三菱ケミカルHDの将来性2016年版|最大手化学メーカーの成長戦略とは?

三菱ケミカルHDの業績推移から将来性を検証してみました。「化学素材メーカーの企業研究ノート」として就職活動や転職活動、投資のご参考になりましたら幸いです。*化学メーカー現役営業マンとしての勝手な私見も取り入れています。

*2016年現在、三菱ケミカルHDは三菱化学・三菱樹脂・三菱レイヨン・田辺三菱製薬・大陽日酸の事業統合会社となっています。採用もそれぞれの会社で実施しているため、ひとつひとつ見ていく必要があります。

*2017年4月1日(予定):三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンの化学系3社を2017年4月1日付で、三菱レイヨンを存続会社とする吸収合併方式により1社に統合すると発表。採用方針がどう変わるかは不明。

三菱ケミカルHDの売上・営業利益(率)推移
【2007年3月期~2017年3月期決算予想】

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▼2016年3月期決算は売上3兆8231億円、営業利益2800億円、営業利益率7.3%と好調。いうまでもなく円安と原料安の影響が大きい。売上が右肩あがりになっているのは傘下の企業を増やしてきたから。念のためこれまでの歴史をまとめておきます。

*2005年10月: 三菱化学と三菱ウェルファーマ(現、田辺三菱製薬)が共同持株会社の三菱ケミカルホールディングスを設立し、その傘下に入る。
*2006年3月期決算:三菱ケミカルホールディングスとしての決算開始。
*2007年10月:三菱樹脂を完全子会社化。
*2010年3月:三菱レイヨンを子会社化。その後、完全子会社化
(2010年4月から三菱レイヨンの業績を含む)
*2014年9月:三菱ケミカルホールディングスは大陽日酸の公開買付けを実施すると発表。

三菱ケミカルHDのセグメント別売上推移
【2007年3月期~2017年3月期決算予想】

三菱ケミカルHD2007-2016業績推移(セグメント別売上)

▼セグメント別売上げだけ見ても分かりにくいため、セグメント別営業利益と共に総括します。

三菱ケミカルHDのセグメント別営業利益推移
【2007年3月期~2017年3月期決算予想】

三菱ケミカルHD2007-2016業績推移(セグメント別営業利益)

▼ここまで規模の大きい企業になると、それぞれのセグメントを細かく見る必要があります。

エレクトロニクス事業
売上1156億円、営業利益(率)▲10億円(マイナス)
*2016年3月期決算数字

三菱化学所属の米国子会社、三菱化学イメージングが主な対象。ディスプレー材料、半導体、プリンターまわりの感光体ドラムやトナーなどを製造、販売する会社。利益貢献度の低いこの事業をなぜ続けているか良くわからないのですが…何かしらの理由があるのでしょう。

デザインド・マテリアルズ事業
売上8526億円、営業利益(率)757億円(9.2%)

三菱樹脂の業績が主体、利益は目立って多くないが堅実で優秀な会社。アルミナ繊維(自動車排ガスフィルター用)で世界No.1。自動車用の特殊材料は一度採用されると余程のことが無い限りは変わらない。今後20年くらいは安泰の事業。

他にもエンジニアリングプラスチック(高機能樹脂、特に耐熱性に優れる。自動車、エレクトロニクスなど)事業も強いが特別な技術は必要ない…

さらには素材をフィルムなどに加工する技術も優秀で、LIB電池セパレータや光学用途、炭素繊維など多岐にわたり商品を展開。ただし競合が激しく技術の移り変わりの速い分野で、どこまで頑張れるか疑問。

三菱化学子会社の日本合成化学工業の利益貢献も大きいと推定。こちらは食品包装用バリアフィルムEVOH樹脂・フィルム、偏光板用PVAフィルムが堅調。10年は安泰。

総括すると三菱樹脂は手堅いが、アルミナ繊維に頼っている感じは否めない。また日本合成化学工業も手堅いがクラレのライバルで同じ弱点を持つ。第三のコア事業が必要。

ケミカルズ事業
売上1兆3211億円、営業利益(率)573億円(4.3%)

大陽日酸、三菱化学が主体。インフラ的な要素が強い基礎化学品(炭素、合繊原料テレフタル酸)と工業用ガス。2016年3月期には黒字を計上しましたが、原料安と大陽日酸の貢献が大きい。基礎化学品は言うまでも無く再編が必要な事業。

ポリマーズ事業
売上7737億円、営業利益(率)433億円(9.2%)

三菱レイヨンのアクリル、日本ポリプロ、日本ポリエチレンが主体。

ポリプロ、ポリエチレンといった基礎化学品事業は再編している最中。進捗に期待します。

三菱レイヨンの手がけるアクリル関連事業は買収などの効果もあり、世界No.1の地位を固めている。また投資にも積極的。2017年に稼動を予定しているサウジのプラント(Sabicとの合弁)などがあり、将来への期待大。利益は目だって多くないが30年は安定的な事業を展開できる

ヘルスケア事業
売上5541億円、営業利益(率)1034億円(18.7%)。

三菱田辺製薬と三菱化学メディエンスが主体。消費者から安全性で訴訟されるような失態をしない限りは安定的に利益を生む事業。(医薬業界は勉強不足です、すみません…)

三菱ケミカルHDの将来性を勝手に結論付けてみた

三菱ケミカルHDは、現在の課題をちゃんと処理できるかに掛かっている。現社長になってようやく重い腰を上げ、事業再編や積極的なM&Aなど攻めの姿勢に転じた。

それなりにやると思うので将来性あり。

基礎化学品の再編次第

三菱ケミカルHD全体の収益性を悪くしている事業は、基礎化学品。これをしっかりと再編・リストラできないと、ちゃんとした利益を計上できる医薬と高機能商品が無駄になる。

現在は瞬間的に原料安で黒字化していても、これらの事業に将来性は無い。ポリプロピレン、エチレン、テレフタル酸…などの商品は、国内事業所の再編とリストラに期待します。←すでに動いてはいますが…

どの事業会社にも光る商品がある

厳しいコメントを書きましたが、それぞれの事業会社は汎用品ばかりやっている訳ではない。

三菱化学子会社の日本合成化学工業、三菱レイヨンのアクリル、三菱樹脂のアルミナ繊維、大陽日酸、三菱田辺製薬の医薬などなど。

どの事業会社にも世界の顔と呼べる世界No.1事業があり、規模感も十分。継続的な利益を計上できる商品がある。たとえ稼げなくなっても事業を整理すれば何とかなるでしょう。

それでも医薬に依存している感は否めない

三井化学と違って三菱と住友は、ちゃんとした医薬会社を傘下に保有しています。これが大きな違い。でも医薬を無視して純粋な化学分野だけみると…収益性の面で厳しい会社になることは間違いない。

とにかく事業再編が最も重要な鍵をにぎっている。

三菱ケミカルHDの年収20年後:現在ランキングと同様

収益性が低いのは仕方がないとして…

現社長の下、攻めに転じて現在のランキングを維持できていると考えます。

私が就職活動をするなら?志望度はこうします。

三菱ケミカルホールディングス単体の新卒採用は2016年現在、ありません。それぞれの事業会社ごとにエントリーしていくのですが、どの企業に優先度を置くか分からないと思います。私ならこの順番に優先度を上げていきます。

  • 志望度No.1:三菱レイヨン
  • 志望度No.2:三菱樹脂
  • 志望度No.3:大陽日酸
  • 志望度No.4:三菱化学

▼三菱レイヨン、三菱樹脂、三菱化学は2017年4月でひとつの事業会社に統合されますが…三菱レイヨンが最も将来性ありです。

『三菱ケミカルHDの将来性2016年版|最大手化学メーカーの成長戦略とは?』へのコメント

  1. 名前:ケンジ 投稿日:2018/06/16(土) 03:31:37 ID:299a06f5a 返信

    突然の質問で失礼いたします。
    いつも楽しく拝見しております。

    実は、今年三菱ケミカルと住友化学、両方から内定をいただいた文系の学生ですが、
    三菱ケミカルが業界1位なのに、住友化学と年収の差が意外と大きくて
    両者の年収について教えていただきたいと思っています。

    三菱化学の時も、年収が低かったですが統合してからさらに低くなったと聞きましたので、
    どこを選んだら後悔しないかで本当に迷っています。
    住宅手当込みの年収や将来性について教えていただければ幸いです。