「お答えいたしかねます」は正しい敬語であり、ビジネスメールでの使い方にはたとえば、
- 【例文】ご質問にはお答えいたしかねます
- 【例文】iPhone10の製造方法につきましてはお答えいたしかねます
- 【例文】現時点ではお答えいたしかねます
- 【例文】●●にはお答えいたしかねますので、予めご了承いただけましたら幸いです
などがあります。
それでは、
「お答えいたしかねます」の意味、敬語の種類、ビジネスシーンでの使い方(電話・メール・手紙・文書・社内上司・社外取引先・目上・就活・転職)、メール例文を紹介します。
「お答えいたしかねます」の意味
「お答えいたしかねます」は「答えることができません」という意味。
なぜこのような意味になるのか?
そもそもの意味と敬語について順をおって解説していきます。
「〜いたしかねる」の意味は「〜することができない」
ここで「〜いたしかねる(兼ねる)」は「~することができない」という意味の敬語。否定語であり「〜しかねる」の謙譲語です。
たとえば、
- 【例文】お受けいたしかねます
意味は「受けることができません」 - 【例文】出席いたしかねます
意味は「出席することができません」 - 【例文】ご対応いたしかねます
意味は「対応することができません」
などのようにして使います。ビジネスメールでは例文のように丁寧語「ます」をくっつけて「〜いたしかねます」として使うのが一般的
「〜しかねる」自体は敬語でもなんでもありませんが「できません」よりも丁寧に聞こえるため重宝するフレーズです。
「自分が~することができない」の意味であり、断りのビジネスシーンでは万能に活躍する敬語です。ビジネスメールで使ってもよし、電話で使ってもよし。
「お答えいたしかねます」の意味は「答えることができない」
ということで…
「お答えいたしかねます」だと意味は「答えることができない」となります。
「お答えいたします」の否定語です。
すべての元になる語「答える」のそもそもの意味は辞書によるとザックリ以下のとおり。
- 返事をする。返答する。回答する
【例】元気よく「はい」と答える - 質問や問題に対して解答を出す
【例】以下の設問に答えなさい
ちなみに敬語「お答えいたします」は自分が「答える」ときにつかいます。
相手に「答えてもらう」としたいときには…
「お答えいただく=答えてもらう」
「お答えくださる=答えてくれる」
という敬語をつかいます。
「お答えいたしかねます」敬語の種類
この項目は少しマニアックな敬語の解説になります。敬語について細かく学ぶ必要のないかたは読み飛ばしてください。
「お答えいたしかねます」を敬語としてみると、以下のように成り立ちます。
▼敬語の解釈 ①
- もとになる単語「答える」
- 「〜する」の謙譲語「お(ご)〜いたす」を使い「お答えいたす」
- 「できない」の意味の「かねる」をくっつけて「お答えいたしかねる」
- 丁寧語「ます」で「お答えいたしかねます」
あるいはもっと細かくすると以下のような敬語の解釈もできます。
▼敬語の解釈 ②
- もとになる単語「答え」に謙譲語「お・ご」で「お答え」
- さらに「する」の謙譲語「いたす」をくっつけて「お答えいたす」
- 「できない」の意味の「かねる」で「お答えいたしかねる」
- 丁寧語「ます」で「お答えいたしかねます」
本来あるべきなのは解釈②なのですが…
ややこしくなるため「お(ご)〜いたす」のセットで謙譲語とし解釈①で考えたほうがシンプルでわかりやすくなります。
とにかく敬語としては全くおかしいところは見当たりません。間違い敬語でもなく二重敬語でもなく、正しい敬語です。
補足①敬語の種類(ざっくり復習)
① 尊敬語とは?
相手をうやまって使う敬語の一種。
相手の行為にたいして使い、自分の行為には使わないことが基本。
敬語の種類はほかに②謙譲語、③丁寧語がある
② 謙譲語とは?
自分をへりくだって下にすることで、相手への敬意をあらわす敬語。
自分の行為に使い、相手の行為には使わないことが基本(例外あり)。
③ 丁寧語とは?
いわゆる「です・ます」口調のこと。
補足②謙譲語にも「お・ご+名詞」という使い方がある
ややこしいので基本的な敬語の使い方についてくわしく解説を。
じつは尊敬語と謙譲語にはどちらも「お・ご」の使い方があります。
謙譲語としての「お・ご」の使い方はたとえば、
「会議日程のご連絡」
「忘年会開催のお知らせ」
「販売状況のご報告」
「転勤のご挨拶」
「貴社ご訪問のお願い」
こんな感じのフレーズがあります。よくビジネスメールの件名で目にする表現ですね。
ところが例文は自分が「ご連絡・お知らせ・ご報告・ご挨拶」するため「お・ご」をつかうのはおかしいと感じるかたもいらっしゃることでしょう。
これは、
謙譲語「お・ご」の使い方を知らないためにくる勘違いです。尊敬語の「お・ご」だと勘違いしているために間違い敬語と感じるのですが、実際にはどれも正しい敬語をつかっています。
いっぽうで尊敬語の「お・ご」は、「●●部長がお戻りになりました」などのようにして、相手の行為をうやまって使う敬語です。
ややこしければ「お・ご〜いたす」セットで謙譲語と覚える
謙譲語の「お・ご」は尊敬語の「お・ご」と勘違いしやすい敬語です。
ややこしく感じる方は「お(ご)〜いたす」をセットで謙譲語と覚えておくとよいでしょう。
また謙譲語で使われる「お・ご」はパターンが限られます。ざっくりと以下の使い方をマスターしておけばビジネスシーンでは困らないでしょう。
- お・ご●●する
お・ご●●します - (お・ご)●●いたす
(お・ご)●●いたします - お・ご●●いただく
お・ご●●いただきます - (お・ご)●●させていただく
(お・ご)●●させていただきます
※ただし「させていただく」は日本語としておかしい表現になる時もあり何でもかんでも使える訳ではない
●●の部分にイロイロな語がきて謙譲語になります。たとえば「了承」「連絡」「確認」「検討」「容赦」「査収」「取り計らい」など。
ここで(お・ご)と( )書きにしているフレーズは「お・ご」があってもなくても敬語としては丁寧。
また丁寧語「ます」とくみあわせて「〜します」「〜いたします」とするのが丁寧な使い方ですのでご留意ください。
「お答えいたしかねます」の使い方・ビジネスメール例文
つづいて「お答えいたしかねます」の使い方をビジネスメール例文でご紹介します。
文字どおり目上や上司・社外取引先に「答えることができない」と言いたいときに使えます。
取引先など社外あてに限らず、上司や目上など社内あてのメールにも使える丁寧な敬語フレーズにしていますのでご参考にどうぞ。
使い方・例文①問合せビジネスメールに返信する
▼「お答えいたしかねます」ビジネスメール例文
たとえば社外取引先から答えられない質問を受けたとき。返答を断るための敬語フレーズとして使います。
-ビジネスメール例文-
メール件名:返信Re:製品Aに関するお問合せ
株式会社ビジネス
資材部 のまど 様
いつもお世話になっております。
株式会社転職・●●です。
このたびはお問合せいただき誠にありがとうございます。
さて誠に遺憾ではございますが、ご質問いただいた「製品Aの製造方法」に関しましては社外秘情報となっており、お答えいたしかねます。
お問合せいただいておきながら、このような返事となりましたことを深くお詫び申し上げます。
他に私どもにお手伝いできることがございましたら、何なりとお申し付けください。
どうか事情をご高察の上、ご了承いただけましたら幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
***********
メール署名
***********
こんな感じでビジネスメールに使うと丁寧ですね。
まぁようするに「答えることができません!」というシーンであればたいていは使えます。
➡︎ 【ビジネス】丁寧な断りのメール文例(仕事依頼・誘いなどシーン別)
使い方・例文②引き合いビジネスメールに返信する
▼「お答えいたしかねます」ビジネスメール例文
たとえば取引先から「引き合いに回答してほしい!」というような依頼があったとき。回答できない部分について断るための敬語フレーズに使います。
-ビジネスメール例文-
メール件名:返信Re:新規お引き合い(社名・名字)
株式会社ビジネス
営業部 のまど 様
お世話になっております。
このたびはお引き合いを頂戴し誠にありがとうございます。
さて新規お引き合いの件、納期等につき下記のとおり回答いたします。
記
商 品:エチレンAB
原産地 :未定(日本 or 米国)
数 量:10t
価 格:100円/kg
納入場所:貴社指定場所(国内)
最速納期:10月1日AM
以上
一点、原産地に関しまして在庫タイトの状況下のため確定できておらず、現時点ではお答えいたしかねます。
お急ぎのところご迷惑をおかけし誠に申し訳ございません。
今週中には確定の上あらためてご報告申し上げますので、どうかご容赦いただければと存じます。
何卒よろしくお願い申し上げます。
***********
メール署名
***********
「お答えできかねます」は間違った日本語
よくある間違った日本語の使い方について。
「お答えできかねます」というフレーズを使っているビジネスパーソンもいますが…
「お答えできかねます」は間違いです。
なぜなら「〜しかねます」はすでに「できません」の意味なのですから。そうすると「できかねます」は「できるできません」のような意味となってしまい、意味不明です。
正しくは「お答えしかねます」「お答えいたしかねます」ですね。
「お答えいたしかねます」の言い換え敬語
「お答えいたしかねます」の言い換え敬語はいろいろあります。
上司・目上・取引先にも使えそうな例文をできる限りならべておきますのでご参考にどうぞ。
- 【例文】お答えしかねます
- 【例文】(ご)返答いたしかねます
- 【例文】(ご)回答いたしかねます
- 【例文】(ご)返事いたしかねます
断るときにもっとも丁寧というか、一般的なのは「〜いたしかねます」という敬語フレーズ。
例文で(ご)と( )書きにしたフレーズは「ご」をつけてもつけなくても敬語としては丁寧です。
断るときにはどんな敬語フレーズを使うかも重要ですが、それよりもビジネスシーンにふさわしい断り方の構成になっていることの方がもっと重要です。
以下の記事にて詳しく解説していますのでご参考にどうぞ。
「お答えいたしかねます vs お応えいたしかねます」違い
ここで少し横道にそれます。
「お答えいたしかねます」と似たような表現には
「お応えいたしかねます」があります。
これって何が違うのでしょうか?
意味の違いは「答える=返答」「応える=添う」
「お答えいたしかねます」vs「お応えいたしかねます」の違い
もとになる語「答える」vs「応える」の違いをみていけばよく、以下の点が違います。
- 「答える」の意味
①返事をする。返答する。回答する
【例】元気よく「はい」と答える
②質問や問題に対して解答を出す
【例】以下の設問に答えなさい - 「応える」の意味
①働きかけに対して、それに添うような反応を示す。応じる。報いる。
【例】要望に応える
【例】要求に応える
②(省略)
ということで、
単に返事や返答をするときには「答える」を使い、相手の要望などに添うという意味で使うのが「応える」です。
質問にはお答えいたしかねます・要望にはお応えいたしかねます
長々と解説してもややこしくなるだけなので例文で考えましょう。
正しい「お答え」「お応え」の使い方はそれぞれ以下のとおり。
- ◎【正しい例文】ご質問にはお答えいたしかねます
→意味は「質問には返答できない」 - ◎【正しい例文】ご要望にはお応えいたしかねます
→意味は「要望には添うことができない」
これを逆にすると完全におかしくなりますのでご注意を。
- ×【NG例文】ご質問にはお応えいたしかねます
→意味は「質問には添うことができない??」
- ×【NG例文】ご要望にはお答えいたしかねます
→意味は「要望には返答することができない??」
「質問にはお応えいたしかねます」だと意味は「質問に添うことができない」となります。完全におかしいですね。ということで返答するの意味である「答える」を使います。
また、
「要望にお答えいたしかねます」だと意味は「要望に返答することができない」となります。これもオカシイですね。ということで添うの意味である「応える」を使います。
ビジネスメールにおける断り方の基本
せっかくの機会ですので、ビジネスメールにおける断り方の基本についても少しだけ。
断りの敬語フレーズ基本構成
ビジネスメールにおける丁寧な断り方には一定のルールがあります。
具体的には…
断りの敬語フレーズの基本構成は以下のようになっていると素晴らしいです。
【例文】
前置き① せっかくのお誘いではございますが、
理 由② あいにく先約があり、
断 り③ 今回は遠慮させて頂きます。
【例文】
お詫び④ お心遣いを無にするような返事となりましたこと、深くお詫び申し上げます
こんな感じ。
すると…
-断りのビジネスメール例文-
(前略)
せっかくのお誘いではございますが、あいにく先約があり今回は遠慮させて頂きます。
お心遣いを無にするような返事となりましたこと深くお詫び申し上げます。
(後略)
というような素晴らしい断りの文章となります。
で、あとは応用。
この組み合わせに、
- 前置き①には何を使う?
- 理 由②には何を使う?
- 断 り③どんな断り敬語を使う?
- お詫び④どんなお詫び敬語を使う?
で色々な誘いに対する断りフレーズを作ることができます。
この基本さえマスターしておけば、
あなたの語彙が広がるほどに断るときの敬語の幅も増えていきます。
語り始めるとこれだけでひとつの記事ができてしまうため、代表的なものだけをこれから紹介します。
「仕事の依頼を断る」ときの敬語フレーズ
- 例文「せっかくご依頼を頂いておきながら心苦しい限りではございますが、ご希望納期での対応が非常に難しく、お受けいたしかねます」
- 例文「せっかくの機会ではございますが、より魅力的なお仕事のオファーを受けたため辞退させて頂きます」
- 例文「弊社内のリソースが不足しており誠に不本意ではございますが、本件お見送りさせて頂きます」
- 例文「ご要望の予算内でお応えすることが非常に困難であるため、お受けいたしかねます」
- 例文「せっかくの機会を頂いておきながら非礼この上ないことと存じますが、より魅力的な仕事の紹介があったため、辞退いたします」
「申し出・購入・提案を断る」ときの敬語フレーズ
※「申し出」は謙譲表現であるため「ご提案」「お誘い」「お気遣い」などとシーンごとにふさわしい語に言い換える。
- 例文「せっかくのご提案にも関わらず心苦しい限りではございますが、プロジェクト予算を超過してしまい、今回はお見送りいたしたく存じます」
- 例文「素晴らしいご提案を頂いておきながら誠に遺憾でございますが、より魅力的なオファーがあったためお見送りさせて頂きます」
- 例文「せっかくのご提案ではございますが、弊社内で精査いたしました結果、現時点では不要であるとの判断が下され、今回はお見送りいたします」
- 例文「価格が想定予算を超過しており誠に不本意ではございますが、お見送りさせて頂きます」
- 例文「せっかくのご提案を頂いておきながら非礼この上ないことと存じますが、より魅力的なオファーがあったため、今回はお見送りさせて頂きます」
「誘いを断る」ときの敬語フレーズ
※「都合が悪い」とは言わず、別の表現に言い換える
- 例文「せっかくのお誘いにも関わらず心苦しい限りではございますが、あいにく先約があり、今回は遠慮させて頂きます」
- 例文「せっかくのお誘いなのですが、あいにく出張で不在にしておりお気持ちだけ頂戴いたします」
- 例文「お誘いを頂き至極光栄に存じますが、あいにく外出で不在にしており辞退させて頂きます」
- 例文「お誘いを頂きとても嬉しく存じますが、どうしても外せないプライベートの都合があり今回はお気持ちだけ頂戴いたします」
- 例文「せっかくお誘いを頂いておきながら非礼この上ないことと存じますが、急な出張が決まったためお見送りさせて頂きます」
➡︎【完全版】断りの丁寧な敬語フレーズ100選(誘い・都合が悪いetc)
➡︎【完全版】誘いを断るときの丁寧な敬語フレーズ50選、メール例文
参考記事
➡︎ ビジネス挨拶文の例文50選(文書・メール・年賀状・時候ほか)
➡︎ ビジネスメールでの「拝啓・敬具」の書き方と位置
➡︎「ご厚誼」「ご交誼」「ご高配」「ご厚情」の意味と違い、使い分け
➡︎「教えてください」の代わりに使えるビジネス敬語、メール電話の例文
➡︎「ご教示」「ご教授」の意味と違い、使い方・メール例文
➡︎上司へお願いするときに使える敬語10の言葉と、例文50選
➡︎「いただくことは可能でしょうか?」の敬語、目上の人への使い方