2017年3月期より総合商社のランキング(収益、純利益、包括利益)をまとめます。
総括まとめとしては以下のとおり。
・三菱商事がランキングトップに返り咲き
・2016年3月期に赤字転落した三菱商事、三井物産がどちらもV字回復
・伊藤忠商事はひきつづき好調、2017年3月期は過去最高益に
・住友商事、丸紅も復調
・低位安定の双日
就活・転職のご参考にどうぞ。
※ 豊田通商だけは日本式会計方法を使用しているため比較できず。
IFRSを採用している大手総合商社6社の決算数字を比較。
総合商社のランキング当期純利益ベース:2017年3月期決算IFRS
総合商社のランキング2017年版。
まずは当期純利益ベースで比較すると画像のとおり。
No.1 三菱商事:純利益4402億円
昨年2016年3月期に赤字だった三菱商事は、はやくも回復。
あいかわらず好不調の波が激しいですねぇ~。
で、その理由を分析すると…
市況系の事業における利益改善。
がもっとも大きくあとは考えてもムダというレベル。
市況系の事業とは、銅鉱山への権益投資とか、石炭鉱山への権益投資とかいろいろ。
これら資源価格が上がれば大きく儲かるし下がれば損するという構図。
で銅や石炭・鉄鉱石といった資源価格は…
一時は暴落したものの2016年1月には底をうち、その後は上昇基調。
これが復調した要因。
事業系の化学、電力インフラとかローソンは下手なことをしなければ手堅く利益をうむ事業。
あとは資源価格次第で会社の利益がきまる、という構図。
No.2 伊藤忠商事:純利益3522億円
伊藤忠商事は好調を維持し、2017年3月期は過去最高益を更新。
ざっくりとした要因は以下のとおり。
・ファミマ、Doleの利益貢献
・金属、石油、鉄鉱石など資源価格上昇による、権益ビジネスの収益改善
なにかで目立った利益をだしている訳ではなく、ひとつひとつのビジネスを見たら決して収益性のよいものばかりじゃない。むしろアパレル・繊維とか、伝統的な分野は薄利。
けど利益構造のバランスはよい。
リスクとしては中国へのかたよった投資による損失のおそれ。
(対中国・投融資残高:8000億円超)
いつか大きな損失を計上するのでは?
と心配しているが今のところは大丈夫そう。
No.3 三井物産:純利益3061億円
昨年2016年3月期に赤字決算だった三井物産も回復。
三菱商事とおなじく資源ビジネスにおおきく依存しているため、好不調の波が激しい宿命にある。
ざっくりとした要因は以下のとおり。
・鉄鉱石、石炭価格の上昇による権益ビジネス回復
・ほかは無視できる範囲
三井物産とか三菱商事の決算発表はまったくもって面白くない。
資源価格の要因だけみてればいいから…。
No.4 住友商事:純利益1708億円
住友商事も2017年3月期はおおきく業績回復。
2015年・2016年と資源関連の減損ラッシュがひびき低迷したものの、ようやく整理を終えた模様。
古くからのトレーディングビジネスと、メディアなど事業投資は堅調。
資源ビジネスでの重い足かせが外れて昔の水準に戻りつつあります。
が、ふたたび減損しなければならない状況になる可能性もあり、なんとも言えないところ。
すべては資源価格次第…。
ほかの事業投資案件はそこまでリスクを負ってないので問題なし。
▼参考:住友商事・2016年3月期の減損ラッシュ
・マダガスカルニッケル事業 ▲770億円、
・南アフリカ鉄鉱⽯事業 ▲183億円
・Edgen Group ▲181億円
・ブラジル鉄鉱⽯事業 ▲146億円
・チリ銅、モリブデン事業 ▲140億円
No.5 丸紅:純利益1553億円
丸紅も2017年3月期はおおきく業績回復。
理由は三菱・三井・住友とまったく同じで資源価格の回復によるもの。
非資源分野だけなら毎年1500億円前後をかせぐ実力はあるだけに、もったいない感じ。
でも資源高のときはそれでエンジョイしてたわけだから、何とも言えない…。
結局は資源価格次第でその年の業績が決まる、という構図は総合商社に共通。
もちろん、資源分野の比率がおおきい・ちいさいによって影響度は違う。
No.6 双日:純利益407億円
双日は5大総合商社に隠れてまったく目立たないけど、実はジワジワと業績を伸ばしている。
5大総合商社を3分の1にスケールダウンしたような会社で、特筆すべき点はない。
そもそも無くなったところで誰も困らないでしょう。
総合商社のランキング売上収益ベース:2017年3月期決算IFRS
総合商社における売上収益とは、トレーディング事業のコミッションとか、事業投資のリターンとかいろいろ。一般的な企業だと売上に相当します。
2017年・売上収益ベースで総合商社のランキングをみると画像のとおり。
総合商社は売上収益でランキングしても仕方ないため、数字だけならべておきます。
No.1 丸紅:収益7兆1288億円
No.2 三菱商事:収益6兆4257億円
No.3 伊藤忠商事:収益4兆8384億円
No.4 三井物産:収益4兆3639億円
No.5 住友商事:収益3兆9969億円
No.6 双日:収益1兆5553億円
売上と収益の違い
ところで総合商社の業績は、国際会計基準(IFRS)へ移行したため旧来の日本式売上でなくIFRSルールの「売上収益」でみます。
日本式売上を使うとモノを右から左に流す総合商社は売上規模が20兆円とかになって、完全におかしくなるため。
ちなみにIFRSは今のところ「任意運用」となっているため、一部の大企業だけが採用しています。完全に移行するまでにはもう少し時間が必要かと。
話はそれましたが
収益がどのように計算されているかを例に出しておきます。
①メーカー → 総合商社(在庫していない。単に仲介するだけ) → お客さん
- 日本会計方式;100万円で買って110万円で売ったとすると、売上110万円。
- 国際会計基準(IFRS);100万円で買って110万円で売ったとすると、収益10万円。
②メーカー → 総合商社(在庫している) → お客さん
- 日本会計方式;100万円で買って110万円で売ったとすると、売上110万円。
- 国際会計基準(IFRS);日本式と同じ
※ 在庫などのリスクがなく、お客さんからきた注文書をメーカーに横流しするだけの場合は、マージンだけが収益としてカウントされます。
※ ホントはもっといろいろなルールありますが、ややこしいため省略します。
総合商社のランキング包括利益ベース:2017年3月期決算IFRS
総合商社のランキング2017年版。
最後に包括利益ベースでのランキングもまとめておきます。
包括利益とは、当期利益にくわえて資産価値の増減も加味した利益のこと。
IFRSルールにもとづく独特な利益の考え方です。
例をだした方がわかりやすいので、すこし解説。
例)保有する土地の価格が暴落して3000億円の評価損がでた
・いま土地を売って損失でたわけじゃないので、旧来の会計方式だと損失計上しない。
・ところがIFRSでは包括利益に▲3000億円の評価損が反映される。
例)保有する銅鉱山の価値が不況によって3000→100億円になった
・いま銅鉱山を売って損失でたわけじゃないので、旧来の会計方式だと損失計上しない。
・ところがIFRSでは包括利益に▲2900億円の評価損が反映される。
IFRSの包括利益計算は、こんなめんどくさい評価を毎期しっかりとやらなきゃダメなルールなのです。
ここでは評価損の例だけを示しましたが、もちろん資産価値が上むけばプラスになります。
もっともシンプルな見方は…
・純利益が包括利益よりも多ければ…評価益がでた!!
・純利益が包括利益よりも少なければ…評価損がでた!!
ということになります。
が、資産を売却するまで損失や利益は確定しません。あくまで目安としてみることをオススメします。
また総合商社は株式や鉱山、土地、ビジネス投資などがおおくあり、景気動向によって上下が激しくなりがちな点にもご注意を。
No.1 三井物産:5030億円
1969億円の資産評価益
(包括利益5030億円ー当期純利益3061億円)
No.2 三菱商事:4524億円
122億円の資産評価益
(包括利益4524億円ー当期純利益4402億円)
No.3 伊藤忠商事:3030億円
▲492億円の資産評価損
(包括利益3030億円ー当期純利益3522億円)
No.4 住友商事:1697億円
▲11億円の資産評価損
(包括利益1697億円ー当期純利益1708億円)
No.5 丸紅:1534億円
▲19億円の資産評価損
(包括利益1534億円ー当期純利益1553億円)
No.6 双日:402億円
▲5億円の資産評価損
(包括利益402億円ー当期純利益407億円)