「ご教示(きょうじ)ください」「ご教示願います」を目上の人(上司・先輩)やビジネスメールで正しく使うコツ。
そもそも「ご教示ください」「ご教示願います」って敬語として正しい?という疑問を解消するための記事。
まずは基本として意味は、
- 「ご教示ください」の意味:(〜について)教えてください
- 「ご教示願います」の意味:教えてください、お願いします。
です。どちらも「教えてください」の意味ですが、「〜ください」と「〜願います」では若干ニュアンスが違います。
この違いについては本文中でくわしく解説するとして、敬語として正しいのか?
ということですが、どちらも敬語としては成り立ちます。ただし丁寧レベルとしては低く、社内メールで部下が上司に使うくらいの丁寧度。
取引先へのビジネスメール(就活メール・転職メールふくむ)に使うには、適切ではありません。より丁寧な使い方にはたとえば、
- 例文①ご教示くださいますよう、何卒よろしくお願い致します。
- 例文②ご教示いただきますよう、何卒よろしくお願い致します。
- 例文③ご教示いただければ幸いです。
などがあります。
ざっくりとした解説はこれにて終了ですが、なぜ「ご教示ください」「ご教示願います」の丁寧レベルは低いのか?といった点や、目上の人への正しい使い方について詳しくみていきましょう。
※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。
この記事の目次
「ご教示ください」が目上の方へ不適切な理由
「〜ください」は目上の方へ不適切
なぜ「ご教示ください」が目上の方へや、ビジネスメールに不適切か?
というと、命令形「しろ」の丁寧語「してください」を使っているから。命令形は丁寧語に直したとしても命令形であって、ビジネスシーンで使うには一般的ではありません。
上司が部下に使うのであれば「〜ください」でよいですが、部下 → 上司に使うのは微妙。
ビジネス敬語というのは、できるだけ相手に配慮して「強い言いまわし」を避けます。その結果として、何でもかんでも「お願い致します」「お願い申し上げます」になります。
「ご教示ください」は敬語として正しいが…
念のため、「ご教示ください」が敬語として正しいことを確認しておきましょう。
- 「査収」+尊敬語「ご」で「ご査収」
- 命令形「しろ」の丁寧語「ください」
ということですので「ご教示ください」は敬語として正しい使い方をしています。したがって社内で上司に使うくらいのレベルでしたら、この表現でも十分でしょう。
※一般的に、社内で使う敬語は丁寧すぎないように心がける。ビジネスではなく一般基準での「目下 ⇄ 目上」でふさわしい表現であればOK。ただし上司の感じ方によるところが大きいため、丁寧にこしたことはない。
「ご教示願います」が目上の方へ不適切な理由
まずは「ご教示願います」「ご教示ください」という表現が、敬語としてどうなのか?
という点を見ていきましょう。
「〜願います」は目上の方へ不適切
なぜ「ご教示願います」が目上の方やビジネスメールに不適切か?
というと「願います」という表現に問題があります。
これは「願う」に丁寧語「ます」を使っているのですが、丁寧語は社内で使うくらいの丁寧レベル。社外のコミュニケーションでは通常、できるかぎり尊敬語や謙譲語を使います。
丁寧レベルは「高い:尊敬語・謙譲語 > 中〜低い:丁寧語」になることを認識しておきましょう。
※「ご教示」の部分に尊敬語を使うのであれば、全文を丁寧な言い回しにするのが普通です。
「ご教示願います」は敬語としては正しいが…
念のため、「ご教示願います」が敬語として正しいことを確認しておきましょう。
- 「教示」+尊敬語「ご」で「ご教示」
- 「願います」は「願う」+丁寧語「ます」
ということですので「ご教示願います」は敬語として正しい使い方をしています。したがって社内で上司に使うくらいのレベルでしたら、この表現でも十分でしょう。
一般的に社内メールや社内のコミュニケーションでは、丁寧すぎることは悪。したがって、この程度の丁寧レベルでも失礼にはあたりません。
※ただし上司の性格によりますので、安全サイドではありません。
いっぽうで社外の人へは目上、目下を関係なく、より丁寧な敬語を心がけます。
「ご教示ください/願います」を丁寧に言い換える
冒頭で例文にもしましたが、「ご教示願います」「ご教示ください」を丁寧に言い換えすると、こんな感じの表現があります。
目上の人(先輩・上司)や社外のビジネスメールには、以下の表現を使うのが無難です。
言い換え①ご教示のほど、何卒よろしくお願い致します
最もよく使われる表現が「ご教示のほど、何卒宜しくお願いいたします」。ビジネスメール文末で締めくくりとして活躍する表現です。
命令形の丁寧語「ください」の代わりに「~のほど」を使い、さらに「お願い」として使っています。ビジネスメールでは命令形の使用を極力さけることから、目上の人にも使える素晴らしい敬語表現と言えます。
こうすると意味は「教えてくれるよう、お願いしますね」となります。
また敬語としてのなりたちを細かく解説すると、こんな感じになります。
◎敬語解説;
- 「教示」+尊敬語「ご」で「ご教示」
- 「~のほど」の意味はとくにないが、表現をやわらげるために使う言葉
- 「何卒(なにとぞ)」は副詞で意味は「どうか・どうぞ・ぜひとも」
- 「よろしく」は丁寧度をあげるための副詞
- 「お願い致します」は「お願いする」の謙譲語「お願いいたす」+丁寧語「ます」
※ちなみに「お願い致します」は「お願い申し上げます」に言い換えても丁寧です。
言い換え②ご教示くださいますよう、何卒よろしくお願い致します
つづいて「ご教示くださいますよう、何卒宜しくお願いいたします」。こちらもビジネスメール文末で締めくくりとして活躍する表現です。
命令形の丁寧語「ください」を「~ますように」でつなげ、「お願い」で結んでいます。
命令形ではあるものの「お願い」とすることで、丁寧な表現にしています。こちらも、目上の人やビジネスメールに使える素晴らしい敬語表現と言えます。
こうすると意味は「教えてくれるよう、お願いしますね」となります。
また敬語としてのなりたちを細かく解説すると、こんな感じになります。
◎敬語解説;
- 「教示」+尊敬語「ご」で「ご教示」
- 命令形「しろ」の丁寧語「ください」
- 「ように」+丁寧語「ます」で「ますよう」
- 「お願い致します」は言い換え①にて解説のとおり
※「お願い致します」は「お願い申し上げます」に言い換えても丁寧です。
言い換え③ご教示いただければ幸いです。~
つづいて「ご教示いただければ幸いです。何卒宜しくお願いいたします」。こちらもビジネスメール文末で締めくくりとして活躍する表現です。
命令形の丁寧語「ください」を「いただければ幸いです」に言い換え、「お願い」にすりかえています。
ビジネスメールでは命令形の使用を極力さけることから、目上の人やビジネスメールに使える素晴らしい敬語表現と言えます。
こうすると意味は「教えてもらえると、うれしいな~。お願いします」となります。
また敬語としてのなりたちを細かく解説すると、こんな感じになります。
◎敬語解説;
- 「教示」+尊敬語「ご」で「ご教示」
- 「いただければ」は「もらう」の謙譲語「いただく」+可能形「できる」+仮定「れば」
- 「幸いです」は「嬉しいです・幸せです」の意味
言い換え④ご教示いただきますよう、~
つづいて「ご教示いただきますよう、何卒宜しくお願いいたします」。こちらもビジネスメール文末で締めくくりとして活躍する表現です。
命令形の丁寧語「ください」を自分が「~してもらう」の意味である「いただきますよう」に言い換え、「お願い」にすりかえています。
ビジネスメールでは命令形の使用を極力さけることから、目上の人にも使える素晴らしい敬語表現と言えます。
こうすると意味は「よく調べて受け取ってもらえるように、お願いしますわ~」となります。
また敬語としてのなりたちを細かく解説すると、こんな感じになります。
◎敬語解説;
- 「教示」+尊敬語「ご」で「ご査収」
- 「いただきますよう」は「もらう」の謙譲語「いただく」+丁寧語「ます」+「ように」
- 「お願い致します」は言い換え①にて解説のとおり
「ご教示」の敬語表現、丁寧ランクづけ
これまで解説した「ご教示」を使った表現を、丁寧ランクごとに並べ替えます。
ただし敬語が難しいのは、上司にはこれを使え!取引先にはこれを使え!という決まりごとがない点。使う相手が「失礼だ」と感じたらダメだし、そうでなければOKという、わけのわからない世界なのです…。
結局はあなた自身で上司の性格を考え、丁寧レベルを使い分けるしか方法はありません。
それでも丁寧レベルごとに、なんとな〜くですが基準を設けました。ご参考にどうぞ。
丁寧レベルMax|ご教示いただければ幸いです
丁寧すぎて逆にNGだという人もいるくらいの表現です。
意味は「教えてもらえたら嬉しいなぁ、幸せだなぁ」。
「~をもらえたら嬉しいなぁ」というとても回りくどい表現なので、社内の目上(上司・先輩)に使うには丁寧すぎます。
重要な取引先に対する重要なメールや、本当に本当に丁寧にメールをしたいときに使いましょう。
◎例文:
- ご教示いただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます(メール文末・締め)
丁寧レベル高|ご教示のほど・くださいますよう・頂きますよう
つづいてこれらの表現は、社外の取引先に使える丁寧レベル。もちろん、上司に使っても構いません。
目上の人へのメールはもちろん、目下の人へのメールでも、取引先に対しては、これらの表現を使うのが無難です。
◎例文:
- ご教示のほど、何卒よろしくお願い致します(メール文末・締め)
- ご教示くださいますよう、何卒よろしくお願い致します(〃同上)
- ご教示いただき、誠にありがとうございます(メール冒頭)
- ご教示頂けますでしょうか?(ビジネス会話)
丁寧レベル中〜低|ご教示ください・願います
社内メールに使えるくらいの丁寧レベル。
社内であれば、目下から目上(先輩・上司)へメールを送るときには、この敬語表現で十分です。ただし役員クラスにメールするときには、もっと丁寧な表現が必要な会社もあります。
これは業界や企業の文化によりますので、何ともいえません。
※必ず、どのくらいの丁寧レベルを使うのか、先輩に確認すること。
◎例文:
- ご教授願います(メール文末・締め)
- ご教授ください(メール文末・締め)
「〜ください」はメールじゃなく会話でならOK!
ここまで「〜願います」「〜ください」という表現が、あまり丁寧じゃないことを解説してきました。ただし、これはビジネスメールで使うときのことを想定しています。
商談や社内会議などのビジネス会話でなら「〜ください」を使っても、問題ありません。むしろ、「ご教示のほど、何卒よろしくお願い致します」なんて、ビジネス会話では絶対に使いません。
ビジネス会話であれば、
「〜の件につき教えてください。お願いします!」
「申し訳ありません、〜の件につき教えていただきたいのですが…。」
くらいの表現で十分に丁寧です。そして「ご教示」はそもそも、会話であまり使わない表現。
ということでビジネス会話とビジネスメールは、切り離して考えましょう。会話では丁寧レベルを一段さげてもOK。ビジネスメールを丁寧にする理由は、メールが相手の誤解を産みやすいツールだからです。
「ご教示」と「ご教授」では教えて欲しい中身が違う
「ご教示」の類語には「ご教授」があります。
どちらも「教えること」の意味ですが、この2つの違いは教えて欲しいことの中身にあります。「ご教示」「ご教授」の基本となる意味をまとめると、
- 「ご教示」の意味:(何かを)教え、示すこと
- 「ご教授」の意味:(学問など専門的なことを)伝え、教えること
となりますので、教えてほしいことの中身が「学問や専門的なこと」であれば「ご教授」を使います。いっぽうで「ご教示」は教えてほしいことの中身は問わず、なんでも使えます。
たとえば、
- 物理学を教えてほしい時には「ご教授ください」、
- 東京駅までの行き方を尋ねたければ「ご教示ください」
を使えばいい、ということになります。
ただ、ビジネスメールでよく使われるのは「ご教示」の方ですね。これは、ビジネスシーンで知りたい内容が、芸術や学問ではないためです。
また「ご教示」はメールで使われることがほとんどで、ビジネス会話ではもっとシンプルな表現を使います。
くわしくは別の記事にてまとめていますので、ご参考にどうぞ。
参考になる記事:
【例文】「ご教示ください/願います」を使ったビジネスメール全文
つづいて「ご教示ください」「ご教示願います」を使ったビジネスメールの例文を挙げていきます。
ラフな印象のメールになってしまいますのでビジネスメールで使うには、やはり言い換えが必要かと思われます。
例文①問い合わせメール
メール件名:貴社製品に関するお問い合わせ
株式会社転職
ご担当者 様
お世話になります。
突然のご連絡、大変失礼をいたします。株式会社就活・開発担当の就活と申します。
この度は貴社ホームページを拝見し、連絡を致しました。
さて首記の件、貴社製品を以下の用途へ適用検討しております。
①検討用途:電気自動車のエンジン部材
②求める物性:高耐熱性、高耐久性
貴社ホームページにて製品一覧を確認しましたところ、
商品AとBが目的に合致すると考えておりますが、いかがでしょうか。
ご教示ください(ご教示願います)。
メール署名
例文②問い合わせメール(社内)
メール件名:製品Aに関する問い合わせ
自動車部品営業部
ご担当者 様
お疲れ様です。受付の就活と申します。
さて首記の件、受付に以下の問い合わせ電話がございました。
①問い合わせ元:株式会社就活・就活様(電話番号/メール〜〜)
②問い合わせ内容:自動車部品に関する問い合わせ
つきまして、貴部署にて新規問い合わせ対応の
ご担当されている方をご教示ください(ご教示願います)。
よろしくお願い致します。
メール署名
まとめ
今回はこれでもかというくらい「ご教示ください」「ご教示願います」について語ってみました。
ビジネスは常に、教えてもらうことばかり。じぶん一人では成り立ちません。誰かのアドバイスを求めるときに使ってみましょう(ただし言い回しには十分に気をつけましょう)。
ぜひ、ありとあらゆる場面を経験し、使い倒してください。頭でどうこうなるものではないので、ビジネスシーンで場数を踏んでくださいね。ではでは~~。