「言う」の謙譲語・尊敬語・丁寧語と、
ビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい使い方、注意点について。ビジネスメールの例文つきで誰よりも正しく解説する記事。
まずは要点のまとめから。
言う の謙譲語は…
① 申す
② 申し上げる
過去形は「申した」「申し上げた」
言う の尊敬語は…
① おっしゃる
② 言われる
過去形は「おっしゃった」「言われた」
※「おっしゃられる」は間違い敬語であるためご注意を
言う の丁寧語は…
① 言います(現在形)
② 言いました(過去形)
言う の尊敬語は「おっしゃる・言われる」
「言う」を尊敬語にすると「仰る、おっしゃる」「言われる」の2種類があります。過去形は「仰った、おっしゃった、おっしゃりました、おっしゃいました」「言われた」です。
丁寧語「です・ます」と一緒に使う
「言う」の尊敬語「おっしゃる」に丁寧語「です・ます」を組み合わせると、より素晴らしい敬語フレーズになります。
すると、
- 現在形は「おっしゃります、おっしゃいます」「言われます」
- 過去形は「おっしゃりました、おっしゃいました」「言われました」
となります。
これらをまとめて、丁寧度の高い順に並べると
「おっしゃいました ≒ 言われました > おっしゃった ≒ 言われた > 言った」
のような感じになりますね。
使い方
「おっしゃる」「言われる」は尊敬語ですから、先輩や上司といった目上の人の行為に使います。決して自分の行為につかってしまわないようにご注意を。
たとえば、
- NG例文「私が部長におっしゃる」
- NG例文「私が総理におっしゃる」
のような例文はダメ。
自分が目上のヒトに「言う」としたいときには尊敬語ではなく、自分の行為を低めて相手を高める敬語(謙譲語)を使い「私が部長に申します・申し上げます」とします。
よくある間違いとして「おっしゃられる」があります。尊敬語「おっしゃる」にさらに、尊敬語「〜られる」を使用すると、二重敬語にあたりNGですので、ご留意ください。
おっしゃられる は間違い敬語
よくある「言う」の間違い敬語に「おっしゃられる」というのがあります。
尊敬語は「れる・られる」だという認識から生まれるものと思われますが…
NG例としてはたとえば、
- NG例文:部長が「コーラ飲みたい」と
おっしゃられました。
正解例としては、普通に「言う」を尊敬語にし、丁寧語「です・ます」をくわえ「おっしゃいました」とします。
- 正しい例文:部長が「コーラ飲みたい」とおっしゃいました。
ウチ・ソト逆転敬語もNG
また、
社外の人を前にして先輩や上司のことを言うときには「謙譲語または丁重語」を使います。尊敬語「上司がおっしゃっていました」と使うのは、上司を高めていることになりNGです。
- NG例文:社外の人を前に「私の上司がコーラ飲みたいと
おっしゃっていまして…」
社外の人の前で先輩や上司の話をするときには、謙譲語を使います。
- 正解例例文:社外の人を前に「私の上司がコーラ飲みたいと申しておりまして…」
例文
「言う」の尊敬語「おっしゃる」「言われる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文。
- 課長が「取引先へ年賀状を出すように」とおっしゃいました。
- 部長が「ローソンで缶コーヒー買ってくるわ!」とおっしゃいました。
- 課長が「忘年会するぞ!」とおっしゃった。
- 先輩が「お年玉やる」とおっしゃった。
- 課長が「育毛したい」と言われた。
- 先輩が「新しい車がほしい」と言われた。
言う の謙譲語「申す・申し上げる」
「言う」を謙譲語にすると「申す」「申し上げる」の2パターンあり。過去形は「申した」「申し上げた」です。
見てのとおり丁寧表現の「上げる」を使っているかどうかにあります。つまり「申す」よりも「申し上げる」のほうが丁寧な敬語というか、かしこまった言葉となります。
そもそも謙譲語とは?
念のため基本となる謙譲語とはなにか?について簡単に復習しておきます。
- 謙譲語Ⅰ=自分を低めることで行為のおよぶ先を高めて敬意を表す敬語のこと。
- 謙譲語Ⅱ=聞き手に敬意を表す敬語のことで「もうす」「おる」「まいる」「いたす」などがある。
【出典】文化庁「敬語の指針」
使い方
こちらも尊敬語と同じく丁寧語「です・ます」をつけて使うことが普通。
そうすると、
- 現在形は「申します・申し上げます」
- 過去形は「申しました・申し上げました」
となりますね。
これらをまとめて丁寧度の高い順に並べると、
「申し上げます > 申します > 申し上げる ≒ 申す > 言う」のような感じになります。
また、
「申す」「申し上げる」は謙譲語ですから、自分の発言に対して謙る(へりくだる)ときに使います。ビジネスシーンでは、社外の人を前にして自分のことを話すときに使います。
正しい例文とNG例
「言う」の謙譲語「申す・申し上げる」のビジネスシーン(メール・手紙・文書・社内上司・社外・目上・就活・転職)にふさわしい例文まとめ。ホントに色々と使えます。
- 例文「先ほど申し上げましたとおり、こちらは限定商品となっております」
また、社外の人を前にして上司が発言していたことについても、自分の発言と同様に「申す」を使います。
社外の人の前では上司・先輩のことであっても謙譲語または丁重語を使います。
- 例文「弊社の斎藤が、◯◯様にお会いしたいと申しておりまして…」
「おっしゃる」のところで解説しましたが、社外の人を前にして先輩や上司のことを言うときには「謙譲語または丁重語」を使います。
社外の人を前にして尊敬語「上司がおっしゃっていました」と使うのはNGです。
- NG例文:社外の人を前に「私の上司が値上げするよう
おっしゃいまして…」
例文「心よりお詫びを申し上げます」
例文「心よりお礼を申し上げます」
例文「お悔やみを申し上げます」
例文「ご報告を申し上げます」
例文「ご健勝とご多幸をお祈り申し上げます」
例文「先ほど申し上げましたように、」
例文「先ほど申しました通り、」
例文「私、転職ノマドと申します」
×NG 部長が会議で「値下げする!」と申した。(「申す」は自分の発言に対して使う)
×NG 先ほど申し上げられました通り、(自分の発言に対して使う)
※自己紹介をするときに「申し上げます」を使うのは一般的ではありません。
言う の丁寧語「言います」
「言う」は馴染みのある、丁寧語「です・ます」口調を使うと「言います」となります。過去形は「言いました」ですね。
普段から使う表現でるため注意点は特になし。
ここまでで、
「言う」の尊敬語・謙譲語・丁寧語の使い方は完了です。ここからは、「言う」に関連したよく使う表現をみていきます。ご興味のある方だけどうぞ。
おっしゃる通りです を目上の人に使うとNG?
結論ですが「おっしゃる通りです」は尊敬語ですから、目上の人に使っても失礼ではありません。
中には心配されている方もいらっしゃるようなので詳しく解説しておきます。
おっしゃる通りです の意味は「その通りです」と、相手の意見に同意する際に使われます。
- 「おっしゃる(仰る)」は「言う」の尊敬語
- 「通りです」は、同調するとき、何かに倣うときに使う。
たとえば「その通りです」「下記の通り」などで使われる。 - 上記を併せると「おっしゃる通りです」は「意見に同意します」という意味の敬語
たとえばビジネスシーンでは、こんな会話で使われますね。
【上司】
「さっきから言い訳ばっかりだけど、それって本来やるべき仕事ができてないだけじゃないの?」
【部下】
「おっしゃる通りです。申し訳ありません、以降気をつけます」
※この場合「おっしゃる通りです」はスキップし謝罪だけでもよい
また、
誰かの言葉を借りる時にも使います。
【あなた】
「部長のおっしゃる通り、これから伸びるアフリカ市場に専属の営業担当を置くべきだと考えます。その理由は…」
※上司の意見に「同意する」意味で使う
また、
社内だけでなく取引先との商談でも使います。
【取引先】
「◯◯さんの主張されている値下げ幅は、最近の原料背景を考えると少なすぎますねぇ…。」
【あなた】
「おっしゃる通りです。申し訳ございません。ただ、◯◯という背景でこれ以上の値下げは難しい状況でして…。どうかご了承ください」
※顧客の意見に「同意する」意味で使う。この場合「おっしゃる通りです」はスキップしお詫びだけでもよい
参考 → 「おっしゃる通りです」はNG?「言う」の正しい敬語の使い方まとめ
他にもよく使う敬語のまとめ表
「言う」の敬語変換(謙譲語・尊敬語・丁寧語)のほかにもビジネスシーンでよく使う敬語をまとめておきます。これを機にマスターしておきましょう。
謙譲語 | 尊敬語 | 丁寧語 | |
---|---|---|---|
言う | 申す 申し上げる |
おっしゃる 言われる |
言います |
会う | お会いする お目にかかる |
お会いになる 会われる |
会います |
する | 致す (いたす) |
なさる | します |
伝える | お伝えする 申し伝える |
お伝えになる 伝えられる |
伝えます |
思う | 存じる | お思いになる 思われる |
思います |
行く | 伺う 参る 参上する |
いらっしゃる おいでになる お越しになる |
行きます |
もらう | いただく | くださる | もらいます |