敬語「検収いただく vs くださる」の意味と違い・使い方

① 検収いただく

vs.

② 検収くださる

の敬語、意味と違い、目上・上司・取引先への使い方、注意点についてビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説していく記事。

まずは基本。

「検収いただく vs 検収くださる」の意味はそれぞれ

検収いただく → 検収してもらう
検収くださる → 検収してくれる

※検収（けんしゅう）の意味は「納入品が発注どおりか検査して受け取ること」

どちらも正しい敬語であり使い方はたとえば…

① お礼「検収ありがとう」

例文「検収いただきありがとうございます」
例文「検収いただきましてありがとうございます」
例文「検収くださいましてありがとうございます」

② 希望・依頼・お願い「検収してほしい」

例文「検収いただきたく存じます」
例文「検収いただければと存じます」
例文「検収いただければ幸いです」
例文「検収いただきますようお願い致します」
例文「検収ください」
例文「検収くださいますようお願い申し上げます」

※「存じます」は「思う」の謙譲語”存じる”＋丁寧語”ます”

※「ますよう」は丁寧語”ます”+「ように」

③ 検収してくれた●●／検収してもらった●●

例文「検収いただいた商品はまぎれもなく本物でございます」
例文「すでに検収いただきましたが、何か気になる点などありましたでしょうか？」
例文「検収くださいました●●」

のようにしてメールに使うと、上司・目上やビジネスパートナーに使えるすばらしい敬語フレーズになります。

使い方は依頼・お礼メールなどいろいろあり。

どちらをつかっても丁寧な敬語であり使い分けの必要はありません。

その根拠については本文にて。

ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、本文中ではメール例文をまじえながらくわしく進めていきます。

※長文になりますので時間の無い方は「見出し」より目的部分へどうぞ。

意味・敬語の違い

まずは「検収いただく vs 検収くださる」の意味と敬語における違いについて簡単に。

ようは「検収してもらう vs 検収してくれる」ということなのですが、あまりに乱暴なのでもう少しくわしく解説します。

“検収いただく”の意味・敬語

「検収いただく vs 検収くださる」の違い

まず

「検収いただく」の辞書的な意味は…

「検収してもらう」であり、おもにビジネスシーンでなにかしら検収してほしいとき。依頼・お願いにつかう敬語フレーズです。もちろんお礼などにも使えます。

「検収いただく」の敬語を細かくみていくと、以下のような成り立ちです。

元になる語は“検収してもらう”
“もらう”の謙譲語「いただく」で「検収いただく」

※検収（けんしゅう）の意味は「納入品が発注どおりか検査して受け取ること」

謙譲語をつかい、この上なく丁寧な敬語フレーズとなっていることがわかります。

こうすると「ありがたくも検収してもらう」というようなニュアンスになります。

したがって上司・目上やビジネスメールで使うのにふさわしい表現、と言えるでしょう。

ちなみに「検収」の「お（ご）」は謙譲語と尊敬語の使い方があります。ここでは「自分が〜してもらう」というように自分を主語にしているため謙譲語としての使い方です。

蛇足ですが…

“検収くださる”の意味・敬語

「検収いただく vs 検収くださる」の違い

つづいて

「検収くださる」の辞書的な意味は…

「検収してくれる」であり、ビジネスシーンでなにかしら検収してほしいとき。依頼・お願いにつかう敬語フレーズです。もちろんお礼などにも使えます。

「検収くださる」の敬語を細かくみていくと、以下のような成り立ちです。

元になる語は“検収”
“〜してくれる”の尊敬語「お（ご）〜くださる」で「検収くださる」

※検収（けんしゅう）の意味は「納入品が発注どおりか検査して受け取ること」

尊敬語をうまくつかい、この上なく丁寧な敬語表現となっていることがわかります。

こうすると「ありがたくも検収してくれる」というようなニュアンスになります。

ちなみに「検収」の「お（ご）」は謙譲語と尊敬語の使い方があります。ここでは「相手が〜してくれる」というように相手を主語にしているため尊敬語としての使い方です。

違いと使い分け

ここまで意味と敬語についてみてきました。

さて「検収いただく vs 検収くださる」の違いにお気づきでしょうか？

どちらも結局のところ言いたいことは同じ。

「検収してもらう・検収してくれる」

と言いたいわけですが…

“検収いただく“だと意味は「検収してもらう」
→敬語は謙譲語「お（ご）〜いただく」

vs.

“検収くださる“だと意味は「検収してくれる」
→敬語は尊敬語「お（ご）〜くださる」

というように意味と敬語の使い方が違います。

いい加減しつこいのですが、だからといって言いたいことは全く同じなわけです。

したがって、

敬語の使い方には違いはあれど、どちらもひとしく丁寧な敬語であり目上・上司・社外取引先につかえるフレーズです。

ただ少しニュアンスの違いというか敬語の使い方が違うよ、ということですね。

ちなみにビジネスメール結びとして一般的なのは「検収くださる」のほうですが、心底どちらでも差し支えありません。

“検収いただく vs 検収くださる”の使い方

つづいて「検収いただく vs 検収くださる」の使い方について。

代表的なパターンを表にまとめておきます。

こまかく解説していくとそれだけで記事がおわってしまいますので、目的にあわせてお使いください。

▼「検収いただく」の使い方まとめ（すべて敬語）

	①基本	②+丁寧語”ます”	③その他
現在	検収いただく	検収いただきます	-頂くよう -頂きますよう
過去	検収いただいた	検収いただきました	×
進行形	検収いただいている	検収いただいています	-頂いております
過去~現在	検収いただいていた	検収いただいていました	-頂いておりました
希望依頼	検収いただきたい検収いただきたく検収いただくよう	検収いただきたいです検収いただきますよう	-頂きたく思います -頂きたく存じます
可能	検収いただける	検収いただけます	-頂けるよう -頂けますよう
仮定	検収いただければ	検収いただけましたら	×
疑問	検収いただけるか？	検収いただけますか？	-頂けますでしょうか
命令	×	×	×

※ ②+丁寧語”ます”をつかうとより丁寧な敬語になります。

▼「検収くださる」の使い方まとめ（すべて敬語）

	①基本	②+丁寧語”ます”	③その他
現在	検収くださる	検収くださいます	-くださるよう -くださいますよう
過去	検収くださった	検収くださいました	×
進行形	検収くださっている	検収くださっています	-くださっております
過去~現在	検収くださっていた	検収くださっていました	-くださっておりました
希望	検収くださるよう	検収くださいますよう	×
可能	×	×	×
仮定	×	×	×
疑問	×	検収くださいますか？	-くださいますでしょうか
命令	検収ください	検収くださいませ	×

※ ②+丁寧語”ます”をつかうとより丁寧な敬語になります。

【補足】敬語の種類（ざっくり復習）

① 尊敬語とは？
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。

敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある

② 謙譲語とは？
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本（例外あり）。

③ 丁寧語とは？
いわゆる「です・ます」口調のこと。

使い方

つづいて「検収くださる vs 検収いただく」の使い方を例文で紹介します。

目上・上司にはもちろんのこと、社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズにしています。ご参考にどうぞ。

使い方①相手に検収してほしい時

相手に「検収してほしい・検収してもらいたい」ときは…

【例文】検収いただきたく存じます
【例文】検収いただきたく、お願い致します
【例文】検収いただければと存じます
【例文】検収いただきますようお願い申し上げます
【例文】検収くださいますようお願い申し上げます
【例文】検収いただければ幸いです
【例文】検収いただけましたら幸いです
【例文】検収いただけますか／ますでしょうか？
【例文】検収のほどお願い申し上げます
【例文】検収をお願い致します

▼敬語の補足

・「存じる」は「思う」の謙譲語
・「いただきたく」は謙譲語「いただく」＋希望”～したい”
・「いただければ」は謙譲語「いただく」＋可能形＋仮定”たら・れば”
・「いただけましたら」は謙譲語「いただく」＋丁寧語”ます”＋仮定”たら・れば”
・「幸いです」は「幸い」＋丁寧語”です”
・「ますよう」は丁寧語”ます”+”ように”

使い方②相手に「検収ありがとう！」とお礼するとき

相手に「検収ありがとう！」とお礼するときは…

【例文】検収ありがとうございます
【例文】検収いただきありがとうございます
【例文】検収いただきましてありがとうございます
【例文】検収くださいましてありがとうございます

▼敬語の補足

・「いただきまして」は謙譲語”いただく”＋丁寧語”ます”の活用形「まして」
・「くださいまして」は謙譲語”くださる”＋丁寧語”ます”の活用形「まして」

使い方③検収できません！と断るとき

①上司なり取引先・目上の相手が「検収できません！」とするときは…

【例文】検収いただけません
【例文】検収いただくことはできません

②自分が「検収できません！」とするときは…

【例文】（ご）検収いたしかねます
【例文】検収しかねます
【例文】●●のため検収することが叶いません
【例文】検収することが大変困難でございます

無理やり感のある例文になってしまいました…すみません。

こんなときには「ご対応いたしかねます」「お受けいたしかねます」などの敬語をつかいますね。

使い方④検収してくれた●●／検収してもらった●●

検収してくれた●●／検収してもらった●●

例文「検収いただいた商品はまぎれもなく本物でございます」
例文「すでに検収いただきましたが、何か気になる点などありましたでしょうか？」
例文「検収くださいました●●」

使い方⑤自分が「検収します！」とするとき

ついでに自分が「検収します！」と言いたいときには…

【現在形】検収します／（ご）検収いたします
【過去形】検収しました／（ご）検収いたしました
【進行形】検収しております／（ご）検収いたしております
【希望①】検収したく思います／（ご）検収いたしたく思います
【希望②】検収したく存じます／（ご）検収いたしたく存じます

▼敬語の補足

・「存じる」は「思う」の謙譲語
・（ご）とした例文は省略可
・「お（ご）～します」は謙譲語「お（ご）～する」＋丁寧語”ます”
・「お（ご）～いたします」は謙譲語「お（ご）～いたす」＋丁寧語”ます”

おもにはこんな感じの使い方があります。

それぞれの意味や敬語の使い方など、くわしい解説は本文の一番最後にあります。

本当はもっといろいろありますが、すべての使い方を例文で紹介しているとそれだけで日が暮れるため、少しだけにしておきますね。

ビジネスメール例文【全文】

つづいて「検収くださる vs 検収いただく」の使い方をビジネスメール例文で紹介します。

目上・上司にはもちろんのこと、社外取引先にもつかえる丁寧な敬語フレーズにしています。ご参考にどうぞ。

ビジネスメール例文①検収のお願い・依頼

メール件名: 商品A発送完了のお知らせ（ご注文No.123）

ビジネス株式会社
資材部　○○ 課長（社外ビジネス取引先）

平素はお世話になっております。

さて先般ご注文いただきました製品Aの発送が本日完了いたしました（ご注文No.123）。

納品は予定どおり4月20日AMとなりますので、到着しましたらご検収いただきたく存じます。

ご不明な点等ございましたらお気軽にお申し付けください。

引き続きよろしくお願い致します。

************
メール署名
************

ビジネスメール例文②検収のお礼

メール件名: 返信Re:商品A発送完了のお知らせ（ご注文No.123）

ビジネス株式会社
資材部　○○ 課長（社外ビジネス取引先）

平素はお世話になっております。

ご連絡ならびにご検収いただきありがとうございます。

商品もご満足いただけたようでして、とても嬉しく思います。

また機会がございましたらぜひ当店をご利用くださいませ。

今後ともよろしくお願い致します。

************
メール署名
************

“検収いただく”は間違い敬語？

少し話はそれますが「いただく」が謙譲語として誤りだという指摘があります。

間違いだという指摘の根拠は、

“いただく”は「もらう」の謙譲語
謙譲語は自分の動作を低めて相手を敬うため、基本は自分の行為にしか使えない
“検収する”のは相手だから…
“検収いただく”は相手の行為に謙譲語を使うことになり、おかしい？

ということです。

正しい敬語である根拠

まずは結論だけ述べますが「検収いただく」は間違った謙譲語ではありません。

「検収いただく」は「私が相手に検収してもらう」という意味。

もっとかみ砕くと

「ありがたくも私が相手に検収してもらう」というようなニュアンスになります。

自分が上司・目上・取引先など相手に「〜してもらう」の主語は自分であるハズ。したがって自分を低めて上司・目上・取引先をたてる謙譲語「いただく」をつかいます。

ちなみに尊敬語をつかって相手の行為をたてるのであれば…

「検収くださる＝相手が検収してくださる」をつかえばOK。

謙譲語の一般形まとめ

謙譲語の「お・ご」は尊敬語の「お・ご」と勘違いしやすい敬語です。

セットで謙譲語として覚えておくと役に立つフレーズを以下にまとめます。

お（ご）〜する
お（ご）〜します
お（ご）〜いたす
お（ご）〜いたします
お（ご）〜いただく
お（ご）〜いただきます
お（ご）〜差し上げる
お（ご）〜差し上げます
お（ご）〜申し上げる
お（ご）〜申し上げます
お（ご）〜させていただく
お（ご）〜させていただきます

※「させていただく」は日本語としておかしい表現になる時もあり何でもかんでも使える訳ではない

「〜」の部分にイロイロな語がきて謙譲語になります。たとえば「了承」「教示」「承諾」「検討」「容赦」「査収」「取り計らい」など。

また丁寧語「ます」とくみあわせて「〜します」「〜いたします」とするのが丁寧な使い方ですのでご留意ください。

ちなみに、これは文化庁の「敬語の指針」においても解説されています。私のような頭の悪い人には難しいのですが、ご興味ありましたら以下のリンクよりどうぞ。

文化庁より｜敬語の指針

“検収賜る”としても丁寧

「検収いただく vs 検収くださる」と似たような敬語には

「検収賜る（たまわる）」もあります。

言いたいことはどれもおなじく「検収してもらう・検収してくれる」なのですが…

よりかしこまったビジネスシーンでは「賜る」を使います。

賜る（たまわる）という敬語のほうがよりカチッとした表現になりますので、文書など公式なビジネスシーンではかならず「賜る」を使いますね。

ただし普段のビジネスメールでは必要のない敬語フレーズ。

使い方にはたとえば、

例文「検収賜りますようお願い申し上げます」
例文「検収賜りますようお願い致します」

などあり。

「お（ご）～賜る」「お（ご）～いただく」はどちらも「〜してもらう」の謙譲語であり、かしこまり度合いが違うだけです。

ビジネスメール結びをより丁寧にするコツ

あまり関係ないのかもしれませんが重要なので念のため。

ビジネスメールの文末・結び・締めとして使うことのおおい「検収いただく vs 検収くださる」

ここでは、

ビジネスメール結びをより丁寧にするためのコツをご紹介します。

+前置きに添えるフレーズを！

ビジネスメールの文末・結び・締めをより丁寧にするためのコツ。

「検収」の前置きに添える丁寧なお願いフレーズ「どうか」「何卒（なにとぞ）」を使うとより丁寧な印象のメールとなります。

たとえば以下のようなフレーズがあります。

どうか
例文「どうか検収くださいますようお願い申し上げます」
例文「どうか検収くださいますようお願い致します」
例文「どうか検収いただければ幸いです」
例文「どうか検収いただければと存じます。何卒よろしくお願い申し上げます」
何卒＝どうか
例文「何卒検収くださいますようお願い申し上げます」
例文「何卒検収くださいますようお願い致します」
例文「何卒検収いただければ幸いです」
例文「何卒検収いただければと存じます。よろしくお願い申し上げます」