自動車メーカーの特徴(強み・弱み)を比較。
就活生のために、トヨタ・ホンダ・日産・スバル・マツダ・いすゞ・日野・ダイハツ工業・スズキって何が違うの?という視点から考察します。
就活・転職で志望動機を考える際のご参考になりましたら幸いです。
※車種の特徴について述べていく記事ではなくビジネスサイドでの特徴比較。
この記事の目次
トヨタ自動車
- 売上: 28兆4030億円
- 営業利益(率): 2兆8539億円(10.0%)
- 日本1兆6767億、北米5056億、欧州757億、アジア1345億、その他1594億、金融3190億、持分法投資3290億
- 新車販売台数: 世界1015万台
- 日本205万台、北米283万台、欧州84万台、アジア134万台、その他159万台
- 平均年収: 838万円(平均39.1歳)
- 出所:2016年3月期の有価証券報告書より
強み
- 高品質・低コストのクルマ(トヨタ生産方式)
- グローバル販売網
- 優秀な人材
- ハイブリット車、燃料電池車FCVでリード
- 全方位での開発。自動運転、電気自動車EV、燃料電池車FCV…とにかく何でもやっている。
- 万人ウケするものしか作らない
- 100%子会社のダイハツ工業、トヨタが筆頭株主のスバル
弱み
- 巨大企業すぎて意思決定に時間かかる
- 選択と集中ができていない
- 北米でのリコール
- 万人ウケするものしか作らない。少数派をターゲットにしない。
特徴まとめ
高品質な車を低コストで作るのが得意なトヨタ。これといって優れている点はないけども、欠点も見当たらない、という自動車メーカー。満点を狙わず80点で良しとするモノづくり。
この安定感で今の地位を築いてきた。特に北米での成功と国内市場・ハイブリット車の成功が大きい。ハイブリット車は開発アイテムの一つがたまたま当たっただけだが、常に全方位で技術開発しているため、どんな変化が起きてもそれなりには対応していけるメーカーと考える。
また、GMやフォードが未だに30点のクルマしか作れていないことを考えると北米での成功は当たり前のこと(日系メーカー共通)。リコールだらけの印象を受けるトヨタだが、GMやフォードは表面化していない品質問題がありすぎる。
でも油断するとすぐにシェアを失うのが、消費者を相手にするBtoCビジネスの怖いところ。今の地位に満足せず、常に上を目指して欲しい。
本田技研工業(ホンダ)
- 売上: 14兆6011億円
- 二輪事業1兆8054億、四輪事業10兆6254億、金融1兆8356億、その他3,347億
- 営業利益(率): 5033億円(3.4%)
- 新車販売台数: 世界474万台
- 日本66万台、北米192万台、欧州17万台、アジア172万台、その他2万台
- 二輪販売台数: 世界1705万台
- 日本18万台、北米30万台、欧州20万台、アジア1513万台、その他123万台
- 平均年収: 768万円(平均44.8歳)
- 出所:2016年3月期の有価証券報告書より
強み
- 四輪・二輪の両方を持つ
- 発展途上国・二輪 → 低価格・小型四輪 → 先進国・高性能中〜大型四輪、という流れでマーケティングできる。
- ホンダジェット、ロボット事業など多角化
弱み
- 圧倒的な技術が無い。すべて2番手、3番手。
- 北米市場ではトヨタよりも早くから頑張っていたがいつの間にか追い越され、頭打ち状態。
- タカタのエアバッグ問題をまだ引きずっている
特徴まとめ
車がマニアのための道具から、単なる移動手段に変わってきた段階で方針チェンジ。
昔は、新しい技術でおもしろい車を作る革新的な企業だったが、いつの間にか大衆に迎合した。これはこれで戦略としては立派だけどファンとしては物足りなさを感じる。
トヨタと同じような方向性を狙っている。その中でホンダにしかない強みといえば2輪事業を持っていること。途上国のお金のない人でもホンダの2輪は知っている、ブランド浸透力が高い。
いまお金がなくてバイクに乗っている人々がいずれ車を買えるようになったら、まずホンダの車が候補に上がるだろう。北米市場でそれなりに地位を保ちながら、アジアで伸ばしていくものと考える。
日産
- 売上: 12兆1895億円
- 営業利益(率): 7933億円(6.5%)
- 新車販売台数: 世界542万台
- 日本57万台、北米201万台、欧州75万台、中国125万台、その他83万台
- 平均年収: 776万円(平均42.7歳)
- 出所:2016年3月期の有価証券報告書より
強み
- 電気自動車EV、自動運転に的を絞ると公言している
- ルノーとのアライアンスによる部品共有化でコスト削減
- カルロス・ゴーン流!?
弱み
- 新車開発の資金力、技術力なし
- 頼みのEVもイマイチ
- 中国・北米依存
- 経営危機になったとき買い手が外資(ルノー)しかつかないほどしょうもない
特徴まとめ
中国市場で成功している唯一の日本車メーカー。とはいっても中身は外資企業なので、その点が中国進出に成功した理由。他の日系メーカーよりも共産党や現地合弁会社と上手くやれる。
EVは大々的にキャンペーンしたにも関わらず失敗。電池性能がダメな時点で終わりなのだけど、電池が売れることで潤う化学素材メーカーもいるので良しとする。
あえて苦言を呈すると、電気自動車をやるとしたら小型の大衆車では全然ダメ。電池が積める面積が限られてしまい、結果として走行距離が伸びない。
やるとしたら米テスラモーターズのように無理やり高級・大型車を電気自動車EVにするしか方向性がない。それでも無理やり感がありすぎる。
小型・大衆車をEVにして満足のいく性能を出すには、いまのLIB(リチウムイオン電池)では全くダメ。ジャストアイディアなのだが、超安全なプルトニウム電池ができれば瞬く間に素晴らしい電気自動車が完成する(失笑)。それくらい非現実的な発想で電池を開発しないとEVの限界は明らか。
まとまり感のないコメントになったが、とにかく日産は迷走している印象しか受けない。
マツダ
- 売上: 3兆4066億円
- 営業利益(率): 2268億円(6.7%)
- 新車販売台数: 世界153万台
- 日本23万台、北米43万台、欧州25万台、中国23万台、その他37万台
- 平均年収: 670万円(平均40.4歳)
- 出所:2016年3月期の有価証券報告書より
強み
- EU市場、北米市場でのブランド力 ← 単なる安売りではなく「走り」で魅力を出している。
弱み
- 海外生産拠点が少なく輸出依存度高いため、為替リスク大
- 開発がクリーンディーゼル車の一辺倒
- 資金力不足
- 50年後かもしれないけどモーター駆動の自動車が主流になったら…
特徴まとめ
弱小メーカーの戦略を心得ている素晴らしい企業。これでもかというくらい、クリーンディーゼル、クリーンディーゼル、クリーンディーゼル。
一辺倒の開発はリスクを伴うが、成功すればとても大きな見返りがある。資金力に乏しい弱小メーカーは何か特別なことに集中して大手を脅かす、ということしか道は残されていない。
その辺りのことをよく心得ている企業だと思う。
敢えて苦言を呈するとしたら、他社とのアライアンスを組み海外生産比率を増やすべき(自己資金での海外工場設立はリスク大)。為替に影響を受けやすい体質のままではジリ貧になる。
スバル
- 売上: 3兆2323億円
- 営業利益(率): 5656億円(17.5%)
- 新車販売台数: 世界95万台
- 日本14万台、北米63万台、その他18万台
- 平均年収: 643万円(平均38.3歳)
- 出所:2016年3月期の有価証券報告書より
- 2017年4月1日から株式会社SUBARUへ社名変更
- トヨタが筆頭株主(連結対象子会社ではない)
強み
- 独自技術
- 走行性、安全性に特化したクルマ作り
- 高くても買ってくれるファン層、ブランド価値
- 水平対向エンジン(独自エンジン技術)
- アイサイト(安全技術)
弱み
- 新たな技術開発力
- 北米依存
- 50年後かもしれないけどモーター駆動の自動車が主流になったら…
特徴まとめ
マツダと同じコメントになるが、弱小メーカーの戦略を心得ている素晴らしい企業。これでもかというくらい、走り、走り、走り。アイサイト、アイサイト、アイサイト。尖った車で勝負するメーカー。
トヨタが筆頭株主になったことで北米現地生産も拡大中(トヨタと協力)で、為替リスクは以前より受けにくくなっている。
敢えて苦言を呈するとしたら、北米市場の依存度合いが高すぎる。他地域でのファン獲得が進まなければ、ちょっとしたことで全てを失うことになる。
スズキ
- 売上: 3兆1807億円
- 二輪事業2339億(赤字事業)、四輪事業2兆8785億、特機など683億
- 営業利益(率): 1953億円(6.1%)
- 新車販売台数: 世界286万台
- 日本63万台、欧州20万台、アジア184万台(インド130万台)、その他18万台
- 二輪販売台数: 世界149万台
- 日本6万台、北米4万台、欧州4万台、アジア112万台、その他21万台
- 平均年収: 626万円(平均39.0歳)
- 出所:2016年3月期の有価証券報告書より
強み
- 国内軽自動車
- インドでの圧倒的シェア(50%弱)
- 低コスト、低価格路線
弱み
- 薄利多売
- 技術力・開発力なし
- 赤字の2輪事業
特徴まとめ
スズキといえば国内では軽自動車。実はインドで最も売れている自動車メーカー。何か特別な技術を持っているわけではないが、高品質な小型車を安く作り、安く売る、という能力に優れる。
小型自動車は中〜下級層の人しか買わないため、この単純な戦略しかやりようがない。
薄利多売で成り立っている。
三菱自動車工業
- 売上: 2兆2678億円
- 営業利益(率): 1384億円(6.1%)
- 新車販売台数: 世界105万台
- 日本10万台、北米13万台、欧州20万台、アジア33万台、その他28万台
- 平均年収: 700万円(平均40.4歳)
- 出所:2016年3月期の有価証券報告書より
強み
- 電気自動車、
- プラグインハイブリッドPHEV、SUV、4WDの技術
- 新興国ではそれなりに売っている
- 三菱商事、三菱東京UFJ銀行のバックアップ
弱み
- 国内市場シェアが壊滅状態
- コンプライアンス意識の低さ
- 会社不振、不信による人材の流出
- 日産、ルノーの弱者連合に加わったがどうなるか?
特徴まとめ
三菱自動車はいま、かわいそうな状況になっているためコメントを控える。
いすゞ自動車
- 売上: 1兆9270億円
- 日本6931億、アジア5415億、北米1413億、その他5511億
- 営業利益(率): 1716億円(8.9%)
- 新車販売台数: 世界66万台(日本8万台)
- 平均年収: 763万円(平均41.1歳)
- 出所:2016年3月期の有価証券報告書より
強み
- 国内トラックNo.1ブランド
- ディーゼルエンジンの技術
- 新興国でのシェア
弱み
- エンジンの多様化進むと追いつけない(電気、LNG、水素など)
- 新興国メーカー台頭によるグローバル競合激化
日野自動車
- 売上: 1兆7455億円
- 営業利益(率): 983億円(5.6%)
- 新車販売台数: 世界16万台
- 日本6万台、北米1万台、アジア6万台、その他3万台
- トヨタむけOEM: 15万台
- 平均年収: 776万円(平均42.7歳)
- 出所:2016年3月期の有価証券報告書より
強み
- 国内での一定シェア
- トヨタグループ
- トヨタ車のOEM
弱み
- 海外戦略(途上国中心)がチープ。スケールでは競合のダイムラー、VWに劣り、価格では中国・韓国メーカーに勝てない。低価格路線か高品質ニッチ路線か、はっきりしない
- トヨタに切られたら終わりだが、トヨタの完全子会社になる道もある。
ダイハツ工業
- 売上、利益はトヨタ自動車に含む(連結子会社)
- 新車販売台数: 世界96万台
- 日本58万台、マレーシア20万台、インドネシア16万台、その他2万台
- トヨタ、スバルむけOEM: 世界43万台、日本15万台
強み
- 国内軽自動車
- トヨタ100%連結子会社
弱み
- トヨタ次第
- 国内市場の縮小
総まとめ
円安、原料安、市場の伸び、と良いことばかりで足元の業績は概ね好調の日系自動車メーカー。
でもBtoCの自動車メーカーはBtoBの化学素材メーカーと違い、好・不調の波が激しい。良い時はとことん良いけど、悪い時はとことん悪い。
だからこれからどうなるかは誰にも読めない。気まぐれな消費者に振り回されるビジネスのため、仕方ないでしょう。逆に言うと、今は弱小メーカーでも流れをつかめば一気に下克上ということもあり得る(スバルが代表的な例)。
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