「お手数おかけしてすみません」の敬語での正しい使い方を、ビジネスメールの例文つきで誰よりもくわしく解説していく記事。
まずは基本として、
「お手数おかけしてすみません」は「手間(労力・面倒)を相手にかけて、すみません」という意味。
ただし「お手数おかけしてすみません」はビジネスメールで使うと失礼にあたりますので、より丁寧な敬語に言い換えする必要があります(理由は本文中で解説)。
言い換えとしては例えば、
- 例文「お手数をおかけし、誠に申し訳ありません」ビジネスメール
- 例文「お手数をおかけしまして、大変申し訳ありません」ビジネスメール
※「お手数おかけし」は「お手数をおかけし」と言い換えもできる。
などがあり、どの例文も社内メールで目上の人(上司や先輩)に使っても、社外のビジネスメールに使ってもよい敬語表現です。
繰り返しますが「お手数おかけしてすみません」はビジネスメールでは失礼に当たります。使うとしても、気の知れた上司や、取引先だけにしましょう(詳細は本文中にて)。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、くわしくは本文中にて意味と使い方、注意点を述べていきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。
この記事の目次
「お手数おかけしてすみません」なぜ失礼にあたる?
「お手数おかけしてすみません」が目上の人(上司)やビジネスメールで失礼にあたる理由は、「すみません」の部分に問題があるから。
「すみません」は「申し訳ありません」とおなじで謝罪の意味で使われますが・・・。
「すみません」は会話であれば違和感がないものの、ビジネスメールで使うにはあまりにカジュアルな気がします(気持ちの問題です)。
例をだしたほうがわかりやすいため、例文でみていきましょう。
◎会話・商談シーン;
- 例文「すみません、お待たせしました!」
- 例文「すみません、ひとつ伺いたいのですがよろしいでしょうか?」
- 例文「今期は予算達成できませんでした、すみません・・・」
- 例文「お手数おかけしました、すみません」
×ビジネスメール;
- ×例文「ご迷惑をおかけしすみません」
- ×例文「書類の内容に不備があり、すみません」
- ×例文「お手数おかけしすみません」
いかがでしょうか?
会話では違和感のない「すみません」も、ビジネスメールにすると途端にラフな印象を与えてしまいます。これってなぜでしょうか?
「お手数おかけし」のあとに「すみません」はギャップありすぎ
違和感のある原因は、丁寧な敬語「お手数おかけし」と、カジュアルな表現「すみません」が同居してしまっているから。
ブスと美男、シケメンと美女の組み合わせが違和感ありありなのと同じ理由です。
【敬語解説】「お手数おかけしてすみません」
念のため敬語としての「お手数おかけして」を解説すると、
「おかけします」は「かける(掛ける)」に謙譲語「お~する」+丁寧語「ます」を使っています。
「~をかける(~を掛ける)」は、「迷惑をかける」「相手に負担をかける」で使われるように、「相手に何かを強いる」という意味で使われます。
これらを合わせて直訳すると「手間を強いてすみません」となります。
ただ「お手数をおかけいたしますが」は「手数(=手間・労力・面倒)」を「(相手に)強いる」ことから、もともとニュアンスとして「申し訳ない気持ち」を含んでいます。
で、ここまでは凄く丁寧であり、目上の人(上司)やビジネスメールにも使える素晴らしい表現です。
それなのに・・・
そのあとが「すみません」かよ!?
オチとしては素晴らしいのですが、オチをつけすぎるあまり、文章におこすと「気持ちの悪い表現」になってしまうのです・・・。
【言い換え】お手数(を)おかけしまして申し訳ありません
ということですので、「お手数おかけしてすみません」をビジネスメールで使おうと思ったら、丁寧な敬語に言い換えが必要です。
そうするともう、選択肢はほとんどありません。
一つめは、
「すみません」の部分を「申し訳ありません」「申し訳ございません」に言い換えること。
二つめは、
「お手数おかけして」の部分を丁寧語「ます」を使い「お手数(を)おかけしまして」と言い換えること。
そうすると「お手数おかけしまして申し訳ありません」または「お手数をおかけしまして申し訳ありません」となります。
【使い方】「お手数おかけしまして申し訳ありません」
そもそも「お手数おかけしてすみません(申し訳ありません)」ってどんなビジネスシーンで使う?という疑問を解消していきましょう。
「申し訳ありません」という言葉がついていても、謝罪メールで使うわけではありません。
【使い方】何かのお願い・問い合わせをするとき
「お願いメール」のなかには、アポイントをお願いする、面接日程調整をお願いする、企業に問い合わせをする・・・などがあります。
このようなビジネスメール(就活・転職メールふくむ)では、文末の締めくくりに「お手数をおかけし申し訳ありませんが、~」としてお願いをすると、相手への配慮が感じられて好感がもてます。
◎「お手数おかけし申し訳ありません」例文:
- 例文「お手数をおかけし申し訳ありませんが、ご対応のほど何卒よろしくお願い申し上げます」
- 例文「お手数をおかけし申し訳ありませんが、お取り計らいのほど何卒よろしくお願い致します」
- 例文「お手数おかけし申し訳ありませんが、ご調整いただければ幸いです」
- 例文「お手数おかけし申し訳ありませんが、ご確認いただければ幸いです」
※メール文末の結びに使うことを想定しています。
【使い方】返信メール
何かしら相手の手間(労力)をさいてもらったのであれば、返信メールに「お手数おかけし申し訳ありませんでした」としてもよいでしょう。
◎「お手数おかけし申し訳ありません」例文:
- 例文「このたびは、お手数をおかけしまして大変申し訳ありません」メール返信の冒頭
※メールの冒頭に使うことを想定しています。
【使い方】商談・電話(ビジネス会話)
ところで「お手数おかけし申し訳ありません」は電話対応や商談にも使えます。ビジネスメールならではの表現、「ご査収ください」といった言葉とは違いますね。
使い方は同じように、申し訳なく思う気持ちをしめしたいシーンで使うと丁寧です。
◎「お手数おかけし申し訳ありません」電話対応例:
~前略(問い合わせ電話)~
取引先:
承知いたしました、それではご依頼のサンプルを手配いたします。
お届けには1週間ほどいただいておりますが、あらかじめご了承ください。
あなた:
お手数おかけしまして申し訳ありません。よろしくお願いします!
取引先:
承知いたしました。
【注意点】「お手数おかけして申し訳ありません」
クレームの謝罪には「ご迷惑おかけしまして~」を使う
「お手数おかけしまして申し訳ありません」はクレームの謝罪には使えません。
なぜならクレームは、単に手数(手間・労力・面倒)を相手にかけたのではなく、もっとひどいレベルで客に実害が発生しているから。「手数」はちょっとした手間、労力、面倒であり、被害は相手の時間をうばっただけです。
クレームは「手数」というよりも、「迷惑」を使うのが正解です。
「お手数おかけいたしまして申し訳ありません」は変な敬語
「お手数おかけしまして申し訳ありません」の類似表現に「お手数おかけいたしまして申し訳ありません」があります。
これって私もよくビジネスメールで使ってしまうのですが、よく考えると敬語の使い方としては間違いですね・・・(文化庁によると慣例でOKということになっています)。
敬語のなりたちを整理するとわかるのですが、
「お手数」は「手数」+尊敬語 or 謙譲語「お」であり、これは問題なし。
「おかけいたしまして」の基になる単語は「かける」。
これに謙譲語「お~する」+「する」の謙譲語「いたす」+丁寧語「ます」ということで、「おかけいたします」となっているのですが・・・。
「かける」という単語に同じ謙譲語を2回つかっています。これって二重敬語であり、マナー違反でしたよね!?
ただ結論としては「慣例でOK」、つまり間違っているけど広く使われているから、もう許しちゃおう、ということになっています(by 文化庁)。
【例文】「お手数おかけして申し訳ありません」ビジネスメール全文
最後に「お手数おかけしまして申し訳ありません(すみません)」を使ったビジネスメールの例文を挙げます。「お手数おかけしてすみません」は繰り返しになりますが、ビジネスメールでは不適切な表現となりますので、「申し訳ありません」の方で例文をつくります。
【例文】資料取り寄せのお願いメール(ビジネス・社外)
メール件名:資料送付のお願い
転職株式会社
転職 様
突然のご連絡、大変失礼いたします。
株式会社就活・営業担当の就活と申します。
このたび、御社ホームページを拝見し掲載されている「iPad Pro」に関して、
スペック・データ等の詳細を確認いたしたく存じます。
つきまして、お手数をおかけし申し訳ありませんが、
カタログなどがございましたら下記宛に2部、送付いただいてもよろしいでしょうか。
送付先:
〒123-4567 東京都港区品川1-1
株式会社就活
就活一郎 あて
お忙しいところ恐れ入りますが、
お取り計らいのほど何卒よろしくお願いいたします。
メール署名
【例文】内定通知書・発行お願いメール
件名:内定通知ご発行のお願い(転職太郎)
株式会社就活
人事部
就活 部長
平素はお世話になっております。
転職太郎でございます。
先般は採用内定のご連絡をいただき、心よりお礼を申し上げます。
さて首記の件、電話にて採用内定のご連絡を頂いてはおりましたが、
「内定通知書」またはそれに代わる書面をご発行いただければ幸いです。
お手数をお掛けし申し訳ありませんが、
ご検討のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。
(メール署名)
◎書き方の参考となる記事:
まとめ
今回はこれでもかというくらい「お手数おかけしてすみません(申し訳ありません)」について語ってみました。
これはとても便利な表現で、さまざまなビジネスシーンで活躍します。
ぜひ、ありとあらゆる場面を経験し、使い倒してください。頭でどうこうなるものではないので、ビジネスシーンで場数を踏んでくださいね。ではでは~~。