということになる。

また。

近年M&Aもふくめて海外展開に積極的に取り組んでおり、2018年度の海外売上比率はグループ全体で34%となった。

近年の主要なM&Aには以下のものがある。

  • 2009年:国内2位の🇦🇺SchweppesAustr alia(AUS)買収
  • 2011年:プレミアム飲料水の🇳🇿Charlie’ sGroup(現TheBetterDrinks)株式取得
  • 2011年:国内3位の🇦🇺P&NBeveragesAustraliaからミネラルウォーター類及び果汁飲料事業を取得
  • 2011年:マレーシア国内2位Permanis買収
  • 2012年:水専業メーカー🇦🇺MountainH20買収
  • 2014年:マレーシアEtikaInternationalHoldings Limitedより東南アジアにおける乳製品関連事業を買収

No.4 キリンビバレッジ

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キリンビバレッジはキリンホールディングス傘下の清涼飲料メーカー。非上場企業である。

飲料市場でのシェアは国内No.4

2007年に旧・麒麟麦酒が純粋持株会社「キリンホールディングス」に組織変更し、キリンビバレッジは同社の事業子会社となった。

主力ブランドには「午後の紅茶」「FIRE」「生茶」「キリンレモン」などがある。

2018年度の実績 (キリンビバレッジ単独) は、

  • 売上2,848億円 (前年比▲0.3%)
  • 事業利益233億円 (前年比+7.5%)

であった。なおキリングループ全体では約1.9兆円の売上がある。

参考記事