住友化学の将来性2016年版|ラーピグ計画の行方は？

住友化学の業績推移から将来性を検証してみました。「化学素材メーカーの企業研究ノート」として就職活動や転職活動、投資のご参考になりましたら幸いです。*化学メーカー現役営業マンとしての勝手な私見も取り入れています。

住友化学の売上・営業利益(率)推移
【2007年3月期～2017年3月期決算予想】

▼住友化学は売上2兆円超と規模が大きいため、この数字だけ追っていては中身がよくわかりません。全体の業績推移から言えることはリーマンショック(2009年3月期)からV字回復していて好調だということ。特に2016年3月期決算では過去最高利益を達成。

ただしこれは為替影響(80→120円/$)と原料安が主な要因で、特に何か新しいビジネスが軌道に乗ったわけでもなく営業努力をした訳でもない。

日本の化学素材メーカーはどこでもそうですが、直近の3年くらい為替による輸出での利益改善の恩恵を受け、さらに2015年度以降は原料安による恩恵も受けて追い風吹きまくりな状況なのです。従って2013-2015年にしょぼい利益しか計上できていないような会社は、まず論外で将来性なし。←ダイセル企業研究の文章を使い回しました…

住友化学のセグメント別売上推移
【2007年3月期～2017年3月期決算予想】

コアビジネスは「健康・農業」「医薬」「情報電子」

▼売上比率が一番高いのは石油化学。しかし現時点では中東プロジェクトの遅れもあって、たいした利益を計上できていない。住友化学といえば石油化学以外の農業関連、医薬、情報電子化学でしょう。見づらいですが2015年から今のセグメントに分けていて「石油化学」「医薬品」「健康・農業」「エネルギー・機能材料」「情報電子化学」「その他」の6つのセグメントに変更。セグメントの中身も入れ替えています。

住友化学のセグメント別営業利益推移
【2007年3月期～2017年3月期決算予想】

▼「健康・農業」と「医薬品（大日本住友製薬）」で安定的な利益を計上できており、今後も安定的だと分析。また「情報電子分野」「エネルギー・機能材料」分野はリチウムイオン電池やテレビ・スマホむけ液晶偏光板、タッチパネル向けの化学素材がメインで浮き沈みの激しい業界。それでも、それなりには利益を計上できる技術がある。ただし競合の激しい分野でもあり、液晶パネル用の偏光板は日東電工にやられて将来ジリ貧かも…

一方、苦戦している石油化学(エチレンなどのコモディティー)は中東プロジェクトの進捗次第で大きく飛躍する可能性を秘めている。

住友化学の将来性を勝手に結論付けてみた

「住友化学は将来性あり」です。その理由を解説していきますね。

日系総合化学メーカーで唯一「基礎石油化学」の展望を持つ

ジリ貧になる基礎石油化学品の将来について唯一、展望を持っている企業、それが住友化学です。国内の儲からない基礎化学品プラントを閉鎖しサウジやシンガポールに生産拠点を移管。シンガポールは微妙ですが、原油やガスの安い場所に生産拠点を構えて世界中にばら撒くという石油化学の正攻法を貫く。ちゃんとした展望を持っている。

一方他の旧三大財閥化学素材メーカー、三菱化学や三井化学は基礎化学品に関して明確なビジョン・ゴールがない。国内の稼げないプラントを閉鎖した後にどうしたいの？というゴールがないのです。この時点で住友化学に大きく引き離されていますね。これから米国やサウジに投資するというのはもう手遅れ。20年前にやっておくべきでした。

「医薬」「農業」が手堅い

医薬は大日本住友製薬の扱い。特許をそれなりに抑えている上に開発にも積極的に資本を投じているので問題ないでしょう。農業は家畜飼料の栄養剤メチオニンやビニールハウス用フィルム、コーティング剤などなど。世界的に見ると必ず伸びる産業。

もちろんライバルに勝てる戦略と実力が必要。世界の名だたる企業BasfやDow Chemical, Dupontに比べたらまだまだ遠く及ばない。つまり伸び白は大きく残していて将来性あり。

稼げない事業をリストラすればどんどん上にいける

仮に経営が苦しくなっても稼げる事業だけを残せば、何も問題ない会社です。

外資系と違って儲からない事業をすぐに切ったりしないのでリストラしないでしょうが…←私は良い企業文化だと思います。

住友化学の年収20年後：現在ランキングよりも上

中東プロジェクトを軌道に乗せることが前提ですが、9割がた間違いないでしょう。