「期待する」は目上の人に使うとNG?敬語と正しい意味、言い換え

「期待する」って目上の人(上司・先輩・取引先)に使える?敬語にするには?

という疑問を解消するための記事。

まず結論ですが、

「期待する」の敬語は謙譲語にすると「期待いたします」となりますが、たとえ敬語にしたとしても目上の人(上司・先輩)に使うには不適切な表現。理由は意味を考えるとわかります。

「期待する」の辞書的な意味は、「当てにして心待ちにする」。

さて、ここで問題です。部下(目下)が上司(目上)に「何かを期待する=当てにして心待ちにする」って言うのは正しいでしょうか?

「ふざけるな!お前に何かを期待される筋合いはない!!」

となることは間違いないでしょう。

ということで、たとえ敬語にしているとはいえ「期待いたします」を目上の方に使うのは止めておきましょう。

そして、このような事態を避けるため「期待する」をより丁寧な表現に言い換えましょう。

言い換え表現にはたとえば、

  • 例文①「お祈り申し上げます」
  • 例文②「お祈りいたします」
  • 例文③「祈念いたします」
  • 例文④「祈念しております」

※「心より」をつけて「心よりお祈り申し上げます」とすると、より丁寧な表現になります。

こんな感じの使い方があります。これらの表現は社外の人(目上、目下は関係なし)に対して使う、とても丁寧な表現です。もちろん社内で目上の人(先輩・上司)にも使える素晴らしい表現。

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、意味や使い方、敬語と言い換え表現についてについて詳しくみていきましょう。

※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。

「期待する」の敬語は「期待いたします」だけど…

冒頭で述べたとおり「期待する」を敬語にするには、「する」の謙譲語「いたす」+丁寧語「ます」を使えばいいだけ(「期待する」は自分の行為であるため謙譲語を使う)。

結果として「期待いたします」となります。

もしくは「期待している」とし、「いる」の謙譲語「おる」+丁寧語「ます」を使えば、

「期待しております」となります。

いずれにせよ、「期待いたします」「期待しております」のように敬語にしたところで、目上の人に使うには不適切です。

理由をみていきましょう。

「期待いたします・しております」を目上に使わない理由

「期待する」の意味は「当てにして心待ちにする」

原形の「期待する」の意味を考えてみましょう。

辞書によると「期待する」の意味は「当てにして心待ちにする、あることが実現するだろうと望みをかけて待ち受ける」とあります。

部下は上司の「何か」を期待してはいけない!

部下(目下)が上司(目上)に「何かを期待してるよ」って言うのは間違っています。

この「何か」の中にはたとえば「ご活躍=仕事での成果、活躍」などが入りますが、「ご活躍を期待しております」と上司に使ってしまうと、

「なぜ部下に、仕事の成果を期待されなきゃならんのだ!!」となることは間違いないでしょう(苦笑)。

※ビジネスシーンにおける「ご活躍」の意味 = 仕事での成果

ということで、たとえ敬語にしているとはいえ「期待しております」「期待いたします」を目上の方に使うのは止めておきましょう。

「期待する」は目上→目下のみに使う

「期待する」は目上 → 目下に使うのは大丈夫です。なぜなら目上(上司)は目下(部下)の何か(たとえば仕事の成果など)を期待してもよいポジションにいるから。逆はおかしい。

たとえば、部下が転勤することになった際、上司から送るスピーチやメールで「今後のご活躍を期待します」として使います。

目上 ⇄ 目下どちらも使える言い換え表現

前項で「期待する」が目上 → 目下の人にしか使えないのが分かりました。とすると「目上 ⇄ 目下」のどちらにも使える便利な敬語ってないの?となります。

言い換え①祈念する = 祈念しております・祈念いたします

その答えは「~祈念しております」などです。これの意味は「祈っている」で、「いる」の謙譲語「〜おる」+丁寧語「ます」を使って敬語にしています。

また「祈念いたします」は「祈念する」が原形で、「する」の謙譲語「いたす」+丁寧語「ます」を使って敬語にしています。

「祈念する」を使った例文;

  • ○○様の益々のご活躍を祈念いたします(メール文末・締め)
  • ○○様の今後のご活躍を祈念しております(メール文末・締め)

言い換え②祈る = お祈りいたします・お祈り申し上げます

つづいて使える言い換え表現には「お祈りいたします」「お祈り申しあげます」があります。

ここで「お祈りいたします」は「祈る」+謙譲語「お~いたす」+丁寧語「ます」。

「お祈り申し上げます」は「祈る」+謙譲語「お~申す」+丁寧にする表現「上げる」+丁寧語「ます」。

「祈る」を使った例文;

  • ○○様の益々のご活躍をお祈りいたします(メール文末・締め)
  • ○○様のご活躍をお祈りいたします(メール文末・締め)
  • ○○様の今後のご活躍を、心よりお祈り申し上げます(メール文末・締め)
  • 皆様のご健勝とご活躍を、心よりお祈り申し上げます(メール文末・締め)

参考となる記事;

「期待する」と「祈る」の違い

ここで鋭いあなたは「祈る」って「期待する」と同じ意味じゃないの?と思われることでしょう。残念ながら「期待する」と「祈る」の意味は大きく違います。

「期待」はあることに対して、90%くらいの確率でワクワクしています。一方で「祈る」はあることに対して、何もワクワクせずにただ純粋に願っている状況です。

たとえば仕事の成果に「期待する」場合、言葉を発した上司は、あなたの成果をほぼ確実にワクワクして待っています。この言葉を受けるあなたは、上司のワクワクを裏切るわけにはいかず、プレッシャーになるでしょう。

一方で仕事の成果を「祈る」場合、言葉を発した上司は、あなたの成果をただ純粋に願っているだけです。この言葉を受けるあなたは、何もプレッシャーを感じずに済みます(実際にはどちらにせよプレッシャーを感じる)。

相手を思いやるなら「祈る」「祈念する」を使う

ということで、相手への「思いやり」をするのであれば断然「祈る」の方になるわけです。

まとめ

これでもかというくらい「期待する」について語ってみました。

結果的に「期待する」は目上の人に使うのはNGなのですが、「祈念いたします」「お祈り申し上げます」は、送別のスピーチや退職者・転勤者へのねぎらいメールなど、いろいろな場面で活躍する表現です。

ぜひ、ありとあらゆる場面を経験し、使い方をマスターしてください。頭でどうこうなるものではないので、ビジネスシーンで場数を踏んでくださいね。ではでは~~。

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