理系就職偏差値ランキングで上位にいる旭硝子(AGC)。年収が高くて人気もあって誰もがうらやむ会社。そんな就活生・転職者の誤認識をとく記事です。ネガティブキャンペーンではなく事実を述べていきますね。
旭硝子の年収が突出して高いわけではない
世間の年収ランキングを見ると、化学メーカーの中で旭硝子AGCだけが突出しているかのように見えますが、これは誤った認識。
旭硝子の年収はトップクラスではありますがトップではありません。
ちなみに筆者が独自で調査して年収ランキングを作るとこんな感じになります。
旭化成 > 積水化学工業 > JSR≒旭硝子≒日本ゼオン≒富士フィルム≒カネカ≒信越化学≒東ソー≒三菱ガス化学≒帝人≒三井化学 > 住友化学≒クラレ≒三菱化学 > 東レ他
各社の年収事例は以下の記事でご確認ください。
業績低迷。巻き返しアイディアもない
低迷というには少し語弊があり、これまで異様に良すぎた。売上1兆5,000億/営業利益2,000億というのが普通の状態でしたからね。
化学メーカーでこの実績であればボーナスは8-10ヶ月/年になっても良いレベル。管理職は特に総合商社なみの給料をもらっていたでしょう。
ところが今では全盛期の業績は見る影もなし。
2016年12月期決算予想をみると売上1兆4,000億/営業利益750億と利益半減。
これでも十分に立派な数字ではありますが、今後はもっと苦しくなると推定。その理由は4つあります。
- プラズマTV用ガラス基板(世界シェア100%)のビジネスが消滅。これにより1,000億円/年前後の営業利益が消滅。
- 液晶テレビむけガラス基板(AGCは世界No.2)の値下がり。←これはAGCが積極的に値段下げてシェアをとろうとした結果で自業自得。自ら市場価格を下げたのに人のせいにするな!
- 自動車むけガラスは世界シェアトップだが儲からない。建築用はもっと儲からない。
- 化学品分野は東南アジアでそれなりに成功しているが…誰でもできることをやっているだけ。
ガラスなんて誰でも作れる
ガラスの製造は技術的に難しいことではない。中国製でも十分。
旭硝子の営業マンがトヨタ・鹿島・清水建設に値段叩かれまくっている状況を容易に想像できます。営業も技術も仕事がつまらなくて仕方ないことでしょう。
何しろ値段以外に差別化できる要素がないのですから…
ただしガラスの中でも差別化できる市場はあります。
それがスマホ・タブレットむけガラス基板および表面保護ガラス。でも世界シェアトップの米国Cornings社に惨敗している状況…
エリート集団なんだろ!?なんとかしろよ!!と株主がいう気持ちもよくわかる(苦笑)。この差別化できる分野でなんとかできないと、本当にまずい状況になるでしょう。
化学品分野は技術的に3流レベル
旭硝子の化学品分野の商品は主に2つ。
- クロルアルカリ事業(信越化学・東ソー・他海外勢と競合)
- フッ素関連事業(ダイキン・Solvayと競合)
クロルアルカリ事業は東南アジア(アサヒマス)を中心に展開。でも技術的には大したことはなく誰でもできる商品を、誰でもできるやり方でやっているだけ。
伸び盛りのマーケットで競合が少ないというだけで成り立っている。
フッ素関連事業は国内でチマチマやっているだけで、これといった展望がない。
フッ素は固形分単価3万円/kgもする高価な化学品。2kgでiphone7が買えてしまう。客はできるだけ高価な材料を使いたくないので、マーケットが爆発的に伸びる訳もない。
さらには技術力でもコストでも、ダイキンやSolvayに大きく引き離されている。
2014年頃から継続的にリストラ実行
旭硝子は業績低迷を受け2014年頃から早期退職者を募集。リストラしています。
プラズマディスプレー用ガラス基板がダメになって、余ったキャパと人を整理中。何もしてないのに高給だった管理職から退職者を募集しているようです。
それでも余った人材全員をクビにできる訳ではないので相変わらず人あまり状態。従ってボーナスや給料・手当は今後、ますます厳しくなっていくでしょう。
【参考①】スクープ!旭硝子が5年ぶりにリストラ断行
【参考②】旭硝子、管理職対象に早期退職を募集
まとめ
旭硝子という会社を客観的に見ると、上述したような状況に置かれています。
それでもなぜか就活生に人気なのは腑に落ちません。
きっと人事の採用担当者がうまくPRしているからでしょう。もし他の会社との複数内定を獲得したら一度しっかりと考えてくださいね。
最後に、ここまで読んでもまだ「旭硝子に就職・転職したら勝ち組」だと思っているあなたへ、以下の記事を贈ります。
こんばんは。研究開発系志望で就活する予定なのですが、三菱ケミカルと東レで迷っています。総合的に見てどちらが良い企業でしょうか…。(配属される部署にもよると思いますが)ご教授願います。