「致します(いたします)」「申し上げます」の違い、使い分け、目上の方への使い方、注意点について、ビジネスメールの例文つきで誰よりも詳しく解説していく記事。
まずは基本として「申し上げます」「いたします」の意味は「申し上げる=言う」「いたす=する」となります。
敬語のなりたちは「申し上げる」は「言う」の謙譲語、「いたす」は「する」の謙譲語です。
そうすると違いは「申す=言う」なのか「いたす=する」なのか、ということになります。したがって「何かを言う」ときには「申す」を使い、「何かをする」ときには「いたす」を使えばいいことが分かります。
使い方はたとえば、
- 例文①申し上げました通り(言ったとおり)~
- 例文②連絡いたしました通り・連絡申し上げました通り(連絡したとおり)~
- 例文③お願いいたします・お願い申し上げます(お願いします)
- 例文④報告いたします・報告申し上げます(報告する)
- 例文⑤感謝いたします・感謝申し上げます(感謝する)
- 特別な例①残暑お見舞い申し上げます。(「申し上げます」を使う)
- 特別な例②貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。〃同上
のようになります。
「お願い」や「連絡」「報告」「感謝」には「言う・する」のどちらも使えるため、2パターンの使い方ができます。ビジネスメールではどちらかに統一する必要もなく、混在や併用しても構いません。
※ただし本当は「する=いたす」のほうが自然です。
ざっくりとした説明はこれにて終了ですが、それぞれの項目について詳しくみていきましょう。
※長文になりますので、時間の無い方は「パッと読むための見出し」より目的部分へどうぞ。
“申し上げます”・“致します”の違いは「言う or する」
「~申し上げます」「~いたします」の違いは「いたす」と「申す」の敬語と意味を理解しておくと簡単にわかります。
- 「いたす」は「する」の謙譲語
- 「申す」は「言う」の謙譲語
つまり、動作を表す「する=いたす」なのか、言葉を発する「言う=申す」なのか、という違いになります。
「申し上げます」と「致します」の敬語解説
先ほどはシンプルに「申す」と「致す」の違いを比較しましたが、念のため「申し上げます」「致します」の敬語についても解説しておきます。
「申し上げます」の敬語解説;
- 「言う」の謙譲語「申す」
- 敬意を添える補助動詞「上げる」
- 丁寧語「ます」
「致します」の敬語解説;
- 「する」の謙譲語「いたす」
- 丁寧語「ます」
“申し上げます”・“致します”は使い分ける必要なし
結論として「申し上げます・致します」は明らかにおかしい場合を除き、使い分ける必要はありません。どちらも同じように使って構いません。
※明らかにおかしい場合とは「特別な例」で示した通り、時候の挨拶を指します。
その根拠を解説します。
「連絡・お願い・報告」は「する」なのか「言う」なのか?
「連絡いたします・連絡申し上げます」ってどっちが正しい?
「お願いいたします・お願い申し上げます」ってどっちが正しい?
「報告いたします・報告申し上げます」ってどっちが正しい?
という議論があります。
もちろん「連絡する=連絡いたします」「お願いする=お願いいたします」「報告する=報告いたします」が自然なのですが、「言う=申し上げます」を使っても成り立つような気がします。というより実際にビジネスメールで広く使われているため、今さらもう否定しても無意味ですね。
ということで、どちらを使っても違和感はありません。
※ただし明らかにおかしくなる場合や定型文は、使い分けしましょう。
ちなみに私は「いたします」をメインで使いますが、メールが「いたします」ばかりになって気持ち悪いときに、「申し上げます」を使います。「いたします」「申し上げます」が混在しても、OKです。ひとつの表現をず~っと使い続けると、メールがぐちゃぐちゃになりますので、お気をつけください。
特別な使い分け|定型の挨拶は「申し上げます」
まずは特別な使い分けとして、「時候の挨拶・定型の挨拶」には「申し上げます」を使います。これはもう定型文ですので、理由を考えるのは止めておきましょう。
例文にした方がわかりやすいため、まとめておきます。
「申し上げます」の例文;
- 貴社におかれましては、益々ご盛栄のこととお慶び申し上げます(定型文)
- 平素は格別のご厚情を賜り深くお礼申し上げます(定型文)
- 残暑お見舞い申し上げます(定型文)
- 寒中お見舞い申し上げます(定型文)
- 暑中お見舞い申し上げます(定型文)
- その他いろいろな時候の挨拶、定型の挨拶
それでも使い分けするとしたら…
どうしても「申し上げます・いたします」を使い分けしないと気が済まない、というあなたへ。私の考える使い分け方法を解説します。
使い分け①「いたします」を中心に使う
最もシンプルで、使いやすいのが「いたします」のほうです。いやいや「申し上げます」のほうが丁寧だ!という人もいますが、心底どちらでも構いません。
私がこのように考えるのは、「いたします」がビジネスメール・商談を問わずに使えるオールラウンダーな表現だから。「申し上げます」は商談で使うには少々、おおげさな表現であると考えます。
たとえば「何卒よろしくお願い申し上げます」を実際に発音してみるとよいでしょう。まるで時代劇をやってるみたいで、滑稽になりませんか?
使い分け②「いたします」が多すぎてくどいメールになるとき「申し上げます」を使う
先にも述べたとおり、私は「いたします」をメインで使いますが、メールが「いたします」ばかりになって気持ち悪いときに、「申し上げます」を使います。
ビジネスメールって決められた敬語表現ばかり使うため、何か似たような文章がツラツラと並んでしまうことがあるのですよね。こういうときに色々な表現の仕方を知っていると、くどいメールにならずに済みます。
使い分け③丁寧にしたい時は「申し上げます」を使う
これはもう、感覚的な話になるのですが…。
丁寧レベルとしては「申し上げます」のほうが高いような気がします。
理由はとくにありません。なんとな~く、です。ということで、謝罪メールなど恐縮するときには「何卒よろしくお願い申し上げます」「お詫び申し上げます」などとして使うほうが、より丁寧な印象を与えることができるでしょう。
“申し上げます”・“致します”は統一する必要なし、混在してもよい
よくある質問に
「申し上げます」「致します」はどちらかに統一したほうがいいの?
ひとつのビジネスメールで「申し上げます」と「致します」が混在してもいいの?
というのがあります。
これは結論としては、統一する必要はなく、混在や併用しても構いません。私の個人的な意見ですが、どちらかに統一するとメールの文章が「いたします」もしくは「申し上げます」ばかりになってしまうのですよね…。
同じ表現ばかりを使うと、読みにくくて非常にイケてないビジネスメールになってしまいます。これは世界共通であり、英語でも同じ言い回しを二度つづけて使いませんよね?
メールの読みやすさを重視するのであれば、統一しないで、混在しているほうがいいでしょう。
※あくまでも筆者の私見です。
“申し上げます・致します”を使ったビジネスメール例文【全文】
つづいて「申し上げます・いたします」を使ったビジネスメールの例文を挙げていきます。どんなメールであれ使える、とても便利な表現です。目上の方や取引先に対して使える文章にしていますので、ご参にどうぞ。
例文①お詫びメール
件名:納期遅延のお詫び(転職会社・転職)
〜前略〜
このたびは、商品○○○につきまして、納期が遅れましたことを心よりお詫び申し上げます。
原因を調査しましたところ、弊社内における事務手続きの不手際であることが判明いたしました。ご迷惑をおかけしましたこと、重ねてお詫び致します。
再発防止に向け、チェック機能の見直しを実施して参りますので、今後とも変わらぬお引き立てのほど、何卒よろしくお願い致します。また、近日中にお詫びに伺いたく存じます。
本来であれば直接伺いお詫びすべきところ、甚だ略儀ではございますが、
まずは書面にてご連絡申し上げます。
メール署名
例文②残暑見舞いメール
メール件名:残暑お見舞い申し上げます(転職会社・転職)
◯◯株式会社
△△ 部 御中
残暑お見舞い申し上げます。
貴社におかれましては、益々ご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は、格別のご厚情を賜り深くお礼申し上げます。
私どもは、今後とも更なるサービス向上のため努力をしてまいりますので、ご愛顧を賜わりますようお願い致します。
末筆ながら、残暑厳しき折、貴社の皆様方にはくれぐれもご自愛くださいませ。
メール署名
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季節の挨拶(残暑見舞い・年賀状・寒中見舞い、など)は「申し上げます」を使います。これは定型文ですので「いたします」としないように気をつけましょう。主張の食い違っている部分があり申し訳ありません…。
まとめ
これでもかというくらい「申し上げます」「いたします」の違いと使い分けについて語ってみました。
これはとても便利な表現で、「お願い・頼みごと・謝罪」をするシーンだけでなく、どんなビジネスメールであろうと、商談であろうと使えます。
ぜひ、ありとあらゆる場面を経験し、使い倒してください。頭でどうこうなるものではないので、ビジネスシーンで場数を踏んでくださいね。ではでは~~。