キーエンスの年収がなぜ高いかを検証する記事。
そもそもキーエンスとは
「センサーを設計・開発する電機メーカー」。
消費者むけの商品ではなく、
クルマや半導体の工場で使われるセンサーを設計・販売してます。
画像出所:キーエンスのホームページ
キーエンスの革新的だった点は大きく2つ。
① メーカーなのに工場を持たずに外注して作らせている(ファブレス化)
② 代理店を使わずユーザー直販
どちらも
今ではとくに珍しいことじゃないんだけど昔は画期的なアイディアだった。
米アップルが
iPhoneのデザインと設計だけして、作るのはすべて中国メーカーに外注しているのと同じです。
それでは
「キーエンスの平均年収が高い理由」を見ていきましょう。就活・転職ご参考にどうぞ。
※2017年7月: 最新情報に更新
ちなみに
キーエンスは激務・ブラック企業としても有名。くわしくは別の記事にて。
▶︎ キーエンスって激務・ブラック企業なの?
キーエンスの平均年収・平均勤続年数・平均年齢
キーエンスの平均年収・平均年齢・平均勤続年数のデータは以下のとおり
(有価証券報告書を参照)
- 年次『2016年6/21-2017年3/20』
- 平均年収『1861万円』
- 平均年齢『36.1歳』
- 平均勤続年数『12.4年』
- 対象従業員『2,121人』
- 過去の平均年収推移(平均年齢)
2016年2H 1777万円(36.1歳)
2016年1H 1756万円(35.3歳)
2015年 1648万円(35.6歳)
2014年 1440万円(34.8歳)
2013年 1321万円(34.3歳)
2012年 1314万円(33.5歳)
2011年 1322万円(34.4歳)
2010年 1285万円(33.4歳)
2009年 1008万円(32.5歳)
2008年 1135万円(32.1歳)
リーマンショックで一時的に落ち込んだものの安定の年収1000万円ごえ。
とくに最近はいちじるしく伸びていて、
2017年上半期は平均年収1861万円!!
平均年収ランキングでは
全上場企業のなかで堂々の1位です!
「メーカーは給料安い」
というのがこれまでの一般常識だったのだけど、その神話を壊したメーカー
(他にはファナックも同類)
キーエンスの大卒・総合職の年収事例
キーエンスの年収は
ご存知のとおり20代でも余裕で年収1000万円を超えます。
というより、
今の業績であれば新卒入社3年目で年収1000万円くらいになるでしょう(基本給+ボーナス+残業代の合算)。
ただ後述していますが毎年、
よくも悪くも年収が大きく変わりますのであくまでご参考程度にお考えください。
年収まとめ
それではキーエンス・大卒総合職について
2017年時点での年収事例をみていきましょう。
※ 年収は「基本給+ボーナス+残業代」で計算しています。
※ 通常、私が年収計算をするときには個人差の大きい残業代を含めませんがキーエンスは特別。キーエンスはだれでも残業90時間/月を超えるため残業代も含めて計算します。
- 新卒1年目クラス3「年収600万円」
- 新卒2年目クラス3B「年収800万円」
- 新卒3年目クラス4B「年収1100万円」
- 学部卒4年目26歳(最速)
クラス5B「年収1500-1800万円」 - 学部卒8年目30歳(最速)
クラス6B「年収1900-2200万円」 - 学部卒13年目35歳(最速)
クラス7M課長「年収2500万円~」 - 学部卒18年目40歳(最速)
クラス8M部長「年収3000万円~」 - 役員クラス「不明」
まとめると
新卒3年目・25歳・年収1000万円超は誰もが到達するライン。
新卒4年目以降は出世次第。
クラス5B(年収1500万円~)までは遅かれ早かれ誰でも到達します。
クラス6B(年収1900万円~)以降の昇格はきびしく、限られたひとにしかチャンスが与えられません。そして成果を上げなければ降格人事も普通にあります。
※2017年の平均年収1861万円をベースに計算
注意点
- クラス3~6Bの平社員は残業代がでる
7M、8Mは残業代なし。 - ボーナスは年4回
内訳は年2回 x 2.5ヶ月固定
年2回 x 全社営業利益10%を社員数で割って等級におうじて割り振る。 - 住宅手当など福利厚生なし、退職金なし
全て給料に含まれる。他の日系大手と年収を比較する際には200万円程度を引いて考えるのが妥当。 - ゴールデンウィーク前に10万円支給
- クラス5B以降は年功序列ではなく成果主義
上司 ⇄ 部下の立場が頻繁に入れ替わる - 管理職に昇格できるのは50人に1人くらい
なぜキーエンスはこんなにも年収が高いのでしょうか?
キーエンスの年収が高い理由について見ていきましょう。
理由①営業利益の10%をボーナスで従業員へ還元
キーエンスの年収が高い理由
まずは「営業利益の10%をボーナス還元しているから」
キーエンスは全社営業利益の10%を従業員の頭数で割ってボーナスとして還元するという、おもしろい年収システム。
このボーナスは仕事できる・できないに関係せず役職におうじて全従業員がもらえます。
つまり
会社の営業利益が多ければ多いほど従業員に還元され年収が上がるということ。
キーエンスの営業利益(絶対額)はリーマンショック後の2010年以降、伸び続けているため必然的に平均年収が上がります。
1人あたり1000万円/年のボーナス!!
具体的に
1人あたりのボーナスを計算してみると…
- 2015年度の営業利益:約2,000億円
- 全従業員:約2,000人
- 1人あたりの平均年間ボーナスは…
営業利益2000億円 x 10% / 2,000人 = 1,000万円/人
なんと一人あたりにすると
年間1,000万円ものボーナスが支給されます!
もはやボーナスだけでも大企業の課長クラスに相当する年収。
もちろんこれは平均値なので役職によってもらう額が違います(個人の成績は関係ありません)。
新卒ゼロ、2年目300万円、3年目500万円…
マネージャー以上は1,000-2,000万円、役員は1億円のボーナス…
といった感じになっているのでしょう。
ボーナス1,000万円以上って、まるで外資系金融みたい。もはやサラリーマンの給料ではない…
くわえてキーエンスは近年、
海外事業の好調で業績右肩上がり。
このまま伸び続ければ
平均年収2000万円を突破する日も近い!?
従業員2000人規模の会社で平均年収2000万円を超える企業は、後にも先にもキーエンス以外に決して現れないでしょう。
その歴史的瞬間をみたいですねぇ〜。
※ちなみに普通の大企業の年間ボーナスは「基本給 x 4~8」くらいです。
理由②月90時間以上の残業代を支給(マネージャー未満)
キーエンスの年収が高い理由
つづいては「激務のため残業代がおおい」
ボーナス要因が大きすぎて、
他の要因はもはや気にしてもしょうがないレベルではありますが一応、まとめておきますね。
キーエンスでは
マネージャー未満クラスは残業代が月90時間以上、必ずでます。
さて、
月90時間残業をすると残業代はどのくらいになるでしょうか?
残業代はまず基本給ベースの時給を計算し、それに割増しの25%を上乗せして計算するのが普通です。したがって基本給の高い・低いによって残業代の時給は違います。
新卒のミニマム残業代は…157万円/年
ここでは
たとえば新卒の残業代を考えましょう。
・初任給20.5万円 ÷ 22days ÷ 1日8h労働 x 90h残業 x 1.25割増 x 12months = 157万円
ということで
新卒でも残業代だけで年間157万円が支給されます。
基本給30万円であれば月90hの残業代は年間230万円。
基本給40万円であれば月90hの残業代は年間307万円。
残業代だけで
しょぼい中小企業の年収くらいあります(汗)。
キーエンスは就業時間が7:30-21:00となっているため、誰でも必ず月90hの残業をしなければいけません。したがって必然的に平均年収が高くなります。
このあたりの事情は電通とか広告業界の年収イメージと同じですね。
▶︎ 電通の年収
理由③激務、プレッシャー大
キーエンスの年収が高い理由
最後に「激務であること」
キーエンスは一人で二人分の仕事をします。
月90時間残業の時点で激務なのですが、
それにくわえて業務に対するプレッシャーも大きい会社。
分刻みの報告書、社内の奴隷監視システムなどなど。
キーエンス独特のシステムがあり甘えた仕事は決して許されません。特に営業だとノルマも相当にキツイ。
それがあっての高年収です。このあたりの事情は別の記事にまとめていますので、詳しくは以下のリンクからどうぞ。
▶︎ キーエンス営業は激務・ブラックって本当?高年収企業の実態に迫る!
その他: 退職金なし、住宅補助なし
キーエンスの年収が高いその他の理由。
あとは些細なことですが、
キーエンスは退職金もなく、住宅補助もありません。
すべての福利厚生を年収で現金化しています。結果として平均年収が高くなります。キーエンスで定年退職まで勤められれば奇跡なので、退職金は無くても問題ないでしょう。
退職金がないと年収-100万円ほどのインパクト
話はそれますが退職金の話をすこし…
一般的な大企業の退職金は生涯賃金の10%くらい
生涯賃金を3.2億円とすると3200万円が退職金となり
3.2+0.32=3.52億円くらいが平均的な大企業の生涯賃金です。
退職金3200万円を勤続年数38年でわると…
だいたい年間100万円ぐらいのインパクトがあります。
したがって大企業と比較するときには
住宅手当など100万円+退職金インパクト年収100万円を差し引いて考えるのが普通。
まとめ
激務・高給の代表的な企業、キーエンス。
ただキーエンスは激務といっても
外資系金融、野村證券、メガバンク、電通マンのような理不尽さはなく単に作業的なマニュアル仕事に忙殺されるだけですね。
「短期集中で高収入を得て、さっさと次へ転職したい」
という就活生むけの会社です。
リーマンショック後、外資系金融は夢のある業界じゃなくなっているのでキーエンスのほうが断然よいと思われます。
また似たような激務・高給業界である外資系コンサルとくらべても
給料では断然キーエンスのほうが上。
外資コンサルだと
新卒3年目・年収1000万円超はムリ。30歳・マネージャーでようやく安定的に年収1000万円超になります。もちろん企業によりますが…
→ デロイトトーマツの年収「パートナー・マネージャー・コンサルetc」
いっぽうで
ダラダラ働いてそれなりの高年収をもらい続けたい、というあなたには総合商社や他のメーカー大手がおすすめ。
→ 三菱商事の年収まとめ|閲覧注意)確実にテンション下がります
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