「いただく」と「くださる」の意味と違い、目上の方への使い方、注意点について例文つきで誰よりも詳しく解説していく記事。
まずは基本として、
“いただく”の意味は「(自分が)もらう」であり、“もらう”を謙譲語にしています。
“くださる”の意味は「(相手が)与える・くれる」であり、“くれる”を尊敬語にしています。
使い方は、
「ご了承いただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます」
「社長がボーナスをくださった」
などのようにして使うと目上の方やビジネスメールで使う敬語として、とても素晴らしい表現になります。詳しくは本文中にて解説していきます。
※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。
“いただく・くださる”の意味と違い
“いただく”の意味は「(自分が)もらう」
「いただく(頂く)」の辞書的な意味は「もらう」です。
「もらう」を謙譲語にして「いただく」としていますので、目上の方やビジネスメールで使うのにふさわしい敬語になります。
※謙譲語=自分の行為に対して使う敬語。自分をへりくだる(下げる)ことで、相手を敬っている。
“くださる”の意味は「(相手が)くれる・与える」
いっぽうで「くださる(下さる)」の辞書的な意味は「(相手が)くれる・与える」です。
「くれる・与える」を尊敬語にして「くださる」としていますので、目上の方やビジネスメールに使うのにふさわしい敬語になります。
※尊敬語=相手の行為に対して、敬って使う敬語。
“いただく・くださる”の違い
ここまで意味をみてきましたが、「いただく・くださる」の違いに気づかれたでしょうか?
“いただく”の意味は「(自分が)もらう」であり、“もらう”を謙譲語にしています。
“くださる”の意味は「(相手が)与える・くれる」であり、“くれる”を尊敬語にしています。
この2つの表現は、そもそもの原形が違う単語であるため意味も使い方も全く違います。
たとえば、以下の2つの使い方を比べてみましょう。
- 例文①社長からボーナスをいただいた
- 例文②社長がボーナスをくださった
例文①は社長から(自分が)もらう。自分に対する行為であるために、“もらう”の謙譲語「いただく」を使って敬語にしています。
例文②は社長がくれる。相手が「くれる」わけですから、“くれる”の尊敬語「くださる」を使って敬語にしています。
結果的には同じことを表しているのですが、使い方や意味は全く違いますので気をつけましょう。念のため、NGとなる例文もまとめておきますね。
- ×NG例①社長からボーナスをくださった(意味不明)
- ×NG例②社長がボーナスをいただいた(社長がボーナスをもらうことになってしまう)
“いただく”の使い方・例文
続いて「いただく」の使い方を、例文つきで解説していきます。注意点は謙譲語なので、自分の行為にしか使えないことです。
使い方①〜をいただく(頂く)
何かを「もらう」の意味で使うとき。
例文で示した方が早いため、以下にまとめます。
- 部長から年賀状をいただいた
- 結婚式で引き出物をいただいた
- 送別のお品を頂いた
- 早々にご連絡いただき、誠にありがとうございます。
使い方②〜頂きますよう(頂けますよう)
つづいて上級クラスの「いただく」の使い方。「〜いただきますよう・いただけますよう」の意味は「〜してもらいたい」です。
「お願い・許可を求める」ビジネスシーンで活躍する敬語です。特にビジネスメールの文末に締めくくりとして使うと、グッと引き締まったメールになります。
「いただきますよう」を細かくみていくと、
- “もらう”の謙譲語「いただく」
- “するように”の丁寧な表現「ますよう」
からなります。こちらも例文でみていく方がわかりやすいため、まとめておきます。
- ご検討いただきますよう、お願い申し上げます(お願い)
- ご承諾いただけますよう、〃(お願い・許可)
- ご承認いただけますよう、〃(お願い・許可)
- ご了承いただきますよう、〃(お願い・許可)
- お取り計らい頂きますよう、〃(お願い・許可)
▼「頂きますよう・頂けますよう」の違いは、可能形かそうでないか。「頂けますよう」は可能形であり、「いただく=もらう」+「できる」からなります。可能形を使った方が、より丁寧な印象を与えますが、ビジネスシーンではどちらを用いても構いません。
使い方③その他の表現(言い換えを含む)
「いただく」は他にも色々な形で使える便利な敬語です。
その他の使い方を、例文で紹介しておきますね。これらの表現は、ビジネスメールの文末に締めくくりとして使うと、グッと引き締まったメールになります。
- ご了承をいただければ幸いです。何卒宜しくお願い申し上げます(お願い)
- ご了承を頂きたく存じます。〃(お願い)
- ご了承のほど、何卒宜しくお願い申し上げます(お願い・許可)
参考|「頂きます」「頂きたく存じます」意味と違い、目上の方への使い方
“くださる”の使い方・例文
続いて「くださる」の使い方を、例文つきで解説していきます。注意点は尊敬語なので、相手の行為にしか使えないことです。
使い方|くださる(下さる)
誰かが何かを「くれる」の意味で使うとき。
例文で示した方が早いため、以下にまとめます。
- 部長が年賀状をくださった
- 新郎が引き出物をくださった
- 幹事が送別のお品をくださった
他の使い方もないか、いろいろと考えを巡らせてみたのですが、何も思いつきませんでした…。「くださる」は「いただく」ほど万能な表現ではなく、使い方が限定されますね…。
注意|ビジネスでは「くださる」より「いただく」を使う
「いただく」「くださる」の使い方をみてきましたが、どちらも同じような例文を使っています。主語を誰にするか、というだけで言い換えできるからです。主語を自分にすれば、謙譲語「いただく」を使い、主語を相手にすれば尊敬語「くださる」を使います。
ただし実際のビジネスシーンでは、結構な確率で「いただく」を選ぶ人が多いですね。
これって、なぜでしょうか?
相手からの気づかいを自分が受けた(もらった)という部分を強める意味で、「いただく」という謙譲表現が使われるのでしょう。しょうもない自分にまでお気づかい頂いて…と恐縮する気持ちから「いただく」という表現が好まれます。
“いただきますよう”は間違った謙譲語?
少し話は逸れますが、先ほど「いただく」の使い方で紹介をした「いただきますよう」が謙譲語として誤りだという指摘があります。
間違いだという指摘の根拠は、
- “いただく”は「もらう」の謙譲語
- 謙譲語は自分の動作を低めて相手を敬うため、自分の動作にしか使えない
- “了承する”のは相手だから「ご了承いただけますよう〜」は相手の動作に謙譲語を使うことになり、おかしい?
ということです。
まずは結論だけ述べますが「〜いただけます・いただきます」は間違った謙譲語ではありません。
「ご了承いただく」は 「私が了承を(相手に)もらう」からです。いちおう、自分の行動になっていますよね?
言語学者風にややこしく解説するのであれば、
「自分側の立場から相手側や第三者の行為を表現した敬語であり,敬語の慣用的な用法として特に問題があるわけではない」ということになります。
確かに国語学者みたいな人が判定すると、回りくどくて気持ち悪い表現かもしれませんが、ビジネス敬語としてはかなりの頻度で使われます。ご安心ください。
ちなみに、これは文化庁の「敬語の指針」においても解説されています。私のような頭の悪い人には難しいのですが、ご興味ありましたら以下のリンクよりどうぞ。
“いただく”を使ったビジネスメール例文【全文】
つづいて「いただく」を使ったビジネスメールの例文を挙げていきます。とくに何かのお願い・依頼・謝罪をするビジネスメールにおいて活躍する表現です。目上の方や取引先に対して使える文章にしていますので、ご参にどうぞ。
※「くださる」は先に述べたとおりビジネスシーンではあまり使われないため、「いただく」のみとしました。
例文①アポイントをとる(お願いメール)
メール件名:OB訪問のお願い(就活大学・就活)
メール本文:
株式会社転職
△△様
お世話になっております。
突然の連絡にて大変失礼を致します。就活大学・就活学部の□□と申します。
大学のキャリアセンターからの紹介で連絡をさせて頂きました。
さて首記の件、△△様にOB訪問をさせて頂きたくメールを致しました。
私は現在、◯◯業界を中心に企業研究をしており貴社に大変興味を持っております。そこで是非、現場でご活躍されている△△様のお話を伺いたく存じます。
つきまして、宜しければ下記日程のいずれかにて伺いたく存じますが、ご都合のほど如何でしょうか。
・x月xx日〜x月xx日 13:00-19:00
・x月xx日〜x月xx日 11:00-16:00
△△様のご都合のよろしい日時・場所をご指定頂きましたら幸いです。
お忙しい中、誠に恐れ入りますが、
ご検討いただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
メール署名
例文②説明会キャンセルメール
件名:説明会欠席のご連絡
(就活大学・就活)転職株式会社
人事部
◯◯ 様
お世話になっております。
就活大学の就活太郎です。
さて首記の件、○月△日の会社説明会に参加予定でしたが、諸事情により欠席をいたしたく存じます。お取り計らいを頂いたにも関わらず、誠に申し訳ございません。
また、本来であれば電話にてお詫びを申し上げるべきところ、メールでのご連絡となりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。次回、会社説明会の機会がございましたら、改めて参加させて頂きたく存じます。
ご了承いただきますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
メール署名
例文③内定辞退(謝罪メール)
件名:内定辞退のご連絡(就活大学・就活)
転職株式会社
人事部
◯◯ 様
平素は大変お世話になっております。
就活大学の就活太郎です。
さて、先日貴社より内定のご連絡をいただいておりましたが諸事情により、内定を辞退いたします。貴重なお時間をいただいておきながら、このような返事となり誠に申し訳ございません。
また、本来であれば直接伺いお詫びするべきところ、メールでのご連絡となりましたこと、重ねてお詫び申し上げます。
ご了承いただければ幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます。
メール署名
まとめ
これでもかというくらい「くださる・いただく」について語ってみました。これはとても便利な表現で、「お願い・頼みごと」をするシーンであれば、目上の方や取引先に万能に使える表現です。とくにメールの締めくくりに使うと、グッとメールが引き締まります。
また「いただければ幸いです」も合わせて使い分けできるようになると、営業マンとしてはパーフェクトです。
慣れないうちは、使うのがちょっと気持ち悪く感じますが、慣れると便利すぎてどんどん使っちゃいます。ぜひ、ありとあらゆる場面を経験し、使い倒してください。頭でどうこうなるものではないので、ビジネスシーンで場数を踏んでくださいね。ではでは~~。