【2019年版】ビール業界の国内市場シェアと現状、今後の動向

2019年版ビール業界の国内市場シェア、過去〜現状、大手4社の概要、今後の動向について。

ビールメーカーの社員と話せるくらいのレベルまで持っていくための記事です。就活・転職のご参考にどうぞ。

なおビール類はその種類におうじて①ビール、②発泡酒、③新ジャンル(=第3のビール)に分けられる。おもな違いは原料の麦芽比率にあり、麦芽比率が一定量を超えるものを①ビールとし、そうでないものはその比率に応じて②発泡酒、③新ジャンルに分類される。

これは日本の酒税法によって決められた区分であり、厳密には①ビール以外の発泡酒と新ジャンルは「ビール風味の酒」という分類になる。

が、結局のところどれもビール的なものであるため、本記事ではこれら全て含めてビール業界として見ていく。

※ 本当はもっと細かい規定であるが、ややこしいので省略する。

ビール業界の現状

1. 国内ビール業界は大手4社で99%の市場シェア

ビール業界の過去〜現状と今後の動向について順をおって解説していく。

現状その①。

国内のビール業界(ビール・発泡酒・新ジャンル)はキリン、 アサヒ、サントリー、サッポロの大手4社合計で99%をしめる寡占市場となっている。

なお大手4社以外には沖縄オリオンビールなどの地ビールメーカーがある。

2. 国内のビール市場は14年連続で減少

ビール業界の現状その②「国内ビール市場規模」について。下グラフにて2018年までの推移を示す。

※Y軸の単位は百万函、課税数量ベース、5社累計

ビールの国内市場規模は若者のビール離れ、飲酒人口の高齢化などもあり 2005年から2008年まで14年連続で減少しており、 今後も更なる減少が予測されている。

なおビール業界は当時高価だったビールの大衆化をすすめるべく、 1994年に発泡酒(廉価版ビール)、さらに2003年にはより 安価な新ジャンルを発売開始し、ある程度のシェアを確保した。

2018年には発泡酒・新ジャンルの累計がビール市場の50%超を占め、初めてビールを逆転した。

【出所】アサヒグループホールディングス 個人投資家むけ資料

3. 国内市場シェア推移1953年〜2018年

ビール業界の現状その③「各ビールメーカーの国内市場シェア」について。下グラフのとおりに示す(課税数量ベース)。

【出所】アサヒグループホールディングス 個人投資家むけ資料

市場シェアをみると2018年の1位はアサヒビール。課税数量ベ ースでシェア39.1%を占めた。次いで2位キリンビール31.8%、3位サン トリー16.0%、4位サッポロビール12.1%と続く。

アサヒビールは2010年から9年連続でトップ。1987年の「 スーパードライ」を上市以降、シェアを拡大してきた。

かつて圧倒的No.1だったキリンビールはアサヒの台頭により低迷し、2009年に一旦は首位に返り咲いたものの、その後9年連続で2位に甘んじている。

サントリーは高級ビール「ザ・ プレミアムモルツ(略称プレモル)」のほか、 新ジャンルの廉価ビール「金麦」がヒットしシェアを拡大し200 8年にサッポロを抜きシェア第3位となった。 なおサッポロは低迷している。

ビール業界の今後の動向

つづいてビール業界の今後の動向についてザックリまとめておく。

1. ビール類の税率見直しにより、変化が見込まれる

ビール、発泡酒、 新ジャンルはそれぞれ税率が違うため価格が違う。ビール>> 発泡酒>新ジャンルの順に税率が低く、 したがって製品の価格も同様に新ジャンルが最も安くなる。

コンビニの350ml缶における標準価格だと、

  • ビール221円のうち77円が酒税
  • 発泡酒164円のうち47円が酒税
  • 新ジャンル143円のうち28円が酒税

というように新ジャンルとビール酒税の間には2倍以上の格差がある。

製造コストもビールのほうが高くつき、 そのうえ税金の格差もあっては売れる商品も売れるハズがない。

この理不尽な酒税システムには兼ねてからビールメーカー各社は不満をつのらせていた。そこで最終的に政府はビール類の税率を統一する方針をしめした。

具体的には今後ビール類の酒税を約54円(350ml缶の場合)に統一する予定。2020年10月から段階的に実施し最終的な一本化は2026年10月になる見込みである。

酒税が統一されればビールと発泡酒・新ジャンルの間にはこれまでのような圧倒的な価格差は生じにくい。したがって市場構造に変化が生まれる可能性が高い。

もちろん国内マーケットサイズは縮小トレンドであることに変わりないが…

2. さらなる海外M&Aおよび海外展開の加速

国内ビールメーカー大手は国内市場の縮小によって海外企業M&Aによる規模拡大や、輸出ビジネスによって海外展開を加速させている。

ここ数年の大型買収案件にはたとえば以下のような取引があった。

  • サントリーは2014年にスピリッツメーカーのBeam (米🇺🇸)を推定1兆6500億円で買収。
  • アサヒは2016年にSAB Miller傘下のペローニ (伊🇮🇹)とグロールシュ (蘭🇳🇱)、および東欧5カ国のビール事業を推定8900億円で買収。
  • キリンは2011年に当時ブラジル2位のビールメーカー、スキン・カリオール (伯🇧🇷)を推定3000億円で買収した。

しかしM&Aというのは単に買えば成長するというものではなく、非常に難しいのだ。

たとえばキリンは上記のブラジル企業買収によって大失敗した過去をもつ。彼らは2015年度決算でブラジル事業において1,100億円の減損損失を計上し、上場以来初の最終赤字となった。さらに2017年には同事業をたった770億円でハイネケン傘下のブラジル子会社に売却した。3000億円の買収額が明らかに割高であることに気づかないとは、まるで素人の買収でありヒドイあり様だ。

まぁいいや。

いずれにせよ国内市場は減少トレンドであるため成長余地のある海外へ、というトレンドは今後も変わりないだろう。でも割高な買い物をするくらいなら、何もせずキャッシュを蓄えて機を待つほうが懸命である。

3. 総合飲料メーカーとして進化、深化

あとはもうひとつ、今後の動向を語る上で重要な点を。大手ビールメーカーは持株会社となっており、どの企業もビール事業だけをやっているわけではない。

  • アサヒは「アサヒ飲料」などを傘下におき、
  • キリンは「キリンビバレッジ」などを傘下におき、
  • サントリーは「サントリー食品インターナショナル」などを傘下におく

というように総合飲料メーカーとの位置付けである。もちろんビール以外の飲料はライバル企業が多いため、どうしても利益率が低くなりがちで、ビールや酒類が柱となることは変わらないだろう。

でも今後は総合飲料メーカーあるいは総合食品メーカー、さらには医薬品分野への多角化など、周辺領域に拡大していく方向性も予測できる。

なおアルコール以外の飲料分野における国内市場シェアは以下のとおりとなっている。

  1. コカ・コーラ・・・27%
  2. サントリー・・・21%
  3. アサヒ・・・14%
  4. キリン・・・12%
  5. 伊藤園・・・11%

※ 2017年実績、出所:アサヒグループホールディングス

このように飲料メーカーとしても各社、市場でのプレゼンスを発揮しており海外もふくめて拡大を期待したいところ。

国内ビール大手4社の動向

あとは主要プレイヤーである国内ビール大手4社(アサヒ、キリン、サントリー、サッポロ)の動向を、企業の解説もかねて紹介しておく。

1位 アサヒビール

1889年創業、1949年に大日本麦酒の解体によって生まれたビールメーカー。朝日麦酒(現アサヒビール)と日本麦酒(現サッポロビール)に解体された。

市場シェアで示したとおり1980年代中盤には市場占有率10%を割り、4位のサントリーに追い抜かれる寸前となり「夕日ビール」などと揶揄される状況に陥る。この状況を改めるため、社長は住友銀行から連続で送り込まれ、改革を実行することとなる。

その後、従来の苦味重視の重たい味を一新。1983年にコクとキレを重視した「スーパードライ」を市場に投入し、一気に復活することとなった。

そして同商品は現在にいたるまでロングセラー商品となり、同社の業績を支えている。

またビール事業においては海外展開を積極化させており、2016年に買収した欧州事業(SABMiller、InBevから買収)が2017・2018年度の大幅な業績改善に貢献。過去最高益を連続で更新している。

またアジア地域においてもアサヒビールブランドを浸透させるべく頑張っている。

結果として同社の海外売上比率は30%を超えたうえに、国内事業に迫る利益をたたき出している。海外事業で苦しむキリンとは対照的である。今後もぜひ継続して欲しい。

2位 キリンビール

1907年に三菱財閥と明治屋の出資による「麒麟麦酒株式会社」が発祥。三菱グループ。

1954年に年間庫出量でトップシェアを獲得し、国内ビール企業の地位を確固たるものにし、なんと2000年まで47年ものあいだ継続してトップシェアを獲得。一時は市場シェア60%を超える勢いであった。

しかし2001年、スーパードライによって猛追していたアサヒビールが課税数量ベースで首位となった。その後も「アサヒvs.キリン」の2強体制で一進一退の攻防がつづけられていたが、2010年以降は9年連続でアサヒにトップシェアを奪われている状況。

現在ではビール類を柱としつつも低迷するビール類を補うため、その他の酒類で新規需要を開拓している。チューハイ「氷結」シリーズに続き、2009年に販売権をえた「スミノフ」、2012年の「ワインスピリッツァ」、2014年の「ビターズ」などでチューハイ・カクテル分野におけるブランドの強化を図ってきた。

でも先に述べたとおり、ブラジル企業の3000億円買収に失敗して以来、なんとなく元気のないメーカーである。一刻も早い立て直しをのぞむ。

3位 サントリービール

サントリーは1928年、買収した事業を基にビール事業に進出。

その後いろいろ新しい試みをするも当時の大手メーカーの反撃にあい、1930年にビール事業から撤退した。

その後1963年にビール市場へ再進出。後に「やってみなはれ」で有名なサントリー創業家の佐治敬三は、ビール業界に再進出した当時の経緯について「洋酒が絶好調で作れば何ぼでも売れる状態。そんなことでは(=努力しなくても売れることに慣れれば)会社がやがて傾く。だからビールに再進出した」と語っている。

ただしサントリーのビール事業は再進出したものの、長い暗黒期に入ることとなる。1963年から2008年までなんと45年もの間、赤字を垂れ流すこととなった。

転機は2005年に「ザ・プレミアム・モルツ中瓶」でモンドセレクションの「ビール部門グループI」で国産ビール製品初の最高金賞を受賞したこと。

それにより生産終了の可能性があったザ・プレミアム・モルツは見事に息を吹き返し2008年にはヱビスビールを抜いてプレミアムビールNo.1ブランドになり、さらに同年にサントリーが1963年のビール事業開始以来初となる「ビール部門の単年度黒字」を達成する要因にもなった。

4位 サッポロビール

1886年創業、1949年に大日本麦酒の解体によって生まれたビールメーカー。同社は朝日麦酒(現アサヒビール)と日本麦酒(現サッポロビール)に解体された。

解体当時、アサヒ=西日本、サッポロ=東日本、キリン=首都圏中心といったビジネス展開をしており、市場シェアはなんとサッポロビール(当時・日本麦酒)がトップだった。

ところが。

ご存知のとおり、かつて名門企業だったサッポロビールも今は見る影もない。

ビール事業においてはむしろもう撤退した方がいいレベルであり、語るべき点は無い。強いて述べるとしたら「エビスビール」のブランド価値、北海道での知名度くらいのものだろうか…

恵比寿ガーデンプレイス(ビール工場跡地を再開発した商業施設)だけ残して、残りの事業はすべて売却し、不動産会社に転身したほうが利益でると思う。決してやらないだろうけど…。

ビール業界の世界シェアTOP15ランキング

さて。

これまでは国内市場のことばかり見てきたが、グローバルで見たときの日系企業の立ち位置もざっくり整理しておこう。※生産量ベース

表にまとめたように日系ビールメーカーはアサヒ7位・キリン10位が世界シェアTOP15にランクインした。また売上規模で見たときには、安価品ばかり作っている途上国メーカーが下位に来るため、もう少し上位に位置する。

グローバルの状況については長くなるため、別の記事にてくわしく解説することにする。