【2016年】リチウムイオン電池の世界シェア・市場規模・今後の動向

リチウムイオン電池(LiB)の世界市場シェア・市場規模・今後の業界動向・メーカーランキングまとめ、2016年版。

「そもそもリチウムイオン電池ってなに?」という知識ゼロの状態から、リチウムイオン電池市場についてコンサルっぽいことまでを語れるようにするための、全情報を提供します。

就活・転職の業界研究のご参考にどうぞ。

そもそもリチウムイオン電池(LiB)とは?

まずはリチウムイオン電池(LiB)とは何か?について簡単に。

リチウムイオン電池の名前の由来は、

リチウムを正極材に使うことが当時、革新的なアイディアだったために「Li – リチウム」の部分を強調してつけられた。英語表記はLitium ion batteryで、これの頭文字をとってLiBと省略されることが多い。

イオンの部分は当時、「マイナスイオン」という用語が電機メーカー業界で流行っていたため、適当につけられたものと推測(違ってたらごめんなさい)。

ちなみに世界で初めてリチウムイオン電池を発明したのはソニーだった。当時はソニーも「ウォークマン」「DVD」を発明したりと、革新的なメーカーであった。

こうしてリチウムイオン電池(LiB)は誕生した。

※当時「マイナスイオンで除菌!」「マイナスイオンの効果でリラックス!」とか、化学を冒涜しているとしか思えない用語をシャープが使い始めた。もしくは頭の悪い某広告代理店マンが使い始めた。

リチウムイオン電池の仕組み

つづいてリチウムイオン電池の仕組みをざっくりと。

リチウムイオン電池は写真に示すように5層から成り立ち、この5層1セットが、だし巻き卵のように何層にもなって1個のリチウムイオン電池ができる。

それぞれの層は翻訳すると以下のとおり。

  1. Cathode Material = 負極材(黒鉛)
  2. Anode Material = 正極材(リチウム)
  3. Separator = セパレータ(多孔質のフィルム)
  4. Electrolyte = 電解液
  5. Copper Foil = 銅箔
  6. Container = パッケージに使う材料(アルミ)
  7. Others = その他、バインダーなど

電池は基本、正極と負極の間でおきる電子のやりとりによって充電したり、放電したりする。これはリチウムイオン電池であっても同じ。他の層は、電子のやりとりを助けるための機能を持つ。自分で書いていて眠くなってきたのでこれ以上の技術的な説明は省略し、マーケットの話に移る。

リチウムイオン電池(LiB)の世界市場規模

世界市場規模 3兆2650億円(2015年実績)

リチウムイオン電池(LiB)の世界市場規模は、2015年実績では推定・約3兆円ほどであった。使い方(用途)の内訳は、消費者むけ製品52%、車載用25%、産業用23%。

消費者むけ製品には、スマホ・タブレット・パソコンなどの電気製品がメインとなる。車載用はEV(電気自動車)・HV(ハイブリットカー)などに搭載される。ちなみに従来の普通の車はLiBではなく「鉛蓄電池」が積まれている。産業用には、航空・宇宙分野、太陽光発電の蓄電用などがある。

世界市場規模 8兆5160億円(2024年予測)

なんと2024年の世界市場予測では8兆円を超える見通し。2015年からの平均成長率は15%/年程度を見込む。これはEV(電気自動車)の市場が順調に立ち上がることにくわえ、従来の車載用バッテリーが鉛蓄電池からリチウムイオン電池(LiB)に置き換わっていくと想定。

サイズごとの市場成長率は、以下の通りに想定。

  1. 小型LiB用途:年成長率 +8%
  2. 大型LiB用途:年成長率 +30%
    ————-
    ●市場全体の年成長率 +15%

※筆者の独自調査

先ほどと違う集計になるが、

小型リチウムイオン電池は今後も途上国での拡大により、年率8%の成長を見込む。スマホやタブレット、パソコン、デジカメに使用される電池のこと。

いっぽう、車載用や家庭用バッテリーとして使われる大型リチウムイオン電池は年率30%成長を見込む。これはテスラモーターズの電気自動車EVの拡大、中国共産党がEVの拡大策をとっていることが好材料。

電池はスマホ用などちまちました用途では爆発的にのびない。大型LiBが必要な車載用で伸びてこそビジネスが成り立つ。

リチウムイオン電池(LiB)の世界市場シェア

つづいてLiBの用途ごとに世界市場シェアとメーカーランキングをみていく。

①小型リチウムイオン電池の世界シェア推移

小型リチウムイオン電池とは携帯電話やタブレット、パソコン、デジカメに使用される電池のこと。車載用や家庭用の大型は別のマーケットとして考える。

社 名

シェア%
2015年

シェア%
2008年

三洋電機 33
パナソニック 21 9
サムソンSDI(韓) 19 15
LG Chem(韓) 15 7
ATL 8
ソニー 7※※ 16
Lis hen 4
Coslight 4
BYD 3 8
Ma 3
BAX 2
その他 14 12

※三洋電機の電池事業はパナソニックが買収
※※ソニーの電池事業は村田製作所が買収

2015年の世界市場シェアはパナソニックが世界トップで約21%。韓国サムソンSDIが世界2位。続いて韓国LG Chemが世界3位。あとは中国勢が乱立。韓国のサムソンとLGはグループ内でスマホ、タブレットを製造しているため、グループ間取り引きが大きい。

市場シェア推移をみるとソニーの陥落ぶりが目立つ。2008年は世界市場シェア2位だったのに2015年には5位に後退。結局、儲からないので村田製作所へ電池事業を売却した。ちなみにソニーはリチウムイオン電池を世界で初めて上市したメーカー。

先発メーカーは普通、特許をガチガチに抑えて他社が参入できないようにするが、ソニーには大した特許がなかったのだろうか?だとしたら「作り損」としかコメントのしようがない…

②車載用リチウムイオン電池の世界シェア推移

社 名

シェア%
2015年

シェア%
2014年

シェア%
2012年

パナソニック 40 41
BYD(中) 14 7
LG Chem(韓) 13 15
AESC 11 25 42
三菱商事/GSユアサ※※ 5 7 19
サムソンSDI(韓) 4 5
Epower 4
Beijing Pride Power(中) 3 2
Air Litium(中) 2
Wanxiang(中) 2
日立ビークルエナジー N/A N/A 14

※LiBの蓄電容量ベース
※筆者の独自調査
※※三菱商事&GSユアサの正式社名はリチウムエナジージャパン

世界No.1はパナソニックでシェア40%これは電気自動車EVで唯一、成功している米テスラモーターズのモデルSとモデルXへ入っていることが最大の理由。

世界No.2は中国BYD。中国政府の進める公共バスをEVにする政策で2014年の7%から2015年の14%とシェアを大幅に伸ばした。今後も中国政府の後押しでシェアを伸ばしていくだろう。

世界No.3は韓国LG Chem。世界各国のEV、プラグインハイブリットPHV、プラグインハイブリッド電気自動車PHEVがメインで堅調に推移。

世界No.4はAESC(オートモーティブ・エナジー・サプライ・コーポレーション)。外資メーカーっぽい名前だが、中身は日産とNECグループが出資する合弁会社である。2012年の世界No.1、2014年の世界No.2シェアから大きく後退。理由は日産のEV、リーフが売れていないこと。

世界No.5の三菱商事・GSユアサの合弁会社(リチウムエナジージャパン)は、三菱自動車むけのEVがメイン。三菱自動車の不振もあって業界シェアはダウンした。

シェア不明の日立ビークルエナジーは日立グループに所属し、電気自動車EV、ハイブリットHV、プラグインハイブリッド電気自動車PHEV、バス、電車など幅広い用途に展開。自動車メーカーのグループに属さないため世界の自動車メーカーに納入実績あり。ただ問題は、採用されたクルマが伸び悩んでいること…

車載用リチウムイオン電池のシェアはすぐに変わる

車載用リチウムイオン電池では、パナソニックが現時点で圧勝しているかのように見えるが…喜んでもいられない状況。なぜならEV(電気自動車)の市場はこれから立ち上がるかどうか?という段階に過ぎないから。

中国でEVの売上が伸びれば、中国メーカーが一気にくるだろうし、日本で伸びれば日系メーカー、米国であればSamsungかLGかパナソニック、ということになる。

現時点での状況をみても、参考値程度にしかならないだろう。

リチウムイオン電池業界:メーカーの動向

『【2016年】リチウムイオン電池の世界シェア・市場規模・今後の動向』へのコメント

  1. 名前:Nero 投稿日:2017/05/02(火) 21:12:47 ID:ba4fdfa8c 返信

    リチウム電池とリチウムイオン二次電池は一応異なるものとして区別されてますね。
    世界で初めてリチウムイオン電池の量産化に成功して商品化したのはソニーですが、「発明した」とはみなされてないのでは?
    旭化成の吉野彰が両極の材料の組み合わせや電極構造などの現在のリチウムイオン二次電池の基本原理を確立した(発明した)と認識してます。
    リチウムイオン電池の特許についてはソニーの強みが量産化の為の技術だとしたらそれを特許で守るのは難しいですね。材料の組み合わせや電極構造などの「もの特許」でないと侵害を証明するのが困難で権利行使できないですから。むしろ単に他社にノウハウを公開するようなもん。
    逆に上記のような関所特許は前述の通り旭化成が抑えてます。と言っても関所特許が成立してから、モバイル端末が普及してリチウムイオン電池がビジネスとして成立するまでにはかなりの時間差がありましたから、そういった特許はもうとっくに切れてますが。
    旭化成自身は途中でバッテリー事業自体は自社で実施せず、素材(セパレータ)事業に専念すると判断しましたから、バッテリーメーカーとライセンス契約を締結して、使用料収入を得るビジネスをしてましたね。
    たしかピーク時には年数百億くらいの収入になってたような(といっても10年以上前のことなのでうろ覚えですが)

    • 名前:のまどサラリーマン 投稿日:2017/05/03(水) 23:22:05 ID:8c058f6e5 返信

      補足いただき誠にありがとうございます。
      リチウムイオン二次電池の基本原理、旭化成の発明だったのですね…。
      ありがとうございます、大変勉強になりました。

      管理人

  2. 名前:福谷 投稿日:2017/10/25(水) 10:48:41 ID:86779bade 返信

    リチュームイオン電地はソニーが発明したのではありません、青色発光ダイオードも同じで発明ではりません、どちらも安価に初めて大量生産に成功したけです、市場に一清販売できました、 リチュームも青LEDも、高価ですがアメリカで当時は受注生産しかしていませんでした。