「いかがいたしましょうか」は敬語として正しい?使い方と全注意点

「いかがいたしましょうか」の意味と敬語での正しい使い方について、例文つきで誰よりも詳しく解説していく記事。

まずは基本として、

「いかがいたしましょうか」の意味は「(自分が)相手のためにどうしますか?どのようにしますか」です。目上の人(上司・先輩)に使える正しい敬語ですが、使い方によっては失礼にあたります。

それでは詳しくみていきましょう。

※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。

「いかがいたしましょうか」意味と敬語のなりたち

「いかがいたしましょうか」を敬語としてみると、

  • 「いかが=どう、どのように=How」+「する」の謙譲語「いたす」
  • 「ましょうか」は丁寧語「ます」+疑問形「か」

これらをあわせると「いかがいたしましょうか」の意味は「(自分が)どうする?どのようにする?」となります。

※謙譲語は自分の行為に対して、自分をへりくだって言うことで相手を立てる敬語。目上の人(上司・先輩)に対してなにか発言するとき、自分の行為に対してつかいます。相手の行為には使いません。相手の行為をうやまって使うときは「尊敬語」を使います。

正しい?間違い?意見が割れる「いかがいたしましょうか」

「いかがいたしましょうか」は敬語として「正しい」と言う人もいれば「間違い」言う人もいます。なぜこのように、意見が2つに割れるのでしょうか?

結論としては、解釈の仕方によって「正しい」とも「間違い」ともとれるのですが、理由をみていきましょう。

解釈①(自分が)どうする?と尋ねるから正しい

まずは「いかがいたしましょうか」が正しい敬語の使い方とする意見から。

「いかがいたしましょうか?」は自分の行為に対してのみ使い、「(相手のために自分が)どうしますか?」と確認する使い方。

「(自分が)相手のためにどうすればいいでしょうか?」なので、謙譲語「いたす」がふさわしい。

このように解釈すると正しい敬語の使い方です。

解釈②どうする?を決めるのは相手だから間違い

つづいて「いかがいたしましょうか」が間違い敬語だとする意見。

「どうする?」を決めるのは自分ではなく相手だから、そもそも自分の行為に使う謙譲語「いたす」を使うのはおかしい。

この場合、相手の行為をうやまって使う尊敬語「なさる」を使って「いかがなさいますか」が正しい。

このように解釈すると、「いかがいたしましょうか」は間違った敬語の使い方です。

解釈①と②はどちらが正しい?

解釈①②をどちらが正しいか?

「いかがいたしましょうか」の例文で考えてみましょう。

  • 例文①後ろ髪は、いかがいたしましょうか?(美容室)
  • 例文②ステーキの焼き加減は、いかがいたしましょうか?(レストラン)
  • 例文③お荷物、いかがいたしましょうか?(ホテル)
  • 例文④プランA、B、Cからお選びいただけますが、いかがいたしましょうか?(電話対応)
  • 例文⑤よろしければご用件を○○に申し伝えますが、いかがいたしましょうか?(電話対応)
  • 例文⑥ご返金か、新しいものにお取替えをいたしますが、いかがいたしましょうか?(電話対応)

これらの使い方はバイトくんの「マニュアル敬語」として、よく耳にする表現です。

解釈①(自分が)相手のためにどうしたらいいか?を尋ねる、という見方をするのであれば、例文はすべて正しい敬語。

解釈②「どうする」を決めるのが相手だ、という見方をするのであれば、例文はすべて間違い敬語。「する」の尊敬語「なさる」を使って「いかがなさいますか?」とするのが正解。

結局、どちらが正しいかは受けて側がどう感じるか?

ということになるのかと・・・。

私のようなおっさんであれば、解釈①はとんでもなく気持ち悪い使い方なので、解釈②として「いかがなさいますか」を使うのが正解。

ということになりますが…。答えは残念ながらありません。

それでも完全に間違いだといえる表現には、

  • NG例×部長、お飲み物はいかがいたしましょうか?
    →部長が飲み物をどうする?と尋ねるわけだから、謙譲語「いたす」は間違い
    部長、お飲み物はいかがなさいますか?」が正解
  • NG例×プランA、B、Cからお選びいただけますが、いかがいたしましょうか?
    →選ぶのは相手だから、謙譲語「いたす」は間違い
    「いかがなさいますか?」が正解

がありますので、ご注意ください。

いかがなさいますか?いかがいたしましょうか?の違い

ところで、いかがいたしましょうか?と似たような表現に「いかがなさいますか?」があります。

「いかがなさいますか?」「いかがいたしましょうか」の違いは「する」の尊敬語「なさる」を使うか、謙譲語「いたす」を使うかという点。

「いたす・なさる」はどちらも「する」の意味なので、この2つの違いとしては、

  • 「いかがいたしましょうか?」は自分の行為に対してのみ使い、
    「(相手のために自分が)どうしたらいいでしょうか?」と確認する使い方、
  • 「いかがなさいますか?」は相手の行為に対してのみ使い、
    「(相手が)どうしたいのか?」をたずねる使い方、

となります。

どちらも、相手の意思を尋ねるシーンで使います。

ただし「いかがいたしましょうか」「いかがなさいますか」を使いすぎると、バカの一つ覚えみたいでみっともないです。

もっといい表現を使えるときがありますので、以下の注意点を守ってお使いください。

「いかがいたしましょうか」を使うときの注意点

注意①「いかが」は「Yes/No」で答えられる質問には不要

「いかが」という表現は本来、「Yes/No」でこたえられる質問には不要です。

なぜなら、「いかが=どう?どのように?=How」を使うことによって、「Yes/No」以外の選択肢を相手に与えてしまうから。

たとえば、以下の2つの表現を比べてみましょう。

  • 例文①ご注文は、いかがいたしましょうか?
  • 例文②ご注文は、お決まりでしょうか?

例文①と尋ねられた場合、受けて側は相手の意図がわかりません。いっぽうで例文②は相手が尋ねたいことが明確です。

例文①のように「いかが=どう=How」を使うと、

  1. 注文を客がするのか?
  2. 注文を店員が決めつけるのか?
  3. 注文をやめるのか?
  4. 注文を投げるのか?
  5. 注文を爆発するのか?

などなど…考えうる選択が無限になってしまうのです。

店員からみると、注文を(自分が)受けるかどうか?という点を確認したいはずなのに、質問の受け手にとってはこのように、大量の選択肢があるわけで・・・。答えに困ってしまいます。

したがって「注文する」「注文しない」の答えを求めるのであれば、

例文②の「ご注文は、お決まりでしょうか?」としたほうが、相手に対する配慮がなされています。

注意②「いかがいたしましょうか」を使いすぎない

バイトくんが使う「マニュアル敬語」というのがあります。「いかがいたしましょうか」もその内のひとつ。

これをバカの一つ覚えみたいに使うのは危険。知らずのうちに、誤った使い方、不適切な使い方をしてしまいます。敬語ってマニュアル化できるようなものではなく、自分の立場・相手の立場、さらには場の雰囲気をも読みながら使わなければいけないのです。

NGとなる使い方にはたとえば、

  • NG例×お客様、お荷物いかがいたしましょうか?(ホテル)
  • NG例×ご注文はいかがなさいますか?(レストラン)
  • NG例×お弁当はいかがいたしましょうか?(コンビニ)

などなど…。

この中でふさわしい使い方をしている例って、実はどれ一つとしてありません。すべて、もっと良い表現に言い換えできます。

  • 正解例◎お荷物、お持ちいたしましょうか?(ホテル)
  • 正解例◎ご注文はお決まりでしょうか?(レストラン)
  • 正解例◎お弁当、あたためますか?(コンビニ)

正解例のように言ったほうが相手には答えやすく、親切です。「いかが」という表現に固執するのは「いかがなものでしょうか?」。

※ただしNG例も敬語としては正しいです。適切な表現ではない、ということ。

注意③「いかがでしょうか?」と混同しない!

「いかがいたしますしょうか?」と似たような表現で、実は意味の違う言葉に「いかがでしょうか」というのがあります。

「いかがでしょうか?」の使い方は大きく2つあり、

  • 使い方①相手に「何かをすすめる」
    →例:お飲物はいかがでしょうか?
    →例:部長もおひとつ、いかがでしょうか?
  • 使い方②相手に「感想・意見を求める」
    →例:部長のお考えは、いかがでしょうか?
    →例:ご都合いかがでしょうか?
    →例:部長、新しいソファーの座り心地は、いかがでしょうか?

です。相手の行動を求める「いかがする=どうする?」とはニュアンスが違い、自分がどうすればいい?という意味で使う「いかがいたしましょうか」とは違います。

混同しないよう、気をつけましょう。

参考になる記事:

注意④「いかが」を使うときには主語と目的語をハッキリと!

「いかがいたしましょうか」という言葉を使うと、すべてが曖昧になります。

必ず「誰が、何を、どうするか?」を明確にして使いましょう。

ビジネスシーンにおいて、曖昧なことは誤解や仕事のミスを生みます。ビジネスパーソンはできるだけ具体的に、できるだけ分かりやすい言葉づかいを心がけるべき。

社内で上司を相手に話すときには、なおさら「シンプルで明確であること」が必要です。上司は同じ会社の身内であって、言葉づかいを気にしすぎる必要はありません。

※ただし「いかがお過ごしですか?」などの定型文はそのまま使う

とくに、

  • 最悪な例×部長、今週末の接待ゴルフはいかがいたしましょうか?
  • 最悪な例×部長、今週末の接待ゴルフはいかがなさいますか?

このふたつの例文は最低、最悪(自分で作っておいてなんですが…)。

いちおう例文にはしましたが、主語もわからなければ、目的語もない、何を尋ねたいかもわからない、というすご~く曖昧な表現なのです・・・。

とくに重要な案件であればあるほど、もっとはっきりと言うべきです。

たとえば、

「部長、今週末は接待ゴルフのご予定ですよね?何かお手伝いすることはありますか?」

「週末は接待ゴルフのご予定ですよね?ご自宅まで車でお迎えに伺いましょうか?」

などとするべきですよね・・・。

社内は身内であるため、不必要に丁寧すぎるのは悪

少し話は脱線し、敬語をどこまで丁寧に使うか、という話をします。

社内でも部下⇔上司などのように、目上⇔目下の上下関係はあるのですが、ビジネスシーンでは社内の人は全員、あなたの身内と考えます(実際には身内ではないのだけど)。

敬語って本当にややこしくて、とにかく目上の人に敬意を示せばいい、というものではなく、相手の立場、自分の立場、ウチ・ソト(身内と外)の関係を考えながら、ふさわしい表現を使わないといけないのです。

「上司には必ずこの表現を使え!」「就活メールでは必ずこの表現を使え!」と決まっているものではなく、正解がありません。相手が丁寧だと感じたらそれでOK、そうでなければNG、というように感覚的な部分も多くあります。

社内の人には一般の常識内で敬語を使う

ということですので、「いかがいたしましょうか」だけでなく、不必要に丁寧な表現を社内の人に対して使うのは、本来のビジネスマナーとしては「?」が残ります。

社内では一般社会の「目上⇔目下」で使われる敬語の、常識の範囲内で使えばいいということになります。

まとめ

今回はこれでもかというくらい「いかがいたしましょうか?」が敬語として正しいかどうか、意味や使い方について語ってきました。

でも結局のところ、正しい使い方を考えれば考えるほどに分からなくなってきます…。

使うときの注意点を必ずおさえ、相手をイラつかせないように気をつけましょう。

ご参考になりましたら幸いです。ではでは~~。

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