【2019年版】菓子業界の市場規模と現状、今後の動向

最新2019年版・菓子業界の国内市場規模、過去〜現状、売上ランキング、大手企業の概要、今後の動向について。

大手菓子メーカーの社員と話せるくらいのレベルまで持っていくための記事です。就活・転職・投資のご参考にどうぞ。

菓子業界の現状

まずは菓子スナック業界の現状について整理していく。

1. 菓子の市場規模は約3.6兆円、過去最高を更新

*出所:経済産業省「工業統計」

グラフに示したように、菓子類の出荷額ベースでの市場規模は緩やかに成長をつづけている。

最新のデータは2016年度までしか公表されておらず、市場規模は約3.6兆円、前年度比+2.8%の成長となった (出荷金額ベース)。

市場規模の推移をみると1992年に3.3兆円を記録し一旦は減少するもその後は反転。2015年度・2016年度と過去最高額を更新した。

短期~中期的な視点では、訪日観光客のお土産需要などもあり今後も緩やかな市場拡大がみこまれる。

しかし。

長期的にみると国内市場は人口減で食べるヒトの数が減っていくので、どうしても縮小は免れない運命にある

なお2011年度がおおきくマイナスになっているのは、2011年3月の東日本大震災によって物流麻痺・工場被災などが発生し、サプライチェーンの一部が麻痺したためである。

2. 品目別では分散、チョコレート類の成長率が高い

つづいて品目別の市場規模と成長率について。グラフに各品目のシェアをしめす。

品目別のシェアをみるとケーキなどの洋生菓子が22%と最大、ついで羊かんなどの和生菓子16%、チョコレート類16%となっているが、どのカテゴリーも1~2割で分散している

毎日ケーキばかり食べるヒトがいないことからも分かるように、突出してシェアの高い分野があまり無いという特徴あり。

▼なお品目別の年平均成長率CAGR (2007~2016)は以下のとおり。

  • 洋生菓子:CAGR +1.2%
  • 和生菓子:▲ 0.4%
  • チョコレート類:+3.1%
  • ビスケット類:+2.1%
  • 米菓:+1.9%
  • あめ:+0%

いっぽうで成長率では違いがあり、2007-2016年の年間平均成長率(CAGR)をみると、チョコレート類が+3.1%、ビスケット類が+2.1%と市場の成長をリードしている。

【参考】チョコレート・スナック菓子・米菓子の市場推移 *出所:カルビーIR資料

注意)1.で解説した市場規模とは集計の方法が異なるため一致しない。

3. 菓子は国内生産が98%以上、輸入品は2%未満

菓子類の市場のほかにはあまり無い特徴として。

国内生産が98%以上を占めるという特徴あり。日本企業の海外生産品や輸入品はほとんど無いに等しく、2018年の輸入額は607億円と市場規模3.6兆円を考えると微々たる金額である。

このことから「地産地消」型の産業といえる。

4. 菓子メーカーの売上ランキング2018年度

主要プレイヤーの売上ランキングをまとめておく (2018年度実績ベース)。

  1. 明治ホールディングス 売上1兆2,543億円 対前年比+1.1%
  2. 山崎製パン 1兆594億円 +0.6%
  3. 江崎グリコ 3,502億円 ▲0.9%
  4. 不二製油グループ本社 3,008億円 ▲2.2%
  5. カルビー 2,486億円 ▲1.2%
  6. 森永製菓 2,053億円 ▲0.2%
  7. ブルボン 1,175億円 ▲0.1%
  8. 不二家 1,052億円 ▲0.6%
  9. 亀田製菓 1,000億円 ▲0.5%
  10. 井村屋グループ 451億円 ▲0.1%
  11. 寿スピリッツ 407億円 ▲9.1%

これらはさすがに誰もが知る企業ではないだろうか?

売上1兆円企業は明治と山崎製パンの2社のみ。あとは中堅クラスのメーカーが似たようなポジションに集まっており、シェアが分散している。

業界大手は菓子だけでなく色々手がけている総合菓子メーカーがおおく、明治ホールディングス、森永製菓、江崎グリコなどが該当。いずれも創業100年近い老舗企業で、グループで乳業事業を有する点も共通している。

ただし。

スナック専業メーカーではカルビーや湖池屋、米菓メーカーでは亀田製菓などが代表企業となるなど、限られた分野で高シェアをもつ菓子メーカーもおおい。

あと非上場企業ではキットカットで知られる🇨🇭Nestle(ネスレ・外資系)などがある。

また菓子メーカーは参入障壁がいちじるしく低いことから同族経営の非上場企業もおおく、メーカーは星の数ほどある。

たとえばブラックサンダーなど、あなたがよく食べる身近なお菓子のメーカーをチェックしてみることをオススメする。

5. 菓子カテゴリー別の主要企業

菓子のおもなカテゴリーは、チョコレート、キャンディ、スナック類、米菓などがある。

すべてを手がけている総合菓子メーカーもあるが、たいていはそれぞれの分野で各企業がライバル関係にある。

たとえば大手菓子メーカーの中でも得意分野は分かれており、

  • チョコレート、グミ類は明治。
  • キャラメルは森永。
  • ガムはロッテ。

がそれぞれシェアNo.1を占める。いちおう分野ごとの主要メーカーもまとめておく。

【参考】カテゴリ別の主要企業

  • 菓子総合:明治ホールディングス、森永製菓、江崎グリコ、ロッテ、ブルボン等
  • スナック類:カルビー、湖池屋等
  • 飴:カンロ、春日井製菓、モンデリーズ・ジャパン等
  • 米菓:亀田製菓、岩塚製菓等
  • 和菓子:中村屋、虎屋、井村屋グループ等
  • その他:山崎製パン等
  • 外資系:ネスレ日本、など
  • 同族経営の中小企業も多く存在するが、市場の大部分は大手が占める

菓子業界の今後の動向

つづいて菓子業界の今後の動向についてザックリまとめておく。

1. 国内需要は今後、長期的にみると厳しい

菓子類は嗜好品であることから一般的に以下のファクターによって市場が伸びる。

  1. 人口が多ければ多いほど需要UP
  2. 経済が発展すればするほど需要UP
  3. 年少人口が増えれば増えるほど需要UP (高齢者はお菓子をあまり消費しない)

しかし。

ご存知のとおり、日本国内においては上記3つの市場が伸びるファクターのどれも満たしていない。

したがい足元はそれなりになんとかなるかも知れないが、10年後、20年後、30年後といった長期スパンで市場を見たときには確実に縮小していく。

分かりきった話ではあるが重要なポイントなので今後の動向として挙げておいた。

2. 健康カテゴリーへの対応が一層もとめられる

お菓子は太る、生活習慣病の元になる、などなど。

お菓子にたいする風当たりは日本だけでなく、世界的に今後ますます強まっていくだろう

そんななか唯一、確実に10年20年のスパンで伸びるのが健康に配慮した商品である

お菓子を食べる時点ですでに健康に悪いのだが、それでも「Cokeゼロ」のように健康に配慮している感を出せばすぐに消費者はダマされる。

今後の伸びが期待される分野である。

▼ 各社すでに取り組んでいるのでグリコにおける取り組み例を紹介しておく。*江崎グリコのIR資料より

3. 成長する海外市場へ、グローバル展開の強化

国内市場は長期的にみると縮小していくのは前述のとおり。

したがって対策としてパッと思いつくのは、日本の外に出て商品を売ってくること、すなわちグローバル展開である。

国内は市場の急成長がなかなか見込めないが、海外はまったく別である。世界的にみると人口は増える一方なので、菓子類の市場も拡大するのは確実

菓子はローカルブランドが強い「地産地消」型の商品であり、さらにブランドが根付くまでに10年20年単位で時間がかかるため、言うほど容易くは無い。

しかし。

もし新規開拓が難しいのであれば海外企業のM&Aを活用すれば良いだけの話である。

ぜひ頑張ってほしい。

【補足】なお現在、菓子メーカーでグローバル展開に成功している企業はほとんど無い。

江崎グリコやカルビーといった業界大手でも海外売上比率はたった1割そこそこである。

これは他分野のメーカー (自動車や化学・電機電子部品・鉄鋼など)とくらべて著しく低い水準だ。たとえばトヨタの海外売上比率は69%あるし、たばこメーカー「JT」ですら63%、調味料メーカー大手「味の素」は57%ある。

菓子メーカーのグローバル展開が遅れているのは、危機意識が足りてないとしか言いようがない。国内でのほほ〜んとやっているだけではいずれジリ貧となるだろう。

※ ちなみに業務用チョコレートの不二製油は海外M&Aを積極的におこなっており、海外売上比率43%である。

4. 小売企業PBとの競合激化

あとはもうひとつ、今後無視できない市場の動向として。

スーパーやコンビニなどの小売大手が菓子分野でもプライベートブランド(PB)の拡充をすすめ、伝統的な菓子メーカーの存在を脅かしている

小売企業のPBにはたとえば、

  • 大手コンビニ:セブンプレミアム、ローソンセレクト、ファミマセレクションなどPB商品の拡充をすすめる
  • 大手スーパー:トップバリュー (イオングループ)など

などあり、菓子メーカーからシェアを奪っている。

といっても小売企業は工場をもたないのが一般的であり、PBでもカルビーなどの菓子メーカーに外注 (製造委託)している。したがってすべてのビジネスを失っているわけでは無い。

ただ。

一般的に製造委託でイオンなりセブンイレブンからビジネスをもらうよりも、自社ブランドを消費者に売るほうが確実に儲かる。

したがって小売企業によるPBの拡充が意味するところは、菓子メーカーのマージン減少、利益減少である。*逆に小売企業にとってはマージン増・利益増

とにかく小売企業がPB比率を今後どんどん増やしていくことは確実。

差別化なり、対応がもとめられる。

※ 大手メーカーではブランド力強化に加え、メーカー直販店を持つなどの取り組みがみられる。

▼【参考】セブンプレミアムの売上推移 *セブン&アイホールディングスIR資料

大手菓子メーカー4社の動向

最後に大手菓子メーカー4社の動向についても簡単にみておく。売上などの数字は2019年3月期、または同等の決算期を用いた。

なお、山崎製パンはジャンルがちょっと菓子とは言えないため省略。また業務用チョコレートの不二製油GはBtoB (対法人)がメインであるため省略。

明治・江崎グリコ・カルビー・森永製菓の4社を大手菓子メーカーとして位置づけた。

明治ホールディングス 売上1.3兆円 +1.1%

明治ホールディングスは2009年に明治製菓と明治乳業が統合し設立された持株会社。

したがい乳製品と菓子類のどちらも扱っている。

2019年現在のカテゴリー別の売上比率では、

  • 乳製品(発酵デイリー、加工食品)>> 菓子 > 栄養 > 医薬品事業

となっている。

なお菓子セグメントの売上は2019年3月期で1,312億円であり、菓子だけでみると、カルビーのほうが売上規模は大きい。

同社のHPによると以下の4品目で国内シェアトップとなっている。

  • チョコレート:24%
  • ヨーグルト:43%
  • 牛乳:22%
  • グミ:28%

ヨーグルト製品で圧倒的なシェアを持つほか、チョコレート、牛乳などにおいてもNo.1シェアである。

なお旧・明治製菓の菓子事業においてはスナックやキシリッシュなどのガムも展開するが、チョコレートの売上は菓子事業の7割と高い。

近年の菓子事業の業績は、ロングセラーブランドに集中するとともに、収益性改善の取り組んだことから増益が続いている。

2018年度実績では「チョコレート効果」をうたった健康志向チョコレートやプレミアムチョコレート「明治ザ・チョコレート」が伸長したほか、収益改善に取り組んだ結果が実を結んで増収増益となった。

【参考】明治ホールディングスの売上・営業利益推移 *同社HPより

しかし食品事業の海外売上高比率は5%未満と低く、成長の余地あり。

なお海外展開ではシンガポール、インドネシア、中国などに拠点を設立。チョコレート製品やアイスクリーム、粉ミルクなどを中心に販売。またアメリカでは老舗ビスケットメーカーをグループ化しているが、いかんせんどこも売上が小さすぎて話にならない。

同社の2026年度までの経営計画が以下の目標が掲げられている。

  • 食品事業の営業利益成長率を年平均6%台
  • 海外売上高比率10%以上、とくに中国を2020年度までの再注力地域としている
  • 国内ではコア事業のさらなる拡大、成長事業の育成、低収益事業の改善

江崎グリコ 売上3,500億円 ▲0.9%

江崎グリコは1921年創業の老舗菓子メーカー。もうすぐ創業100周年をむかえる。

牡蠣の煮汁に多く含まれるグリコーゲンをキャラメルに入れ、栄養菓子として販売したことが祖業。社名グリコはグリコーゲンに由来する。

また明治製菓や森永製菓に比べると後発であったため、おまけ付き菓子で消費者の注目を集めたほか、大手2社と競合しないスティックタイプのプリッツやポッキーを開発し現在の地位を築いてきた。

主力製品はポッキー、プリッツ、ビスコなど。

ほかに牛乳・乳製品事業、アイスクリームなどの冷菓事業、カレールウなどの食品事業、食品原料などを手がけている。

  • 近年は大人向け市場の開拓としてオフィス菓子直販の「オフィスグリコ」を開始。
  • 20-30代が好むおつまみ市場を狙った商品では、2006年にクラッツ、2008年にチーザを発売してヒット。

▼【参考】江崎グリコの事業別売上比率 (2019年3月期) *出所:IR資料

また海外展開にも積極的に取り組んでおり、海外売上高比率は15% (ただし改善の余地あり)

  • 2012年にKinhDo (キンド)に出資
  • 2013年にはWINGS Groupとインドネシアにアイスクリーム製造販売の合弁会社を設立
  • 欧州では🇫🇷GeneraleBiscuit (ジェネラルビスケット)と提携、その後は同社を買収した🇺🇸KraftFoods (クラフトフーズ) によって一部ブランドが販売されている

カルビー 売上2,490億円 ▲1.2%

カルビーは国内スナック市場シェア約5割、シリアル市場シェア約4割の菓子メーカー。

なお国内スナック市場のうちポテトチップス市場では70%超の市場シェアを占め、圧倒的No.1となっている。

2018年度の実績はこれまで急成長してきたシリアル事業の鈍化により前年比マイナス。2017年度はポテチの原料ジャガイモ不足が主要因でマイナスとなったがが、とにかく2年連続での減収。

▼【参考】カルビーの売上・営業利益率推移 (IR資料より)

またスナック市場においてはすでに高シェアであり、これ以上のシェア獲得はなかなか厳しいものと推察される。

▼【参考】スナック市場におけるカルビーの市場シェア推移 (IR資料より)

そんななか、力を入れたいのがやはり海外展開。海外売上比率はおおよそ13%と、菓子メーカーとしてはそれなりに高い数字ではあるけど、もっと期待したいところ。

いちおう、アメリカでは世界最大の飲料メーカー🇺🇸Pepsico(ペプシコ)と2013年に業務提携し、北米におけるJagabeeの独占販売権を渡した。

ほかに北米、中国、韓国、タイ、香港、台湾、フィリピン、シンガポール、インドネシア、イギリスへ事業を展開している。

森永製菓 売上2,050億円 +0.2%

森永製菓は渡米して菓子づくりを学んだ創業者がミルクキャラメルを主力製品として事業を開始したことが祖業。乳製品をあつかう森永乳業とは兄弟会社の関係であり、モリナガグループを形成している。

主力ブランドにはミルクキャラメル、森永ビスケット、チョコボール、小枝、ダース、ハイチュウ、ココア、ウイダーinゼリーなどがあり、ゼリー飲料では国内4割弱でシェアNo.1となっている。

いずれも誰もが口にしたことのある、おなじみのブランドではないだろうか?

2018年度の実績は売上は横ばいであるが、利益では過去最高営業益を更新するなど、好調である。

▼【参考】2015.3月期~2019.3月期の売上・営業利益 *森永製菓HPより

今後の戦略としては、

  1. 健康カテゴリーの強化
  2. グローバル強化
  3. 国内主力8ブランドの強化

をかかげている。

健康カテゴリーの「ウイダーinゼリー」は森永製菓の成長におおきく貢献、現在では同社の利益をささえる主力8ブランドのひとつに存在にまでなっている。

海外展開では、米国・中国・アジア地区を重点エリアとして位置づけハイチュウを中心に展開。2020年度の海外売上高比率10%を目指すとしている。

▼【参考】森永製菓の国内主力8ブランド *同社IR資料より

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