「お時間を割いていただきありがとうございます」の意味、敬語の種類、ビジネスシーンにふさわしい使い方(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)、注意点について。
ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
意味
「お時間を割いていただきありがとうございます」は「時間を割いてもらいありがとう」という意味。
なぜこのような意味になるのか?
そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。
時間を割くの意味は「都合をつける」
時間を割く(読み:じかんをさく)のそもそもの意味は…
「余裕のない時間を都合つけて、あることのためにふり向ける。」
「時間を割く」に尊敬語or謙譲語の「お(ご)」を使うと「お時間を割く」という敬語の完成。
「時間を割く」の使い方はたとえば、
- 【例文】面談に際してお時間を割いて頂き、誠にありがとうございます
- 【例文】お時間を割いてくださいましてお礼申し上げます
のようにして使います。
「自分が相手にお時間を割いてもらう」のであれば謙譲語としての使い方。
上司・目上・取引先などの「相手がお時間を割いてくださる」のであれば尊敬語としての使い方。
というように2パターンあります。
お時間を割いていただき~の意味は「時間を割いてもらい~」
「お時間を割いていただき~」の意味は「時間を割いてもらい~」
敬語は「~してもらう」の謙譲語「お(ご)~いただく」を使用
すると意味は「時間を割いてもらい~」と解釈できます。
「ご連絡いただく=連絡してもらう」「ご指導いただく=指導してもらう」などのようにして使われる語とおなじ意味。
上司・目上・ビジネスメールに使うフレーズとしてはとても丁寧で好感がもてますね。
ここで「お時間」の「お(ご)」の部分は向かう先を立てるために使う敬語であり謙譲語の「お(ご)」です。
注意点として尊敬語にも「お(ご)」の使い方があり混同しがち。
難しく感じるかたは「お(ご)●●いただく」のセットで謙譲語とおぼえておきましょう。→︎くわしくは次項の補足①②をご参照ください
あわせると意味は「時間を割いてもらい、ありがとう」
- 時間を割く = 時間を割く
- お(ご)●●いただく = 「●●してもらう」の謙譲語
- ありがとうございます = お礼
これらの単語を合体させて意味を考えます。
すると「お時間を割いていただきありがとうございます」の意味は…
「時間を割いてもらい、ありがとう」
のように解釈できます。
敬語の種類
つづいて「お時間を割いていただきありがとうございます」の敬語の種類について。
この項目は少しマニアックな敬語の解説になります。敬語について細かく学ぶ必要のないかたは読み飛ばしてください。
「お時間を割いていただきありがとうございます」の敬語
繰り返しにはなりますが「お時間を割いていただきありがとうございます」を敬語としてみると、以下のように成り立ちます。
▼敬語の解釈 ①
- もとになる単語「時間を割く」
- 「〜してもらう」の謙譲語「お(ご)〜いただく」で「お時間を割いていただく」
- 「ありがとうございます」をくっつけた敬語
あるいはもっと細かくすると以下のような敬語の解釈もできます。
▼敬語の解釈 ②
- もとになる単語「時間を割く」に謙譲語「お・ご」で「お時間を割いて」
- さらに「〜してもらう」の謙譲語「〜いただく」で「お時間を割いていただく」
- 「ありがとうございます」をくっつけた敬語
本来あるべきなのは解釈②なのですが…
ややこしくなるため「お(ご)〜いただく」のセットで謙譲語とし解釈①で考えたほうがシンプルでわかりやすくなります。
とにかく敬語としては全くおかしいところは見当たりません。間違い敬語でもなく二重敬語でもなく、正しい敬語です。
補足①敬語の種類(ざっくり復習)
① 尊敬語とは?
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。
敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある
② 謙譲語とは?
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本(例外あり)。
③ 丁寧語とは?
いわゆる「です・ます」口調のこと。
謙譲語にも”お(ご)”という使い方がある
ややこしいので基本的な敬語の使い方についてくわしく解説を。
じつは尊敬語と謙譲語にはどちらも「お(ご)」の使い方があります。
謙譲語としての「お(ご)」の使い方はたとえば、
- 会議日程のご連絡
- 忘年会開催のお知らせ
- 販売状況のご報告
- 転勤のご挨拶
- 貴社ご訪問のお願い
こんな感じのフレーズがあります。よくビジネスメールの件名で目にする表現ですね。
ところが例文は自分が「ご連絡・お知らせ・ご報告・ご挨拶」するため「お(ご)」をつかうのはおかしいと感じるかたもいらっしゃることでしょう。
これは、
謙譲語「お(ご)」の使い方を知らないためにくる勘違いです。
尊敬語の「お(ご)」だと勘違いしているために間違い敬語と感じるのですが、実際にはどれも正しい敬語をつかっています。
いっぽうで尊敬語の「お(ご)」は、「部長がお戻りになりました」などのようにして、相手の行為をうやまって使う敬語です。
謙譲語の一般形まとめ
謙譲語の「お・ご」は尊敬語の「お・ご」と勘違いしやすい敬語です。
他にもセットで謙譲語として覚えておくと役に立つフレーズを以下にまとめます。
- お(ご)〜する
お(ご)〜します - お(ご)〜いたす
お(ご)〜いたします - お(ご)〜いただく
お(ご)〜いただきます - お(ご)〜差し上げる
お(ご)〜差し上げます - お(ご)〜申し上げる
お(ご)〜申し上げます - お(ご)〜させていただく
お(ご)〜させていただきます
※「させていただく」は日本語としておかしい表現になる時もあり何でもかんでも使える訳ではない
「〜」の部分にイロイロな語がきて謙譲語になります。たとえば「了承」「教示」「承諾」「検討」「容赦」「査収」「取り計らい」など。
また丁寧語「ます」とくみあわせて「〜します」「〜いたします」とするのが丁寧な使い方ですのでご留意ください。
ちなみに、これは文化庁の「敬語の指針」においても解説されています。私のような頭の悪い人には難しいのですが、ご興味ありましたら以下のリンクよりどうぞ。
使い方
つづいて「お時間を割いていただきありがとうございます」の使い方について。
文字どおりお時間を割いてしてもらったときのお礼に使います。
取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使える丁寧な敬語フレーズです。
基本の使い方①お礼ビジネスメール
「お時間を割いていただきありがとうございます」の使い方
とくに上司や目上・取引先から時間を割いてもらったとき。お礼ビジネスメール書き出しの挨拶に使います。
使い方②お時間を割いてくださいまして~としても丁寧
「お時間を割いていただきありがとうございます」の使い方
ところで「お時間を割いていただきありがとうございます」と似たようなフレーズには…
- 例文「お時間を割いてくださいまして誠にありがとうございます」
- 例文「お時間を割いてくださり、ありがとうございます」
※「お(ご)~くださる」は「~してくれる」の尊敬語
もあります。
結論としてはどれを使っても丁寧な敬語です。
使い方③お時間を割いていただきまして~でも丁寧
「お時間を割いていただきありがとうございます」の使い方
「お時間を割いていただきありがとうございます」としても十分に丁寧ではありますが…
丁寧語の活用形「~まして」をくみあわせて、
- 例文「お時間を割いていただきましてありがとうございます」
とするとなお丁寧な敬語になります。
まぁ「お時間を割いてありがとうございます」だけでも十分ではありますが…丁重なメールに仕上げたいときにどうぞ。
使い方⑤お時間を割いていただき恐縮です なども丁寧
あるいは「ありがとう」ではなく…
相手に負担をかけて申し訳なくおもう気持ちや、相手を気づかうフレーズをもってきても丁寧です。
とくに上司・目上や取引先にいちじるしく負担をかけたときには以下の例文をつかうと好感度UP。
たとえば、
- お時間を割いて+恐縮(申し訳なく思うこと)
「お時間を割いていただき誠に恐縮です」
「お時間を割いていただきまして誠に恐縮でございます」
「お時間を割いてくださいまして誠に恐縮でございます」 - お時間を割いて+恐れ入る(申し訳なく思う)
「お時間を割いていただき大変恐れ入ります」
「お時間を割いていただきまして誠に恐れ入ります」
「お時間を割いてくださいまして誠に恐れ入ります」
こんな感じでつかうと丁寧なビジネスメールになります。
他にもある丁寧な「お時間を割いて」の例文
あとは「ありがとう」だけでなく「感謝申し上げます」「深謝いたしております」などとしても丁寧です。
お礼の敬語フレーズは本当にいろいろありますが、代表的な例文だけを紹介しておきます。
- 例文「お時間を割いていただき感謝申し上げます」
- 例文「お時間を割いていただき深謝いたします」
- 例文「お時間を割いて頂きお礼申し上げます」
※「深謝」は「深く感謝すること」の意味
【例文】ビジネスメール全文
つづいて「お時間を割いて頂きありがとうございます」を使ったビジネスメールの例文を紹介します。
目上・上司にかぎらず社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズにしています。ご参考にどうぞ。
ビジネスメール例文①面談・訪問後のお礼
メール件名:ご面談のお礼
(株)ビジネス
資材部 ○○ 様
いつもお世話になっております。
転職・ノマドでございます。
本日はお忙しいところお時間を割いていただき誠にありがとうございました。
最新市況・稼働状況などにつき、大変勉強になりました。厚くお礼申し上げます。
今後も微力ながら貴社のお役に立てるよう、尽力して参ります。末永いご愛顧のほど宜しくお願い申しあげます。
************
メール署名
************
ビジネスメール例文②打合せ依頼メールに返信する
【社内上司・目上・返信メール】
社内の相手(上司・目上など)に対して、打合せ依頼ビジネスメールに「返信でお礼し日時決定する」ときのビジネスメール例文。
メール件名: 返信Re:Re:打合せのお願い
●● 課長(社内上司/目上)
ご連絡ありがとうございます。
また、突然のお願いにも関わらずお時間を割いて頂けるとのこと併せて感謝申し上げます。
さて、●● 課長のご都合につき承知いたしました。
それでは以下の通りに打合せを実施いたしたく、仔細につきご案内申し上げます。
記
①日時:11月3日10:00-11:00
②場所:東京本社2001会議室
③アジェンダ(所要1時間ほど)
・商品Aのご紹介
③その他
・事前資料を別途添付いたします
以上
ご査収いただければ幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
***************
営業部 ノマド
***************
※「記」「以上」はあってもなくてもよいが、公式には入れるのが正しい
“お時間を割いていただき vs お時間を割いてくださいまして”の違い
ここで少し横道にそれます。
「お時間を割いていただきありがとうございます」と似たような表現には
「お時間を割いてくださいましてありがとうございます」
これって何が違うのでしょうか?
結論としてはどちらも上司や目上・取引先などに使える丁寧な敬語フレーズです。ここではその根拠について順を追って解説していきます。
敬語・意味の違い
まずは敬語と意味の違いについて。とくに色づけした部分についてよくご確認。
- お時間を割いていただきありがとうございます
意味は「時間を割いてもらいありがとう」
敬語は「~してもらう」の謙譲語「お(ご)~いただく」を使用。
- お時間を割いてくださいましてありがとうございます
意味は「時間を割いてくれてありがとう」
敬語は「~してくれる」の尊敬語「お(ご)~くださる」を使用。
「まして」の部分は丁寧語「ます」の活用形
色づけしたところが主に違います。
どちらも同じように使える
ということで、
「お時間を割いていただく=時間を割いていただく」なのか「お時間を割いてくださる=時間を割いてくださる」なのか、という点において違いますが丁寧さとしてはまったく同じです。
また、
「お時間を割いていただきありがとうございます」「お時間を割いてくださいましてありがとうございます」はどちらも結局のところ、お礼を述べているわけであってどちらも同じように使います。
お礼を述べるときは「お時間を割いていただき」が一般的
わたしの経験上ではお礼のビジネスシーンにおいては「お(ご)●●いただきありがとう」という敬語フレーズを使うことが多いです。
おっさん営業マンの経験値であり、本来でしたらどちらも同じように使えます。
「いただく」vs「くださる」の使い分け
せっかくですので「いただく」「くださる」の違いを例文で考えてみます。
たとえば結び・締めに使う「お願い」するときのシーンを考えましょう
すると…
「ご容赦くださいますようお願い致します」
「ご容赦いただきますようお願い致します」
「ご了承くださいますようお願い致します」
「ご了承いただきますようお願い致します」
「ご検討くださいますようお願い致します」
「ご検討いただきますようお願い致します」
こんな敬語フレーズをよく使います。
実はこれらは「くださる」を使うのが一般的です…
「いただく」としても丁寧ではありますが…
ところが、たとえば何かをもらった時のお礼のシーンを考えます。
「たいそうなお品をくださりありがとうございました」
「たいそうなお品をいただきありがとうございました」
もうひとつ、
「ご利用くださりありがとうございます」
「ご利用いただきありがとうございます」
上記の例文はどれも敬語としては正しい使い方。
ただ圧倒的に「いただき〜」とするほうが多いですね。
“お時間を頂戴する/いただく”に言い換えても丁寧
あとは「頂戴する」「いただく」をつかった言い換えもできます。「頂戴する」は「もらう」の謙ったフレーズ。
- 例文①「お時間を頂戴したく存じます」「お時間を頂きたく存じます」
意味は「時間をもらいたいと思う」 - 例文②「お時間を頂戴できればと存じます」「お時間をいただければと存じます」
意味は「時間をもらえたらと思う」 - 例文③「お時間を頂戴できれば幸いです」「お時間をいただければ幸いです」
意味は「時間をもらえたら嬉しい」 - 例文④「お時間を頂戴できますでしょうか」「お時間をいただけますでしょうか」
意味は「時間をもらえるだろうか?」 - 例文⑤「お時間を頂戴できますか」「お時間をいただけますか」
意味は「時間をもらえるか?」 - 例文⑥「お時間を頂戴しありがとうございました」「お時間をいただきありがとうございました」
意味は「時間をもらいありがとう」
『例文④お時間を頂戴できますでしょうか』『例文⑤お時間を頂戴できますか?』はとくに電話でアポイントをとる際によく使う表現です。
「頂戴できますでしょうか?」のほうがより丁寧なのですが、あまりに大げさな気がするため「頂戴できますか?」でも差し支えありません。
使い方
使い方はたとえば、取引先にアポイントメールするとき。
さて首記の件、最新ケミカル市況ご報告のため貴社訪問いたしたく存じます。よろしければ、以下候補のいずれかでお時間を頂戴できますでしょうか。
①目的:ケミカル市況のご報告
②候補日程:
・10月23日(月)AM
・10月24日(火)PM
・10月25日(水)PM
突然のお願いにて大変恐れ入ります。
何卒ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
のようにして使えますね。
参考記事
➡︎ ビジネス挨拶文の例文50選(文書・メール・年賀状・時候ほか)
➡︎ ビジネスメールでの「拝啓・敬具」の書き方と位置
➡︎「ご厚誼」「ご交誼」「ご高配」「ご厚情」の意味と違い、使い分け
➡︎「教えてください」の代わりに使えるビジネス敬語、メール電話の例文
➡︎「ご教示」「ご教授」の意味と違い、使い方・メール例文
➡︎上司へお願いするときに使える敬語10の言葉と、例文50選
➡︎「いただくことは可能でしょうか?」の敬語、目上の人への使い方