食品業界の現状と課題、今後の動向まとめ2017年版。まずは世界共通のトレンドについてざっくりと語り、次に日本国内市場の動向を細かくみていきます。
就活と転職の業界研究にお役立てください。
食品業界の現状と今後の動向(世界&日本)
まず現状のマーケットと今後の成長率を世界、日本の順にみていく。
①マーケットサイズと成長率(世界)
◎包装食品:250兆円(2015年実績)前年比+5%成長
◎タバコ:70兆円(2014年実績)対2000年+21%
◎飲料:81兆円(2014年実績)前年比+5%
◎アルコール飲料:N/A
【出典】①Plunkett research ②global.tobaccofreekids.org ③bloomberg.comのデータを参照、翻訳※為替1USD=100円で算出
②マーケットサイズと成長率(日本)
◎加工食品:25兆円(2015年実績)前年比0%成長
◎タバコ:4兆円(2015年実績)前年比+2%
◎飲料:5兆円(2015年実績)前年比+1%
◎アルコール飲料:3.6兆円(2015年実績)前年比▲1%
【出典】矢野経済研究所
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食品業界には広く解釈するとタバコ業界、ビール業界、飲料業界までも含んでしまう。一応データを載せたが今回は「食品業界=包装食品メーカー」だけについて語る。ちなみに外食産業、農林水産業は食品業界には含まれない。
海外のニュースを見ていると食品業界の市場は2020年にグローバルで300兆円(3兆ドル)産業になるという試算がある。これが本当に実現されるとしたら成長産業である。確かに日本をはじめとする先進国では需要が伸びないが、途上国のマーケットが凄まじい勢いで伸びる。
結果としてグローバルでは年率5%の成長を見込み、2020年に300兆円産業になるという計算。←化学業界と同じくらいの規模。
食品業界の3つの課題(世界共通)
食品業界の現状を把握したところで、課題についてもみていく。世界共通の課題のみピックアップした。
①食の安全問題(遺伝子組み換え、農薬、化学調味料…)
遺伝子組み換え作物の安全性が世界中で問われている(米国は除く)。結果、イギリスを始めとする国では家畜の飼料に使われるだけであっても、遺伝子組み換え表示義務がある。一方、日本の遺伝子組み換え表示基準はとても甘く、あなたの知らない内に食卓に
画像出所:遺伝子組み換えコーンを食べ続けたラット
遺伝子組み換え作物は米国が仕掛けたことなので、米国のずさんな食品制度について簡単に述べておく。
米国ではFDAという決まりがあって、これの許可が下りた添加物・作物は食品に使ってもいい決まりになっている。問題はこのFDA基準がめちゃくちゃ甘いこと。化学品でもなんでも、結構適当に通ってしまう(実際はもっとややこしいが簡略化している、申請経験あり)。
欧米人は肉ばかり食べるし甘いものばかり食べるので、病気になりやすい。で、病気にかかっても原因がわからない。
肉のせいなの?
砂糖のせいなの?
甘味料のせいなの?
遺伝子組み換えのせいなの?
農薬のせいなの?
これに加えて生活習慣とか色々な要因がありすぎて、病気の原因を突き止められないことがほとんど。逆に言うと、化学品であろうと農薬であろうと遺伝子組み換えであろうと、何を食っても大丈夫だということになる。これが米国人の呆れた考え方なのである。
ビッグマック片手に「ちょっと最近ヘルシーになろうと思ってさ!!」とコーク・ゼロを飲む国民だから救いようがない。
話が逸れたが結局、人体への影響って使ってみないとわからない部分が多く、遺伝子組み換え作物も農薬も医薬品も、絶対に安全とは言い切れない。
こればかりは歴史が徐々に証明していくことなのだ。被害者になったら運が悪かったと諦めるしかない…
②異物、有害物質の混入問題
日本では常識的に報道されている食のトラブルに関するニュース。「食トラブル・ニュース」で検索するだけでもすごい数の件数がヒットする。2016年11月1日〜15日までの期間だけで以下のニュースがあった。
- 上海ガニからダイオキシン。800キロ回収(香港市場)
- メンチカツで17人が食中毒(イトーヨーカドー)
- さんま缶に異物混入で2779万個を自主回収(マルハニチロ)
- カロリーメイトゼリーにカビ。270万個を自主回収(大塚製薬)
- ツナ缶にゴキブリ混入(はごろもフーズ)
- カップ入り惣菜60万個を自主回収、プラスチック混入(フジッコ)
- ご飯に誤って洗浄剤噴霧、83食販売(福岡市の弁当店)
- チョコ4万個超回収、アレルギー原因物質混入(成城石井)
製造工程管理に厳しい日本でもこれだけあるのだから、世界は比ではない。日本の場合、国内で製造・加工されているものについては信頼性がある。輸入品が問題。
《ただ途上国や中国では問題があってもニュースにならない。「仕方ないねぇ〜」で済まされる》
③食料不足なのに食品の廃棄が減らない
飲食店や家庭、コンビニで毎日のように捨てられる食品。一方で世界をみると毎日4万人が飢えで死んでいる。
これを踏まえて食品業界は廃棄問題を減らす工夫が必要だ。食品の賞味期限を伸ばすことくらいしか私にはアイディアがない。
消費者の意識による部分が大きく、変えられないかもしれない…
食品業界の今後の動向:グローバルトレンド
食品業界の現状と課題を踏まえて今後のグローバル・トレンドについて語っていく。
①オーガニック・フード
食の安全への意識の高まりから、オーガニック・フードの需要は世界的に伸び続けている。最近は米国でさえも遺伝子組み換え作物を問題にしはじめた。10年前であれば考えられない展開である。
ある機関の予測によると2018年までにグローバルで13%の市場成長を見込んでいる。
この流れは単なる短期トレンドで終わらず、長期のトレンドになるものと予測。なぜなら今後、食品に関するもっともっと色々な問題が出てくるから。欧米人ですらもビッグマック片手にコーク・ゼロを飲むことがヘルシー、という救いようのない思考回路から脱却してきている。
そして日系メーカーは古くからこの分野に取り組んできたため、グローバル市場でも存在感を示せると考える。
※オーガニック・フードは農薬・化学肥料ゼロという意味ではなく、ある一定の基準以下に抑えられているというだけ。
②△△フリー
人工甘味料フリー。
人工保存料、着色料フリー。
人工香料フリー。
グルテンフリー。
すでに増えている△△フリーの流れは今後も続く。30年前に比べたら、食品は確実に安全な方向にむかっている。特に日系メーカーは古くからこの分野に取り組んできたため、グローバル市場でも存在感を示せると考える。
③自然由来の調味料
オーガニック・フードに付け加え、自然由来の調味料も流行に乗ってほしい(個人的な願望)。化学調味料は環境に左右されず、品質も一定であることが強みだが健康上のリスクは当然ある。一方、自然由来の調味料は品質のブレがより大きく安定生産できない問題あり。そして化学調味料は安く、自然由来のほうが値段は高くなる。
でも私は安全をカネで買う時代になると考える。
④ヘルシー飲料
砂糖のたっぷり入った炭酸飲料や清涼飲料に代わり、お茶やカロリーゼロなど、ヘルシー分野の成長が加速。これは日本だけでなく世界の流れである。たとえば炭酸飲料分野で世界トップシェアのコカ・コーラ社ですらミネラルウォーター、お茶、ヘルシードリンクの分野に力を入れている。
消費者は健康志向になりつつあり、ヘルシー飲料は今後のトレンドのひとつと言える。特に日系メーカーは古くからこの分野に取り組んできたため、グローバル市場でも存在感を示せると考える。
⑤ヘルシー菓子
すべての食品・飲料がヘルシー志向になりつつある中、菓子類のヘルシー商品も拡大していくだろう。
⑥エスニック風味(日本食ふくむ)
世界中で注目されつつあるアジア、アフリカ、中東の何ともいえない風味。いつもと違う風味を求める消費者が増えている。日本食は今では世界中でヘルシー・フードの代表的な存在として広まっているし、アジアやその他の独特な風味も世界でどんどん広まっていくだろう。食のグローバル化!?
米国内での調査によるとエスニック風味食品の市場は2017年までに20%増となる(2012年対比)。
⑦肉から魚・植物たんぱくへ
日本食ブーム、オーガニックブームに代表されるように、世界は健康志向にシフトしている。その流れをくんで肉を食べる食文化から、魚・植物たんぱくを採る食文化へとシフトしていく。
世界には「なんちゃってベジタリアン」と呼ばれる人種がいる。宗教上の決まりではなく個人のポリシーとして、できるだけ肉を食べず野菜を中心とした食生活をする人のこと。←宗教の決まりではないため実際には多少たべる。
米国内での調査によるとベジタリアンは6%しかいないが、こういった「なんちゃって」を含めると全人口の26~40%が該当するらしい。ちなみに外人のベジタリアンは例外なく太っている。肉を食べない代わりにスイーツやチョコを大量に食べるから(失笑)。
⑧食の衛生&安全
課題で示したとおり食品の安全問題は避けて通れない。
ただ問題は何が危険で何が安全なのか、誰も判断できないことだ。できるだけ農薬が少なく、できるだけ遺伝子組み換えでなく、できるだけ食品添加物が少なく…と消去法で選んでいると食べられるものが無くなる。外食もできなくなる。
これは出口の見えない永遠の取り組みとなるだろう。
⑨アジア&アフリカ、途上国の急成長
食品業界は先進国では大きな伸びが期待できない。新たな市場を求めて途上国を中心にグローバル展開していかないといけない。が、食品のグローバル展開はそう甘くない。いまの日本企業でグローバル展開がうまくいっているのは味の素、キッコーマンぐらいだろうか…
食品業界はひとつ売れるブランドを生み出すと爆発的に伸びるが、定着するまでに10年、20年単位の時間が必要。それぞれの国のカルチャーにあわせた味も必要。工業製品のように単一規格で世界中にばら撒ける訳ではないので非常に難しい。長期の視点とカネと人材が必要。
⑩途上国の「肥満=裕福の象徴」をチェンジする
今までヘルシー路線がトレンドだと何度も述べたが、実は途上国や中華圏はまだまだヘルシーとは程遠い。
中華圏、イスラム系、インド系、アフリカなど途上国では「肥満=裕福の象徴」とみる文化がある。ヘルシー路線で日系食品メーカーが存在感を増すためには、こういった国民の考え方を変えさせないといけない。シンガポールやインドにいくと、ビジネスマンと女性が肥満ばかりで驚く。デブは百害あって一利もない。
だが、彼らをチェンジマインドさせるには気の遠くなるような時間がかかる。だけど何も行動をしなければビジネスチャンスもやって来ない。
こういった国々では食育から地味に種まき作業を実施するしかないのだ。
⑪レトルト・冷凍・小包装・インスタント食品・コンビニ弁当(食のモバイル化)
現代人は忙しく料理を作る暇がない。レトルト、冷凍、小包装、インスタント食品、コンビニ弁当といった食品の需要は今後も世界的に伸び続けるだろう。
忙しい現代人のために簡単調理を提案するスタイルを「食のモバイル化」と勝手に名づけた(笑)。
まとめ & 筆者の小言
とにかくグローバルで健康志向に走りつつある食品業界。
先進国ではおいしければ売れる、という時代ではなくもう一歩上をいく戦略が必要となってくるだろう。一方、お金のない途上国の人々には安くておいしい食品が求められる。
いろいろとグローバルトレンドを語ったが、結局はその国と地域の事情に合わせた商品が求められる。
そこで私がもし日系食品メーカーの社長だったら、以下のような施策をおこなう。
- 国内むけの商品開発は規模と予算を半分にして、グローバル商品開発にカネとリソースを使う(R&D拠点は日本中心でよい)
- 国内営業&マーケティング部隊の規模と予算も半分にする。国内はシェアを失っても構わない。海外営業&マーケティングにカネとリソースを使う
- 日本の消費者むけ商品を海外でも同じように展開するのを止める。現地のニーズに合わせて開発する。特に途上国では品質よりも価格が重要。
- 製造拠点の海外拡大
- M&Aは必要最小限にとどめる
これって実は、私の勤める化学メーカーの営業&開発部隊がここ10年くらいで進めてきた作戦。結果は大正解で私の担当するアイテムは今も海外中心に成長を続けている。
もし10年前に海外シフトを決断していなかったら?
死ぬのを待つだけの商品になっていたでしょう。
遺伝子組み換えコーンを食べ続けたラットの記事からしてそもそも間違いです。
たいして知識もなく間違った事を書くのはやめたほうがいいかと