「承知しました・承知いたしました」の意味と違い、使い方、注意点についてビジネスメールの例文つきで誰よりもくわしく解説していく記事。
まずは結論として、
「承知しました・承知いたしました」の意味はどちらも「わかった・了解した」の丁寧な敬語表現です。
もっと堅苦しくすると「目上のヒトの命令などをうけたまわる」という意味。
例文「面接日程の件につき承知いたしました」
例文「承知しました。それでは明日10時に伺います」
例文「承知しました。すぐに用意します」
などのようにビジネスメールの冒頭に使うと目上の方(上司)へはもちろんのこと、社外の取引先(就活・転職メールもふくむ)にも使えるすばらしい敬語表現になります。
とくに上司や取引先から依頼・指示をうけたとき返事として使える敬語です。「OK、わかったよ!」の敬語バージョンだとお考えください。
で話はもどって、
「承知しました・承知いたしました」の違いは敬語の使い方にあり、「承知いたしました」のほうが丁寧な敬語となります。
くわしい敬語の使い方については本文にて。
ここで注意点をひとつ。
「承知いたしました」は「了解いたしました」と言い換えしても意味・敬語の使い方としてはOK。でも「了解」という言葉を失礼だと感じてしまう目上のヒトもいます。
たしかに「了解いたしました」という言葉よりは「承知いたしました」という言葉のほうが丁寧です。これは間違いありません。
ところが「承知」のほうが丁寧だよ、というだけであってこれでは「了解」を使ってはいけない理由にはなりません。
丁寧度を考えると「承知 >> 了解」になるという話。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではメール例文をまじえながらくわしく進めていきます。
目上の方や取引先などへ「OK、わかったよ!」と返事をしたいときに使える「承知しました、承知いたしました」ですので、この機会にマスターしておきましょう。
※長文になりますので時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。
「承知しました・承知いたしました」意味は「わかりました」
冒頭でも解説したとおり「承知しました」の意味は「わかりました・了解しました」です。
「OK、わかったよ、了解!」の丁寧な敬語としてビジネスシーンでよく使います。
承知の意味はおおきく3つ
もうすこし詳しく「承知」の意味について考えると…
おおきく以下3つの意味があります。
- 目上の人の命令などをうけたまわること
- 相手の願い、要求などを聞き入れること
- わかること、知ること
承知=知る+承る(うけたまわる)でなりたちます。
「承知」に使われる「承る(うけたまわる)」の意味
「承る(読み:うけたまわる)」の意味は…
- つつしんで聞く
- 「受ける」の謙譲語
これを考えると「承知しました」は…
「知って受けましたよ=わかりました!」みたいな意味になるのでしょう。受けるの謙譲語が「承る」なので「承知」にはもともと謙譲表現をふくむと考えることもできます。
ほかには承諾(しょうだく)、承認(しょうにん)、承服(しょうふく)といった言葉に組み込まれていますね。
これらはいずれも、目上のひとに敬意をはらって使うフレーズです。
【補足】
※謙譲語=自分の行為にたいして使う敬語。自分をへりくだる(下げる)ことで、相手を敬っている。ホントはもっとややこしいけど…
※「承知=謙譲表現をふくむ説」はいろんなことを言う人がいて、正解は正直わかりません。とにかく「了解」よりも丁寧な表現であることだけは確か。
「承知しましたvs.承知いたしました」違いは敬語の使い方
つづいて「承知しました・承知いたしました」の違いについて。
さきにも解説したとおり敬語の使い方に違いあり。
そこで、それぞれの敬語のなりたちを復習しておきましょう。
承知しました:敬語のなりたち
「承知しました」は、
原型「承知する」に丁寧語「ます」+過去形を使い敬語にしています。
【補足】
※丁寧語=いわゆる「です・ます」口調のこと。敬語の一種である
承知いたしました:敬語のなりたち
「承知いたしました」は、
原型「承知する」に「する」の謙譲語「いたす」を使い、
さらに丁寧語「ます」+過去形を使い敬語にしています。
この謙譲語+丁寧語、あるいは尊敬語+丁寧語は敬語のなかでも最上級の丁寧レベルに位置します。
丁寧度は「承知いたしました > 承知しました」
これまでのことから言えるのは…
- 丁寧レベル「承知いたしました > 承知しました」
ということです。
目上の人(上司)や取引先・ビジネスメールにつかうときには「承知いたしました」とするのがもっとも丁寧な敬語。
とはいえマナー講師でもない限りは気にしないでしょうけど…。誤解のないようにしておきますが、どちらも敬語としてはすばらしい表現であり目上の方(上司・先輩)やビジネスメールで使えます。
ただ少し丁寧度に違いがあるよ、ということですね。
「承知しました・承知いたしました」の使い方
「承知しました・承知いたしました」を使うビジネスシーンは、目上の人(上司)や取引先にたいして「了解!」と返事をするとき。
それではビジネスシーンごとにメール例文でみていきましょう。
【使い方】了解メール
「了解メール」のなかには、上司からの指示にたいする了解、取引先の提案にたいする了解、アポをOKする・・・などがあります。
このようなビジネスメールで「承知いたしました」としてあなたの意思を表明する好感がもてます。
▼「承知いたしました」の例文
- 例文「承知いたしました。それでは頂いた案で社内確認をとります」
- 例文「承知いたしました。それでは8月13日10時に伺います」
- 例文「承知しました。すぐ電話で確認いたします」
【補足】
※ 了解するときのビジネスメール・ビジネス会社に使うことを想定しています。いずれもメール冒頭に使うと好感度UPします。
※ 伺う=訪問する、の謙譲語
【使い方】ほかにもある「承知」をつかったフレーズ
「承知しました」には直接関係しませんが…
「承知」をつかったフレーズで、ビジネスシーンでも活躍しそうなものを例文でまとめておきます。
- 例文「ご承知おきください」
・意味は「知っておいてください」
・あらかじめ知っておいて欲しいことがあるとき、注釈に使う
・例)お支払いいただけない場合は法的手段もやむを得ずと考えておりますので、ご承知おきください - 例文「ご承知のこととは存じますが…」
・意味は「知っているとは思うのだけど」
・なにか初歩的な説明をするときのクッション言葉
・例)すでにご承知のこととは存じますが、先日○○さんがお亡くなりになりました
【補足】
※ 「ご承知おきください」は謝罪文やお詫びメールには使わない。お詫びメールでは「ご容赦くださいますようお願い申し上げます」を使う。
※ 「ご承知のこととは存じますが」は「ご存知」で言い換えできる。
【注意点】「承知しました・承知いたしました」はこう使う!
つづいて「承知しました・承知いたしました」を使うときの注意点を解説します。
クレームがあったからといって謝罪メールにホイホイと使ってしまわないよう、十分にご注意ください。
【注意・使い方】「承知!」とは使わない
きわめて初歩的なのですが…
「承知しました・承知いたしました」は使っても「承知!」と単体で使うのは止めましょう。とくに理由もないのですが、このような表現は聞いたことがないからです。
「了解!!」
みたいな感じで「承知!!」と使うヒトがいたら、それはそれでクールでカッコいい使い方なのですけどね。とにかく目上の人に敬語を使うときには、何かを省略したフレーズを単体では使わないほうが無難。
心の狭いおっさんはそんな些細なことでもキレちゃいます。
【注意・使い方】「理解 vs 承知 vs 了解 vs 了承」の違い
つづいて「承知いたしました・了解いたしました・了承いたしました」の違いについて。「いたしました」の部分はおなじなので「承知・了解・了解・理解」の違いについて語ります。
語源を考えるとわかりやすいので、以下をご参考までに。
- 理解=理(ことわり)+解(わかる)
・意味や意図を正しくわかる意が中心となる - 了解=了(おわる)+解(わかる)
・相手の考えや事情をわかった上で、それを認める意がある - 了承=了(おわる)+承る(うけたまわる)
・「了承」は「了解」とほぼ同じに使うが、「了解」よりも承認する意が強い - 承知=知(しる)+承る(うけたまわる)
・「承知」は「了解」とほぼ同じ意味だが丁寧レベルの違いあり
・丁寧レベルは「承知 > 了解」となる
まぁなんかイロイロ考えると深みにはまるので、例文で考えましょう。
- 例文①「上司の提案には承知できない」
- 例文②「上司の提案には理解できない」
- 例文③「上司の提案には了解できない」
- 例文④「上司の意見には了承できない」
例文にするとニュアンスの違いがよくわかりますね。
- 上司の提案がわかる!!の意味で使われるのは「理解」だけ。
- 上司の提案を受け入れる・承諾する!!の意味で使われるのは「承知・了解・了承」。
使い方の違いは…
- 「承知しました」は分かった上で相手を受け入れるときに使う。
- 「了解しました」もおなじ意味
ただし丁寧レベルが「承知」よりも低い。 - 「了承」は許しを得たいときに使う
「了承しました」とは使わず「ご了承ください」とお願いベースで使われる。
【参考】「ご了承ください」意味と目上への使い方・ビジネスメール例文
【注意・使い方】「承知いたしました」は二重敬語ではない
「承知いたしました」を二重敬語だから間違い!
と解説するウェブサイトがあります。
「承知」という言葉のなかに「承る」という謙譲表現がはいっててかつ、謙譲語「いたす」もあるのだから「謙譲語+謙譲語=二重敬語」になる!
ということだと思います。
が、この解説は間違いであり「承知いたしました」は二重敬語ではありません。
なぜなら「承知」の原形はなに?
ときかれても誰も答えられないから。
二重敬語とは、おなじことばに対して二回おなじ敬語を使うこと。
たとえば「お伺いいたします」などが二重敬語の例。行く・聞くの謙譲語「伺う」に「する」の謙譲語「いたす」を使っていて、明らかにダメなやつ。
でも原形の無い「承知」にたいして二重敬語もクソもありません。